はい、一般兵です。
なんかいつのまにかキメラ兵にされてたっぽいです。
で、そのあとですが、主人格になってた魔物側…ガブリエールがなんとか俺の意識と記憶を、自身の意識と記憶から引き剥がしました。
そのため今、この体にはガブリエールと俺が共存している感じです。
『がおおー!』
お、ガブリエールも鳴いてますね。
俺は精神の分離が完了したことを黒いガブリエール…もといクロに伝えます。
咆哮がコミュニケーション手段とは…ちょいと驚き。
お、返事が返ってきました…。なになに?自身の兄…アカはクソが付くほどのバカだからこんな利口な真似はできないと思った?
…俺に合成されたガブリエール…アカは常に敵味方の区別がつかず、筋が通ってない論理を振り翳して周囲に理不尽を押し付け、そのくせ強いから誰も手に負えないそれはそれは厄介な奴だったそうです…。
『ぐあっぐあっぐあっ。』
兄に知恵を貸してくれてありがとう、だそうです。…そ、そんなにか!?君のお兄さん、キメラの素体になっちゃったんだぞ!?
あ、そっちの方がコントロールが効いていいと…な、なるほど…。
『ぐるるるるる。』
…!その時です。突然にアカの【意思】が伝わってきました。
『人間の暮らし方はオレたちとは違うだろ?咆哮の時に出すパフォーマンス炎だけで簡単に溶けてしまう奴らだしな。余りに哀れなので、そちらにとって都合の良い生き方を、お前の生き方を見ながら考えてやる』…だそうです。
そんなことをアカが言っていたとクロに言うと、クロはきゃっきゃと鳴きました。面白かったようです。
俺はクロに今後どうするかを聞きます。今まで通り、アカと一緒に暮らしたいなら、俺もクロについて行かねばなりません。
おっ、一人で暮らしたいようです。問題ないですね。アカの面倒は見切れないそうです。
『ぐおおおおー!』
それでは、まず脱出しましょう。
とりあえず、隔壁の外に出て…ん?
なんか警告がなっています。【侵入者】注意…?
…うーん…。まぁいいか。アカの力を使って最短で脱出です。
『ぐお!』
───
神捧祭───当日。
タイガナーン霊峰がかすかに脈動する…天使顕現の準備だ。
そこには…4人の戦士たちがいた。
ラインハルト、マディ、マルツド、ライネの四人である。
「…よし、少年少女。君たちは既に獣化の術を会得している。…今ここで、その成果を見せてみろ!」
「はいっ!」
「おうっ!」
「行きまーす!」
一斉に獣化の術を起動する面々。
マディは翼を持ち、マルツドは全身に亀の物らしい甲羅を纏い、ライネは足がヒクイドリの如く強靭なものへと変化した。
「力がみなぎる…!」
「これなら…ガブリエールにも勝てるかもしれねぇ!」
「光明、見えました!」
獣化の術が人に与えるものは、生物の特徴だけでなく…長時間持続する、強い効果を持った身体強化もある。
その力は、ガブリエール1体の相手がせいぜいだったラインハルトが、ガブリエールのキメラ兵6体を易々と返り討ちにできるようになる程のパワーを術者に与える。
「ざっと、身体能力7〜8倍ってところかな、君たちにとっては。」
「ラインハルトさんは?」
「この術は基礎能力が高くなれば高くなるほど効き目が薄くなる。俺の場合は…3倍くらいじゃないかな。」
「へ、へぇ…。」
ラインハルトの筋肉に畏怖を覚える一行であった。
「だが、気をつけた方がいいよ…。獣化の術は大地の精霊との繋がりが切れると簡単に溶けてしまう。タイガナーン霊峰との魔力のパスを繋いでいる間は大丈夫だけどね。」
「了解でーす!」
「さて、俺たちがやることを覚えているな?」
「ええ、【天使の教団】の地下施設に殴り込みをかけるんでしょ?」
マディ達は、過去、ラインハルトが見つけた大地の裂け目へと注目する。裂け目の中から、【天使の教団】の物と思われる地下施設がうっすらと見えていた。
「ああ。この聖剣弾頭で外壁に穴を開けて、そのまま侵入するんだ。…マルツド、どうした?」
「…ダルム、見つかるかなって。アンタの話を聞くなら、ダルムはガブリエールと交戦した後、行方不明なんだろ?」
「…。見つかるかもな。」
ラインハルトは、ダルムのことをマディ達に伝えていた。
ダルムはガブリエール3体と戦った。そのあと…死体が見つからずにいた、とも。
「だが、殴り込む前に…霊峰で最終試験だ。」
「えっ!?」
「あそこにいる、3体のガブリエール…おそらく、ダルムを襲った奴らだが、そいつらを倒して初めて、俺についてくることを許可しよう。少年少女!」
「…やる!俺はやるぞ!いわばダルムの仇みたいなもんだ!」
「えぇ!今の獣化状態なら、相手にとって不足なし!」
「わかりました!やりましょう!皆さま!」
3体のガブリエールを超える…。
今までに無い難度の試練が、マディ達に降りかかる…!
───
「ねー、お父様。まだ私は外に出ちゃいけないの?」
「ああ。天使降臨が先だ。」
「ふーん…。」
「あまり慌てるな。天使が現れるのは夕暮れだ。」
「つまんないわー。バカなアカもいないし、からかいがいのあるクロもいないし。」
「……。」
「報告します!赤のガブリエール…ダルム・リングが炎のブレスにて施設を溶かしながら上昇中!黒のガブリエールも同伴してます!」
「…アストラ。仕事だ。通常種のガブリエールの飼育層が破壊されたらまずい。そのアカとやらを止めてこい…。」
「ふ、やり甲斐のありそうな仕事ね、いいわ!ぱぱっとやってきちゃうんだから!」
音速で施設を駆けるアストラ…輝けるガブリエールのキメラ。
「…休まらんな。圧倒的強者の横にいるのは…。息が詰まる…。」
マルドクは一息つき、お茶を飲むのであった。