カラ、カラン。
軽快な音が床に沈み、店の扉が跳ねるように大きく開く。すでに深夜と言っていい時刻、しかしこの店は開店したばかりであった。
「マスター、ローズお願いね」
カウンター席に腰を下ろしながら、ふくよかな胸に黒いベストを着た店主に注文したのは、眼鏡をかけた女だった。客は今入店したこの女一人だけである。店主も常連なのか心得たもので、その女が店に入ってきた時点から材料を用意していた。ミキシンググラスに、ドライ・ベルモット、キルシュワッサー、グレナデン・シロップを注ぎ、バースプーンでステアした。そして、中の液体を円錐に脚のついた形のグラスに移し、それを、スッ、とその客の前に差し出した。
「ローズです。どうぞ」
淡い赤色のカクテル。女はそれを目を細くして見つめたあと、一口だけ口をつけて、大事そうにバーカウンターに置いた。
ここはM駅周辺の商業地と住宅地のちょうど間にある隠れ家的なバー。昼は雑貨屋で、夜の十一時から一時まではバーとなる。この店は双子の姉妹が経営しており、妹が昼、姉が副業的に夜を担当している。
その姉の方であるマスターが女の様子を興味深げに眺めて訊ねる。
「いっつも、思うだけど、蔦ちゃん?毎回、最初にそれを注文するけど、なんかあるの?」
「ま、ちょっと」
その女――武嶋蔦子は薄紅色に染まったグラスに目を落としながら、優しく頷いた。蔦子はこの近くに実家があり――現在は少し離れたところにマンションを借りている――、店主とも幼なじみと言っていい仲であった。
夜らしい静寂の中、耳を澄ますと遠くの方でかすかにサイレンの音が聞こえる。
「ちょっと、って?」
「・・・・・このカクテルみていると、友達・・・そう友達ののことを思い出すんだよね」
「おんや、蔦ちゃんの友達って、カメラだけじゃなかったんだ」
「失礼な」
蔦子は細く笑って、グラスに薄く口をつける。そのあとは心地よい沈黙が店内を包んだ。蔦子は細い目で薄紅の液体を見つめ、マスターはその様子を眺めつつ、キュキュと小気味いい音を立てて、グラスを磨く。
その間、蔦子の思考は高等部時代へ徐々にトリップしていた。変哲もない、それでいて世界に一つだけの記憶。
(そう、高等部時代―――――)
被写体も自分と同年代かそれより下の同性。もっとも、今より自分も被写体も若いのは、当たり前だ。そこに映し出される景色は、深い色の制服、乙女の園の乙女たち。
色々な情景、色々な少女の姿が駆けめぐる。そのうち、思い出される姿は徐々に絞られて、多くの姿が頭の中で霧散していく。
――登下校中にあくびをしている少女――廊下で朗らかに談笑する少女達――机に突っ伏して眠りこける少女――
――五十メートルを走り込む少女――必死でボールに追いつこうとする少女――賢明にラケットの素振りをする少女――
――愛する妹の姿をキャンバスに描く少女――丁寧にトランペットの手入れをする少女――真っ黒に焦げたクッキーを残念そうに見つめる少女達――
――マリア祭で憧れの薔薇さまからおメダイを受け取る少女達――体育祭の借り物競争で野球帽を借りてゴールに疾走する少女――学園祭で息を切らしながら反復横跳びする少女――
――メモを片手に何やら悩む真美さん――顔を歪めてストレッチする由乃さん――マリアさまに手を合わせる志摩子さん――
