城抜け一般兵   作:K+#ガソ林

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14話

 ダルム・リングを追ってタイガナーン霊峰へ行き着いたアストラ・ラハーラ。

 だが───そこに待っていたのは、ここにいるはずのないマルドク・ラハーラであった。

「アストラ…。お前の行動は奇想天外であったが、結果的に最良の未来を引き当てた。」

「…お父様。ガブリエールを隠匿していたのは本当!?そして…なんでここに!?」

「…ガブリエールを隠匿したのは本当だ。そして、此処にいるのは…私が【軌跡魔術】を使ったからだ。」

「!!」

 衝撃の真実に驚くアストラ。

 マルドクは続ける。

「最良の結果とは何か、教えよう…。お前がダルム・リングに接触したのを原因として、ダルム・リングはガブリエールと交戦して死に、お前がダルム・リングを追ったおかげで、私は街にガブリエールを放つことができた…。」

 街にガブリエールが放たれた事実に、アストラは驚愕する。

「…こ、この外道!皆!魔物を街に放ったマルドク・ラハーラは許せないわ!ここで拘束しなさい!」

 同行してきた【天使の教団】の面々に正義を呼びかけるアストラ、だが…。

「何を言いますか。枢機卿の言うことに間違いなどありますまい。」

「アストラ様。マルドク枢機卿はあなたが死ぬのを嫌ってガブリエールを街に放つのを我慢していたのですよ?それが【天使計画】に必要不可欠なことであるのにも関わらず…ね。」

 教団員はマルドクの肩を持った。

「…あ、アンタ達…!元から皆グルだったわけね!?マルドク!!」

「【天使の教団】の面々は、皆、私に忠誠を誓っているのだ…。行き着く先は天使降誕の未来。誰も異を唱える者はいない。」

「だからって虐殺!?なんて奴…。」

「…くく。虐殺などとんでもない。私がやるのは…天使降誕だ。今放たれているガブリエールは皆、失敗作…。黒き竜、赤き竜、そして、輝けし竜…!彼らを使い、最高のキメラ兵を作り、キメラ兵にガナ公国を救わせる。それが我らの天使計画だ!!」

「人工的な天使!?アンタら、それでいいってんの!?」

「枢機卿がいうことです。間違いはないのですよ。」

「…マルドクッ!!」

「私はいい部下を持てて幸せ者だ…。アストラ。お前も天使となるのだ。輝ける御使にな…。」

「!?やだっ!離して!私は、ガナ公国の人を救う為に───!」

「救わせてやるとも。蠱毒にて生まれたガブリエールのキメラとしてな。そこの彼共々。」

「そこの───彼?」

「なんだ、気づいてなかったのか。ダルム・リングの死体だよ。さっきダルムは死んだと言っただろう?」

「…ひっ!?」

「キメラは死体に命を与える。ガブリエールの強大な生命力を彼のRCCが食い尽くせれば、完全な復活も出来るだろう…。【軌跡魔術】。」

 景色が切り替わる。

「ここは───降誕の間の地下!?タイガナーン霊峰からは10kmは離れていたはずよ!?」

「ああ。言い忘れていたな…。私は通常種のガブリエールのキメラだ。この程度の魔術行使など容易いものよ。」

「あ、アンタもキメラに!?」

「ダルム・リング…。イブヨ・トロンの置き土産よ。君のおかげで、ガブリエールとのキメラも安定して行えるようになった…。ああ、たしか、君はただの一般兵だったか。ハハ…。アストラ、見なさい。あの竜を。」

 異様な光景を、アストラは見た。

 巨大な水槽のような物の中で眠る…大いなる竜。

 今まで見たガブリエールの4倍ほどの体躯だ。

「地底湖にて行われた、ガブリエール同士の共食いを制した個体だ。ガブリエールを殺して全てを救う天使には相応しいだろう。」

「…あ、アタシが、あれと一緒になれっていうの…!うっ!?」

 首の後ろに、薬液を注射されるアストラ。

「な、なにを…。」

 意識が朦朧とする。

「RCC増強ホルモンだ。通常の人が持つRCC数値を10倍に引き上げる…。ダルム君は常人の16倍だがね、まぁ、イブヨ・トロンは天才だったということだ。」

 アストラに背を向けるマルドク。

「RCC数値が高ければ高いほど、人間の形を保ったままキメラと化すことができる。アストラ。無事に天使としてまた会えるのを楽しみにしているよ。」

 マルドクの背から生える───天使の羽。

 ガブリエールの羽であった。

 

