第2話スタートです!
第九夜「またこのパターン」
ひょんな事から吸血鬼を知った僕こと、
僕自身に為すべきことがあり、なにより吸血鬼–––蘿蔔ハツカとの契約の下、僕には夜に出歩く必然性が生まれたからだ。
人が吸血鬼になるためには、人が吸血鬼に恋しなければならない。
吸血鬼を知った人間は眷属になるか、死ぬかどちらかを選ばされる。
僕は吸血鬼になる気はない。
目的は他者を信頼し切りたい、その一点。
そのために、僕に信頼を実感させたことのある蘿蔔ハツカの傍で学び、答えを得る必要がある。
けれども吸血鬼は、蘿蔔ハツカはそれを許さない。吸血鬼の安寧のために。彼は僕を墜としにくる。僕が彼に恋するように。
それは僕が吸血鬼にならなければ殺しにくる、ということでもある。
突破口はひとつ。
僕が蘿蔔ハツカを信頼しきり、吸血鬼に僕が信頼しきられること。
夜空の月を遮る雲ではないと証明すること。
僕は吸血鬼に恋せず、吸血鬼を
「しかし、信頼……信頼の定義とは––––」
近しい言葉に【信用】がある。
けれども、それぞれの意味が指し示すものはまるで逆だ。
信用とは–––– それまでの行為・業績などから、信頼できると判断すること。また、世間が与える、そのような評価。
信頼とは–––– その人自身の人柄や考え方、立ち振る舞いなどに重きを置いた評価。
つまり、信用とは実績を見て過去から来る確信であり、信頼とは本人を見て未来を行く期待ということになる。
過去を見るモノ、未来を見るモノ。
確実を見るモノ。夢幻を見るモノ。
証拠から来るモノ。期待から来るモノ。
事実から来るモノ。心情から来るモノ。
様々な対比がある。これは類義語、対義語などの問題ではないのかもしれない。
「む、難しい……感情を理屈にすること自体おかしいが……」
意識して衝動に身を任せるのだって、つい昨日の出来たことだ。いくら、未来の自分を信じてみよう、と考えても、それを確実と断言はできない。
しかし、そんな想いも蹴散らし進むしかない。
「––––準備もできたし、行きますか!」
ドアノブに手をかけて、ゆっくり回す。
キュッと回転音がして、鍵が解除される。
夜に出かけようとする時において、ここが一番脳に響く。本来鳴るはずのない音は、夜という静かさの中では不協和音となる。それが周囲の眼を集めるのではないかという威圧感を与えてくる。
これが夜の門番である。
「……問題なし」
夜の旅を始める難所を越えた僕は、今日も気の向くままに妖しく照らされる街中を歩き出す。
少し早めに出たからか、団地にも明かりが灯っている。
夜に遊ぶのは悪くない。
以前、先生が『夜更かしなんてのは、大人になったら嫌でもするんだから』と言っていたが、それは業務という縛りの中だけで生きる者だからこそ。
子供だからこそ、気ままに夜更かしが出来るのだと思う。
これは信用。
昨日、体験した事実だ。
蘿蔔ハツカが教えてくれた、この
「しかし、目的がないのはアレだな……」
この歩いているだけで飛んでくる楽しい衝動を味わっていたいのと同じぐらい、僕は願いを達成したい。
なら、大雑把な目標としては、蘿蔔ハツカに会うが第一ミッションにしよう。
「昨日はあのまま別れちゃったからな〜」
夜に出始めてからいっさい確認していなかったので気づかなかったが、思いの外時間が経っていた。
それに、僕のハッタリ劇が終わった後、ハツカ……ハツカ様?は眠たそうに、喉の奥まで見えるようなあくびをしていた。夜の初めから僕を探していたようで、疲れていたのだ。
彼は小森団地まで僕を送り返した後、『疲れた、また明日ね』と言い残して夜空に消えていった。
「僕を抱えて色んなところ飛び廻ってたから疲れて当然だよね……」
去り際まで綺麗だった彼の影を眼で追い続けていたものだ。
なにかお礼でも持っていけたらいいのだが。
「にしても––––」
どうやって会えばいいのだろうか?