それらが頭を過ぎり、消えていく。しかし、ひとりの少女の豊かな表情だけが記憶に溜まっていく。
――桂さんと話して笑う彼女――自分の席で困った顔の百面相繰り返している彼女――お姉さまに叱られたのかしょぼくれている彼女――――マリアさまの前で憧れの祥子さまにタイをなおしてもらっている彼女の姿は今でも目に焼き付いて離れない、私が人生の中で出会った、少なくとも今までの中で最高のショット。
そんな彼女は二年の冬、私のレンズの中から消えた。何が起きたのか、私に知りようもなかった。そして混乱したのは私だけではなく高等部、いや学園全てだった。それだけ彼女は生徒から愛されていた。それは私も含めて・・・私にとって彼女は単なる「好ましい被写体」じゃなかった。
それを一言で表す言葉を知っている。月並みかもしれない。でもそれしかない。
『大事な親友』
私のレンズ今でも彼女の姿を探している。そして、私もそれ以上は進めない。誰を映しても、レンズと心はどこかで彼女に浮気をしている。私はそこで行きづまっている。
誰が私の写真を誉めたとしても、私は私の写真が思いの片隅で許せない。私は被写体の、その人の一瞬を撮れていない。かならずどこかに祐巳さんがいた。
彼女の所為だ。私は彼女を撮りたい・・・・話したい、会いたい。
ねぇ?祐巳さん―――
蔦子はハッとした。目の前でマスターが腕を組んで優しく微笑んでいた。蔦子はいつの間にか、思ったことを口に出していたのだ。そして、それにも気づかないほど深く思い考えこんでいた。
そんな蔦子に、側にいた年上の幼なじみは茶目っ気たっぷりでウインクする。
「お客の独白をきいちゃったバーテンダーはどうしたらいいでしょう?」
マスターがカウンターに腕を乗せて、蔦子に目線をあわせて、人差し指をぴんとためた。
「それでバーテンダーの格付けできるのよ。しつこく聞くのは三流バーテンダー、聞かなかったことにするのは普通のバーテンダー、お客が話しやすい雰囲気を作るのが一流バーテンダーって、感じで・・・・・まぁ、今、勝手に考えたんだけどね。で、私は一流バーテンダーよ」
「結局、訊こうとしているんだから、三流じゃないの、マスター?」
蔦子はそう冗談めかしに言ってから、グラスの中身を飲み干した。
「あら、私と蔦ちゃんの仲じゃないの、ケチねー」
そう言いながらも彼女は突っ込んで訊こうとはしない。彼女の言をとれば、一流ということになるのだろうか。そんな彼女の気遣いに素直に感謝した。
「時子さ・・・・」
そして、それを言葉に表そうと蔦子が呼びかけかけた時、その声を遮るように、
“パシャン!”
と音を立てて、マスターの背後にあった酒瓶が一つ弾けて割れた。
「へ・・・?」
二人とも目を剥いて、その破片を凝視したあと、蔦子の後ろウインドウに目をやった。
昼の商品である多種多様な雑貨が展示してあるガラスウィンドウには、丸く穴が空き、その向こうに男が寄りかかるように倒れている。さらに墨をたらした半紙のように、何かがべっとり付着していた。
“・・・血?!”
それに気づいたのか、動揺したマスターが側にあったグラスを倒して割った。
そして、ショーウィンドウの前を女が横切る・・・。
蔦子はその女に見覚えがあった。見間違うはずがない。
彼女だ!
