今年もよろしくお願いします。
聞き馴染んだ声に呼びかけられて振り向けば、そこにいたのは記憶の主である吼月くんだった。こちらを警戒しながらゆっくりと階段を降りてくる。小学生ほどの背丈しかないのは彼の新しい自我が生まれた時期からすると妥当だろう。
しかし、何故ここに彼がいる?
自分を抱きしめなくてはならないほどの恐怖に、突然の困惑が混じり広がっていく。片腕を失い、左眼が真っ黒に染まった彼の異様な姿を見て恐怖が薄れることはなく、より一層恐怖と焦燥感に苛まれることになった。
「なんてことはない。ココは僕とキミの意識の交差点や架け橋のようなものだ。とはいえ、覚醒意識でやってきたキミら吸血鬼と違って、僕は深層記憶と無意識の普段表面化しないものだけどね」
「無意識?」
「だって表の僕は寝てるじゃん」
冷淡。いや、半吸血鬼になった時の感情をセーブした時と同じ無機質な口調のまま彼は言う。
寝ている間は意識が働かず、精神が丸裸な状態とはよく言うが、きっと彼がその【ありのままの心】なのだろう。
彼は付け加えて『お互いの意識が混ざりきっていないのは言葉という境目を作っているから』と補足した。
「キミの記憶は無くなったままってことなんだよね?」
「その通りだ。さて、蘿蔔さんの知りたいことはさっきので全部かな?」
吼月くんは傍にある座席–––一面にズラッと並ぶ映画館のようなシチェア–––に持っていた本を置くと、残る左腕をスクリーンへと伸ばす。
彼の意思に呼応したかの如く黒くなっていた画面が波打つ。
まるで吸血鬼が壁をすり抜ける時のように黒い水飛沫を辺りに散らして何かが飛び出してきた。角ばった物体が僕の頭上を勢いよく通り過ぎていき、その先には吼月くんがいた。
「よっ–––と」
軽く声を漏らしながらスクリーンが噴出した物体を片手で掴み取る。光すら吸い込むほどの黒塗りの本で、あの内容を纏める本の面としてはピッタリだと僕は口を尖らせながら納得してしまう。
きっと僕が先ほど体験した吼月くんの記憶が詰まった本なのだろうが、映画なのにフィルムやディスクじゃないのはどうしてなのだろう。
それに飛んできた本はかなりの速度があったと思うがら夢の中なので過程も結果も本人の思うがままなのかもしれない。
そんなことよりも僕は彼に聞かなきゃいけないことがある。
「ねえ、吼月くん–––」
続きを言いかけて僕は違和感を覚える。
努めて冷静に話しているはずなのに、どうして僕は彼のことを『ショウくん』ではなく『吼月くん』と呼んでいるんだ?
その疑問は、こちらの戸惑いを見抜いた吼月くんが答えてくれた。
「ここは意識の狭間だと言っただろ? 口に出さなければいいが、声にしてしまえば心の奥底で思ってることがそのまま出てくる。嘘はつけないのさ」
僕は思わず視線を逸らしてしまう。
彼の言い分がどこまで真実かは分からないが、正しいと考えて動くほか僕には道はないし分かりもしないことに余力を割くつもりもなかった。
「傷つけちゃったかな?」
「よく言えるねそんなこと。安心しなよ。僕の気を引くために名前を呼んでるのは表の僕だって分かっていることだ」
「でも、あの時のキミは嬉しそうだったよ」
「表の僕は人混みの中でも生きれるように作った人格だから基準値は僕に比べて低くなる」
「他人のことが怖くなったのは……その本に綴られたトラウマが原因なんだよね」
会話を交わす中で情報を得つつ、本題に入る。
彼に気分を害した様子がないのは僕の目的を把握しているからに他ならないだろう。
「だったらなんで僕に嘘をついたの?」
彼は衝動に理由が分からないと言っていた。
僕には知られたくない出来事なのは分かるが、少なくとも現状を打開しようとしている吼月くんが『何もない』という性格ではない。『あるけど今は話したくない。話すことができるようになりたい』というのが、彼が歩もうとする道らしく思える。
