生きるのが辛い。整備士の志田由紀子は、そう思っていた。何故なら、前任の提督にされたことである。しかし、それは過去の事である。今の西村提督には、憎悪は持っていない。しかしながら、どこか辛い過去はどこにも消えていかなかった。
「提督…。私、生きるのが辛いです。どうしたらいいですか?」
昼食を共にしていた、西村に問う。それに対して西村は答える。
「生きるのが辛いのは、貴方のせいではありません。貴方は、過去にされたことを恨んでいるのではありませんか?うつ病の根元は憎悪」
遮るように反論する志田。
「でも、どんなに頑張ってきたって貴方たちは同じ立場。おもちゃのようにしか見てないはずです。それをどうやって、心を入れ替えれと言うのですか!」
怒鳴るように西村に噛みつく。本当は、普通に話したいのに出来ないもどしかしさにイラつく志田。
「川に来るまで川を渡るな。物事は心配しすぎるな。つまり、未来を変えるのは貴方次第です。貴方はストレスを感じている。その、怒りを仕事のエネルギーにしてみませんか?人は、エネルギーがないと惨めさにしがみつきますよ」
「でも…でも…私…」
泣きながら答えようとする志田。すると西村はこう問う。
「人は、感情を出したほうが好かれます。泣く、怒るなど人間にある感情は出したほうが良いのです。また、過去から解放されるには、過去と正面から向き合うしかありません。私は言いましたよね?前任の提督とは違うとね」
カツカレーを食べ終えると、席を立つ西村。執務室へと戻る姿を志田は、泣きながら見送った。
次の日。工廠に顔を出してきた西村。思わず、志田はお礼をする。
「西村提督の言う通りでした。私は、勘違いしていました。ギクシャクした職場よりも、フレンドリーな職場の方がいいですもんね」
西村は、由紀子に対して警告する。
「でも、ストレスというのは良いこともあります。それは、生きる目的を与えてくれるということです。逆にストレスがなくなって、生きる目的を見失う人を何人も見てきましたからね」
他の整備士は、笑って志田に駆け寄る。
困っていたのはどうやら由紀子だけではなかったようだ。何故なら、前任の提督の悪行に困っていたのはみんなも同じだからだ。
苦しむことでこそ、人は成長する。そんな志田を見た西村は微笑む。性格が、全く違う人と仲良くなるということは、人間の幅が広がるということなのだということを今日、昨日と感じとった西村だった。