「祐巳さん!!!」
蔦子はそれに気づくと名を呼んで叫んでいた。届くはずもないが、それでも叫ばずにはいられなかった。
噂をすれば影というが、まさにそれである。むしろあまりにも神懸かりすぎて不気味にも思えた。神の所業か、悪魔の仕業か・・・。蔦子にとってはどちらでも良かった。そして、自分が何をするのかは決まっている。
「時子さ・・・マスター、つけといて」
「つけるって、ちょ、ちょっと!」
そう時子が呼び止めた時には、大きな音を立てて、店の扉が閉まるところであった。
「・・・・・・・・これ、どうすればいいのよ・・・・」
そして、一人、異常な状況の下、途方に暮れた。
夜は速度をゆるめ、ゆっくり朝に向かう。でもまだ曙は遠い。
紅き天使のレクイエム 第四章 殉教者
懐かしいマリア像の前を通り、高等部の中庭にたどり着くと、懐かしさも覆い隠すような、懐かしくも無い光景が広がっていた。広さに応じて規模自体は大きくなっているが、それは先ほどの福沢邸の様子によく似ていた。すなわち、警官と祥子直属のスタッフでひしめき合っている状態だ。
その中によくよく見慣れた顔がある。それは最もこの近くをまわっていた江利子と由乃である。お姉さまや令達はまだ来ていないみたいね、と祥子は確認した。
「江利子、由乃ちゃん!・・・志摩子は?」
聖が慌てた様子で二人に近づいて訊ねる。ここに来る前に、志摩子が怪我したという情報を聞いてから、リリアンに到着するまでかなり落ち着かない様子であった。
「気を失っていただけ大丈夫みたいよ、いまは事情を聞かれているところ」
その江利子の言葉を聞いて、聖がほっと息を吐く。
祥子自身は、聖ほどは志摩子の心配をあまりしていなかった。もちろん気にはなったが、おそらく部下の報告から察するに大丈夫だと、そう感じていた。それよりも祥子には大事なことがある。
「じゃあ、祐巳は?」
祥子は一拍おいてから、先に来ていた二人にそれを訊ねた。それに応じたのは、由乃だった。
「ここにはもういないみたいです、祐巳さんもふらふらと・・・」
由乃は祥子の質問に怒ったように答えたが、瞳は寂しげだった。
祥子達も由乃たちも真夜中のリリアンで起こった騒ぎを、会社の祐麒から連絡をうけ、『もしかして』という淡い期待を抱きつつ駆けつけたのだ。しかし、祐巳は、当然ながらも、ここからとっくに立ち去ったあとであった。
「何か、手がかりは?」
「ないみたいねー」
江利子がお手上げとばかりに両掌を天に向けた。
期待していなかったとはいえ、それでも大きな落胆を感じて、祥子は眉間に手を当てようとしたが、両脇を支えられているのでうまくいかなかった。代わりに軽くため息をついた。
そのとき、
「社長」
と、祥子が呼ばれて、支えられながらゆっくり振り返ると、二十代前半・・・半ばにさしかかっている頃だろうか、私服の欧米系の女性が、片手を軽くあげて立っていた。
モデルと言っても通るような美人の顔を見て、祥子は多少驚きの色を顔に滲ませていた。
「メリッサ?あなた日本に戻ってきていたの?」
「ええ、今日。つーか、さっきですね。帰ったらなんか大変なことになっているじゃないですか、驚きですよ。で、報告がてらに、社に連絡入れたら、ユーキにここに向かうはずだって言われまして」
顔に似合わず流暢な、しかも多少フランクな日本語を話す彼女は、祥子直属の部下メリッサ・ルーベ、フランス出身の元軍人である。そして、メリッサは祥子のスタッフの中でもPsと呼ばれる精鋭である。一ヶ月ほど前に中国へ派遣していたのが、ちょうど一時的に戻ってきたようだ。そして、メリッサは祥子のスタッフの中でもPsと呼ばれる精鋭である。
「社長、こちらの方々は誰?」
こうあからさまに民間人が居るとは思っていなかったのか、メリッサは聖たち三人の顔を見回して、祥子に怪訝そうに尋ねた。
「私の先輩と後輩よ。祐巳とも親しい」
「ああ、なるほど」