「嘘は言っていない。それに告げたとしても信じないだろ」
「でも、あの記憶がキミの感じたことなんだろ?」
僕の目的は吼月くんのトラウマを拭って、落とすこと。
吼月くんが語った過去が真実かなんて関係なく、強弱はあるとはいえ一様に彼を襲った恐怖に寄り添うことが僕の役割だ。
彼は意外そうに上下の唇を縫い合わせて固く閉ざした。僕の言葉には一顧の価値はあったようだ。
「……表の僕がキミに僅かにでも気を許している理由が分かったよ」
「同じ記憶を持ってるのに分からなかったの?」
「悪いが僕は表の奴よりも多くの記憶を持っているからね。そこに至れるまでの道のりが遠いのさ」
「どういうこと?」
「僕は表の僕にとって無意識であると同時に別人格みたいなものだからね。捨てたい記憶を押し付けられたり、とか」
「捨てたい……記憶……そうか、吼月くんが言っていた衝動の正体はキミか」
「僕も一応吼月くんなんだけど。許そう、僕は寛大だからね」
別人格というのは強ち間違いではないだろう。
事故に遭い記憶を失った直後に、母親から襲われて、助けを求めた父親には侮蔑の視線で見下される。
トラウマによる解離性同一症。きっとそれが彼らの正体。
「ま、表の僕も事実は覚えてるさ。ただ恐怖だけは心の奥にしまい込んで、捨てて忘れようとした」
つまり吼月くんは周りからの異質な扱いを受け止めた上で前に進んだ。いや、進んだと思い込んでいることになる。
別人格と断言しないあたり、ふたりの吼月くんは繋がっている。それは膨らませたふたつのシャボン玉の泡が分裂せずに連なった姿のように。だからこそ、内に潜めた恐怖の記憶を持った彼が衝動として僕らの前にも姿を表すことができる。
何もしていないのに自分だけは蔑ろにされ、あまつさえ命の危機に晒されたのにも関わらず、どうして自分に大きな負担がのしかかる生き方を選んでしまったのか。
「押し込んだのは恐怖だけ?」
「おかしなことを聞くね。たとえば?」
「寂しさとか」
「……それなら別にないから安心しなよ」
寂しさがないと言い切るのは引っ掛かりを覚えるが、あの状況だと欠落感はあったとしても他人の温もりを求めようとする前に恐怖が出てくるのは間違いない。
あと不自然な間が気になるが、尋ねても口を閉ざすだけだろう。
「さて、君が知りたいのはアレだけで良かったかい? もう知りたいことがないならさっさと血を吸うのをやめて帰りなさいな」
「せっかく会いに来たのにつれないね」
「久しぶりに叩き起こされたこっちの身にもなったくれよ。僕はひとりがいいんだ」
「でも、僕の話はまだ終わってないんだよね」
「直接聞く度胸もないくせによく言うよ」
「聞いたら壊れかねないじゃん」
「かもしれないな」
自分のことを馬鹿にしながら鼻で笑うと、彼は劇場の壁面へと身体を向ける。
すると、真っ黒だった壁から突然本棚が現れる。
意識の中とはいえここまで奇想天外なことをやられると僕も驚いてしまうが、吸血鬼がいる時点でファンタジーなのは分かりきったことだろう。
「それで聞きたいことってなに? 別の記憶が必要なら掘り出すけど……キミが求めてる情報は僕の両親が吸血鬼かどうかじゃないの?」
「そうじゃない。キミの根底の話だ」
「根底ね……アレと同じぐらいのことはいっぱいあるけど……」
スクリーンから取り出した本と抱えていた本を本棚にしまいつつ、他の本を取り出して僕に見せつけてくる。その度に乱雑に周囲に落としている。
口ぶりからしてあの両親は吼月くんにアレ以上の仕打ちを加えたのか。腕を折り、足を折り、殺そうとして、助けてを求めた手を振り払った上で、更なる虐待をしたのか。
沸々と胸の中で怒りが渦巻いた。自分が身をもって体験したのもあって、その熱は秒読みで膨れ上がる。
