Persona 5 Scramble -Eleventh Member-   作:週末ラテ少年

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 メリークリスマス



#11 Closing Time

-7月30日(日)-

『全部…私がした事なんですっ! 周りの人たちは何も悪くないんですっ!

ごめんなさいっ…ごめんなさいっ!!』

 

 

 アリスからネガイを盗った翌日。

 いつぞやの修羅場が起きたあのスタジオで、アリスはそう言っていた。

 改心が成功した証のようなものだ。

 

 その現場を、僕たちはルブランでテレビ越しに見ていたわけだが。

 

 

「アリス…」

 

 

「…こりゃ荒れるだろうなぁー。怪盗団絡みのネタだし。」

 

 

「とにもかくにも、これで一仕事終わったな。」

 

 

「ええ、パレスと状況は違ったけど、本人が改心したことは間違いないようね。」

 

 

「ネガイ盗られてた連中も元に戻ったみたいだぜ。

ネットに書き込まれてる。」

 

 

「そうだ、翼くんのお母様は大丈夫なの?」

 

 

「ええ、ゆうべに父さんから連絡が来て。

突然元に戻ってて、嬉しいと同時にちょっと慌ててましたね。」

 

 

「『アリスに全財産を貢ごうとしていた息子が目を覚ましてくれた。怪盗団ありがとう』…」

 

 

「『金返せ』って言ってるのもいるな。

それはわたしたちに言われても困る。」

 

 

「自業自得な人もいそうだけどね。」

 

 

「何はともあれ、ミッション・コンプリート。」

 

 

「…アリス、これからどうなるのかな?」

 

 

「今までみたいに芸能界でやってくのは難しいかも。すごいスキャンダルだし。」

 

 

「結局、報いを受けるのは自分ってことか…」

 

 

「でも、アリスが初心に帰れたなら、また一からやり直せるかと。

長く時間が経てば、今度は違う形かもですけど誰かの光になれるはず。」

 

 

「そういえば、本人にも事件の事聞かないとね。何か新しい情報が得られるかもしれないし。」

 

 

「そうは言っても、まず会えるかどうか…

かなりの騒ぎですし、普通に考えたら不可能かと。」

 

 

「…相変わらず面白い話してるな。」

 

 

 いつの間にかルブランの扉が開き、見えたのは黒いスーツ、そして特徴的な髭と髪。

 

 

「よっ。元気にしてたか?」

 

 

「まーたお前か、オッサン!」

 

 

「オッサンなのは否定しねーが、地味にヘコむな…

それよりお前ら…早速やってくれたな。」

 

 

「…何のことかしら?」

 

 

「とぼけるなよ。俺の情報、役に立っただろ?」

 

 

「そうだけど…」

 

 

「そいつはよかった。いい返事も期待できそうだな。」

 

 

「返事って…」

 

 

「それで、何の用ですか?

アリスは僕らが何とかしたから、濡れ衣は晴らせたのでは?」

 

 

「あー、一個ずつ答えさせてくれ。

まず用件だが、例の件の返事を聞きに来た。俺とお前らとの『取引』のな。」

 

 

「だからテメーら警察なんかと…!」

 

 

「じゃあさらに特典も付けてやろう。アリスに話を聞いてきてやってもいいぞ。

お前ら、アリスに会って確かめたいことがあるんだろ? 俺なら聞き出せる。

で、濡れ衣の件だが…それがそうでもないのさ。」

 

 

「どういうこと? 事件はもう終わったはずよ。」

 

 

「終わりなんてとんでもない。この『改心事件』は全国各地で起きてる。

全てアリスの仕業なんてことはあり得ない。それじゃお前らの疑いは晴れないよな?

それに加えて今回のアリス騒動。あの予告で世間は熱を帯びてきた。『全国の改心事件は全て怪盗団の仕業だろう』って話が、警察でも盛り上がってるぜ?