それだけで合点がいったのか、三人を見ながら小さく頷いた。その辺りの、祐巳と祥子の事情はそれなりに通じているらしい。
「初めまして、それとも『ごきげんよう』のほうが良いのかしら?私はメリッサ・ルーベです。メリッサって呼んでください。フランス語に英語、日常に困らない程度の日本語と、ちょっとだけの中国普通語が話せます」
そんな感じで、態度を軟化させたメリッサは祥子に話すよりも丁寧な言葉遣いで自己紹介をした。それに対して初対面の三人もそれぞれ挨拶した。
その後、報告を受けなくてはならない祥子を除く三名は志摩子の様子を見に高等部保健室へと向かった。
「それにしても良いときに戻ってきてくれたわ」
そう戦力が増えたことを祥子は喜んだが、メリッサは少し顔を曇らせた。
「たぶん悪い知らせが一つ・・・」
そのメリッサの顔からは、ひどく嫌な予感しかしなかった。
「場所を移しましょう」
祥子はちらちらと視野の端に映る制服を気にしながら言った。
メリッサと話している祥子に断りを入れてから、祥子を除く三人――聖、由乃、江利子――は保健室の前に来ていた。聖が、コンコンとノックしてから、ガラガラガラと戸を開ける。
蛍光灯の明るい光の下に、黒い修道服に身を包んだ志摩子がベッドにうつむいて腰掛けていた。もうそこには事情を聞く刑事の姿はなかった。その志摩子が、誰かが部屋に入ってきたことに気がついて、そっと顔を上げた。
「お姉さま・・・・?」
「志摩子」
志摩子は夢でも見ているのか、と思った。誰かに・・・祐巳さんを大事に思っている誰かに・・・そうまさに自分の姉のような、そんな人に話したい、そう思っていたところに、そんな顔が当たり前のように自分の眼に映ったのだ。
その顔を認識すると同時に、志摩子の体は動いた。そして、聖に抱きついた。
「し、志摩子・・・?!」
聖は予想もしていなかった彼女の行動に目を白黒させながらも、しっかりと抱き留めた。
困惑する聖をよそに志摩子は悲愴に満ちた声を張り上げる。
「祐巳さんを・・・・祐巳さんを助けて・・・!!!!!」
志摩子は聖の胸で、譫言のように「祐巳さんを・・・祐巳さんを・・・」と、繰り返し嗚咽をもらす。聖はその頭を優しく、ポンポンと叩いて、微笑んだ。
「そのために私達はここに来たんだから!」
そう言って、聖の背後から現れた人影に目を瞬かせた。
「由乃さん・・・?それに江利子様も?」
「ハーイ、志摩子、久しぶり」
「お姉さま…?」
不思議そうに志摩子は聖を見上げると、ニカッと聖は笑って、
「ま、そういうこと」
と、答えた。
そのあと、請われた志摩子は祐巳との邂逅の話を語った。包み隠さず・・・とはいかなかったものの(それは、まぁ色々あったので)、大方の話はしたが、聖達は肝心の行き先の手がかりを得られず肩を落とした。
「進展は無しか・・・」
聖が小さく呟くと、志摩子がそれに反応した。
「ごめんなさい・・・私があの時、祐巳さんを引き留めていたら…」
「別に志摩子さんが謝ることじゃあ・・・。あー、もう祐巳さんったらこんなに心配かけて、まったく・・・」
志摩子が責任を感じてしまっていることに、気づきすかさず冗談めかしに由乃がフォローしたが、由乃自身もため息が止まらなかった。
「でも、足跡も掴めてないわよ。どうするの?」
「やっぱり、蓉子や景さんが来るのを待って、リリアンからまたローラ作戦しかないかな?」
「今のところそれしか手が・・・」
そこで沈んだように会話が止まった。吐息をつく音だけが重なっていく。
その時、タータタ、タタータター、タータータータタ・・・という軽快な音楽――暴れん坊将軍のテーマソング。
「誰よ、こんな時に・・・」
軽く悪態をつきながら、由乃はハンドバッグの中から携帯電話を取りだして、相手を確認する。そして、訝しげに眉を上げた。珍しい人物からの電話だったのだ。無機質に表示された名前は「武嶋蔦子」だった。
