人間には太陽と月、二つのタイプがある、と昔お姉さまから聞いた。
お姉さまは自身を「月のタイプ」と評したあと、「志摩子もそうかな?」とおっしゃった。
私も、私は月だと、その時思ったし、今でもそう思っている。他の人の光を浴びて、初めて光ることができる月・・・・
今思えば、あの時の山百合会には『月』の人が多かったのかもしれない。私に、お姉さま、それに、祥子さま、令さま、瞳子ちゃん、菜々ちゃん・・・多分、江利子さまも。逆に太陽は蓉子さまや由乃さん、乃梨子・・・それに――祐巳さん・・・。
祐巳さんは・・・私の狭かった世界を広げてくれた人。彼女にしてみれば、普通にしていただけだったのだろうけれど。それでも・・・ううん、違うわ、だからこそ、私は輝く月でいられた。そして、だからこそ、彼女は太陽だった。
――志摩子さん――
――志摩子さん。どこにも行かないでね――
――私が三年生になるまで、どこにも行かないで待っていてね――
――一緒に山百合会背負っていくんだから。志摩子さんがいなきゃ、私嫌だから――
嬉しかった。空虚だった私の世界、そこに降り積もる。祐巳さんの笑顔・・・もちろん、それだけじゃない、お姉さまも乃梨子も、山百合会のみんなも・・・でも、それらと繋いでくれたのは、多分、祐巳さんの存在だった。
でも・・・そう言ってくれた祐巳さんは、私が三年生なる前に、私達の前からいなくなってしまった。私・・・私達は大きな太陽を失った・・・。いや・・・太陽なんかじゃない!・・・・私の親友が、祐巳さんが・・・・・!!―――
次の年・・・紅薔薇は空席なった・・・。
その年の山百合会はどこかよそよそしかった。由乃さんも、その妹の菜々ちゃんも、乃梨子も、その妹も・・・手伝いに来てくれた瞳子ちゃんや可南子ちゃんも・・・。仲が悪いわけじゃない、むしろ仲は良かった、と思う・・・それだけに、よそよそしかったのかもしれない。それ自体が、そこに存在する違和感そのものが、祐巳さんがそこにいた証とでもいうように。ただ、私達は祐巳さんを求めていた・・・・。
先の見えない闇の中で、晴れない雨の中で、太陽に祈るように・・・。
太陽・・・。
キリスト教はそうではないけれど、世界には太陽信仰というのが広く分布する。中南米や日本が代表的である。
日本の神話では太陽の化身は天照大神。彼女が弟、須佐之男の暴虐に悲しみ、天の岩屋戸に隠れたとき、世界は暗くなったという。そして、困った神々は謀り、宴を開いて、天照大神を岩戸から誘い出した。いわゆる「天の岩戸神話」。これを聞いたとき、私は聖書を思い出していた。
聖書ではイエス・キリストが復活するとき、天使がキリストの墓の蓋石を開いたという。
ある意味では「復活神話」ともいえるかも知れない二つの説話は女性が重要な役割を持つ。前者では、天宇受売命、後者ではマグダラのマリア・・・天宇受売命は後に遊女の祖神と言われ、マグダラのマリアは娼婦であったという伝承が生まれたという共通点もある。もちろん、それには色々な批判が必要だけれども・・・
なんで、私は・・・祐巳さんのことを考えていたはずなのに・・・。
職業病かしら・・。
祐巳さん・・・あなたはどうしていなくなってしまったの?
マリア様・・・どうして貴女は祐巳さんを私達の前から消してしまわれたのですか?