蘿蔔ハツカも僕を探しているはずだが、連絡先を交換できていないのは悪手だったか。
「ひとまず人目のつきやすい場所には来てみたけど……」
明かりが集う場所に向かう足が速度を失う。駅前までやってきた。
僕は辺りを見渡した。
「気が抜けてるな、みんな」
よく見る光景とはまるで違う。
学生や子供連れの家族が全然いない。他に比べて明るいこの一帯でも、コンビニと少しの居酒屋らしき店以外は暗くなっている。
『もういっぱぁ〜〜い』
『こらこら、話しきけよぉ』
『じゃ、もう一件回りますか〜〜』
「あの3人仲良さそうだねえ」
駅前には、酔っ払って大声を出しているサラリーマンやタバコを吸っている人たちがチラホラ。煙がもくもくと昇って闇に溶けていく。
日の出ている時と違い、どこか淋しさを感じる。今日使った火が僅かに燃えてもうすぐ消えてしまいそうな、儚い印象。
それでも、明暗がハッキリしているのが、力強さを感じる風景だ。
「こんなに変わるモノなんだね」
同じモノを見ているのに、全く別の知らない場所を見ているようだ。
それでも僕からしたら良いものだ。
「新たな側面、か」
本棚の隙間に本がまたひとつ納められたような充足。昨日まではただ感じるだけで漠然と新しいモノと捉えていたが、自分の無知を示されるのと同時に満たされる。
それは更なる欲求を見出す。
他になにか新しい事はないかと、蘿蔔ハツカを見つかる過程に付加価値を生み出した。直ぐに会えないことが、こうした発見に繋がると思うと面白いものだ。
「試してみないと分からないな」
退屈しない。
「蘿蔔ハツカを探しがてら、あのサラリーマンたちの跡を追ってみるか。美味しい飯屋があるかもしれない……!」
過程ひとつ取っても目に映る光景が新鮮で、探すということに煩わしさがない。
未知というのは良い。
そして、僕にとって最大の未知といえば。
–––––そう、吸血鬼……
ひいては蘿蔔ハツカ本人について。
「なんも知らないんだよね」
吸血鬼についても、蘿蔔ハツカについても。
知りたい。学びたい。
アイツらについて。蘿蔔ハツカについて。
それは有益で、価値のあることだから。
「教えてくれるかな?」
とりあえず会ったら訊いてみるか。
できれば、様付けで呼ばれている理由が知りたい。興味本位でしかないのだが。
まずは彼を理解するところから信頼のスタートを切ろう。相手の価値観を知り、共有してこそ相手との深い関係を生める。
普段は、すべき、で行う好奇心だが、今日はちょっと違う。
興味と好奇が僕の足の廻りを速める。
そうして見つかりやすい場所を動き回ったり、面白そうな所を見て回ったり、蘿蔔ハツカの背中を求めて夜を徘徊したわけだが––––。
「見つからない!!」
歩き回って時間が経った頃には、人波の濃度も薄まり見かける数がゼロに近づいた。
自分としてはこの静かさが好きだが、今回は目的としていない。
代わりに珍しいモノを見つけた––––自販機に金を入れてボタンを押す。
どきどきするな。
「こんな自販機、ここでしか見た事ないぞ」
ガタンガタン、ガタンガタンと音を立てて、飲み物が落ちてくる。
「…………2本」
出てきたのはビール缶。
今ではとっくに絶滅危惧種になっている酒がある自販機で、しかも、カードが必要ないタイプ。そんなモノ存在するのかと思った。あるならあるのだろう。
物の試しで金を入れていたのだが、なにかの手違いで2本出てきてしまった。
「まっ、残りは僕が飲めばいいか」
蘿蔔ハツカには温くなる前に渡したいので、それまでに見つけられたらいいのだが。
その近くで見つけたベンチに腰を下ろす。
「もういっそのことまた飛び降りてやろうか」
二度ある事は三度ある。
「……迷惑だからやめよ」
待てよ。
「
遭遇した場所は2回ともビルの屋上で、人の眼がない。
あんな身体能力を持っているとはいえ、普通の人に見られるわけにはいかない。人混みの中を歩いて僕を見つけるか、空から見つけるにしても人目に入らないように慎重に行動するだろう。
「初手で間違えたのか」
失敗を空気に溶かすように息を吐く。
天を仰いだ。
見つめる空に月が綺麗に輝いている。今日は少し欠けているが、それでも美しい。
「あっ」
夜空で一番輝く星をナニかが横切った。
「見つけた」
月を横切ったナニかが目の前にある電信柱の上に現れた。そのまま、ふわりと浮遊して僕の目の前に降りてくる。
探していた相手。吸血鬼、蘿蔔ハツカだ。
相変わらず夜空によく映える姿なことで。
「やあ、ショウくん」
「……」
