Persona 5 Scramble -Eleventh Member- 作:週末ラテ少年
輪は少しずつ回り始める。
-8月1日(火)-
翌日、仙台駅前。
「うっし、仙台駅到着っ! キザ野郎の尻尾掴んでやるぜ!」
「朝から元気いっぱいだな…夏休みの小学生か…」
「うぅ…まだ眠い…」
「2人とも大丈夫? 朝、苦手とか?」
「昨日あんま眠れなかった…マクラ変わるとやっぱムリ…」
「色々うるさかったんですよ…いびきとか寝言とか鳴き声とか…」
「翼は一人暮らしでそーゆーのは無縁だからな…」
「初めての車中泊だし、仕方ないかもね。少しずつ慣れるんじゃないかしら。」
「後で耳栓買うかぁ…」
「それより、平日なのに駅前はにぎやかだね。夏休みだからかな。」
「少し歩けばアーケード街がある。七夕の飾りが観光客に人気らしい。」
「あぁー…そういえばそろそろ七夕祭りですね。」
「人が集まる店も多くありそうだな。そちらでも聞き込みしてみるとするか。」
「ああ、アリスのときと同じようにやるぞ。何かあれば集合しよう。」
◇
「それじゃあ、何か連絡が来たらここに来るから。」
「ありがとうございまーす。」
真さんに頼んで蒼葉山公園に到着。
銅像を見に来たわけではなく、母さんの実家に向かうためだ。
公園を去り、住宅街の中へ。
それほど経たないうちに、いかにもな塀が見えた。
「ここが翼の母親の実家なのか?」
立ち止まってスマホを見てると、ソフィアが顔を出してくる。
「そ。この辺りだと、敷地は結構広い方だよ。」
塀に沿ってちょっと歩くと和風な門が。
雰囲気に合わせてあるインターホンを押すと、よく覚えている初老の顔が見えた。
「おお、翼か! 元気にしとったか?」
「久しぶりー。」
「まぁ、とにかく上がっとけ。大体のことは
一緒に上がり、畳張りの居間へ。横に見えている生花も質素ながら良い。お爺ちゃんがお茶を入れに行った間にソフィアにも見せておこう。
「おー…周りにあるもの、全部高級品の部類に入るぞ。
翼の祖父は金持ちなんだな。」
「まー確かにね。どうやって稼いだかは知らないけど、少なくとも裏社会繋がりじゃないらしいよ。
なんでも、昔から脈々と受け継いでるーとか。」
「翼も将来はそれを継ぐのか?」
「いや、そうじゃないよ。叔父さんがいるんだけど、叔父さんの方が母さんよりも早く生まれてるからそっちが継ぐ予定になってる。
継ぐ訳じゃない母さんは自由。それで、東京に来たってわけ。」
「なるほど…」
「あっ、お爺ちゃん来たからそろそろしまうね。」
「了解だ。」
お爺ちゃんから湯のみを受け取り、僕の正面に座った。
「翼、確か友達と旅に出てるんじゃっけ? 昨日遊美から聞いた時は驚いたわい。」
「そうなんだよねー。」
「一人暮らししてるとかも聞いたぞ。その歳でするとなると、昔のワシを思い出すわい。」
「お爺ちゃんもなの? なんか意外…」
「そうじゃぞ。ここだけの話じゃがな。」
「てか、正月に会ってから口調変わったよね…」
「別に良いじゃろ。ワシの見た目になると、二次元じゃこんな話し方に…」
「ならないから…」
「えぇ…(困惑)」
「まぁ、心が若いままならいっか。サブカルもわかるみたいだし。」
「そうじゃろそうじゃろ。」
うんうんと頷いている。爺ちゃんの心20代かと思ってしまうな…
「そういえばさ、夏芽安吾ってわかる?」
「勿論じゃ。あやつの本は読んだ事あるが、なーんか面白くなくてな…
賞を取ったと聞くが、疑ってしまうわい。翼も読んでるのか?」
「いやいや、あんなの読むに堪えないっての。一巻だけ買ったけど、損した気分。」
ちなみに嘘である。
「ほーう。トモダチキーワード、要らんかったかのう…」
「え、知ってるの?」
「2ヶ月くらい前、興味本位でサイン会に行ったらな。というか、ワシはEMMAすら使ってないからすっかり忘れちまったんじゃった!」
ホッホッホとゲームのように笑っている。
「忘れたなら仕方ないか…てか、EMMA使ってないんだ。」
「なーんかきな臭くてのう。
