よふかしのあじ   作:フェイクライター

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第百三十伍夜「僕の愛情」

 クラスで話題になっている服やアーティストなどをSNSを回遊するふりをしつつ、葛樹理世()は喫茶店の隅にあるテーブルを囲うふたりを視界に収める。

 片方は友達の岡村蒼。男装中。

 もうひとりは謎の人物––––蒼からは星環(せいわ)さんと呼ばれている。何者かは分からないが、仕草から吸血鬼なのは分かる。あと蒼と同じく女装にも思えるし……純粋な男性に見える。ショウと同じく中性的……それよりも両性的と言えるかもしれない。背丈は蒼より高いみたいだ。女性の中でもかなり身長の高い160センチ後半の蒼より少し座高が高いらしい。

 

「誰に連絡してるんですか?」

「友達。急な用事があってね」

 

 スマホを触りながら器用に蒼との視線は切らず、相手()に意識されてることを自覚させ続けている。

 僕はあなたを見ているよ、と。

 もっと近づければ魅了をつかっているかどうかも分かるが、怪しまれない距離を維持するために今日は切り捨てよう。

 ……にしても、うちの学校の周り、吸血鬼多すぎない?

 胃が、胃が痛い。

 

「どうぞ、アイリッシュコーヒーです」

「どうも」

 

 スマホを伏せて息をついた時、店の奥に引っ込んでいたマスターがカクテルグラスを私の前に差し出した。艶のある黒の上にホイップクリームが城のように鎮座している。

 口を白と黒で汚しながら、甘さと苦味が溶け合った旨味を味わう。

 

「お連れの方、中々いらっしゃらないですね」

 

 心配する口調だが、その顔は微笑んでいる。

 こちらに向ける嘲りなどではなく、なにか良いことがあった溢れ笑みのようだ。

 

「ええ。このままじゃ先に潰れてタクシー代わりに使うことになりそうね」

「もしひとりでお帰りになられる際はこちらでもタクシーを手配いたしますので、お呼びください」

「ありがとうございます」

 

 こちらが会釈するとマスターはまた奥の方へ引っ込んでいった。

 もう一度カクテルに口をつける。

 普通なら暖かくなるらしいのだが、その実感が湧かない。飲み物自体はホットだから当然暖かくはあるが、狂うような暖かさはない。吸血鬼殺しとしての力を使っているときは––––葛樹の姓を名乗っているときは、毒耐性があるらしい。ゲームでいうバフみたいなもの。

 ひとおもいに半分近く飲んでみるが、やっぱりなんともない。

 普通の吸血鬼ならビールジャッキ五杯ぐらい飲めば潰れるらしい。健康に害なく毒を味わったみたいと思うけれど、あまり期待できない。

 甘凪たちと飲む時、私だけ–––と、不要な考えはカクテルと一緒に飲み下す。

 

(どちらにしろ、今は酔わないほうが都合がいい)

 

 当たり前だが他人に聞き耳を立てたくてそばにいるのに、嗜好が回らなくなっては意味がない。

 最悪ハツカに連絡すればいいだけだが、

 

(アイツ……どこほっつき歩いてるの……)

 

 ため息をつくと同時にスマホに着信があった。ピコン。電子音に反応してスマホを取り出すと、バックれてる本人からのメッセージであった。

 

『ごめん、今から店に向かうね』

 

 遅い。蒼が入店してからどれだけ経っているのか。

 腹立たしくはあるが、私の心の中にはマスターロゴスがいる。

 

(まぁ、いいでしょう……と言いなさい)

 

 まあ、いいでしょう。

 苛立ちをカクテルの苦味で暈していると、『マスター』と呼ぶ声がした。星環と呼ばれる男性が立ち上がりカウンターの前へ。

 

「今日もおいしかったよ」

「ありがとうございます」

 

 まずい。

 

『待って。いま対象が出て行こうとしてる。近くに眷属を配置させてるから、そこに合流して』

『分かった』

 

 スマホをしまい、会計を終えたマスターに飲み干したカクテルの代わりになるドリンクを頼む。なるべくすぐに提供される簡単なアルコール類。名前まで見ていないがウイスキーのロックを頼んだ。