「・・・蔦子さん?・・・なんだろう?―――――もしもし、由乃です。あ、ひさしぶり・・・なに?・・・うん・・・うん・・・え?!・・・それで、今どこ?!・・・・うん、うん!・・・わかった、今行く!じゃ、あとで!」
そうやって、電話を切った由乃の目は明かに喜色をたたえていた。
「カメラちゃん、どうしたって?」
と、聖が口を開く前にすかさず由乃が叫んだ。
「祐巳さん、見つかった!」
と。
「メリッサ、では報告きかせてちょうだい」
祥子は手頃なベンチまで移動して腰掛け、今まで肩を支えていた部下を下がらしていた。よってここにいるのは、祥子とメリッサのみである。
普段、髪の毛の色同様に明るい彼女の表情が曇っている。これは相当悪い知らせを覚悟しなくてはならないかもしれない。
予想と推測の範疇には色々なものがあがっているが、それだけにそのどれかは聞かなければ分かりようがない。メリッサと共に中国に派遣した二人は、Psのリーダーとサブリーダー、大抵のことならば、その二人が向こうで対応できるはずだが。
しかし、次に彼女が発した言葉は、想定外の、しかも現在のこの状況を鑑みると悪いどころの話ではなかった。
「今・・・・・あの男が日本にいます」
「あの男・・・?――――って、まさか・・・」
祥子が絶句した。だと、したら最悪だ。いや、最悪そのものである。ここ数年、現在の首領の懐刀、影の実力者としてほぼ組織を掌握して以来、中国本土を離れることなかったあの男が日本に―――そして、理由が分からないが、祐巳が組織に狙われているとしたら、その男が直接、祐巳を・・・?!
祥子はいても立ってもいられず、立ち上がろうとしたが、痛みが身体を走り、よろけてしまう。
「社長っ?!」
メリッサが咄嗟に祥子を支えたが、祥子はふがいない自分の身体にたいして、悔しげに歯がみした。
「祐巳―――――」
そして、ギュッ、と、ポケットに入っているモノを握りしめた。
「――無事で、無事でいて・・・・。あの男が・・・・――――」
その願いは、夜の闇に消えて届かない。
そして、それも空しく魔獣は舞台上に現れる。
M駅近くの五階建ての駐車場、一見すると単なるビルにしか見えないが、中は各階に大きなフロアが存在していた。その中に祐巳は居た。そこに祐巳は逃げ込んだ、わけではなかった。むしろ、少し間抜けな話だが、いつの間にかそこに居た、という感じを抱いていた。つまり、それは―――
(――――誘い・・・込まれた・・・・?)
事実、祐巳は徐々に上階へと登らされていた。必要以上の人数で追い込んでくる割に、執拗な攻撃はない。祐巳も確実には相手の人数を減らしているものの、それも全体の動きとしては手ごたえを感じない。ただ登らせているだけ。
不気味さがだけがつのっていく。
(罠・・・?)
すでに四階まで登っている。銃弾も残りは右手に握るKimber Custom TLE Ⅱの五発――
(そういえば、さっきから追撃がない・・・つ・ま・り――そろそろネタばらしってことかな?)
ここまでくれば、祐巳の性根も座りきっている。何があっても驚きはしない。どうせ死ぬときは一瞬だ。
「ふ・・・・・」
祐巳は突然不敵に笑った。別に自分の死ぬ姿を想像して苦笑したわけじゃない。このビルに誘い込まれた、その「ネタ」がわかったのだ。それは歩いて近づいてきた。祐巳はくるりと振り返り、それに銃を向けた。
その特有の陰湿な殺気は覚えがあった。良く知るあの男。最悪と災厄が一緒になって居るような化け物―――。
「あなたが女の子をデートにさそう場所はいつも駐車場なの?」
暗闇の中から浮き上がって現れた丸眼鏡にスーツを着込んだ男――右手に黒い拳銃を祐巳に向けている――と対峙した。
男はその凡庸な顔から想像できないような凄惨な笑みを浮かべた。
「――――饕餮っ!」
咆吼が天に突き抜けて、鏑となる。
戦いが始まる――――――
第四章 殉教者 終
第五章に続く・・・