第四章「虚言癖」
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「…………………は?」
「―――ソォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
体を起こしたその瞬間、涙目で、それでいて大声で名前を叫びながら突っ込んできた優利に、骨が折れたのではないかと心配になるくらいの力で天は抱き締められてしまった。
ピキピキッ!!! と、骨に罅が入ったであろう音が鳴り響いてしまう。
スッ…と、天の顔が真っ青になっていく。
ダメだ、さっき起きたばかりなのにまた意識が飛ぶ…
意識が飛びそうになった、その瞬間に、啓が「お、おい、優利。天の顔が真っ青になってるぞ。離してやれ」と言ってくれたお陰で、優利は「ご、ごめん」と謝りながら離してくれた。
危なかった…意識がまた飛ぶ所だった…と、安堵してから―――自分に、驚愕した。
殺された筈の自分が…何故、生きている…? それに、ここは…自分の、家…?
混乱している自分を察してくれたのか、啓が現状に至った経緯を説明し始めた。
「お前が克也に殺された後、紫チームのメンバーは俺たち緑チームが確保した。その後は俺たち緑チームと赤チームの戦いで、俺たち緑チームが勝利を修めた。そして、その後に魅音から『次のプログラムに進むか、このプラグラムを続行するか』の二択を与えられ、緑チームはプログラムを続行し、残る事にし、俺や優利、熊切達は次のプログラムへ進む事にした。そして、その結果として、俺は目覚めれば自分の家のベッドに居た。現実の世界に戻ってきたんだ。俺と優利は約束した場所で再会して、優利が『天がどうなっているかを確認したい』って言ったから、お前の家に居るのが現状だ。正直、俺もお前の現状確認はしたかったしね」
随分と長かったが、要約すれば、啓達の緑チームが勝利し、啓を含む12人が次のプログラムへと進み、現実の世界に戻ってきた。そして啓と優利は約束した場所で再会し、優利が天の現状を確認したいと言ったからこの場に居る…という事である。
何となく二人が自分の家に居る理由を理解した。だが、それでも肝心な部分が分かっていない。
プログラムが進んだのは理解出来た。だが―――どうして、殺された筈の自分が生きているのかは、まだ理解出来ていない。
あの時…確かに克也は天の心臓を穿った。即死となった筈だった。
それなのに、どうして生きている?
「……紫チームに、稲川惟って女子が居たのを覚えてるか?」
「…あぁ。覚えているが…稲川が、どうかしたのか?」
「その稲川が、お前を生き返らせたんだ。」
「……は?」
啓が言った言葉が、理解出来なかった。
生き返らせた? 稲川が、自分を? どうやって?
能力を使って? いや、そんな筈が無い。惟の能力は、死者を復活させる事が出来るような能力なんかじゃなかった筈だ。
何故なら、基山天という存在が死んだのは紛れもない事実であり、現実だったから。
惟の能力を使っても、死者を生き返らせるなんて芸当は、出来ない筈だ。
「稲川惟の能力…『虚実を現実にする能力』で、お前は生き返った」
「ま、待て。俺が死んだというのは、確かな現実だろ。それを、どうやって…」
「基山。虚実の意味は、分かるか?」
「…? 実質のないこととあることだろ。」
啓からの質問に、天はその質問の意図に疑問を懐きながら答えた。
虚実。虚ろな実。空虚と充実。実質の無いこととあること。
あとは、うそとまこと。虚偽か真実か、ということ。
「噓と真を現実にする。それが稲川の能力だ。聞いた時から、桁外れな能力だろうなと予測はしていたが…それ以上の能力だった」
「…それと、何の関係があるんだ」
「噓と真を現実にする、というその能力の『噓』と『真』の判定は、稲川がその『噓』を『噓』と認識するか『真』を『真』と認識するかで決まる。でも、稲川は『真』を『噓』と認識したんだ。『基山天の死亡』という『真実』を、『虚偽』だと認識した。そうなった場合、その『真実』は『虚偽』となり、『虚偽』が『真実』として『現実』になるんだ」
「……つまり、『基山天の死亡』という『真実』が『虚偽』になってしまい、『基山天は死んでいない』という『虚偽』が『真実』になったから俺は生き返った…という事か?」
「あぁ。それで合ってる」
天の回答に、啓は頷いて正解だと言った。
『基山天の死亡』。これは確かな事実であり、現実であり、本来ならば変える事が出来なかった『真実』である。
だが、惟はそれを、基山天という仲間の死を受け入れられなかったのだ、。
だから惟は、『基山天は死んだ』という“真の現実”を否定して、『基山天は生きている』という“噓の現実”を信じた。
それによって、『基山天は死んだ』という『真実』が『虚偽』となり、『基山天は生きている』という『虚偽』が『真実』となってしまった。
それが原因で、死んだ筈の天は生き返った、という訳なのだ。
「魅音も驚いていたよ。『あまりにもイレギュラー』だってね」
「……惟は、どうなった」
「…分からない。魅音達に連れられて、その後は全く分からない。」
「…そうか。他の皆は、無事か」
「……」
「…死んだ、のか」
「…壱岐威と佐薙桃は、赤チームの“楸和樂”に殺された。地這禮と高梨香、伊湯翔と壱岐真の四人は生きている。」
「……そうか…威と佐薙は…死んだか」
「ソラ…」
俯いて―――彼らとの思い出を、思い返す。
威は、とても冷静で、しかしとても優しかった。
常にメンバーの事を考えていて、メンバーの事を第一に考えた行動ばかりを取っていた。
桃は、年長者として、影で皆を支えてくれていた。
そんな二人が…死んだ。楸和樂という、赤チームの人間に殺された。
―――悲しいが、しかしありがたい。お陰で、新しい目的が、出来た。
9%の憎悪と1%の歓喜を込めて、目を引き攣らせながら天は笑った。
目的は、完全に決定した。次のプログラムをクリアすると同時に、楸和樂という人間の完全な殺害。
能力の検証は、最終にまで近付いている。
その最終に、楸和樂という人間を使って検証する。これは、決定事項だ。
「…白柳。次のプログラムに、俺は参加出来るのか?」
「……恐らく、参加出来る。」
「…そうか。ありがとう、白柳。」
必ずや―――楸和樂を、殺す。
今は、それだけを考えることに、した。
□ □
時は遡り、場所は変わる。
草原の中、二人の人間が血の海の中に倒れ、二人の人間が綺麗な草むらの上に立っていた。
一人は、マジシャンの格好をした少女―――もとい、魅音。
一人は…冷たい目をした、男。
「で、どうだったかしらん? 《監視人》すらも警戒していた能力者は」
巫山戯るように、魅音は男へと問う。
フードのついたグレイカラーのストリート系メンズジャケット、ブラックカラーのストリート系のカーゴパンツ、そして、右手に2尺程度の長さの黒い苗刀を逆手に持っている男に、倒れ込んでいる二人の人間―――もとい。
壱岐威と、佐薙桃の二人と殺し合って、どう思ったのかを、聞いてくる。
「恐れるに足らず、だ。壱岐威の『時空間支配』は確かに強力だったが…未だ俺の『全人生』には届かない。」
「アナタの能力に届く能力者なんて、それこそ限られていると思うけどねぇ?」
「…そうかもな。だからこそ、待ち続けるさ。俺が期待するアイツが、“あらゆる全てを消し去る事が出来るようになる能力”になるその時まで―――待ち続ける」
『第零監視人』
楸和樂。
能力名「全人生」。
あなたの能力は「見て聞いたことがある能力を扱える能力」です。