僕は立ち上がり吼月くんに近づく。
「キミはなんで人を助けようとする生き方を、誰かに価値を見出そうとする生き方を選んだの? 無視されて傷つけられたなら、いっそのこと他人は無価値だと決め込んだ方がいいことはキミだって分かってるだろ」
いつから誰かを助けるのはヒトとして当たり前だと口にするようになった。自分が命の危機に晒されて助けてもらえなかったのにも関わらず、それが出来てしまうのは何故なのだろう。
「蘿蔔さんはどう思ってるの?」
「考えはある。けど、その答えを彼の口から聞きたいと思ったんだ」
「そうか」
階段までやってきた僕を見下ろしながら、吼月くんはどこか納得した様子で告げる。
「対抗心だよ」
「警察官のくせに助けてくれなかった父親や自分を蔑ろにした看護師たちへのものかい?」
「父親や看護師に限らずあんなモノはどうでもいいよ。名前を呼ぶ価値すらないし、どちらかと言うと復讐心だしね。僕が本当に心を燃やすとしたら……そう、自分自身だ」
「自分自身?」
その答えはきっと表面上をそのまま見てはいけないものだと悟りながら、僕は見極めるために問う。
首を縦に振ったまま彼は続ける。
「この目に見えるモノは自他ともに影響し合う世界だ。一人っきりになれる世界じゃない。僕と関わり合うのは確固たる個人で、僕の記憶とは関係のだとも理解している。だからこそ何かひとつでも取りこぼせば、見捨ててしまえば……余波は僕や僕の周りを脅かす害悪になりかねない。神崎や鶯さん、星見キクもそうだ」
「キミは自分を守るために人を助けようとしてる、てこと?」
「違うな。守るために傷ついてどうする」
「……」
表の吼月くんは価値観の違いで寂しいと言った。
感じ方が異なることはあっても他人と違うことが嫌だと思うのは当たり前のことで、誰にだって起こり得ることだ。けれど、僕と彼の価値観は距離どころか分厚く天をつくような壁になって僕らを隔てる。
傷つきたくないと言ってもいいんだよ。
僕のことを怖いと言ってもいいんだよ。
だってキミは思ったよりずっと子供で、僕が知ってるよりもずっとずっと深い傷を負わされているんだから。
「自信だよ。怒りも恐怖も……そんな負の力の全てを捨て去った先にある自分の意思で選んだ道だ。自分が望んだ、人間として不変の未来を送るための力だ」
そこで初めて目の前の吼月くんは口角を曲がるが、痛々しい身なりも相まって無理して笑っているような自暴自棄になった者の狂気の笑みにしか見えなかった。
階段を登ろうとするが、ドス黒い闇に染まった瞳を見て一瞬足がすくむ。僕の嫌いな瞳で彼はしばらく何も言わずに見下ろしてくる。
「……そうすればきっと、やってくるんだ」
「やってくるって何がだよ」
足を止めてしまった自分に腹を立ててしまったのもあって、八つ当たり気味に口調が強くなる。
劇場に声が響くが気に留めない彼は僕を見ることなくスクリーンへと視線を移し、焦がれるように憧れを溢す。
「僕の摂理を覆す……スゴイジダイ、ミライってやつさ」
その未来に途方もない胸騒ぎがした。
「聞きたいことは終わっただろ? 吸血をやめて現実に戻りなよ」
「待ってよまだ話は!」
踵を返して去ろうとする吼月くんの背を掴もうと駆け上がる。
凄く嫌な想いが胸に棲みついて出て行こうとしない。その想いが僕の背中を強く押した。
自分の一部だというのに粗末に扱われた本たちが行き場を遮る。どれもこれも真っ黒な本ばかりで足場を隠すので上手くあがれない。
普段であれば絶対にしないが足に力を入れて勢いよく飛び跳ねる。
ここが意識の中だというなら、彼と同じく都合のいい結果を導けるはず。
全力で跳んだ僕は瞬間移動を思わせる速さで吼月くんの首根っこを–––––
「馬鹿が」