お前ら、相当やばい立場に置かれてるってわかってるか?」

 

 

「ふざけんなよっ! 俺らが何したってんだよ!」

 

 

「落ち着けよ、だからこその取引だ。

雨宮。俺は今すぐお前をしょっ引くこともできる。

そうしないのは、別に真犯人がいると踏んでるからだ。

そいつを捕まえるために、俺に手を貸してくれ。」

 

 

「…何故、真犯人がいると考えるんだ?」

 

 

「刑事の勘ってやつだな。まぁ俺は公安だが。

去年怪盗団の起こした事件と今回の事件とじゃ、犯行思想も動機も違いすぎる。

これは2つの別種の事件。それが俺の結論だ。」

 

 

「……少しだけ、時間をもらえない? みんなで話し合いたいから。」

 

 

「んじゃ、外に出てるぜ。話がついたら呼んでくれ。」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 彼が外に出たのを確認。最初に口を開けたのは祐介さん。

 

 

「…アテが外れたな。

アリスの告白で濡れ衣も晴れると思ったが…」

 

 

「全国各地……改心事件……」

 

 

「翼、何か知ってんのか?」

 

 

「…そうだ。

そういえば、アリス関係の調査をする時、似たような事例がないか調べたことがありまして。

突然人格が変わるようなことは地方でもチラホラあったんですけど、まさかそれの事…?

ニュースにすらなってないので世間の認知度も低かったんですが、公安がそれに目をつけてるとか…ですかね。」

 

 

「あのオッサンの話、本当ってことかよ…」

 

 

「どうしよう…全部私たちのせいにされてたら、濡れ衣なんて晴らせない。」

 

 

「だいたい、わたしたちの改心とあの改心は別物だろっ!」

 

 

「本当にアリスのような『改心事件』なら、ジェイルが絡んでるのは間違いないだろうな…

アリス以外にも王がいるのか…?」

 

 

「どうする?

こうなってしまっては、あの男の話に乗るのも手ではあるぞ。」

 

 

「あんなヤツ信用すんのかよっ!?」

 

 

「でも他に方法なくない?

少なくともアリスの情報は本当だったし…」

 

 

「レン、どうする?」

 

 

「ここは取引に乗ろう。」

 

 

「私もそれがいいと思う。」

 

 

「待て。取引するとして、どうやって説明するつもりだ?

ワガハイたちのやってることを理解させるには、異世界のことも教えなきゃならない。」

 

 

「させるしかないだろう。でなければ、蓮の身が危うい。」

 

 

「でもよ、異世界だぜ!? ジェイルだぜ!?

頭の固い警察がそんな話信じんのかよ!」

 

 

「だが…」

 

 

「…連れていくしかないわね。ジェイルに。」

 

 

「ちょ、ちょっと、本気!?」

 

 

「マコちゃん、大胆…」

 

 

「それ以外に、逮捕を免れる方法があるかしら?

出せるカードはテーブルの上に。今はそれが最善だと思うわ。」

 

 

「なるほど。ジェイルの事は事前に説明して、入り口の近くだけにすればいいと思う。1人くらいなら守れるだろうし。

僕がキャパギリギリでどうにかなったんだし、あの人が力に目覚めるようなことがなければ、頭はどうにかなることは無いのでは?」

 

 

「蓮、お前はどう思ってんの?」

 

 

「大方同意だ。他に方法はなさそうだしな。」

 

 

「…わかった、取引しよう。」

 

 

「吉と出るか凶と出るか…」

 

 

「クソ、こうなったら腹くくるしかねえだろ…」

 

 

「じゃあ、呼ぶわよ。

…話は終わったわ! 入ってきて!」

 

 

 彼も律儀に応え、店内に入ってくる。

 

 

「…なんだ、意外と早かったな。

じゃあ、返事を聞かせてもらおうか。」

 

 

 

「貴方を連れて行きたい場所があるわ。私たちについてきて。」

 

 

 

 

 

 ◇■◇■

 

 

 

 

 

 渋谷を経由し、ジェイルに到着。

 異様な雰囲気は変わらないが、鳥かごがないだけ幾分かはマシに見える。

 

 

「…おい、こんなところに何があるってんだ?」

 

 

 そう言いつつも彼は目を開ける。

 

 

「っておい…なんだこりゃ…冗談…だろ?」

 

 