そう祈りを捧げたとき時、私の耳に御聖堂からのアヴェマリアが聞こえた・・・―――
――祐巳さんも好きだったグノーのアヴェマリア・・・祐巳さんが近くにいる、そんな気がした。
――これは、後から思えば『予感』だったのかもしれない―――
紅き天使のレクイエム 第三章 マグダラのマリア(上)-天安河原-
「さあ、祥子さま、みなが揃ったところで、どういうことか説明してくださいますよね?」
由乃が祥子の病室で、腰に手をつけて高らかに宣言・・・ではなく、祥子に今回の狙撃事件、それに昨晩の『事故』のことをふくめて訊ねた。
病室には、祥子、蓉子、聖、由乃はもちろん、菜々に、後から見舞いに来て騒ぎに驚いた江利子、令、加東さん、さらに祥子の側近で会社から大急ぎで駆けつけてきた祐麒、それに祥子の従兄の柏木がいた。病室は先ほどの部屋ではなく、二つ右となりの部屋で、カーテンは厳重に閉められていた。
「それは・・・」
そこで声を出したのは、祥子ではなく祥子の秘書でもある祐麒だった。
「ん?何?祐麒が説明してくれるの?私はそれでも構わないけど?」
由乃がギロリと祐麒を睨むと、祐麒が一歩下がった。
「いや、でも・・・機密事項ですし・・・」
「私は実際、襲われたのよ!それを機密って・・・!」
由乃が異論を唱えた夫に掴みかかるような勢いで迫り、祐麒がじりじりと後退する。
(令、やっぱり尻に敷かれているのね、祐麒君)
(ええ・・・まぁ・・・)
「何?令ちゃん、江利子様」
由乃が振り返って、こそこそ喋っていた令と江利子をねめつけた。
「何でもないわよ、由乃ちゃん」
「う・・うん、そういうことだから」
由乃は令を不機嫌そうに一瞥したあと、祐麒を再び睨んだ。
すると、祐麒の後ろにいた柏木が、きざっぽく前髪を上げながら、
「別にいいだろう、ユキチ?機密といっても、ここにいるにメンバーなら、他言はしないって。だろう、さっちゃん?」
と、由乃に助け船を出した。
問われた祥子は、ただ短く、
「福沢・・・かまわないわ」
と言った。祥子は祐麒のことをプライベートでは「祐麒君」と呼び、仕事の場合は福沢と名字を呼びつけにする。つまり、これは仕事上の上司から部下への命令である。
それを聞いた祐麒は、戸惑ったように上司を見た後、すぐに襟を正して仕事の顔になった。祐麒が機密を維持しようと思ったのは、祥子ことを慮ってことだった。
「・・・・了解しました。お話しします。ただし、これから話すことはもちろん他言に無用です。・・・我が社は、ここ数年をかけて、中国のとある組織――『蚩尤』という非合法組織を調査し続けてきました」
「つまり!その組織に祥子さまが狙われたってことね?!」
「由乃ちゃん、人の話は最後まで聞きなさい」
祐麒の話をきるように身を乗り出した由乃を、江利子がたしなめた。由乃は何か言いたげに江利子をみたが、自分でもそう思ったのか、意外と素直に引き下がった。
「――先に・・・言われてしまいましたが、社長を狙ったのは十中八九その組織だと思われます。昨夜、零時頃、社長は自宅近くの路上で襲撃を受けました。護衛四人が死亡、社長は拳銃によって重傷を負いました。二度目は先ほど、午後五時頃、向かいのビルより狙撃を受け、社員一人が死亡しましました・・・。それは現在、我が社の情報部と庶務四課が総力をあげて調べています」
「・・・祐麒君、一つ良いかしら?」
「答えることができる範囲ならば」
「あなた達の会社は何でそんな物騒な組織のことを調べているのかしら?」
「それは――――」
江利子の鋭い質問に、祐麒が言い淀む。祐麒が困ったように目で祥子に確認をとると、祥子がうなずいた。
祐麒は深呼吸してから言った。
「祐巳の・・・・福沢祐巳の行方に関係があるからです」