掴もうとした寸前のところで視界が真っ二つに割れた。
身体が裂かれた訳ではないが何かを境にして僕の視界に隔たりが生まれた。
「キミとの関係は最終手段として残しておきたいのだけど、無闇に突っかかったからなら仕方ない。この本でも読んでおけ」
グッと顔面に押し付けられていたのはフィルム代わりの本。
顔にあてがわれた本は僕の中に溶け込むようにして入っていく。
「……あ、あ……あぁ」
また、視界が砂嵐に覆われ始める。
耳が痛い。頭が痛い。立っているのもやっとで全身が痛くて辛い。
なんだ。
今度は何を見せられるんだ。
「安心して。これは数秒で済むから」
僕は再び記憶の断片への旅を始める。
身体が鉛に変わったかと錯覚するほどに鈍い。
いや、今は吼月くんの記憶の中だろうから動こうとすること自体が間違いなのだろう。
口の中にどろっとした液体が溜まっている。舌を刺すような生暖かい鉄錆の味は……そう、血の味だ。
吸血鬼になって血は美味しいと感じるようになったが、人間のままではあまり美味しくない。それどころか劇物だ。苦すぎる。
喉でつまる不快な味で目が嫌でも開く。
光を得た視界にはひとりの女性の像を映した。
––––誰だ?
見知らぬ老婆が吼月くんの上に跨っている。その顔は吼月くんの母親にも、父親にも似ておらず親戚とは思えなかった。
「いや……やめて……」
吼月くんの怯えた声が微かに漏れる。恐怖に染まり、骨を伝って歯がガタガタと鳴っている。
「止めるわけないだろ。施設から引き取ってやったってのに、アタシの命令が聞けないどころかあの人に色目まで使い出して……!」
「し、知らないよ……そんなこと……」
「はあ!? し、ら、な、い!? まあ、このクソガキは礼儀ってものを知らないのかね!!」
身を竦めて赦しを乞う彼に老婆は嗜虐心に歪んだ悪魔を彷彿とさせる顔で握った拳を振り下ろした。激痛と共に口の中で広がる血の味は濃さをどんどんと増していく。
再び僕の中に吼月くんの恐怖が波のように迫ってくる。
状況を理解できていない僕は身構えることすらできずに、絶望の濁流に飲み込まれる。
「育ててやってるのに恩知らずだねアンタは!」
(知らない知らない。ずっとこうやって殴ってくるだけじゃん)
「こっちの苦労も知らないでいいご身分だねえ!」
(だったらアイツらみたいに僕を捨てればいいじゃんか……やめてよ……)
「そうやって『やめてえー』て媚びてれば、あの人たちが寄ってくるんだからいいわよね!! あーー! 穢らわしい!! アンタなんかアタシの憂さ晴らしと金のための道具なんだよ!!」
(知らないよ……意味、わかんない……もう……)
殴られ続けて息も絶え絶えになるが、気絶しようにも鳩尾を殴られる度に息を吹き返す。そして、再びサンドバッグとして扱われる。
地獄のような時間がノロノロと流れていき、無限にも思える暴虐を受けた彼はもう一言も発することはなかった。
その様子に飽きを覚えた老婆は僕らの顔に唾を吐き捨てると、何かを思いついたらしく胸のポケットを弄った。
「クソ爺さんも言ってたわね……殴れば殴るほどアンタは輝くって。確かに気味悪いほどに綺麗に見えてくるわね。化け物が」
「……っ」
「だ、か、ら」
1文字ずつ音符をつけたような楽しげな声と違い、取り出したのはタバコとライターだ。老婆は慣れた手つきでタバコに火をつけて、吸い込んだ煙をコチラに向かって吐き出した。
普段なら鼻につく白煙の臭いも今は全くわからない。
殴られ続けた身体の痛みを処理しようとしている脳にとって、そんな瑣末ごとは無に等しいものだった。
タバコを口から離した女はとても上機嫌だ。まるでこの先起こることが幸福でしかないと確信しているような。
再び嫌な予感が胸の中でざわついた。
「これをキミにあげるわ」
––––は?