昨日と殆ど変わらない立ち振る舞いで近づいてくる。
そんな中で、俺にとっては大きな変化がひとつある。
「どうしたの?」
「いや、名前で呼ばれたからビックリしただけ」
ほぼ初対面で名前を呼ばれたのは理世以来だ。というか理世以外に名前を呼ばれたことないな。
「良いじゃないか。コレから君は僕を好きになるんだからさ」
「なんねぇよ」
そう簡単には。
しかし、いきなり名前呼びされたら反応してしまうあたり、俺も甘いらしい。
「気を取り直して、こん–––––ばんは、蘿蔔ハツカ」
「そうだね、こんばんは」
よし、合ってた。
「結構元気そうだね。沢山血を吸ったから心配してたけど」
「ふっ、レバニラを食ってきたからな。それに朝にはエアロビもやっている」
「なんでエアロビ?」
「土曜日、だからな」
蘿蔔ハツカは理解できていない––––分かるはずもないだろうが––––ので頭にハテナを浮かべるだけ。
俺も来年の今頃にやっているかは分からない。
健康に良いから続けるべきだろうか。
「そんなイベントあったかな?」
蘿蔔ハツカの目線が低くなる。俺が手に持ったビールに向かった。
「はい、どうぞ」
片方の、なるべく冷たい方のビール缶を渡す。
「気が利くね。ありがとう不良少年」
ビール缶を受け取った蘿蔔ハツカは、俺の隣に座ってからそれを開ける。釣られて俺も缶を開ける。この間買った酒より開けた時の音が軽快だ。
「あーーーおいしっ。久しぶりのビールもいいね」
ビールに口をつける蘿蔔ハツカを見て、躊躇いながら口をつける。
「に、苦い……けど美味しいな。工場見学のやつよりはずっと飲みやすい」
小学生の工場見学で麦芽を飲んだが、すっごく苦くて嫌だったなアレ。
それに比べて製品として出されてる分、このビールは飲める。けど、俺は以前のサワーってやつの方が飲みやすいな……。
「君も普通に口をつけるようになったね」
「まっ、夜だからな。飲み過ぎには気をつけるけど……」
「それがやりたい事ならやりなよ」
「血が美味しくなるからか?」
「一理ある。けど」
良からぬ笑顔で俺を見る。
「また君のポワポワした顔が見たいな。あっちの方が可愛いよ」
「うっせ」
可愛いって言われて喜ぶ男子って実際どれくらいの比率なのだろうか。
意味としては、愛着をもって大事にしたいや無邪気で子供らしいということなのだが、後者はともかく前者は褒め言葉なのだから案外多いのだろうか?
「貴方の方が可愛いよ」
「ブフッ–––!? ま、まぁ当然だね」
事実、ここに存在している訳だ。
確かに普段クール系の彼が、今みたいに吹き出したり、
「なぁ、蘿蔔ハツカ」
「……その呼び方、面倒じゃない? 嬉しくないし」
彼は昨日のように『ハツカ様』と呼べばいいと勧めてくるが、そう
アレはあのテンションだからこそ口にできたのであって、いつも呼ぶわけがない。だって、俺は従者じゃないのだから。
「だったら、幾つか質問に答えてくれ」
なに?と首を捻る蘿蔔ハツカ。
「貴方……男、だよな?」
ポカンとした顔になって、軽く口が開いている。
「うん、男だよ」
「隠さないんだ」
「どっちにしろ変わらないしね」
特に彼は誤魔化すこともなかった。
確かに綺麗のは変わらないのだが……しかし、あれか、この姿でモノがついてるって事なんだよな。
なんか、それはそれで––––と思わなくもない。
「よく気づいたね」
「昨日、手を握ったろ。その時の感触で違うのかな、って」
「ああ……えっ? 僕の手、そんなにガタゴトしてる?」
「そういう訳じゃないが……筋肉のつき方が男寄りだなって」
見た目としては女だったし、雰囲気としてどちらとも取れるから仮定として彼女で置いてたのもあって、昨日手を取った時に驚きかけた。
多分、化かしていなかったら数秒はフリーズしてただろう。
「なんで女装してるんだ? 貴方なら男の姿でもモテるだろ」
「似合うからに決まってるじゃない」
「へえ……」
不信感––––とは違う。
その感情もあるけれど、本質的に何か違うものを感じる。
「なんか知らないけど、こっちの方が男女どちらからもモテるんだよ」
効率的、というやつか。
LGBTが唱えられている現代ではあるが、まだ女性である方が男女共に受け入れやすい空気があるのはあるだろう。
しかし、違和感のある言い方だな。
「好きでやってるのか?」
「似合うから楽しんでる。そんなもんだよ」
「そうか」
似合うから楽しめてはいる……か。楽しいと好きは別というわけか。
好きでやってる訳じゃない。心が女性とかいうタイプでもない。
では、なぜ始めたのだろうか?
