どうも、一般兵です。
あの後ですが、覆面の奴らが煙幕魔術を使いました。
俺は全く魔術耐性がないので、普通に見失いました。悲しいね。
まぁそれでもサボっちゃいけないので、適当に歩き回って侵入者を探します。
…煙幕を抜けました。随分と遠くに来たかな。
この研究所は結構広いので、移動が大変ですね。
…なんか音が聞こえました。何かが戦ってるような…壁の向こう側から聞こえます。
槍で貫いて壁の向こう側を覗きます。
…なんか腕が6本ある巨人が暴れ回ってますね…。
ここの壁は俺の槍でも貫けるぐらいの薄さです。あの暴れ具合ですから数分も立たず研究所は倒壊するでしょう。
逃げようかな…。
───
「アンタ、アシュラね?私達に協力してくれない?そしたら、この錠を外すわ!」
「俺たちはドルさんの紹介で来たんだ。今はここの警備員に追われてる…。あなたなら俺たちを助けれるって聞いたんだ!どうか助けてくれないか!」
マディ達は目の前の巨人のキメラ…アシュラに頼み込む。
「…ドルが、か。…運が向いてきたな。」
「…?」
「いいだろう!協力してやる。どうせ俺も、ここにいたらいずれ、洗脳手術を受けることになっていたんだ。大歓迎さ。」
錠を外した後の、アシュラの暴れ具合はそれは凄まじかった。
「ウォラァァァァァ!!!」
至る所の壁を破壊し、駆けつけた警備員を踏み潰し…。
「…す、すごい…。すさまじい破壊力です。アシュラさん…。」
「これなら、無事に人体実験の証拠を持ち帰れそうだ!」
だが、その進撃は唐突に終わる。
「ぐっ。が、ああああああ!?」
「アシュラさん!?」
「…騒々しいねぇ。アシュラ。そして、侵入者達…。」
そこにいたのは、イブヨ・トロンと警備員達であった。
「ち、父上!」
マーローとイブヨ・トロンが向かい合う。
「キメラの人体実験なんかやめてくれ!父上!今まで出会ったキメラは皆、人間に戻して欲しいって言ってた!キメラになりきれなくて死んだ人もいるって聞いた!」
「こんなのは父上のやることじゃない!」
イブヨは冷たく返す。
「違法か?」
「…っ。」
「法に反してるか?私の行動は。」
「……。」
マーローは剣を抜く。
「…アシュラを助けるためだ。父上…!」
「アシュラは助からん。私を殺してもな。」
「魔術なんだろう?父上を倒せば止まるはずだ!」
「…アシュラの首輪…それに刻まれているのは強制術印と呼ばれるものでな。一度起動すれば、着用者の魔力を吸って延々と術を発動し続ける。刻まれた術式は麻痺。一生アシュラは動かんよ。」
イブヨの言葉に、皆が絶句する。
「そ、そんな…。」
「アシュラより、君たちは自分の心配をした方が良いのではないかね?君たちは今、研究所に侵入した犯罪者…。殺されても文句は言えないぞ?」
じりじりと、警備員達がマディ達に接近する。
「…ぐ…!」
「終わり、か…。」
「…だめです。ここを突破できる魔術もありません…。」
「畜生…!畜生…。」
「待たせたな!少年少女!」
研究所の天井を割って、一人の亜人が戦場に介入する。
「ガナ公国、【海の教団】所属。宣教師ラインハルト・オードリ。ここに参上した。」
「なっ!?ガナ公国から介入だと!?」
イブヨは慌てふためく。
現れたのは大剣を背負う、鳥の亜人だ。
「教義に反し、異形を作り出した異教徒達を粛清する!」
警備員達を子供のように蹴散らすラインハルト。
「くっ…ガナ公国の亜人…やはり、強すぎる!アシュラでもないのに、20名を超える警備員達が手も足も出ないなんて…!」
「あの人…目的は何?私達を助けてどうするつもり?」
「…今は流れに乗るしかないと思います。ラインハルトさん…私達より数段は強い…!」
その剣はすぐさま、イブヨの喉元に届くところまで来た。だが…。
「…ム、中々強いな、君。」
「………。」
ラインハルトの前に、黒い鎧を纏った槍兵が立ち塞がる。
ぽつりと、イブヨが呟く。
「…ダルム・リング。そういえば君がいたな。」
「…その名は捨てました。今…俺はただの一般兵です。」
「…なに?」
「次からは、一般兵と、そう呼んでください。イブヨ所長。」
「…君、すごいユニークだね、一般兵くん。───叩き潰してやる。あと、そこにいる覆面ヘルムくん達!手伝ってくれたまえ!イブヨは、ここで確保する!」
「へっ!?俺達!?」
「やるしかないぞ!マルツド!」
マディ達を巻き込んだ乱戦が発生する…!