「冗談なんかじゃないですよ。

目の前の何もかもが真実。薬物検査なんて、要らないでしょう?」

 

 

「ま、まぁ…そうだな…

ってどうしたっ!? 何のコスプレだっ!?」

 

 

「…ま、最初はこうなるわな。」

 

 

「これが私たちの怪盗服姿ね。」

 

 

「は…ははは…勘弁しろって…何がどうなって…」

 

 

「質問か? ここはジェイル。

オマエは今、ジェイルの中にいるんだ。」

 

 

「いや、お前だれ!?」

 

 

「私は『人の良き友人』のソフィアだ。よろしくな。」

 

 

「よろしくな…って…」

 

 

「落ち着けよ、ゼンキチ。いい大人がみっともねーぞ。」

 

 

「あ、ああ…そうだな…取り乱してる場合じゃ…

…って化け猫!?」

 

 

「化け猫じゃねえよ! ワガハイはモルガナだっ!」

 

 

「これで納得してもらえた?

私たちの話がすべて本当だってこと。」

 

 

「なんだ…昨日飲み過ぎちまったか…? つか夢だよなコレ…現実なわけねえ…」

 

 

「大丈夫かよオッサン?」

 

 

「安心しろ、ただの錯乱だ。」

 

 

()()()錯乱って…」

 

 

「全然安心じゃないような…」

 

 

「にひひっ、刺激が強過ぎたか!」

 

 

「仕方ないわね…いったん帰りましょう。」

 

 

 

 

 

 ■◇■◇

 

 

 

 

 

 全員揃って帰還したわけだが。

 

 

「ありえねえ…マジでありえねえ…

意味のわからん事件追いすぎて頭おかしくなっちまったか…?」

 

 

 まぁ、ご覧の通りである。

 

 

「ははっ、さすがにショック受けてんな。」

 

 

「うむ、脳のキャパ超えてオーバーヒートしたんだろうな。」

 

 

「説明すれば何とかなると思ったけど…無駄だったか…」

 

 

「俺たちも初めはああだった。…初々しいな。」

 

 

「しっかりしろ、オッサン。」

 

 

「やれやれ…いつまで呆けた顔してんだ。しっかりしろ、ゼンキチ。」

 

 

「ああ? ああ、そうだな…しっかりしねえと…

ってなんで猫が喋ってんだ!?

まさかお前、さっきの化け猫か!? やっぱ化け猫じゃねえか!」

 

 

「『化け』でも『猫』でもねぇーよ!

モルガナって言っただろーが!」

 

 

「貴方は異世界で、モルガナが喋ると認知した。

だからこちらでも言葉がわかるの。」

 

 

「認知すりゃ猫が喋んの…?

はは…そりゃ大変だな…ははは…」

 

 

「現実を受け入れるのに、もう少し時間がかかりそうだね…」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「…とりあえず、取り乱して悪かったな。

話は大体わかった。いや、さっぱりわからねえが…受け入れる努力はする。」

 

 

「取引をするからには、私たちは共犯関係よ。

互いに信頼を裏切らないこと。それが最低限のルール。」

 

 

 

「…若いのにしっかりしてんな。

わかったわかった。俺もお前らの信頼には応えるさ。

全国の改心事件解決に協力してくれ。その代わり、俺はお前らを守る。

お前らが俺に協力する限り、警察には手を出させない。約束だ。」

 

 

「取引成立だな。」

 

 

「ああ、よろしく頼むぜ。

…じゃあまあ、早速で悪いが、事件調査の協力依頼だ。

今現在、改心絡みの事件が起きてる都市として、公安は札幌をマークしてる。

お前たちには、8月8日までに札幌中央市に来て欲しい。」

 

 

「何故8月8日に? そっちの都合とか?」

 

 

「半分当たり、半分外れだな。

『改心』の力を使ってるらしい容疑者が、その日まで海外出張で不在なんだとさ。

帰国するタイミングに合わせて、こっちも調査を開始する予定なんだ。」

 

 

「なるほどね。」

 

 

「その札幌の容疑者が、アリスと同じく王である可能性が高いということか。」

 

 

