サン=ユーオソキ双王国、『河都』郊外、晴天に恵まれ波の穏やかな日の浜辺、立ち入り禁止を示す移動式の柵の外や付近の小高い丘には見物のためか、黒山の人だかり、柵の内側には緊張した面持ちの王国衛士や諸侯が沖を見つめていた。
沖合には巨大な灰色の軍艦が二隻、はるか西からやって来た船の名は『むさし』『いず』、日本海軍の
来たるラヴァーナルに備える『やまと型』四姉妹の次女は自身の存在意義である、姉よりも大口径の50口径480mm砲を異国の海に誇示している。
かつて姉が撃墜した、空中戦艦パル・キマイラや海上要塞パルカオンなどのラヴァーナル超兵器群への大火力の直射をドクトリンとして、各種防御システムと複合装甲で身を固め、核融合の炎を内に秘め、凶悪な火力を叩き込む、ステルス性を重視したスマートな外観とは裏腹に打撃力を凝集したような艦級。それが『やまと型』だった。
同じくラヴァーナルへの対応と、世界各国の邦人保護のため兵力を展開できるよう建造された『おおすみ型』輸送艦『いず』は自衛と対地支援のため、空母にも似通った全通式の飛行甲板と速射砲を装備している。
『いず』の後部ウェルドックから発進したのは、外務省交渉団と儀仗隊、そして情報軍の護衛部隊を詰め込んだエア・クッション型揚陸艇。
護衛部隊が情報軍なのは、陸軍所有の
その点情報軍の兵器類は、濃紺とグレーをメインカラーとしていて儀仗隊との違和感も少ない上、小規模部隊での展開に慣れている。
相手を分析した上での徹底的な配慮、かつてのパーパルディア皇国第一外務局のような無能は日本政府に存在しない。
そして、それを実現するための組織が日本情報軍だった。病的とまで評される国内外の情報収集、分析、防諜、そして不穏分子の抹殺。すべては国家の存続と安寧のために、前身組織から引き継いだ任務は拡大し、独自の戦力を持つまでに至った。
上陸し、交渉団の会談会場までの道を形成するため、左右に展開する日本陸軍儀仗隊、そしてそれに応えるユーオソキ王宮衛士隊。銃剣付きの儀仗用ライフルと羽飾り付きの槍、交えずとも両国が誇る精鋭同士、互いの練度を見せ付けるという外交上の戦はすでに始まっている。
陸軍儀仗隊と共に上陸する情報軍護衛部隊の指揮官は、成人義体にサーベルと拳銃を下げた礼服姿の月読少佐、横には少尉とゆかりも控えている。
三人の後ろに銃剣付きのアサルトライフルを携え整列するのは、濃紺にグレーの帯が入った58式
さらにその横には情報軍最大の装甲車両、35mm機関砲と対戦車ミサイルを装備した自律化装甲戦闘車まで揚陸されていた。
普段はヘビーカスタム
儀仗隊と護衛部隊は、交渉団が出迎えのユーオソキ外交担当諸侯とともに会談会場の屋敷に入ったことを確かめると、会場内部の警護をユーオソキ王宮衛士に任せ砂浜に設営した天幕で待機に入った。
それを柵の外で遠巻きに見物する河都群衆の中に、魔写機を構えるこの国出身ではない人物があった。『帝国』総督府所属の彼が撮った魔写は、日本とユーオソキ初の外交交渉の様子として後の歴史書に載ることになる。