ドアを開けると、中にはメタボな体型の男性が座っていた。横には、眼鏡をかけた長身の女性が立っていた。
「やぁ、新米提督の西村君。私は、今成進だ。階級は大将になった。正確には、私も、新米だがな。横にいるのは、大淀。彼女も立派な艦娘の一人だ。今は私の秘書艦をしてもらっている。」
大淀は、お辞儀をしてこう続ける。
「前任の提督さんは、結構な悪名が高い人でした。そのせいもあり、貴方が着任する黒井鎮守府は、疲れきっております。作業員も、艦娘たちも、勿論、妖精さんたちも。そこで貴方には、その黒井鎮守府を立て直して欲しいのです。」
「分かりました。しかし、前任の提督は、どうされたのですか?そこが気になります。」
今成大将は、タバコに火をつけて話す。
「彼は、我々大本営が事実上の排除を下した。これ以上は何も言えん。とにかく、鎮守府の再建に関しては、手早くしてもらいたい。敵は、おらんが、これ以上、彼女達の悲しむ顔は見たくないのだよ。」
「そんなにひどい行為をしていたのですか。まぁ、妥当ですね。分かりました。それでは、西村泰三。黒井鎮守府へと着任いたします。」
「うむ。頼んだぞ。何か困りごとがあったりしたら、電話や手紙を送るといい。」
西村は、一礼しドアに向かって歩く。大淀は、そのドアの前で待っていた。
「あの子達を救ってくださると信じています。貴方は、その資質がありそうですから」
支部局の玄関を開けると、桜が咲き誇っていた。その桜は、西村にとっていいことになるか、悪いことになるかは、貴方次第だとまるでいっているようだった。そんな、桜並木を歩くと、一台のタクシーが待っていた。
「西村様、お待ちしておりました。黒井鎮守府行きのタクシーでございます。」
「ありがとうございます。黒井鎮守府に行くには何時間かかりますか?」
黒いスーツを着た老人は、答える。
「約三時間程です。途中で、休憩時間をはさみますのでご心配なく。」
タクシーに乗る西村。そんな姿を窓ガラスから今成が見つめる。
「彼女達を救えるのは、誰でもできるのか。否、彼がにしかできないことだろう。そう思わんかね大淀君。」
「えぇ。彼には『特別な加護』がありますからね。きっと、いえ、絶対にできますとも」
今成進。階級は大将。年齢は、40歳。通称、鬼の今成。西村泰三にとって、大きな影響を与える一人でもある。そんな彼には、どうしても切り離せない過去がある。それは、また後程語るとする。