近づいてくる。
パチパチと先が焦げ広がっているタバコが僕の目の前に迫ってくる。エグ味のある独特な臭いが鼻につく。
まさかそんなことを子供にするなんて。
過ぎった最悪の結末が杞憂であってほしいと願う僕だったが、それは老婆は小馬鹿にするように笑いで否定される。奴は止めることなくタバコを下ろしてくる。
不味い。
これは本当に–––––!!
ジュッ。
最後に感じたのは生焦げした不快な臭いと、遠くで聞こえてくる叫び声だけだった。
僕は耐えきれずに逃げ出した。
☆
起きてすぐに感じたのは血の穏やかな香り。それが今に限っては嫌悪感を膨れ上がらせ、思わず吐き出してしまう。
「はあ……はぁ……」
彼の記憶から現実へ避難した僕の息は荒く、肩で息をしていた。
目の前にベッドで横になっている吼月くんがいる。辺りは吼月くんの部屋だ。間違いなく記憶の中ではない。
安堵する僕だったが、すぐさま吼月くんの顔を……なにより両目を確認した。
「んっ……っ……」
「ある、ちゃんと両目とも……」
指で瞼を開かせるという強引な手段を使ったため彼が目覚めないかという心配は僕の頭の中にはなく、ただその両眼の無事を今すぐにでも確かめなくてはならないと躍起になってしまっていた。
だって、だって眼をたばこで焼かれるなんて、そんな狂ったことを。
僕はもう思い出したくない。
できれば暫くタバコという3文字は聞きたくないし、見たくもない。
「吼月くん」
「–––ぃゃ、ゃめっ……」
彼の頬や額に触れれば汗が滲んでいるのが分かった。そこだけではなく、背中にもジンワリと広がる汗染みが彼の恐怖の大きさを表しているようだった。
それに顔は青ざめて血色はかなり悪く酷くうなされている。
膝を抱えて小さく丸まっている彼を抱きしめながらベッドに横たわる。掛け布団を僕らふたりにかかるように広げた。
「大丈夫だよ」
ごめんね、と謝ることはしなかった。
傲慢だろうけどきっと僕がやるべきことは頭を下げることじゃなくて––––
「キミは何を隠しているの。どれだけ無理をしてきたの。教えてよ」
彼の熱が消えないように強く抱きしめる。
小さくてか弱い少年がこれからも安心して眠れるように少しだけでも力になりたいと願いながら、僕は瞼を閉じる。
––––絶対に今の世界を忘れさせてあげるから。絶対に落としてみせるから。
待っててね、ショウくん。
☆
ケータイの着信音が鳴る。
それは同僚からのメールだったが、仕事の連絡だろうか?
「羽倉からか。なんだ……?」
メールに眼を通すと仕事の話ではなく、どうやら吼月くんについての事らしい。明日、彼の家に出向くことになるのでその確認だろうか。
しかし、読みは外れたようで彼の私生活について嬉しい情報が手に入ったという。あの子が友達と仲良く?遊んでいる写真だという。
「ん? SNSのアドレスか?」
貼り付けられたリンクをタップすると、一応登録だけしてあるアプリが開かれて画面の真ん中に写真が現れる。
そこに映っていたのは––––
「く、吼月くん……!」
メイド服を着た吼月くんが他の女性たちと一緒に楽しそうに映っていた。間違いない。親友の息子を見間違えるはずがない。
そこはまだ、いい……しかし、問題は。
「ふざけるな……!!」
私は今し方仕事で出た
それだけは絶対に許さない。
あの子の人生をこれ以上捻じ曲げさせたりはしない。