Persona 5 Scramble -Eleventh Member-   作:週末ラテ少年

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#18 Dragon of Nightmare

虚飾のペテン師、夏芽安吾。

 

 

他者を貶め、着想を盗み、私腹を肥やす大罪人。

 

 

仮初の王冠で悪行を重ねる貴様を、我々は看過しない。

 

 

貴様が奪った人々のネガイ、今宵我々が頂戴する。

 

 


 

 

-8月4日(金)-

 善吉さんがどうにかしたらしく、予告は成功。サイン会の会場に貼り付けまくったらしい。

 いざ鳥かごの中に入ると、夏芽らしいシャドウが堂々と立っていた。

 

 

「フン…ずいぶん遅かったな、怪盗団。いや、悪しき勇者たちよ。」

 

「ようやく会えたな、魔王さんよ。」

 

「アンタがみんなから奪ったネガイ、返してもらうから!」

 

「覚悟するんだな。」

 

 

 それでもなお、夏芽は動かない。いや、動じていない。

 

 

「…くくっ、ははははは!

愚かに過ぎるな。己の置かれた状況さえわからないとは。」

 

「奴の出で立ち…間違いなく、『プリンスオブナイトメア』の魔王だな。」

 

「いかにも魔王、って感じだね…。四天王の人たちは普通の服だったのに。」

 

「そう言うと、あの四人の扱い雑過ぎませんかね…」

 

「フッ…貴様らはわざわざ我の罠に足を踏み入れたのだ。

ここは、我の我による我のための世界。断罪の魔王が、偽善の勇者に鉄槌を下すために作られた空間。

この場所において、貴様らは羽虫以下の存在に過ぎん。

自らの悪行を懺悔しながら、汚い悲鳴を上げて死ぬがいい。」

 

「ネガイを奪って好き勝手してたことを棚に上げて、よく言うわね。」

 

「お前が魔王だってんならよ、勇者の俺らにやられんのが筋だろ?」

 

「フン、貴様らは…その偽善を振りかざし、どれだけの魔族の命を奪ってきた?」

 

「わー…カンっペキに主人公の魔王サマになりきってるな、コイツ。」

 

 

 お前は何を言っているんだと言いたい。ツッコミどころがどんどん増える…

 

 

「御託はいい、さっさとかかってこい。

どれだけ虚勢を張ろうと、貴様は恐れている。その偽りの玉座を奪われるのをな。」

 

「何だと…?」

 

「そのハリボテで作られた幻想…俺たちが打ち破ってやる!」

 

 

 とその時、周囲の雰囲気が一変。相変わらず夏芽は姿勢一つ変えないが、何かが起きようとしているのは間違いなかった。

 

 

「どいつもこいつも俺をコケにしやがって…! いいさ…そこまで言うなら見せてやろう。」

 

 

 

俺の真の力、思い知れ!

 

 

 

 同時にその場から消えた夏芽シャドウ。直後、鳥かご全体が揺れ始めた。みんなが慌てるのも束の間、背後から何かが天井を突き破る。

 前方に現れたのは、黄金の鎧を身にまとう龍。夏芽の本気の姿なのが直感で解った。

 

 

『愚民どもが魔王に挑もうなど笑止! 我が(アギト)で嚙みちぎってくれる!』

 

「ちょ、まさかのドラゴンですかぁ!?」

 

「みんな気をつけろ! あいつは手強いぞ!」

 

 

 龍の咆哮が魔王の間に響く。ボス戦の開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 激戦が始まって暫く。

 夏芽は龍の力を存分に使い、自己強化やブレス、爪を振るう肉弾戦を激しく繰り出す。

 

 だがこちらも負けてはいない。

 クイーンの的確な指示のもとでペルソナをうまく使い、周囲の地形や道具を利用して確実に体力を削っている。

 すでに尻尾部分の鎧は砕け、翼も()()()()()()()()()ボロボロだ。

 

 

『ク…人間どもがちょこまかと…!

才なき者が、才ある者の邪魔をする。その愚かさがわからんか!』

 

「その言葉、そっくりそのままお前に返そう。」

 

『お、俺に…我に才能がないと言うのか!」

 

「他者の言葉を横取りした紛い物のどこに才能を見出せる?

今のお前は…己の魂も誇りも投げ捨てた――三流以下の作家だ!」

 

『クソ…クソクソクソ!

貴様も同じだ! 我を否定したあの編集者どもと…!