 すぐに提供された。

 目安は5分、うまく追跡してくれると良いのだけれど。

 

 

 ショウからの惚気を聞いた後、僕は理世に言われた通りそばに控えていた車に寄った。いつのまにか呼んだのだろうか。僕が近づくとヘッドランプが数回点滅する。

 乗っていたのは元詐欺グループの一味で、一度理世に殺された稲城(いなぎ)という女吸血鬼。

 僕は助手席の窓を開けさせて、会話しながら喫茶店の前を監視する。

 

「どう? 誰か出てきた?」

「いえ。まだです。……えっと」

「ハツカでいいよ。僕は稲城ちゃんって呼ぶから」

「では、ハツカさん」

 

 直後、喫茶店を囲う木々たちの中からふたりが出てきた。少し遠目で判別しづらいが片方は、僕と理世が追っていた岡村蒼なのは間違いない。なら、目的は隣の謎の男性。

 同じぐらいの背丈のふたりはゆっくりと歩いて行く。

 

「稲城は理世があんなに躍起になってるのは理由を知ってるの?」

「知らないです。ただ理世様の好きな人が絡んでいることだけは確かです」

「ショウのことだね」

 

 稲城ちゃんは頷いた。

 ショウの身を案じて、というのは嘘ではないらしい。吸血鬼のこと、ショウのことを熟知している相手。どんな狙いがあってショウの偽りの彼女に薬を与えているかも分からないが、ショウに害を加える気があるなら放っておくわけにはいかない。

 僕らから見て右側の路地に消えそうになっている岡村蒼たち。

 そろそろ……後を追うか。

 

「ハツカさん、追うならこちらを」

「なに、え?」

 

 稲城ちゃんに再度目をやると彼女は何かを構えていて––––それは銃口のような穴から濃霧を僕の顔に噴射した。スプレー缶? 

 突然のことで咽せてしまうほどガスを吸い込んでしまう。

 

「な、……な、え………?」

 

 理解できないまま僕は意識を手放すしかなかった。

 

 

 開けた窓の蓋に乗りかかるように倒れ込む蘿蔔ハツカの髪を引っ張り、車内に取り込んだ。見ればキチンと寝息を立てていて、ぐっすりスヤスヤとした寝顔をしている。

 

「蘿蔔ハツカ……慣れない癖に表に出てきたのが間違いだったわね」

 

 吼月くんのことにやけに真剣な顔をして、吸血鬼のくせに腹立たしい。

 蘿蔔ハツカはとろんと頬を緩ませている。これから自分がどうなるか分かっていない顔だ。

 吸血鬼の癖に笑っているなんて許されない。

 蘿蔔ハツカの服をぬがして、スマホなど利用できそうなものは全て回収する。ありがたいことにスマホはロックが解除されたままだ。顔認識システムなどを経由してパスワードを再設定しておく。そのままメッセージを送信。

 星環さんの話では、普通の吸血鬼あいてならまる1日は目覚めないとのことだが……念の為、後部座席に隠しておいた縄を使って拘束しておく。

 周りに人がいないことを確認してから外に出て、トランクルームをあける。ブルーシートがかかった場所をめくる。

 

「……ふっ、いい寝心地ね」

 

 そこには稲城という詐欺師の吸血鬼が全裸で拘束されている。その上に蘿蔔ハツカを乗せて、再度ブルーシートを被せる。

 

「星環さん–––」

 

 そのとき、ピコン、電子音が鳴った。

 

 

 そろそろね。

 蒼たちが店を出てから五分が経った。キリ良く飲み終えた私は『どこにいる?』とハツカにメッセージを送ると、会計を済ませた。

 

「またのお越しをお待ちしています」

「ええ。機会があれば」

 

 今度はゆっくり味わえる時に。

 足早に外に出た私は鬱蒼とした庭を通って行く。

 そのときだった––––風が異様に騒めいたかと思うと、視界の端に何かが映って、それが高速で動く人型であることに気がついた。

 避けきれない!