それに、あーゆーのに色々聞いて頼りっぱなしになったら、なーんにも考えなくなっちまう気がしてのう…」
「へー。」
と、スマホが鳴った。お爺ちゃんに断りを入れてチャットを見ると、これから駅前で夏芽のサイン会があるらしい。
「友達からか?」
「まあそんなとこ。」
「ほーう。彼女とかじゃないのか…」
「違うっての。」
「遊美も高校の時に彼氏できたーとか言ってたんじゃしなぁ…」
「父さんたちと同じこと言わないでくれない…」
「ワシは信じとるぞ!彼女も連れてきとるとな!」
「あー…」
こうなったらテコでも動かないもんなぁ…
どうしたものか。
「とりあえず、仙台出る前に連れて来れないかのう? というか連れてきてくれ。」
「はいはい…」
やばいことになっちまった…
まぁでも、夏芽のことが色々済んでからでいいか。
とりあえず真さんに連絡しておこう。
◇
「そこら中、あのギザ野郎の宣伝だらけ…頭おかしくなりそうだぜ。」
「案の定、サイン会もすごい人混みね…」
「うええ…人多すぎて吐きそうだぞ…」
「アリスの時と同じように、ここでEMMAのキーワードを配って『改心』させてるつもりか?」
「それはお爺ちゃんから聞いた。実際そうっぽい。」
「何? キーワードは教えてもらったか?」
「いや、EMMA自体を使ってないからすっかり忘れたって。」
「そうなのか…」
「ご高齢なら、仕方ないかもね。」
「とにかく、もう少し様子を見てみようぜ。」
サイン会に来た夏芽に洗脳された人たちの話を聞くが、やはりおかしすぎる。
「小説を書き始めたきっかけは寝たきりの女の子のため」なんて言っているが、嘘のようにしか思えない。もっとも、アリスの言葉を疑った僕が言う事では無いと思うが。
そんな感じで、サイン会は終わった。
「予想はしてたけど…凄い人気だったね…」
「病気で寝たきりの女の子のために小説書き始めたとか、本当?」
「ンな奴には見えなかったけどな。」
「それにしてもナツメのヤツ、キーワードらしい言葉を言わなかったな…」
「確かに。僕のお爺ちゃんはサイン会で聞いたって言ってたけど…」
「王じゃないから? それとも警戒してるのかな…」
「もし王だとしたら、ここに集まってたのは、皆『改心』済みだったんじゃないかしら…」
「お爺ちゃんは『改心』されてなかったから渡したってだけで、今回の場合は配る必要はなかった…と。」
「…ってかおイナリ、さっきから何読んでる?」
「夏芽安吾の小説だ。『プリンセスナイトメア』。」
「買ったのか、おイナリ!」
「何のために?」
「この本が、人々の熱気に見合う内容かどうか確認したくてな。」
「それで…どう? 面白い?」
「そうだな…なんと言ったものか。
魅力ある創作物には、作者が作品に込めた『熱』のようなものが溢れているものだ。たとえどんなに稚拙で荒削りであろうと、見る者に訴えかける熱い輝きがな。
俺は、文学のことはよくわからんが…少なくとも、この本からソレは感じられない。
文章そのものはうまくさえ見える。だが、驚くほど空虚だ。まるで、誰かの言葉を借り、上辺だけ取り繕ったような…」
「ちょっと見せて。」
「あ、僕にも。」
祐介さんが持つ本を一緒に覗き込む。
「ちょっ翼、見えない…」
「あっと、ごめん。」
双葉が読めるようにちょっとどいて、改めて観察。
「えーっと…
あーこれ、2年前にやってたアニメのセリフだな。微妙に変えてんのがまた小賢しい。」
「この展開、どっかで見たな…
こことか、あと…ここ。」
「てかこれ…色々な作品からつまみ食いして、つないでるだけじゃないのか?」
「わかる。これ、原作者でもファンでも激怒して大炎上するとこまでいってますね…」
「そんなまがい物の作品で、あれほどの人気を得られるとは到底思えん。
…
「こりゃ状況からして、限りなくクロだな。」
「キーワードさえわかれば、ジェイルに入って調べられるのに…」
「翼の祖父に、何とか思い出してもらえないか?」
「それは無理かもですね……聞いたのも2ヶ月くらい前らしいですし。」
「なら、取巻きから聞き出すか?
