航海が始まりました!
俺たち従業員は船の上層、乗客は船の下層にいます。船医の俺は緊急時でも無ければ乗客と鉢合わせしないようです。
そこから何もなく、航海が終わりました。7日間は、船の掃除だったり乗客の船酔いを治したりと、色々してました。
それと、腹が減ってる人がいたので芋を分けてたら耳寄りな情報をいただきました。なんと、ガナ公国では3日後に大々的なお祭りが行われるんだとか。
芋はまだいっぱいあります。お祭り価格で値段を引き上げ、たくさんお金を稼ぎたいとこですね。そうしたらあとは昔のような生活をして、隠居するだけ…。
…父さん、母さん…。
いや、だめです。考えちゃ。
キメラに改造された、とか。考えちゃダメです。
魔物に殺されたんです。いや、それでも辛いですが。
…でも、あのライオンのキメラ。父さんと俺の名を言ってました。
……。
…考えちゃいけないです。幸せになることを考えましょう。
───
「ここがガナ公国!亜人の国だ!」
「イェーイ!ですね!」
「ちょっと!マルツド!ライネ!はしゃぎすぎ!」
「そうだぞ。まだダルムの足取りすら掴めてないんだから。」
───
ガナ公国は教団が複数存在する。
それぞれ異なる教義の解釈をするため、教団同士の派閥争いが絶えない。
「…クックックッ。イブヨの小童め。最高傑作のアシュラを駄目にしたと聞いたが…。このRCCのデータは素晴らしい。脊髄に存在するホルモンを取り出し、注入すれば…どんな人間でさえ、圧倒的な再生能力を得ることができる。…この研究を転用すればキメラ計画は最終段階に移行する。」
ガナ教【天使の教団】、枢機卿、マルドク・ラハーラ。
「天使降臨だ。3日後の神捧祭に間に合わせろ。必ず我らが、ガナを強国へと導くのだ。」
「ハッ!ただ今!」
【天使の教団】の面々はマルドクに敬礼した後、次々に作業に取り掛かる。
天使を模したキメラを作るために。
───
「へぇー。ラインハルトのやつ、中々のモンを連れて帰って来たね〜。」
アシュラ。
【天使の教団】をスポンサーとするリンドベル生物研究所が作り出した最強のキメラ兵。
現在は強制術印が稼働しており、手も足も動かせない。
そんなアシュラをつつく人間の女医、カース・リー。
【海の教団】に所属している医者である。
「…"父様"…。まさか、ね…。」
「カース女医、指示を。」
「この首輪。取るわよ。転移魔術用意してちょうだい。」
「ハッ!」
世界一の名医とも呼ばれるカースは、アシュラの苦しむ顔を見て、顔を顰める。
「…私、魔術は専門外なんだけどね…。」