船だという報告が信じられなかった。はじめは見知った『河都』湾内に白と灰色の岩礁が3つ増えたようにも見えた。『帝国』の魔導蒸気艦隊を預かる身として、この火竜列島を含む大西海をこの数年間、駆け回って来たがアレが船だとは信じがたい。
掲げている旗も見たことがない。念のため部下に便覧を持ってこさせたが、どこにも白地に赤丸の旗など無い。どこの船だというのだ?
「提督…、接触すべきでしょうか?」
「いや、まずアイツらに話を聞こう。」
分からぬ存在に無策では触れたくはない。大型船を囲むこの国の衛士に聞こうではないか。そう部下に伝え、我が国から輸出された
「ニホン?聞いたことがないな。どこにある国だ?」
乗り込んで来た衛士によると、遥か西方にある国だという。大西海…別名『無限海』の向こうから来たと、にわかには信じがたいが目の前には巨大船が実在している。
「大尉、灰色の二隻は軍艦だそうだがアレをどう見る?」
「平べったい方はおそらく竜母、でしょうな。しかしなんて大きさだ…、
飛竜母艦、竜母と呼ばれる艦に我々が知る中ではよく似ている。マストが見当たらないということは、何かしらの動力源を積んでいるということか。帆装を全廃しているとすれば相当機関に自信があると言っていい。
もう一隻、更に大柄な巨艦には呆れるほど巨大な砲…?なのだろうか、一体何を想定しているというのか。艦の中央に多数備える比較的小型の砲でも、我が艦のどの砲よりも大きいだろう。
「我が『帝国』大西海艦隊をすべてかき集めて、アレを沈められるか?」
「不可能でしょうなぁ、
白い船の隣で『河都』と王城を守るように停泊する『帝国』製の100門級と80門級戦列艦、ユーオソキの海軍最大の艦がまるで小船だ。風神の涙を利用する旧式艦とはいえ、このフリゲートに匹敵する大型艦だというのに。まるで神話の、古の魔法帝国の魔導戦艦ではないか。
「魔写を撮っておけ、後で総督府と本国に送らねばならん。」
万一に備え『ヴェステン』を回航させねば、灰色の巨艦に比べれば慎ましいがそれでも我々が持つ最大戦力の装甲艦だ。ないよりはマシだろう。
「ヴェステンは今どこに居たかな?」
「はっ、今朝の連絡によりますと、昨日『教都』に入港したそうです。」
「呼び戻せ、最速でだ。」
この国のもう一つの首都にいる船に思いを馳せ、この後総督府と本国向けに書かねばならない報告書に頭を痛める私を乗せ、フリゲートは港へと入って行った。