いくら吸血鬼が恋愛生命体とはいえ、男性が好きでもないのに女の服装に手を出すだろうか?
穿った見方かもしれないが、まるで初めから自分は
蘿蔔ハツカも通常の手順で吸血鬼になったとするならば元々は人間。普通に男が当たり前の暮らしをしていて、女装をすることなんて趣向以外に無いと思うが。
「なら、問題ないな」
上手く眷属を増やす方法を模索している時に、偶々着た女装が男女から一番好まれたというだけかもしれない。
少なくとも俺が口を出すことじゃない。
それに男とバレても慌てる様子はないし、これならちゃんと俺を堕としにきてくれる。
俺のやる事も変わらない。この吸血鬼に堕とされないようにして、信頼させるそれだけだ。その後にでも訊けばいい。
「人生初ビール終了」
またひとつ、本棚に新たな一冊が格納された。
同時に蘿蔔ハツカも飲み終えて、俺の前に立つ。
「さて、ここからどうしようか? キミのしたいことを言ってごらん」
俺のしたいこと、なら。
「吸血鬼について教えて欲しい。そして、貴方についても」
それが今日の目的。
「……そうだね、吸血鬼化について話しておかなきゃいけないこともあるし。いいよ」
良かった。
『敵になるかもしれないから教えません』と言われるぐらいのことは考えていたのでホッとした。
「じゃあ、僕ンちに行こうか」
「…………え?」
差し出された手を戸惑いながら取ると、
「行くよ」
「あ、ああ–––ああああああ!!?!?」
身体が重力に逆らい、一気に天へ昇る。大人たちが鬱憤を解放する煙よりも高く跳ぶ。
今日も夜空を駆けて、夜風に当たる。
街の夜景を堪能しながら、数分ほど経ったのちに彼の目的地に着いた。
蘿蔔ハツカに抱えられて訪れたのは、彼の
「着いたよ」
「…………」
「ほら、あがりなよ」
彼の腕から下ろしてもらう。
扉を開いて俺を招き入れる蘿蔔ハツカの姿を見つめたまま突っ立ってしまう。
「どうしたのさ?」
こうして、家に招待されたのわけなのだが。
「俺、
「ああ〜〜……」
初めてだ! 少なくとも覚えている限りでは初のことで嬉しいのだ!
興奮していると蘿蔔ハツカが俺の肩を優しく叩く。
「なんだよ」
「大丈夫」
「…………」
凄い憐れんだ眼で見られるのは可笑しいだろ。
そんな変なことだろうか?
「ただいまーー」
促されるままに家にあがらせてもらうと、彼の声が室内に響いた。
「ただいま?」
誰かと暮らしているのか。
この間の迎えに来ていた
–––––ガチャ
初めに、廊下の奥で鍵が開いた音がした。
次に家が揺れる。このマンション全体が震えているのではないかと思わせるほどの激しい揺れ。
そして肌感覚で、とある事実を理解する。
震源が近づいていることに。
「…………!?」
最後に現れたのは三つの影。
それは人である。曲がり角から現れた人は、廊下の壁に身を打ち付けながら速度を上げてやってくるのだ。
「ハツカ様ァァァァァアアアアアアアアアア!!!!」
3人分の声に廊下が裂けてしまいそうだ。
ただ茫然と俺はそれを見続ける。
怖いより先に困惑が来る。眉間を摘んで唸りたくなるような非現実的な有様。
「お帰りなさいハツカ様!!」
蘿蔔ハツカの前で立ち止まった3人の声が重なった。
うるさ……近所迷惑だろ。
「うん、ただいま」
『ハツカ様』と叫び続けながら鬼気迫る勢いでやってきた3人の熱量に比べて、蘿蔔ハツカは冷え切っていた。
半目状態で彼らをジッと見ている。ジト目というやつだ。クラスメイトに教えてもらったことがある。
「あたし、言いつけしっっかり守りました!!」
「俺もです! 俺も!!」
「昨日だってハツカ様の為に頑張りました!!」
「えらいね」
奇怪な光景だ。
まず目につくのは蘿蔔ハツカの前にいる男性。見る限り渋めのかっこいいおっさんなのだが、おでこ丸出しで美少年に頬を赤らめながら『様』しているのは、言い難い罪深さがある。
その両隣にいる茶髪ショートの女性と黒髪ロングの女性も、おっさんと同じく頬を朱に染めて蘿蔔ハツカに褒めてもらおうとしている。
–––––揃いも揃って犬みたいだ。
崇拝や信仰といった感情かと考えたが、これはあまりに行きすぎている。