 

「あぶねえ!」

 

 突風のように襲ってきたのは正確に顎を蹴り抜こうとした脚だった。けれど、不意打ちが私に届くことがなかったのは割り込んできた闖入者のおかげだった。

 

「しょ、ショウ……」

 

 敵の蹴撃を受け止めたのは吼月ショウ。

 私の……好きな人……

 

「あ? うん? 理世だったのか––––あっ、くっ……!」

「ショウ!」

 

 敵は受け止められた足とは逆足でショウの鳩尾を蹴り飛ばしつつ、距離をとった。ショウに駆け寄ろうとするが、足が重い。いつのまにか吸血鬼殺しの力を解除していることに気がついた。

 そのまま敵は気配を木々が作る影の中に消していった。

 

「……待て!」

 

 ショウが敵に肉薄しようとするが、すでに影の中には誰もいなかった。

 まずい。

 無数の意味でまずい。

 やだ。嫌われたくない。 やだ嫌われたくない。

 や、や。

 

「……理世、大丈夫か?」

「え、え……」

 

 平常心で答えようとしているのに、声が震えてしまう。

 すると、私の中の恐怖を–––抱えているひとつだけを–––明確に感じ取って、優しく抱擁してくれる。優しく頭も撫でてくれる。

 

「怖かったな。大丈夫……俺がいるから」

「……うん」

 

 受け取ってはいけない言葉だった。

 でも優しくて温かい、酔ってしまうような心地よさに私は無意識に身を委ねたくなってしまった。足も、腕も動かせない。ショウは何も言わずただ私を抱きしめてくれる。

 ダメだ。

 これを受け取ってはいけない。

 だって、私は、もしかしたら、貴方の好きな人を。

 

「吼月くん! 大丈夫!?」

 

 都合のいい理由がやってきてくれて、私は恥ずかしさを隠すふりをしてショウから離れた。名残惜しさが胸の中に巣食っている。女性の声らしき、名も知らない相手を見て私は少し驚く。

 

「のっぺらぼう!?」

「……ほら、貴方のセンスが悪いのよ」

「般若よりはいいだろ」

 

 意味の分からない会話をしているふたりへ交互に視線をやると、ショウが軽く説明してくれる。威圧的な仮面しか被らない隣の女に別の仮面を買うために裏手にある店に来ていたらしいふたりは、来たついでにこちらの喫茶店に寄ろうとしていたらしい。

 

「ふーん……蒼と付き合ってる癖に他の女とデートしてるんだ」

「……まあ、そのおかげで理世を助けられたし、運が良かったよ」

「あっ、誤魔化した」

 

 話を聞いているうちに冷静さを取り戻した私は、皮肉すらも言えるようになっていた。いや、皮肉を言わなければ罪悪感から押し潰されてしまいそうだった。

 

「それにしてもさっきのはなんなんだ」

「多分だけど、またストーカーね」

「また!?」

「ええ。最近あるのよ、気味の悪い郵便物とか。警察には話してあるけど」

「だったらなんで外を出歩いてるんだよ!?」

「クラスの友達と来る予定だったのよ。ソイツがばっくれるからひとりなだけで」

「貴方、人望ないの?」

「あるわよ」

 

 ショウはこちらを訝しむ顔で見つつ、ためらいながら口を開いた。

 

「……その友達、ハツカじゃないのか?」

 

 なんで。

 いや、そうか。ショウが女を伴って現れたのを見たからハツカは来るのが遅くなってしまったのか。なんて、間が悪い。

 

「違うわよ。確かにあの子、可愛いから欲しいとは思うけど、だからといってずっと一緒にいるわけじゃないもの」

「でもさっき、ハツカが近くに……いた気がしたから」

「勘違いじゃない? だったら電話してみればいいし」

「……連絡は………してみる」

「そう」

 

 ショウ、ごめんね。

 貴方は自分に課したルールは守りたいだけなのに。好きなのに会いにいかないのは吸血鬼憎しの奴らとのいざこざを解決して、ハツカへの弁明をしたいからだったのに。

 スマホを取り出したショウはハツカにメッセージを送るが、すぐに返信は返ってこない。当然、既読もついていない、

 

「それじゃ、私は帰るから」

「待て。一人で帰らせるわけがないだろ。……ごめん、カオリ。少し寄り道していいか?」

「逆にひとりで行かせてた方が失望するわよ」

 