あれ全員、ネガイ取られた奴らだろ?」
「うーん…渋谷の時と同じなら、被害者が教えてくれるとは思えないわ。」
「ちょい手詰まり感。あの刑事のオッサン、なんか言って来てないか?」
「今夜、車まで来てくれるって連絡があったよ。何か情報を掴んだのかも。」
「それじゃ、一度長谷川警部補が来るのを待つことにしましょうか。」
◇
夜、キャンピングカーに集合。長谷川警部補も到着した。
「…なかなかイイ車じゃねーか。
しかし、まさか仙台に寄り道してるとはな。どうしてココにもジェイルがあるとわかった?」
「そ、それはまぁ…」
「匂いで見つけた。」
「……
…匂いすんの?」
「それより、何か調べたんでしょう?」
「ああ、夏芽安吾だったな。
確かに奴は怪しい。本の売り上げにしたって、異常に高いのはこの仙台だけだしな。
概ね、お前らから連絡があったのと同じ報告が俺のところに来てる。
で、ここからは聞き込みでわかったことなんだが……夏芽にイカれた信者どもは、みんなEMMAで奴のトモダチになってるらしい。そうなったが最後、そいつは借金してでも夏芽の本を買いまくるようになる。
どっかで聞いた話じゃないか?」
「アリスの時と同じ…」
「柊アリスとは違う方法かもしれないが、夏芽も同じ『力』を使ってると見て間違いない。」
「そうなると…ますますキーワードを知りたいところだな…」
「もうさ、とっ捕まえて吐かせればよくね?」
「そうなれば、俺はお前らを暴行容疑で現行犯逮捕だな。
ジェイルだの洗脳だの言い訳しても、病院行きが関の山だ。」
「だよなあ…」
「それにやっぱり、私たちは怪盗なんだし表立った行動は控えないと。」
「おっ、さすがは美少女怪盗。もっとエレガントに行きたいよな。」
「美少女…何だって?」
「美少女怪盗だな。」
「び、美少女怪盗と申します…!」
「お前…自分で言うんだな…」
「それはさておき、だ。何か、キーワードを手に入れる方法を考えねえとな…」
「そこで俺の出番だ。感謝しろよ、お前ら。」
「…と、言うと?」
「今晩、夏芽が『プリンスオブナイトメア』の100万部突破を記念してパーティーを開く。
で、そのパーティーの招待状が、
「パーティーに潜入するってことですか…
なんか怪盗っぽいですね!」
「へー、面白そうじゃん! なあ、蓮?」
「ああ、良いチャンスだな。」
「そうね、招待客だけの空間なら警戒心も薄いかもしれないわ。」
「どうだ? 俺と取引して良かっただろ?」
「なかなかやるな、オッサン!」
「ああ、やるじゃねえかオッサン!」
「オッサンを見る目が変わるな。」
「さすがですね、オッサンさん。」
「お前ら…せめて苗字で呼べよ…」
「ドンマイ、オッサン。」
To Be Continued…
あけましておめでとうございますっ!
活動報告に新年のご挨拶的なやつを書いてるのでそちらもどうぞ〜
京都編の鉄拳制裁イベント、オリ主くんは…(双葉とは付き合ってるものとする)
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