 

───

 

 

 マーロー達を襲った轟音の由来は、ガブリエールの吐いたブレスだった。

 【海の教団】本部に備え付けの宿舎は炎に包まれる。

 親愛なる者を失ったマディの慟哭が響いた。

 力無く倒れるマーロー。マディをガブリエールのブレスから庇ったのだ、当然の帰結であった。

「マーロー!?マーローッ!」

「おいっ!?何があった!…うそ、だろ…。」

「な、なぜ…なぜマーローさんが…焼け焦げているんですか…!?」

「…私を、庇って…!」

 悲しみに呻く中、燃え盛る宿舎。

 マルツドは決断する。

「…俺がマーローを運ぶ!ライネ!マーローに治療魔術だ!ここは焼けちまってる!寝てるやつ起こしながら逃げるぞ!」

「は、はいっ!治療魔術!」

「マルツド…。」

「マディ、ぼけっとしてんな!ここにはカースさんっていう医者がいるんだろ!?診せればまだ助かるかもしれねぇ!」

「あ…!た、確かに!」

 自分を取り戻したマディ。

 一行は人を起こしながら、宿舎を脱出した。

「カースさん!マーローを!」

「はいな。診せなさい。…良かったわね。軽傷よ。全身の皮膚が焼けてるだけ…目も無事だし、呼吸器にも異常は無いわ。だけど、皮膚を傷つけない為にも安静にできる場所が必要…空を見て。」

 燃える街の炎に照らされて、天使は空を踊るように飛ぶ。

「…なっ!?あ、あれは…ガブリエール!?最強最悪と揶揄される人類の天敵!それも…6体も!?」

「あいつらがいる限り、この街のどこも安静とは言い難いわ。…ちょっとやってきて欲しいことがあるの。」

「倒すのは流石に無理じゃない?」

「違うわ。大砲を打つだけ…。本部の地下に超高威力の弾頭と砲台がしまってあるの。それを使えばガブリエールを倒せるぐらいのね…。これが地下への鍵。あなた達には弾頭と砲台を此処に持ってきて欲しいの。」

「ガブリエールを倒せるほどの弾頭?それは…いえ、カースさん!その仕事、引き受けました!マディさん!マルツドさん!いいですよね!」

「ええ!そんな仕事ならすぐこなしてみせる!」

「ああ!今は人命優先だ!」

「助かるわ。それじゃ、私は負傷者の治療に戻るわね…。頑張って!」

 

 

───

 

 

 ラインハルトの同僚、宣教師のミネルバは、ガブリエールのブレスを避けながらも選択を迫られていた。

「どうしよう…!」

 空を飛んでいるミネルバは、今最もガブリエールの気を引いている。

 だが───それ故に、【海の教団】本部へ向かったら…本部がガブリエールのブレスを集中して受けることになる。

 故に本部へは向かえない。だが、そうすると増援も呼べない。

「ミネルバ殿!」

「ベクカ!」

 後から追いついたベクカがミネルバに問う。

「今の状況は!?」

「私がガブリエールの気を引いています!」

「わかりました!私は徒歩で本部に向かいます!ミネルバ殿はそこで気を引いててください!」

「了解!ベクカ!頑張ってね!」

 ベクカは降下する。

 遮蔽物が多い住宅地を通ることで、ガブリエールに自分の姿を見せないようにする作戦だ。

「ランドマ殿…!後少しですよ!」

 

 

───

 

 

 最強のキメラ───アシュラ。

 今、目覚める…!

「うおおォォォォォォォォォ!!!」

 燃え盛る街、空飛ぶ魔竜…人の悲鳴!

 麻痺の後遺症で眠る彼を叩き起こすには十分すぎる事態だ。

「リンドベル王国"元"将軍、レンデネル・バルド───。今こそ!アシュラと化して、民草を救う!!」

 6腕の巨人が───民衆の盾となる!

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