 そんなことしないで、言わないで。

 ショウに優しくされるたびに罪悪感が募って行く。

 私は……貴方の好きな人を、危機に貶めてるかもしれないのに。

 それでも隣を歩いてくれるショウの存在が嬉しくてたまらない。

 

 

 

 

「いやいや……危なかったよー」

「なにがあったんですか」

 

 喫茶店と仮面堂を中継する一室で僕は腰を下ろした。そこは二店を経営するマスターの作業部屋兼、作ってきた作品の保管所でもあった。作業スペースの他には棚が壁を背にして所狭しと並んでいる。

 

「蒼ちゃんの見張りをさせてた朝霧から誰かにストーカーされてるって連絡来た時は驚いたけど、まさか今度は吸血鬼側が追ってくるなんてね。蒼ちゃんも何故か知らないけど恋心再燃してるし。

 しかもアイツが割り込んでくるもんだから、危うく顔バレするところだったよ」

「アイツというのは、吼月ショウくんのことでしょうか」

「おっ、よくわかったね。そうそう……蒼を迎えにきたわけでもなさそうなのになんで鉢合わせるかな」

「仮面堂に買い物してきてたんですよ」

「は!?」

 

 マスターがあまりにも平然と言うものだから僕は驚きながら問い詰める。

 

「なんで言ってくれなかったのさ!? 分かってたら別日にしかけたのに!」

「お客様の情報を勝手にお伝えするわけには行きませんので」

「このぉ……」

 

 憎々しげに見つめる僕のことなんて興味がないかのように、マスターは棚の周りを彷徨い、物色しながら中身を確かめている。

 

「なにを探してるの」

「吼月くん宛に贈り物をしようと思いまして」

「贈り物?」

「ありましたありました」

 

 取り出したのは女性の頭部だった。正確に言えば、顔の周りの皮膚や眼などから始まり、髪の毛まで整えられた仮面である。あまりにも精巧に作られているから、本人の顔をそのまま仮面の土台に貼り付けたと思えてしまう。

 その仮面は額縁の中にあり、プレートも飾られていた。

 名前は、七草ハル。

 

「ああ、ハルさんの仮面。昔作ったね」

「貴方の気まぐれで死に際で眠らされた彼女から作ったものです。彼は一応、七草ハルの親戚にあたるのでしょう?」

「なんで送るの」

「新しい……良き理解者にはプレゼントを送りたくなるんですよ」

「わー、趣味悪。別に親戚じゃないよ。因子が入ってるだけだよ」

 

 まあ、それをDNAと定義するなら繋がりはあるのだけれど。

 

「本来なら娘である七草ナズナと眷属の本田カブラも一緒の棚に入れておきたかったんですがね……」

「ダメだよー、観察対象なんだから」

「なので、良い貰い手に送るんですよ」

 

 マスターはハルさんの仮面を丁寧に包み紙で包装していく。

 それを見て僕はさらにいいことを思いつく。

 

「だったら! もっといいプレゼントがあるよ!」

「……なんでしょうか」

「なんで警戒されてるの」

 

 傷ついちゃうなー。

 

「4人分像を置かせてもらいたかったんだよね」

「仮面堂の方にですか」

「そうそう。今日はまず1体だけどね」

「星見さん……こちら側に興味はないとおっしゃっていたじゃないですか」

「そうなんだけどさ、自分の部屋に置き場がなくてさ。保管用の冷蔵庫だったり色々器具置いてると場所なくなるんだよねー、で、せっかくなら新しく作った薬とかも使って、マスターに貢献しようってわけ」

 

 マスターは僕の話を咀嚼しつつ、まず第一気になるであろう箇所をついてくる。

 

「どんなものでしょうか?」

「女ふたり、男の子ひとり、男性ひとり……全部吸血鬼」

「ほほう」

 

 嬉しそうにうなりをあげてマスターは手を叩く。

 

「それは高く値がつきそうですね」

「使い終わるまで売っちゃダメだよ……マネキンに飾っていた方が仮面も見栄えがするでしょ」

「マネキン代も馬鹿にならないので助かります」

「で、今回は男の子を用意しています!」

 

 僕が宣言したタイミングで、仮面堂への入り口が開いた。入ってきたのは一人の女性。その女性は僕らの前で自分の顔を手で掴むと、一思いに顔の皮を剥いだ。もちろん、取ったのは皮膚ではない。人工皮、変装用のマスクだ。

 その中から出てきた顔は別の女性。

 朝霧という吸血鬼を殺す弁護士の仲間だった人だ。

 

「やっ、朝霧。蘿蔔にはバレなかった?」

「ええ。お二人のおかげです」

 

 今は僕の……ペット? おもちゃ?