部屋の中が重く静まり返る。その瞬間、部屋の中の反応が二つに分かれた。
由乃のように口を押さえたりするなど、驚く者・・・同様の反応は江利子、令、菜々の旧黄薔薇組。ただ静かに目を伏せる者、祥子、蓉子、聖、柏木、加東。
「ちょっとまってよ、祐巳さんの行方?!祐麒、今まで私に何にも!!!どういうことよ!?」
由乃は祐麒に詰め寄った。明らかに怒っていた。
しかし、祐麒はただ、「ごめん」と言った。
「ごめんって・・・・なによ、それ・・・?」
由乃の顔が崩れて、怒っているのか泣いているのか、わからない顔で祐麒を見つめていた。祐麒は、ただ「ごめん」を繰り返していた。
「・・・・ちょ、ちょっと、由乃、祐麒君こまっているから・・・」
「令ちゃんは黙っていて!困ればいいのよ・・・・」
「由乃・・・」
由乃は泣いていた。祐麒が戸惑いながら、静かに由乃を抱きしめた。
それを傍目で、不機嫌そうに見ていた江利子は、
「祐麒君?あとは隠していることはないのね?祐巳ちゃんの行方とか?」
と、改めて祐麒に問いかけた。
「はい・・・まだ、祐巳の行方はわかっていません」
「そう・・・・祐麒君は・・・そうみたいね」
江利子は由乃と祐麒に優しく微笑みかけた
「じゃあ――蓉子、聖、祥子・・・・それに加東さんだっけ?あなたもかな?・・・・あなた達はなにか隠しているでしょ?」
江利子が凶悪に目を細めた。明らかな怒りをにじましている。
「とぼけても無駄・・・あなた達、祐麒君に何か言いたそう・・・ううん、何か言うのを躊躇っていたでしょ?」
それ以外の人達が一番近くにいた彼女たちのうちの誰かを見た。菜々と令が蓉子と祥子を、由乃と祐麒が祥子を、柏木が聖と景を見た。
その中で最初に口を開いたのは聖だった。
「さすが・・・江利子だね・・・」
「じゃあ、やっぱり何か隠しているのね」
江利子が嘆息した。
そこでいままで沈黙していた蓉子が祥子に、
「どうするの?」
と訊ねた。その時の表情は、顔を軽く伏せていたため、影となって窺いしれなかった。
「私から・・・」
ベッドの上で祥子が、部屋のなかにいる全員を確認するように見回してから言った。ここで皆に言ったほうがよい、それも自分の口から言うべきだ、と思ったのだ。
「私を、昨夜、襲撃したのは・・・・・祐巳です・・・・」
その衝撃的な言葉は、部屋のそれ以外の言語を一瞬かき消した。そのことを知っていた、または予想はしていた者――蓉子、聖、景は静かに目を伏せて、知らなかった者――江利子、柏木、令、由乃、祐麒、菜々は目をみはって一様に祥子を見た。
最初におそるおそる口を開いたのは、いつもはポーズをとっている柏木だった。
「・・・さっちゃん・・・本当・・・かい?」
「多分、ね」
その柏木の問いに答えたのは、祥子ではなく聖であった。
「聖、君には聞いていない」
「別に私でもかまわんだろうが、優?」
口調は喧嘩腰になってしまう二人だが、その二人の中にある感情は同じ・・・そう戸惑い、だった。聖の方が早く知ったわけだが、その気持ちだけは変わらなかった。いや、むしろ時間が経ち、改めて祥子の口から聞いた所為で強くなったかもしれない。
「やめなさい、二人とも・・・」
蓉子が二人を止めると、いつもとは違いおとなしく引き下がる。それは、やはりいつもとは違う・・・この気分ではとても喧嘩などはできない・・・ただのくだらないいがみ合いなってしまうからだろう。
ふたりが黙ると、入れ替わるように由乃が声を出す。
「では、本当なんですね、祥子さま?」
祥子は小さく首肯した。あまり認めたくなったが。
「じゃあ・・・・祐巳さんは!祐巳さんは生きているんですね!」
「え、えぇ」
