城抜け一般兵   作:K+#ガソ林

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19話

 どうも、キメラになった一般兵です。

 天井を溶かしながら進み、あともう少しで外に出れる!そんな時でした。

 仮面を被った亜人が出てきます。

 あの金髪の髪…アストラ…!?

『ぐおお!ぐお!』

 …どうやら、彼女の名はピカというようです。

 ピカは巨大なハルバードをこちらに振り下ろします。

 俺は腕でガード。ガブリエールの鱗は強靭なので、なんとかなりました。

 俺はピカに問いました。お前は誰だ、と。

 すると、彼女は、自身のことをガブリエールと言いました。この体の持ち主の名は、アストラ、とも。…アストラも、キメラ兵にされてしまったんですね。

 アカと俺の意識は混ざりました。おそらく、ピカとアストラにも同じことが起きているんでしょう。意識を分けるには、体の主導権を持つ者が、自身の意識と、体に眠る他の者の意識を分割したい意思を明白にしなければなりません。

 ピカはこの状況を楽しんでいるようです。おそらく、アストラが元に戻ることは…。

 ピカはハルバードを使うのが楽しいらしく、俺は腕を使ってそれをいなして時にはブレスをして応戦します。

 ハルバードは単純に鉄なので切れ味が不足してます。なんなら、今の俺の腕力なら簡単に折れるでしょう。でも、ハルバードを使わせていた方が楽なのでうっかり折らないように立ち回ります。

 しばらく戦っていましたが、機は訪れました。

 隠れていたクロのブレスです。

 アカの力がガブリエールの炎なら、クロの力は、ガブリエールの鱗粉に特化した力です。

 クロは俺ごと巻き込んでピカを狙い、炎の代わりに黒い鱗粉を口から放出します。

 ピカは鱗粉に対してきょとんとしますが、これが好機なのです。

 ガブリエールの鱗粉は可燃性で、普段は大気に散ってしまうため効果は少ないですが、密室などは風もないため鱗粉が密集します。

 俺は渾身のブレスを吐き出し、ピカを粉塵爆発で燃やしました。

 ですが、あまり効いてない様子…。ピカが呼吸する瞬間にブレスを吐いたので、呼吸器まで満遍なく焼いているはずですが…。

『ぐるる…。』

 なに、アカ。

 …ほーん?じゃあ、あれか…?

 俺たちじゃあピカには勝てないってことか…?

 どうやら、アカ達はピカに一度たりとも勝てたことがないようです。

 

 

───

 

 

 明け方のゼル大聖堂に、【海の教団】のメンバーは集まっていた。

 アシュラ、ミネルバ、ランドマ、ベクカである。

「…じゃ、いくわよ。」

「アシュラ殿。頼みます。」

「任せておけ。…ぬおおおおおおお!!」

 アシュラが6の腕で抱えたハンマーを、ゼル大聖堂の地面に叩きつけた!

「な、なんてパワーだ…!地下が…地下が見えた…!」

 隕石が降ったような衝撃に耐えかね、地面が捲り上がる。

 そこには…鉄の外壁があった。

 アシュラは軽々と外壁を壊して、中に入る。

「まさか本当に地下施設を…。」

「気を抜くな。ここからが勝負だ…。仮説が正しければ、この施設には大量のガブリエールがおる…。そのガブリエールが外に放たれる前に抹殺せねば、市民の命はない…!」

 全員で地下施設の廊下を歩いて10分程度経っただろうか。

 突如、施設内に警戒音とともにアナウンスが鳴り響く。

『警告!侵入者が上層に滞在中!』

「!どうやら気づかれたみたいだな!ベクカ!」

「了解!獣化の術…発動!精霊よ、我が耳に力を…。」

 ベクカは獣化の術を発動し、聴覚を強化する。

「…3時方向から来る!」

「よし、正面突破するぞ。警備が多いところほど、重要な施設が多いはずだ。」

「行きます!」

 アシュラを筆頭に突撃する一行。

 だが、ガブリエールのキメラ兵が…10体も待ち受けていた…!

「私の名はエンジ…。第一層管理長だ。ここで神妙に縄に捕まるが良い、暴徒達よ…。」

「くっ!?こいつら、強い!獣化の術!」

「出し惜しみは無しだ!獣化の術!」

 ランドマとミネルバも獣化の術を使い、短期決戦を仕掛ける。

 だが…10体のガブリエールが放つブレスの制圧力は、生半可な者ではなかった…!

