どうも、天使計画とやらを妨害する一般兵です。
天使計画の妨害をアストラちゃんから引き受けてしまったので今更ですが、なぜアストラちゃんが俺じゃなきゃダメって言ったのかを問い詰めました。
すると、【天使の教団】の本拠地であるゼル大聖堂の隠された間…降誕の間から出て来たのを見かけたからと言われました。
降誕の間は【天使の教団】からすると、1000年周期に天使とやらが舞い降りる空間なようで、滅多なことがない限り、人が中に入るのは禁じられているそうです。
そして、アストラちゃんは続けます。
なんと、その降誕の間の地下に天使を作り出す研究所があるようなのです。
俺は降誕の間までの行き方を知りませんが、アストラちゃんのお父上…マルドク枢機卿のお気に入りなので中に入ることは容易いとアストラちゃんは言いました。
そう言うことなので、俺はゼル大聖堂へ向かっています。…アストラちゃんもついて来ましたが。
【天使の教団】の教義の解釈を知っているので、罪とかを犯した時に弁明が出来るらしいです。うまくやってくれればいいけど…。
神捧祭まであと3日。
それまでにケリをつけなければなりません。
ん?なんか引き止めてくる人がいます。なんでしょう───あれ?あ、あいつらは…!【魔物】!?
───
「……貴様!おい!お前だ!止まれ!」
「……。」
【海の教団】の所属のウミネコの警備員はダルム・リングに呼びかける。
「特徴的な黒い鎧と槍───ダルム・リングだな!宣教師がお前を見かけ次第、連れてこいと言っている!やましいことがなければ、ご同行願おうか!」
「…私達は【天使の教団】に向かう途中!それに、ここらの地域の警備は【海の教団】の管轄じゃないはずでしょ?わかったら、下がってちょうだいな。」
「な───箱入り娘のアストラ・ラハーラ!?何故ここに!?」
「私がどこにいようったって私の勝手!でもあなたは決まった場所でしか仕事しちゃいけないのよ!一度作った掟を破るつもり?」
「ぐぬぬ…。」
喧騒を聞きつけ、天使の教団の警備員達が続々と集まってくる。
「お、覚えてろよ〜!」
海の教団の警備員は怖気付いたようで、捨て台詞を放って逃走した。
「ふー、なんとかなったわね。ダルム!」
「…あちらに、居ます。」
大聖堂の向こう───10km程度離れた先にある山を指差すダルム。
「え?なんか言った?」
「【魔物】です。6対の白い羽根…死の天使とも呼ばれる魔竜、ガブリエール…!"4体"も…!」
「アストラさん。天使の教団に伝えてください。魔物が街を襲うと。それでは。」
それを最後に、ダルムは家々を飛び移って山の方向へと駆けて行く。
「え、ちょっと…ダルム。そっちは海の教団の聖地よ!?…そ、そんな…まさか、海の教団まで…!?」
「…聖地を利用して魔物を隠蔽するなんて…確かめなくっちゃ…!教団員!早馬を出して!」
「アストラ様!?何故ここに!」
「いいから、馬を出してよ!仮にも後継者よ!…あ、あと。馬ぐらいなら一人で乗れるわ!」
「おい、お前らアストラ様に馬を!それと同伴者をいくつか選出しろ!いつもの気まぐれとはいえ、怪我の一つでもさせたら首はないぞ!」
「りょ、了解!」
ダルムを追うアストラ。
どうやら、【天使の教団】も【海の教団】も…魔物には一切気付いていないようだ。
【天使の教団】の聖地は、天使の降誕する場所と呼ばれるゼル大聖堂。
そして、【海の教団】の聖地は、天使が死して星に登ったと呼ばれる場所、タイガナーン霊峰。
ガナ公国の日が落ちようとしていた…。
───
「…少年少女。今日の修行はこれで終わりだ。」
「ふぃ〜、疲れたぁ〜。」
「あら、切り上げるのが早いわね。ラインハルト。」
白衣を着た女性がラインハルトに話しかける。
「カース。久しぶりだな。実はな、少々事情がある。霊峰近辺の精霊の力が弱まっているんだ。それの調査をしようとな…。」
「…ラインハルトォ?その人、アンタの彼女なの?すっごいフレンドリーだけど。」
「あら、照れちゃうわ。違うわよねぇ〜ラインハルト。」
「マディ…この人の名は、カース・リー。アシュラの治療を行ってくれてる医者だ。」
「あ、アシュラを!?カースさん!アシュラは助かるんですか!?」
「アシュラはもう治ったわ。首輪だけ外せばいいだけだもの。ラインハルト、これ、領収書…。ポケットマネーから出すなんてやるわね♪」
「アシュラは凄まじい力を持つキメラだ。魔物に対抗するために、強い血統は引き入れるが筋だろ?例え、人体研究のおかげで身につけさせられた力とはいえど…。」
「カースさん…。ラインハルトさん…。アシュラさんを助けていただいて、ありがとうございました!」
「ふふ、受け取っとくわ。ところでラインハルト。お話、いいかしら?」
「ああ。…マディ!マルツド!ライネ!マーロー!今日はゆっくり寝ろ!部屋は後から来るものに案内させる!じゃあな!」
「おう!また明日!ラインハルトさん!」
「お疲れ様〜!」
「…それで、話ってなんだ。」
「霊峰の精霊よ。もう他の宣教師が調査を終えたから、情報共有…。結論から言うと、魔物に棲みつかれてるわ。」
「なんだと…!?」
「【ガブリエール】。災厄の魔物…ガナ公国には本来来れないはずの彼らが、今そこにいる。」
【ガブリエール】は6対の天使のような羽を備えた竜だが、体重が重く、主生域であるマクワイン魔帝国からガナ公国まで海を超えて行くことはできない。
「【天使の教団】の手引きか!?」
「ええ、幼体を輸送して繁殖させたのでしょうね。…そうだったら、何十体ものガブリエールがガナ公国に潜伏していることになるわ。」
「そんなことはありえない!海の教団の宣教師はガナ公国を隈なく探し回っている!潜伏できる場所なんて───。」
「ゼル大聖堂。」
「ま、まさか───!?」
「【天使の教団】の聖地である大聖堂の地下には、かつて地底湖だった部分をそのまま利用した広大な地下空間があると言うわ。」
「思い切り住宅地の真ん中じゃないか!何を考えてるんだ連中は!?」
「ね、ラインハルト。【マクワインの聖剣】のコピー…今何個あるの?」
「…30基程だ。」
「それを弾頭にした大砲を作っちゃうのよ。争いの火種になるってやめてたみたいだけど…背に腹は変えられないでしょ?」
「…わかった。枢機卿に要請しておく。組み立ての許可をな…。」
海とは生命の生きる場所。
死すら利用し、渦を巻いて飲み込む。