蘿蔔ハツカに視線を移す。
彼は冷ややかな目のままの適度に褒めている。撫でたりすると彼らの絶叫が最大音量になる。建物が本当に揺れている。
焼け石に水だが、耳栓でも買っておくべきだったかな。
そうして、ひとしきり眷属を褒め終えた彼が、一度俺に意識を
「それでね。いきなりで悪いけど、今日も僕のお客さんがいるから帰ってくれるかな?」
稲妻、疾る。
3人の顔がそう称するべきものへ変貌する。
「またこのパターンですかああぁぁ!!?」
「しかもまた同じぐらいのガキ!! なんでですかアアア!?!? 」
「ずるいですよ!!! 昨日頑張ったら遊んでくれるって約束だったじゃないですかアアァァ!! 嘘つきぃ!!」
硬直していた3人が叫び出す。
怒号が俺に向かって突き刺さりにくる。いい反応だ。本音をぶつけてるって感じ。
しかし、それは蘿蔔ハツカの望む
「前にも言ったよね」
声のトーンが明らかに変わって、後ろで見ている俺も圧倒される。
「彼は
冷ややかだった声が完全に凍りついた。
怒号を制する凛とした声に、ビクリと背筋が震えているのが見て取れる。
彼らは苦々しげに俯いて、受け止める。
そこで俺は理解した。
「…………」
まさか、様付けの理由が王様……いや、女王様だったからとは。
これは–––––
3人を見て、さっきまで威圧していた蘿蔔ハツカが穏やかになる。
「みんながやるべきこと、わかってくれぬぬぬぬ––––!?」
「蘿蔔ハツカって餅肌なんだ。柔らか」
気づけば俺は、ニコっとした蘿蔔ハツカの頬を引っ張っていた。ぷにぷにした肌触りに何度か揉んでしまう。
パチンと離すと、彼の頬が少し赤みを帯びている。
そんな光景を見せられた眷属たちは、目を丸くする。
「なにするの–––!?」
声とは真逆の冷徹で見開いた目がやってくる。
3人に向けられていたモノが全て俺に向かってきて、背筋が寒くなるのを感じる。なるほど、確かにコレなら黙ってしまうのも不思議ではない。
けど、俺に向けられる理由は分からん。
「わざわざ帰ってもらう必要ないだろ? 俺と貴方は話をしたい。そこに彼らがいて邪魔になる事はない。なら、居てもらえばいい」
腹を割って話し合うなら居てもらわない方がいいが、俺としては蘿蔔ハツカの印象が聞けるなら彼らがいるメリットがそれを上回る。
「それに、約束してたんだろ?」
「むっ––––」
「約束は果たさないと。ねえ〜〜––––皆さん、ハツカ様と遊びたいよね」
元気よく手を伸ばす。ピンと腕を張る。
戸惑う3人が小さく頷く。
そうそう、素直が1番。
「はぁ……分かったよ。君がそれでいいなら」
「うん。俺はこれがいい」
蘿蔔ハツカは観念して『お風呂入ってくるから奥のソファで待ってて』と告げて去っていく。それを追うようにして、嬉しそうにおっさんと茶髪ショートの女性が動いた。
「……君は、この間の」
残ったのは、黒髪ロングの女性–––––
先ほどとは違い、落ち着いて俺を見ている。
「宇津木……美幸?」
「よく覚えてたね」
気づかなかった。
この間、会った時は小綺麗だったのが、なんというか蘿蔔ハツカにのみ執着した根暗な感じになっている。
自動車を運転していた時と雰囲気がまるで違うのだ。
恐らく蘿蔔ハツカの獲物だった俺に危機意識を持たせない為、この感情を抑えていたのかもしれない。
迎えに来た時にガッツポーズしていたのは、ご褒美貰えるからかな。
「他の2人も眷属?」
「そう、みんなハツカ様の眷属なの」
宇津木美幸は首を縦に振ると、俺を奥へ通す。
「こっちに来て」
「別にいいですよ。早く行かないと、2人に全部奪われちゃいますよ?」
「問題ないわ。フッヒヒ……こうした方が後で良いご褒美もらえるの」
「なるほど。なら宇津木、お願いするよ」
「……呼び捨ては直した方がいいと思う」
俺は、そうかな? とだけ返して、彼女に案内された。
アニメで見た3人のシーンめっちゃ怖かったです(初見時感想)
動きがある分、漫画より迫力あるんですよね……
にしても、寒くなってきましたね。
明日は気温がマイナスになるところが多いそうで、
みなさま、体調には気をつけて夜更かししてください。