祥子は喜色ににじんだ由乃の声に少し面を食らっていた。それは他の皆も同じだった。
「なら、探しに行きましょう!日本にいるなら今がチャンスじゃない!」
「・・・・そうですね、お姉さま。祐巳さまを探すには、この機を逃す手はありません」
今まで黙っていた菜々(すでに剣道着から着替えている)が由乃に同意した。イケイケ青信号姉妹に火がつき、今にも飛び出しそうになっている。
それをみて、祥子を初めとした面々は唖然としたが、それでも消えていた笑顔が戻ってきた。
「そうね、由乃ちゃん、祐巳を探さないと。ベッドで寝ている場合じゃないわね」
祥子はそう言って、ベッドから立ち上がろうとするが、少しよろけた。それを支えたのは蓉子だった。
蓉子は苦笑いしながら、
「あなたをベッドに縛り付けたほうが、傷が広がりそうな気がしてきたわ・・・。ことが終わったら、ゆっくり休むのよ。そして、私にも手伝わせなさい」
と言った。柔らかで、冗談まじりの口調とは裏腹に、表情はとても真剣である。
「もちろん私も・・・久しぶりに祐巳ちゃんにも会いたいしね」
「祥子、私も手伝うよ」
江利子と令は飛び出しそうな、孫達をかるく手で肩を押さえつつ、その意思を伝えた。
「景さんはどうする?」
「私にできることあるのかしら?」
「まぁ、見ているだけでもいいんじゃない?無料だし」
「そうね」
更に参加者二名・・・。
「僕はどうしようかな・・・」
「優さんは臨時国会があるのでしょう?」
「うん、まぁ、そうなんだけどね。ふぅ・・・仕方ない、僕は後方支援に回させてもらうよ。でも、明日の審議までは祐巳ちゃんを見つけだしてくれよ。法案どころじゃなくなってしまう」
柏木は本当に残念そうに肩を落とした。それを聖が「ざまぁみろ」という顔で見た。
「・・・遠足ではないのですが・・・」
祥子が呆れた風に、それでいて、嬉しそうに笑って言った。これだけの大人数で危険も多い、しかし、諦めさすことも、人数を減らすこともできそうもない。
それも自分は狙われている。それに巻き込むのは・・・。
(でも、大丈夫だと思えてくるのは不思議だわ・・・それに、祐巳の顔を知っているのだから、私のスタッフと組めば、安全と同時に効率も上がるわね・・・)
結局、祥子は皆の力を借りることにした。そして、それは祥子の望みでもあった。祐巳を『みんな』で迎えたかった。
それを伝えたようとした時だった。
ブーン、という振動音がして、祐麒が自分の背広のポケットから携帯電話をとりだした。祐麒が目で祥子に許しを求めて合図を送る。
「ここで、かまわないわ」
祥子が許可すると、祐麒はうなずいて、電話に出た。それをこの場の全員が固唾をのんで見守る。新たな情報が入ったのかもしれない。
「うん・・・ああ・・・え?なんだって?・・・家が?!・・・・うん・・・・・・・・うん・・・・・・・・・・わかった、すぐに向かう」
祐麒は電話を切った。そして、祥子に報告する。
「前の、福沢の家で、銃撃戦があり、東洋系の男が数人、死んだ模様です」
と。
『!』
祥子やその他の者が息をのむ。
そして、祐麒は一言だけ・・・
「祐巳です」
と、確信しているかのように言った。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
祐巳は顔をしかめながら、走っていた。拳銃を握ったままの右腕で傷ついた左の腕を押さえながら、夜の町を走っていた。
そこまで深い傷ではないが、浅いわけでもなく、血が滲むように流れて止まらなかった。
饕餮は本気だった。予想以上の人数を祐巳に投入してきた。襲撃してきたのは六、七人ほどだと思っていた。しかし、実際は十人以上、さらにまだ近くに待機しているのがいるらしい。
