一週間の休養明けに、駆逐艦たちの座学を組んでいた西村は教室へと向かう。
座学なんてまともにやってこなかった駆逐艦たちは、少々ざわついている。なんか、怖そうで不安そうにしていた。
西村が教室に入ると、暁が「起立!礼!着席!」と元気そうにみんなに指示する。開口一番西村は、みんなに問う。
「みんなが変われないもの、変えれるものは何かな?自由に発言してもいいですよ」
暁が「性格は、変えられないものだわ」
響は「運命は、変えれるものかな」
はたまた、雷は「生活は変えれるものだよ」
さらに電は「逆に天命は変えられないものですか?」
と各々に答えてゆく。
「みなさん、そうですね。ですが、一番大切なのは『過去と他人』と『自分と未来』です。貴方たちの過去は、どんなに私が謝ったところで何も変わりません。あと他人はどんなに説法したところで変わりません。ですが、自分は変えれる。例えば性格。怒りっぽいという性格は、直せば長所にもなり得る。未来は、その場のその場の選択肢次第で、変えれると私は思っています。」
過去、働き過ぎてきてうつ病寸前まで追い詰められた。この事はどんなに頑張ろうとも変われない。他人、前任の提督は変えられなかった。未来、森田療法により笑顔や人間関係を改善することができた。
「私も、天命は変えられないと思います。ですが、私のお爺ちゃんは『人間はいつか死ぬ。だが、そのいつかはわからない。だから人生は楽しい』と言いました。その反対に、運命は変えられます。現に貴方たちは明るい笑顔が戻りつつあるじゃないですか。これが、前任の提督だったら姉や妹、友達を失ってしまっていたかもしれません。」
「確かに、それは悲しいっぽい…」
夕立は、周りを見渡す。西村は、続ける。
「長いこと辛い経験をしていると、色々な妄想が始まります。私は、朝起きたら死んでいるじゃないかとか、頭の中の考えごとが周りに聞こえているのではないかとか。でも、どんなに生きるのが辛くてもそれは決して貴方のせいではありません。前任の提督の憎悪が、全ての諸悪の根幹です。」
次の質問に移る。貴方の尊敬する先輩は誰ですか?と。加賀、長門など戦艦や空母の名前が上がる。では、その理由はと問う。スーパーウーマンになりたいとか偉大な戦艦だからとか。西村は、バッサリと切り捨てる。
「私はスーパーウーマンになりたい。と思っている人が沢山いますが、スーパーウーマンはいません。なぜだと思いますか?」
みんなは、黙る。島風が答える。「短所があるから。かな?」
「その通り。人は、短所と長所があります。だから、最後に私から教えてあげます。私には私の生き方があります。貴方たちには、貴方たちの生き方があると。」
気が付けば、時計の針が12時を回っていた。暁は、レディらしくおとなしい声で号令をかけた。その後、大原さんが待っている食堂へと向かって行く駆逐艦たちを見送った西村だった。