「そうなるかもな。だとすれば、お前らに頼むのがベストだろ。」

 

 

「目的地は北海道の札幌中央市か。ちょっとした旅になりそうだな。」

 

 

「あー、1つ忠告だが…

飛行機や電車、公共交通の(たぐい)はなるべく利用しない方がいい。

基本は自分たちの足か車を使え。」

 

 

「どうして?」

 

 

「アリスの件でお前らは怪盗団を再び名乗った。その話は当然、他の王の耳にも入る。今ネガイを奪ってる王からすりゃ、お前らは邪魔だろ。」

 

 

「警戒されて当然だな。サイアク、消しにくるかも…」

 

 

「何処の誰が洗脳されてるかわからねえ。

もしそれが飛行機のパイロットだったら…」

 

 

「け、けど! 飛行機がダメなら、どうやって札幌まで行くの?」

 

 

「とりあえず車にしとけ。それが一番安全だ。」

 

 

「いや、警察が用意してくんねーのかよ?」

 

 

「悪いがこいつは極秘調査だ。そういう協力はないと思っとけ。

ああそれと、アリスの事情聴取は俺に任せろ。後でお前らにも共有する。

んじゃ、そういうことでよろしく頼むぜ。」

 

 

「よろしくな、ゼンキチ。」

 

 

「あ、ああ…化け猫呼ばわりして悪かったな、()。」

 

 

「反省してんのかコラ!」

 

 

 長谷川さんはそれを言うなり去っていった。

 

 

「…大丈夫、お前はまだ正気だ。そうだろう長谷川善吉… 」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 夜、双葉と路地裏を歩く。

 EMMAやジェイルのことを話し合い、マスターに掛け合って車の手配をしてもらった後だ。

 

 

 

「双葉ー。」

 

 

「何だー?」

 

 

「いや、一つ思ったんだけどさ…

僕たちの取引、なんだけど。」

 

 

「それがどうかし……あっ」

 

 

「多分察しの通り。

僕はアリスへの復讐を実質成し遂げた訳だから、取引も終わり…だよね。」

 

 

「じゃあ、わたしと翼も、()()じゃなくて()()()()()ってことになる…のか?」

 

 

「…そうなる。

でもだけど、僕は双葉とは取引とか関係なく、『友達』でありたいって思ってる。双葉がどう思ってるのかによるけど。」

 

 

「わたし…も…

わたしも、翼とは友達のままでいたい。

仲間でもあるけど、それ以前に。」

 

 

「ふふっ、そっか。

なら、今後ともよろしくってね。」

 

 

「ああ、よろしくな!

…それならわたしも、『友達』としてまた色々教えるからな!」

 

 

「おっ、マジ? なら、時間あったらお願い!」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 双葉と雑談をしながら帰り、帰宅。

 

 

「翼。翼の父親から電話だ。」

 

 

「ありがと。

…もしもしー?

 

 

 

 

 

ああ、確かにそっかー。

 

 

 

 

 

いや、続けようかなって思う。

何やかんやこっちの方が楽しいし、予定も自由に組みやすいし。

 

 

 

 

…いやいや、たまには帰るから!

それに、近いうちにお爺ちゃんのとこ行くし。

 

 

 

 

そーそー。友達とちょっとした旅にね。

お土産とか、買える分は買ってくからさ。

 

 

 

 

ん、わかった。おやすみー。

…ふう。」

 

 

「どんな内容だったんだ?」

 

 

「母さんが元に戻ったんだし、また3人暮らしに戻らないかって。

無下にしちゃったけど、ウチの家訓だから。」

 

 

「家訓?」

 

 

「『何にも縛られず、法を守って自由に生きろ』って。

読んで字の如くだね。」

 

 

「そうなのか。翼の家族、なんだか不思議だな…」

 

 

「不思議って…

まぁウチ、金はある方だし、アリスの時はそれで縁切りにならなかったから不思議っちゃ不思議かも。」

 

 

 そんな感じで、夜は更けて行った。

 

 

To Be Continued…




 シリアスではない。
 ただ創造神(という名の作者)の力で外堀を埋めただけ。
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