「くっ!こんなもの…あっ!?きゃぁぁぁぁぁ!?」

「ミネルバ!?」

「ベクカ!ミネルバを介抱しろ!こいつらは俺が叩く…!」

 出会い頭にミネルバは、ブレスを避けきれず焼かれてしまう。

 戦闘復帰は不可能だった。

「てめぇら!!よくもミネルバをーッ!!」

 ランドマの斧がガブリエールのキメラ兵の首を落とす。

 獣化の術の恩恵は伊達では無い。

「…ふんぬおおおお!!」

 アシュラが6腕に持つ手鎚を払い、次々とキメラ兵の頭部を潰していく。

「ミネルバ殿!ミネルバ殿!起きてください!」

「……。」

 ミネルバは起きない。

 カース・リーにでも見せなければ復調は不可能だろう。

 そうこうしているうちに、アシュラとランドマが敵の制圧を終わらせる…。

「…仕方がない、ベクカ。ひと足先に外に戻れ。」

「ランドマ殿!ですが…。」

「人命優先だ!早くしろ!」

 そこに声をかける者達がいた。

「あら、怪我人?私に任せてちょうだい。」

「カース殿…と…。」

 ベクカは言葉を失った。

 カースがここにきただけでも予想していなかったのに…死んでいた人間が、蘇ったのだから。

「エリクソン…。お前…生きてたのか。」

 ランドマはポツリと呟く。

 この場にいたのは、【天使の教団】に皆殺しにされた6人の宣教師───エリクソン達であった。

 豹の亜人、エリクソンはランドマ達に駆け寄る。

「露払いは俺たちに任せろ。」

 鯱の亜人、アラドが続く。

「カース女医、ミネルバを…。さぁ、行くぞみんな。【天使の教団】、一度ぶん殴ってやらなきゃ気が済まねぇ…!」

「病み上がりでしょ?ほどほどに、ね♪…ミネルバは任せて。」

「…心強い増援だな。」

「皆、良き仲間です。」

 9人の行先…それは決まっている。

 この事態を引き起こした元凶に───報復を!

 

 

───

 

 

『ふーん?こんなもん?クロもアカも、変わってないわねぇ。』

『……効かないか。』

『グオオオオオッ!!』

 カメラが写すのは、まさに神話の戦い。

 ありとあらゆる物を溶かす炎を携える赤のガブリエールのキメラ、ダルム・リング。

 近づく者全てを鱗粉にて殺す、死を撒き散らす竜…黒のガブリエール。

 そして、その二つの厄災を相手取りながら、表皮に傷一つ付けていない…輝けるガブリエールのキメラ、アストラ・ラハーラ。

 白き仮面で顔を覆い、その表情は誰であっても推し量ることはできない。

「マルドク枢機卿…。」

「天使計画は成功だ。あの者はまさに天使たる実力を持った…神に最も近きものだ。」

「手綱は付けられませんよ。」

「そこが懸念だが…あの者が天使の真似という余興に飽きないよう、努力するとしよう。」

 マルドクの目はダルムを見る。

「…ダルム。私はなぜ、奴をキメラにしたのだろうか…。」

「枢機卿?」

「…なんでもない。…それと、だ。夕暮れはまだか?」

「はい。後…5時間後です。」

「……。」

 マルドクは胸元のブローチを開いて…閉じた。

「…妻に会いに行ってくる。ここは任せる。」

「はっ!」

 地下施設の廊下を歩くマルドク。

 認証装置に暗証番号を入力し、彼以外、誰も入れない部屋へと入る。

 そこは…ステンドグラスが張り巡らされた、教会のような部屋だった。

「…天使よ。」

 そここそ、真の降誕の間。

 元々、ゼル大聖堂の地下に降誕の間があったのを…カモフラージュのため、あることを契機に地上へと移したのであった。

 眠る陶器のような女性。

「…私は、やり遂げる。」

 もう一度、ブローチを開く。

「海の教団───獣化の術の抹消を。」

 そこには…赤子のアストラと、若き日のマルドク…そして、もう一人…見目麗しい銀髪の、人間と思われる女性が微笑みを湛えていた。

 この天使と呼ばれた女性と、寸分変わらぬ容姿で。

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