どうも、一般兵です。
なんか目の前で所長が襲われてたので、割って入った次第ですが…。
え?え?何この状況?
覆面ヘルム達は声を聞いて初めてわかったのですが、マーロー達です。なんでここに?
生きててよかったんですが、イブヨ所長を殺しにかかってます。
ラインハルトさんとやらは全く知らない人です。
ガナ公国の人らしいので、仲良くしたいのですが…思いっきり大剣振ってきます!あんなすごい重量の武器を軽々と…!受け太刀するにも油断できません!
数合重ねると、槍の芯がミシッと行きました。え?やばくない?これ。
…もうここまできたら、取れる手段は一つ。謝罪して退散です。ですが今回、覆面ヘルム…マーロー達もそれなりに妨害してくるので、割ととっちめてしまいました。たとえ謝っても許してくれないでしょう。
…囮作戦!そうだ!イブヨ所長を引き渡してその隙に逃げればいいんだ!
そうと決まれば電気ショックです。イブヨ所長に打って気絶させて引き渡します。ごめんな。でも、マーロー達なら悪いようにはしないだろ、多分。
皆あっけにとられた顔をしてますね。うんうん、成功です。皆の意識がイブヨに集中してるうちに逃げ切ります。
…よし、逃げ切れました。あとはこのまま…このまま?そういえば、お金貰ってないような…。ガナ公国行きの船に乗るには、まとまったお金が必要です。
でもお金くれる所長は引き渡しちゃった…。ど、どうしよ…。
───
「…中々、どころじゃないな!かなり強いな!君!」
「………。」
ラインハルトと互角の戦いを繰り広げるダルム。
ダルムは凄まじい膂力を持つラインハルト相手に一歩も引かず、隙あらば足を払い、小手を突くなどして着実にアドバンテージを稼ぐ。
「ラインハルトさん!身体強化の魔術を行います!…ぬがっ!?」
「くそ…!ラインハルト!俺も援護するぞ…ぐわぁっ!?」
「ライネ!?マルツド!?」
「…蹴り飛ばして魔術を発動させない戦法…ダルムさんらしいですね…。ぐふ…。」
「…あ、あいつ、練兵所にいた時と全く変わってねぇ…!恐ろしく強い…!」
「覆面ヘルムくん達?もっと頑張ってくれたまえよ。もっと!」
「やってるっつーの!…がっ!?」
ライネ達も割って入るが、全く相手にならない。適当に蹴りを入れられてあしらわれる始末であった。
「不利だが───俺は宣教師だ!そろそろ決めさせてもらうぞ!この世は───。」
「ッ!?」
ラインハルトの魔術が起動する。
【海波模倣】、その魔術は海の波を模倣し、一撃の剣閃を4重に増やすことができる。
巨大な波濤の再現である。
「この世は、正義が勝つッ!!」
「ぬがぁあああああッ!?」
ダルムの身体が破壊される。
壁に突っ込む勢いで吹き飛ばされる。
場に、静寂が帰ってきた。
「…ダルム、あれじゃあ…。」
「案ずるな。彼の技量に合わせ、ギリギリ死なないところを責めたつもりだ。少なくとも急所は切ってない。」
「ラインハルトさん。あなたの目的は何でしょうか?私達に協力したところで、メリットなんてものは…。」
「初めに言っただろう。異教徒の殲滅だ。まぁ、我々の教義のタブーを犯した者達のみだが。…人体改造は重大なる禁忌、世界に広がればそのまま人を焼き滅ぼす業火となる。」
「…人体改造が禁忌だと!?視力のない者に視力を与え、味覚のない者に味覚を与える!それを為すのがキメラ化だ!禁忌なはずがないじゃないか!」
「父上!」
ラインハルトの言葉に反応し、イブヨは喚き散らかす。
「私の研究は人の進化だ!人の幸福を最も願っているのは、この私だぁぁぁぁ!!」
「…イブヨ・トロン。それは、お前のエゴだ。キメラ化は遺伝する。俺達亜人の歴史は、そのままキメラ人の歴史だ。」
「…なっ!?それでは私の他にもキメラの研究者がいたと言うこと───ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「父上!?…ダルム!」
ダルム・リング。
彼はひとりでに復活し、イブヨを電気ショックで気絶させた。
「…これ以上(俺と戦うの)は、止めろ。」
「お互いに良くないはずだ…そうだな?」
「これ以上(亜人のルーツについて話すの)は…だと!?ダルム!お前一体、何を───。」
「わかり切っているだろう。イブヨ・トロンは引き渡す。そして…俺はここを離れる。追って来たら───わかっているな?」
「…ダルム!ダルムなんでしょ!何でこんなことするの!何で全部話してくれないの!?」
「…。忠告はした。俺はガナ公国へ行く…。2度と会うことはあるまい。」
「ガナ公国へ…!?」
言葉の後、身を翻してマディ達の前から逃げるダルム。
「ダルム!おい!」
「ダルムさん!」
「おい、待てよ!ダルムゥゥ!!」
場には、イブヨ・トロンとアシュラ、そして慟哭するマルツド達が残されていた…。