今も逃げつつ、襲撃者を一人ずつ片づけていた。銃は奪える間があるなら奪いたい所だが、そんな暇はなかった。現在は二挺目のNORINCO M54、残弾は3、4発というところか。まだKimber Custom TLE Ⅱもあるが、保険、切り札だ。
しかし、襲撃者達をかなり引き離したらしい。影も形も見えない。足音も自分のものだけだ。
そこで今の位置を確認する。土地勘があるだけに場所さえ掴めれば、どうしようもある。
辺りを見回して、祐巳はハッとした。
(ここは・・・・)
長く続く塀に祐巳は見覚えがあった。
(まさか、帰巣本能ってやつ・・・?まさか・・・ハっ)
祐巳は自嘲した。
そこはマリア様に見守られた乙女の園――リリアン女学園だった。少しどころではない懐かしさを胸に覚えたが、いまはそれどころではないし、自分にここを懐かしむ、そんな権利はない。祐巳はそう思った。
が、しかし・・・
(でも、身を隠すにはちょうど良いか・・・)
道の先を見ると、そこには歩道に片輪を乗り上げるように、無断駐車されたトラックが見えた。その上に伸びた大樹の枝。
(本当にちょうど良い・・・)
祐巳は不気味に声を殺して笑った。
「ゴロンタ・・・今日はいないのかしら?」
志摩子は高等部の裏手で独り言を呟いた。修道服姿で、銀色の皿を手に持っている。それは、高等部周辺をねぐらにしている猫――ゴロンタ・・・ただし、新入生が入るたびに名前が増える――専用に志摩子が買った皿で、夕食の残りが乗っていた。
ゴロンタは十年ほど前から、リリアンに住み着き、現在では三世の孫ぐらいまで、学園中に広まっている学園名物の猫だ。現在の高等部新聞部発行「リリアン瓦版」では特集されるぐらいの人気だが、学園としては猫害に苦慮していた。
よって、生徒教職員はもちろん、餌付けはシスターであろうと禁じられてはいるが、事実上黙認されている状態である。志摩子も高等部時代、そして大学、大学院の時を通してのこの習慣をいまさらやめる気にはなれなかった。
今日もそうやって抜け出して来たのだが、ゴロンタは現れなかった。別に珍しいことではなく、ゴロンタが姿を現すのは三日に一回ほどの確率だ。
そういうときはいつも皿だけで置いて、朝になると無くなっている。
今日もそうしようと腰をかがめた時だった。
背後の茂みが、がさっ、と動いた。
「ゴロン・・・・?」
「動かないで・・・シスター」
「!?」
志摩子の首に黒光りする刃が突きつけられていた。それを理解する前に、本能的な恐怖を感じて、体は硬直したように動かなかった。
そして、後ろから冷たい声が聞こえる。
「動かなければ何もしない・・・水と食べ物、それに包帯を用意して。慈悲深いシスターならしてくれるでしょ?」
侮蔑のこもった声・・・それでも志摩子は何故か嫌悪感もなく、怒りも感じなかった。そして、なぜか安心していた。
(どうして・・・?)
この異常な状況に混乱しているのだろうか、何かが違う気がした。
そこで、志摩子はハッとした。その声が自分の記憶の中にあることに気がついた。
――志摩子さん――
そう、いつもころころ変わる表情で、私に話しかけてきてくれた。彼女――
――祐巳さん――
「祐巳さん!!」
志摩子は記憶の中と自分の声と今の自分の声が重なり、ナイフの存在をも忘れて無我夢中で後ろに振り返って、その人物に抱きついた。安心できるような柔らかい感触・・・。
その人物の、祐巳の顔を見る・・・少し顔つきは変わったが、たしかに祐巳だった。
祐巳は志摩子の顔を、目を白黒させながら見てから、驚愕したように呟いた。
「・・・志摩子・・・さん・・・?」
――そう、私の名前を呼んでくれた・・・。
第三章 マグダラのマリア(上) 終
下篇に続く・・・