驕り高ぶったその愚かさ! 思い知らせてやる!』

 

 

 そして顔を振りかぶる夏芽。

 

 

「みんな、回避よ!」

 

 

 クイーンの言葉に合わせて動くと、先ほどまで立っていた場所は豪炎で焼かれる。…が、見た目だけのようで、出力はそれほど高くなさそうだった。

 

 

『ハハハ! どうだ!

今のはアギダインではない……アギだ!』

 

 

「「なんかどっかで聞いたセリフだな!」」

 

 

 ナビとハモったが、今はそれどころではない。油断せず、このまま続けていこう。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 また暫く。こちらはまだ行けそうではあるが、夏芽を見るとその鎧は壊れかけていた。

 

 

「オラよっ!」

 

 

 そしてスカルが一撃を叩き込むと――――亀裂が鎧中に行きわたり、首の周りを除いて鎧が完全に壊れた。

 そしてその下だが、龍に似つかない細い体。下着一枚とグローブだけのみずぼらしい姿だった。

 

 

『あああっ! 俺の体がっ!

お前ら俺に…あっ、我に触れるでない!』

 

「その身体すら鍍金(めっき)だったか。どこまでも紛い物とは、哀れな…」

 

「文字通り()()()()()()()()()のね。このまま決めるわよ!」

 

 

 その言葉に合わせ、召喚されるゴエモン。そして夏芽は氷漬けになるよう四肢を拘束された。

 

 

「宴もたけなわ!」

 

 

 一気に総攻撃を仕掛けていく。

 爪を折り、翼を貫き、鱗を切り刻み、そして――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――幕を下ろす時だ!

 

 

 

 

 

 

 

 魔王、討伐完了。

 

 

『グハ…! ば、馬鹿な…

この…我が…魔王が敗れるというのか……』

 


 

 戦闘は終わるが、夏芽は定位置についたままだ。

 

 

「終わりだぜ、魔王さんよ。」

 

「観念しておくんだな。」

 

 

 そしてその顔には、焦りしか見えていなかった。

 

 

「ま、待て…! お前に世界の半分を…!」

 

 

 どこの竜王だよ。いやあいつ龍だったか。

 突っ込みかけたその時、()()()が前に倒れ、階段を滑り落ちていった。

 

 そしてともに転げ落ちるほぼ裸のシャドウ。どうやら服装はハリボテで作っていたもので、顔出しパネルのようにしていたようだ。

 

 

「ま、魔王の衣が…! 魔法の鎧が…! み、見るな!見るなぁぁぁぁあ!」

 

「あれが…本体なの?」

 

「みたいだな。結局、アイツ自身も全部ハリボテだったってことだ。」

 

「これまでだ、夏芽安吾。」

 

「なんの苦労も知らないクソガキどもがッ…!

まだだ、俺にはまだ、作家としての名声がある! 大賞を取って!本まで売れた! 俺には…まだ!」

 

 

 膝から崩れ落ち、傍から見れば万事休す。それでも奴は諦めていないらしい。

 

 

「…お前は、それで満足か?」

 

 

 それを、フォックスは一蹴した。夏芽も、何も返せない顔をしている。

 

 

「人を欺き、洗脳まで手にした栄光は、本当に、お前が望んだものだったのか?

本当のお前は、何のために…何を欲して、小説を書き始めた?」

 

「俺はっ! 俺、は…!…クソ…クソが!

俺だってな…俺だって、頑張ったんだ!

読んで、読んで、寝る間も惜しんで読んで! 書いて、書いて、死ぬ気で書き続けた!」

 

 

 そして「なのに!」と言葉を続ける。

 

 

()()そうやって必死に書き上げた小説は、()()()()()()()書いた小説に過ぎなかった!

誰も! 誰も、認めてはくれなかった! 俺の()()を!俺の()()を!()()()を!

…どいつもこいつも、上辺に踊らされるクズばかり…! 認めろよ! 夏芽安吾の努力を! 認めよおおおお!」

 

 

 正直、僕は創作者ではないので夏芽の言葉を完全に理解するのは可能ではない。

 だが、自分を認めてくれなかったことに対する心からの叫びだったのは理解できた。

 

 

「――認めてやる。」

 

「…え?」

 

「お前が必死に小説を書いてきたことを、俺が認めてやる。

創作というものは、どんな分野であれ孤独だ。お前は、その孤独と戦い続けてきた。

歯を食いしばり、己の魂を込めた作品を、何度も何度も、出版社に送った。

その努力を、その精神を、俺が認めてやる。」

 

「う…」

 

 

 その叫びを、フォックスは静かに受け止める。そして言葉を紡ぐ。

 