 まあ意思なんてないから人形でいいよね。

 

「星環さん。蘿蔔ハツカの運び込みと拘束が完了しました」

「ありがとねー。じゃあ、マスター見に行こうか」

 

 ポンポンと彼女の頭を叩いてから、マスターを引き連れて仮面堂の店内に入っていく。人形の姿はすぐに目についた。店内の隅に背の低い台座が用意されていて、その上に人形–––蘿蔔ハツカが立ち尽くしている。そばの床には固定具のついたポールが転がっている。

 ぼんやりと開いている蘿蔔の口の中にマスターが指を入れた。舌の上に指を置いたり、内頬に指を這わせて唾液の有無を確かめる。

 

「これはちゃんと生き物ですね……この子は?」

「ふっふっふっーん! なんとマスターが気に入った吼月の想い人です!!」

「それはなんと!! ならこの子の仮面も作って一緒にお送りしましょう」

 

 マスターは一段と嬉しそうな声を出すと、唾液で濡れた指のまま蘿蔔の顔を触っていく。

 

「人形にしては硬い。マネキンだ。今度はどういった薬を使ったんですか」

「筋肉硬直剤だよ。人間に使うと血が通わなくて死んじゃうけど、吸血鬼は血を舌に垂らしておけば死なないから腐敗することもないし。まあ手入れは必要だけど……男の身体を拭く耐性ある?」

「男もなにも、愛でる相手にそんな不快感なんて覚えませんよ」

「よかったー、じゃこれからこの子を飾るときのポージング決めようよ」

 

 落ちているポールを拾いながら言う。朝霧に目線を配ると、注射器を取り出してシリンダーの中身を変えている。元々は硬直剤が入っていたもの。新しいものは弛緩剤だ。

 実験の続きをしよう!と意気込んだとき、マスターが訊ねてくる。

 

「星見さんはこの子を飾っておくだけでいいのですか」

 

 なぜ、この子を手元に置いておこうとするのか。

 理由は簡単だ。

 

「いいや。利用させてもらうよ。だから定期的に麻酔も硬直も解除する」

 

 解除しなければ、僕の姿がこの子の脳にまで届かないからね。

 たっぷり魅了してあげるよ。

 

「ふふふ……自分の眷属候補、自分の手で殺そうね」

 

 そのときの姿はきっと、ショウも、蘿蔔も、人生で一番美しい!

 

「僕の愛情でキミらの最後を彩ってあげるよ!」

「……別に硬直剤を吼月くんに使えばいいのでは」

「ダメダメ。趣がないじゃないか。死ぬ瞬間こそが生き物にとっての華なんだから! それに……トラックで頭を潰しても死なない奴が、身体を固めた程度で死ぬわけがないだろ」

 

 思わず自分でも驚くほどに低い声が出てしまう。

 

「そうですか」

 

 マスターは僕から蘿蔔の顔に視線を移したのち、壁にかかった仮面を取り外した。陶器のように美しい肌色の仮面である。

 

「この子にはこの仮面をつけておきましょう」

 

 無垢の仮面と題された仮面をマスターは蘿蔔に取り付けた。すっぽりと顔が覆われて、意思を表すパーツが軒並み消失する。仮面をつけているとはまるで思えないほど継ぎ目が見えず、初めから顔なんてなかったのではないかと思えるほどだ。

 流石はマスターの作品。

 ただバレないように髪の毛も隠しておかないとね。

 

「ともかく、備品の提供をありがとうございます」




スーパー戦隊が終わり告げる……?

よく聞くフレーズなせいで、いつもだなあ〜(石ノ森章太郎に干渉して歴史を消されたりするから)と思いつつも現実のことだから危機感がパナイな……
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