城抜け一般兵   作:K+#ガソ林

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23話

 マーローが死にました。

 今の俺は…後悔の念が溢れる訳でもなく、怒りが生まれる訳でもなく…冷静さに支配されています。

 此処まで冷たい人間でしたっけ、俺。

 やはり、何かのタガが外れているんでしょうか…今でさえ、元があのアストラといえど───ピカを殺すことに、一切の葛藤がありません。

『グガ。』

 アカ。

 やりますよ。お前もクロを殺されて無念でしょう。

 何故クロがあの時駆けつけてくれたのかはわかりませんが…。

『グオオオオオ!!!』

 俺が軌跡魔術を担当します。

 アカはガブリエール形態で思いっきり戦ってください。

 この勝負…勝ちます。

 ピカは腕を再生し…先ほどのように俺への罵詈雑言を飛ばしながら飛んできます。

 【軌跡魔術】───限界起動!

 俺が操る魔術、【軌跡魔術】の真髄…それは自分自身に常に軌跡魔術を適用して高速移動すること。

 本来ならそれは、戦闘中に【戦況の把握】と【辿る軌道の設定】の二つのタスクをこなしながらじゃないと行えません…しかし。

 アカと俺は同じ身体を共有しています。アカがどこにどう動きたいのかとかは、手に取るようにわかるのです。これを利用すれば、まだまだ技量としては未熟な俺でも【軌跡魔術】の真髄を熟す事ができます…!

 得られるリターンは超速移動とパワー!

 常に威力を持った攻撃を相手に当てる事が可能!

 1秒間に2回の動作にて───ピカを圧倒します!

 6対の翼のうち、3対をもぎ取り…防御のために繰り出した尻尾を切断、再度腕を切り落として首を落としにかかります…!

 足止めとは言わず…ここで、殺します!

 

 流石の輝けるガブリエールでも、軌跡魔術の効果を十全に発揮した赤のガブリエール相手では歯が立たなかった。

 覚醒した力である…身体中からの熱放射も、アカの野生的な勘によって避けられ、決定打もなく…ただただ一手ずつ翼を、尻尾を、腕をともぎ取られ…ついには、その首を失った。

 だが…ピカは生きていた。

 ガブリエールは皮膚呼吸を行っている…そのおかげで、首を切り落とされても酸欠で脳死すると言ったことはなかった。

 また、残された肉体に魔力の弾丸をぶつけて無理やり移動させ、首と身体をくっつける離れ技を見せる。

「…アカ。」

 本来なら、それを黙って見ているアカではなかった…のだが。

 赤のガブリエールの身体は停止していた。

「あなた、もう少しクロを労ってあげた方がいいわよ…。あなたのその体が【軌跡魔術】の副作用を今の今まで受けなかったのは、クロのおかげなんだから…。」

 ガブリエールの鱗粉。

 それは…細胞だ。

 赤のガブリエールの身体のうちに、クロの鱗粉が入り込み…その身体を人知れず再生していたのだった。

「アストラの知識よ。【軌跡魔術】は本来連発できるようなものじゃない。身体の全ての細胞に術をかけて移動しているんだから、当然よね。軌跡魔術は細胞の破壊を伴うの。」

 アカは吐血する。

「魔術の限界起動で、クロの鱗粉でも直せなくなってしまった…そんなところかしら。その巨体で10秒間も魔術を行使できたのは、賞賛に値するわ。」

 ピカは雲海を見下ろす。

「…雲が白くなってる。ガブリエールの鱗粉は全てあの天使様に取り除かれちゃったみたいね。」

 そして、間髪入れずにピカは───手刀を使ってアカの体をバラバラに分解した。

「5等分ね、ちょうどいいわ。…さよなら、アカ。…ダルム・リング。」

 落ちていくアカのパーツは…ダメ押しと言わんばかりにピカの熱放射によって滅却される。

 内臓も焼かれ、生命維持は見込めない。

 ダルム・リングと赤のガブリエールは、完全なる敗北を喫した。

 死という形で。

 

 

───

 

 

 死からの蘇生。

 それを可能とするのが、キメラ技術だ。

 魔術印を起動するカース。

「キメラ技術を使用するわ。」

「…え!?カース、やり方わかるの!?」

「…やって見なきゃわからない。アシュラの身体と獣化の術から着想を得た…いわゆる、合成魔術だからね。」

 獣化の術は、タイガナーン霊峰の魔術印の力を人に与える術式だ。

 キメラの合成魔術は、少し強引な解釈だが…獣化の術の力を与える部分を、魔物と合成すると見立てた術式だ。

 マーローの体と黒いガブリエールの身体が消失し、巨大な魔力の中で潮流となって混ざり合う…!

「さぁ、起きなさい!マーロー!」

 ───龍神、顕現。

 

 

───

 

 

「アストラ。ようやく戻ってきたか。天使の足止めはできたのか?」

「いえ?ダルム・リングに妨害されちゃってできなかったの。でも大丈夫よ。殺してきたから。」

「…計画を続ける。300体のガブリエールを解放しろ。」

「ハッ!」

 300体の死の天使は檻から解き放たれ、地獄は再び…。

 

 

───

 

 

 ラインハルト達はついに、全てのガブリエールを屠ることに成功した。大した損耗は無く、強いていうならば獣化の術が解けかかっている程度だ。

「エリクソン。」

「おう!」

 ラインハルトはエリクソンに笑顔を向ける。

 彼らはガブリエール殲滅を行なっているときに、ようやく再会できたのだ。その時は驚愕もあったが、ラインハルトの喜びは計り知れない。

「…よく、生きてたね。襲撃されたと聞いたけど。」

「カース女医に助けられたんだ、魔術を使ってくれた。…情けない限りだよ。」

「なぁに、ガブリエールを倒せばチャラだ。200体もな!ハハ!」

「そりゃそうか。…鱗粉が消えてる。天使とやらが上手くやったみたいだな。」

「そうだな…。綺麗な空気だ。」

 ヒュペローの軌跡魔術の影響でガブリエールの鱗粉は消え失せ、悪夢は消え失せた。

 地獄は終わり、夜明けがやってくる…そう思っていた。

 炎が、見える。

「ラインハルトッ!」

「ぐっ!?」

 ドン、と。

 エリクソンの腕がラインハルトを突き飛ばした。

「ぐおあっ!?」

 ガブリエールのブレスは、一瞬で3km先にも届く。

 エリクソンは焼失した。

「…!ガブリエェルゥゥゥゥ!!!」

 咆哮。

 黒霧は、また。

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