「いかに技術や発想が優れていても、戦いを放棄し、去る者は多い。

諦めず、何度でも作品を生み出せる。それはどんなものより優れた才能だ。

かつてお前は、確かに戦い続けていた。それだけは仮初の経歴じゃない。

だから…また一から這い上がってこい、夏芽安吾。

真っさらなキャンバスにこそ、描ける絵もあるはずだ!」

 

 

 言葉を詰まらせる夏芽。フォックスはこちらに振り向き、

 

 

「…俺も、みんなが信じてくれたからこそ、自分が進むべき道を選べた。

己を偽ることをやめ、一からやり直すことができた。

今度はお前を…この世界にたった一人だとしても、信じていてやる。」

 

「……クソ…ガキが…言いたい放題言いやがって…

…けど、あぁ…そうだよな。こんな嘘まみれの姿なんて…」

 

 

 呟く夏芽。直後、自分の両角に手をかけ、

 

 

「…いらねえッ!」

 

 

 自分の手で、折った。

 

 

「俺は、俺は必ず這い上がってみせる! 自分の実力で、もう一度…必ず!

祖父の小説のような…多くの人の心を掴めるような作品を…

みんなに誇れるような素晴らしい小説を、必ず…書いてみせる!」

 

「…ああ、一人の読者として、お前の作品を、楽しみに待たせてもらおう。」

 

「…ははっ。ほんと、馬鹿だな、俺は。どうして、ずっと忘れてたんだろう…

俺が…俺が、本当に欲しかったものは――」

 

 

 その言葉だけを残し、夏芽のシャドウは消えていった。直後、鳥かごが崩れ始める。

 

 

「…鳥かごが崩れる。さあ、脱出するぞ!」

 

 

 

 

 ■◇■◇

 

 

 

 

 鳥かごからネガイが散らばっていくのを確認し、現実世界。

 ひと段落ついたが、モルガナは、今回もまたジェイルそのものが崩壊しなかったことが気がかりらしい。パレスとは別の存在と結論付けていた。

 とにかく影響を確認しようとのことで、この場から離れることに。

 

 

「…なあ、翼。」

 

 

 そうしようとしたとき、ソフィアが声をかけてきた。

 

 

「さっきから何かザワザワする。これは一体なんだ?」

 

「ザワザワ…? 突然どうしたの。」

 

「私にもわからない。

夏芽は必死に頑張ってたのに、途中で間違ったことを始めた。夏芽は…おかしなやつだ。」

 

「でも、夏芽は改心できたはず。きっとこれからだよ。」

 

「もう一度這い上がるって言ってたな。

祐介は、夏芽が間違っていたのは、一人だったからと言っていた。そのことを考えると、胸のあたりがザワザワする。たくさんの人がおかしくされて、夏芽は倒すべき敵だったのに…

この感覚は何だ?」

 

「んー…多分、祐介さんと同じ気持ちだと思う。」

 

「祐介と…?」

 

 

 そうやってソフィアは目を見開いた。

 

 

「…そうか、だから祐介は夏芽を助けたのか。

夏芽があんなことをした理由が、とても哀しかったから……。…なんとなくわかった。

哀しみは人を苦しめるが、救いもする。人間と人間が支えあうきっかけをくれるんだな。」

 

 

「それがソフィアの答えか…。バッチリじゃない?」

 

「任せろ。~♪」

 

「なら、僕たちも行こっか。」

 

「そうだな。」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 人の多い場所で通行人の話を聞いてみるが、誰一人夏芽の話をしていないようだ。

 

「…これでいい。偽りの力で手に入れた栄光など、あいつには相応しくない。」

 

「これも、祐介が彼の目を覚まさせたおかげね。」

 

「なかなかイカしてたぞ、おイナリ。」

 

「ですね。まさに勇者って感じでした!」

 

「うん。勇者おイナリが、この地に平和をもたらしたのだー!」

 

「…ありがとう、みんな。

だが、安心はできん。まだ本人を確認したわけじゃない。」

 

「今はとにかく、動向を見守るしかなさそうだな。」

 

「ふぅ…じゃあ一段落したってことで、お風呂にでも行かない? もうクタクタで…」

 

「そうだね、少しリフレッシュしてから、車に戻ろうか。」

 

「…ってことで、ソフィア先生、おなしゃーす!」

 

「一番いいのを頼むよ!」

 

「OK、任せろ」




そろそろ仙台編も終わりそうです
あと二話くらいになるかと。

祐介の
「諦めず、何度も作品を生み出せる。それはどんなものより優れた才能だ。」
という台詞、物書きになってからグッと心にきましたな

京都編の鉄拳制裁イベント、オリ主くんは…(双葉とは付き合ってるものとする)

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