Persona 5 Scramble -Eleventh Member- 作:週末ラテ少年
でも尊み成分入れたからユルシテ…
-8月5日(土)-
夜、仙台市内の記者会見会場にて。
『…皆様、本日は会見にお集まりいただき、ありがとうございます。
こうした場をご用意しましたのは、皆様にご報告と謝罪をさせていただくためです。
まず、拙作『プリンスオブナイトメア』が受賞した創海社大賞につきまして…』
そう前置きを作り、本人たる夏芽安吾は語りだした。
『賞を、返上させていただこうと考えております』
それと共に、フラッシュが次々に点滅しだした。夏芽の顔には、反省の色しか見えていない。
『また、これまで発行した書籍もすべて回収…返金措置を取らせていただきます。
理由といたしましては、『プリンスオブナイトメア』の受賞は、私が夏芽漱吾の孫であることのみを理由に決定された、所謂八百長だったためです。同作品の内容も、数ある人気作品から内容を剽窃、盗用したものに相違ありません。
加えて、病気の女性のためなどと、嘘のエピソードで皆様の同情心を煽り…』
どうやら、あの話も嘘だったらしい。話題性だけで人気を得たとはいえ、そこまでして人気を得たかったのだろうか。
『ちょ、ちょっと先生! 何を勝手なことを仰っているんです!』
『オイ、この会見は中止だ! 解散、解散…!』
そう考えていると夏芽の横から編集者らが現れ、解散を促し始める。自社のスキャンダルの種は消しておきたいのだろう。
『…下がっていてください。これは! 僕なりの、けじめなんだ!』
夏芽はそう言い放つ。このやり取りを見て、会見に来た記者たちも何かしら疑問に思っているようだ。
中でも、僕らよりとは言わないが真実に近そうな推察を口にした記者もいる。
そんな中、仲間の声が記者会見場にこだました。
彼ら――蓮さんと祐介さんは、カメラに映りそうな位置に立ち、夏芽らに向かい合っている。
『な、なんだ君たちは…』
『…俺は許さないぞ』
『君は…パーティーの時の……。あの時は、本当に…すまなかった』
『逃げることは許さないぞ、夏芽安吾。帰ってくるんだろうな?』
『え…?』
『文壇に戻った時には…他でもない、
目を見張る夏芽。自分を見てもらいたいという想いは、シャドウを介して伝わってしまったのだから無理はないだろう。
『次は、みんなに誇れるような小説を読ませてくれるんだろう!?』
『待っているぞ』
『…ありがとう。ありがとう、ございます』
『なんだあの子たち…?」
訝しむ記者の一人をよそに、夏芽はマイクに向き直った。
『私は、この件を反省した後、いつか必ず戻ってまいります。たった一人でも、私の物語を読んでくれる人がいる限り。
僕は――ずっと、小説を書き続けたい。かつて僕が祖父の小説によって救われたように、誰かの心を救えるような……そんな作品を…!』
立ち上がる夏芽へ再びフラッシュが湧き、会見はそこで終わった。
◇
「…ったく、会見に乱入とは恐れ入ったぜ。無茶してくれやがる」
記者会見場の外で、善吉さんはそう口にした。
「…すまない。どうしても声をかけておきたかった」
「ま、いいけどよ。
じゃ、俺は行くぜ。夏芽安吾の事情聴取をしなきゃならん」
「そっか…。謝罪して終わりじゃないんだもんね」
「善吉が仕事してる! なんかホントの警察っぽい!」
「ぽいじゃなくて警察だ。すぐ済むから、先に車に戻って待ってろ」
善吉さんはそのまま向かっていく。自分たちも引き上げることにした。
◇
「…と、ここまでが夏芽の自供内容だ」
アジトに戻って暫く、善吉さんが自供内容と彼のスマホを持ってやってきた。その内容だが――
「
言っていたことはアリスと概ね同じである。
「夏芽のスマホも、アリスのと同じだな。EMMAも本体も特に異常なしだ」
「また収穫なしかよ…」
「収穫なしとは言ってない。例によって誰かが覗いてた痕跡はあったぞ」
双葉の分析結果もそんな感じだ。
「そこも含め、アリスと似てますねー…」
「アリスのスマホを誰かが監視してたってヤツだよね?」
「夏芽にも仕込まれてたのか?」
「で? 相手はわかるか?」
「…スマン、わからん。痕跡があるだけだ」
「アリスもナツメも…何者かに監視されていた…か。なあゼンキチ、警察はそれ知ってたか?」
疑問を呈するモルガナだが、訊かれた善吉さんは首を横に振る。監視者自体、双葉が見つけてくれて発覚したものらしい。
「EMMAを使っていること以外で、アリスとナツメの共通点は、この監視者だけだ。
それを知らなかった警察が、どうして一連の事件が同一犯だと思ったんだ?」
「まあ今回は色々と特殊だったが…主に
「時期?」
「どの改心事件も似たような時期…ここ3ヵ月の間に起こってる。言わなかったか?」
「3ヵ月前っていうと、EMMAがリリースされた頃だな」
「母さんが事件に巻き込まれたのも、爺ちゃんがサイン会でキーワードを貰ったのも2ヶ月前…大体同じですかね?」
「まあEMMAが犯行に使われてんだから、そうなるわな」
「誰かが悪用しているのか…?」
「ありえるけど、第3者がやるのは相当ハードル高いぞ」
「やっぱ作った会社が怪し過ぎんだろ。確かマンボーだっけ?」
「マディスですね。合ってんの『マ』だけ…」
「一応そっちのこともアレコレと調べちゃいる。
だが、相手は世界的大企業だ。理由もなく踏み込むわけにもいかなくてな」
「何も怪しい点は見つかってないんですか?」
「ああ。今のところ、関係者を探ってみても、怪しい情報は出てこない。
その監視者ってのがマディスの関係者なら、立派な証拠として踏み込めるんだがな…」
そこまで推察した善吉さんは一呼吸置き、
「…お前らはこの事件、黒幕がいると思ってんのか?」
「それはまだわからん。共通点もあるが、別々の事件かも知れないしな」
「…他の事件も調べて、共通点を見つけていくしかねえだろうな。
捜査の基本だ。共通点とそうでないものを増やして絞り込む。今は事件を1つ1つ追っていくのが一番の近道だろうぜ」
「…確かに、今は俺たちにできることをしていくしかなさそうだな」
「他のジェイルや王を調べていけば、新しいこともわかるかも知れないしね」
祐介さんや真さんは賛成らしい。まぁ、僕もそうなのだが。
「んじゃ俺は、先に札幌へ向かって本来のターゲットの周辺を洗っておく。
8月8日に札幌で待ち合わせるぞ。当日また連絡する」
「3日後…車なら余裕で着けるわね…」
「別に急ぐ必要はねえ。それまでターゲットは日本にいないからな。
……そういや、七夕祭りが近くなかったか? 仙台の七夕祭りは有名だぞ。美味いもんが揃い踏みってな」
「確かに、あちらこちらに見事な飾り付けがされていたな…」
「とにかく3日後だ。忘れんなよ」
話はこれで人区切りとなり、アジトの中は怪盗団の面々だけになった。
「…休め、ということでしょうね」
口を開いた真さんはそう言う。案外、善吉さんも素直な人間ではないらしい。
「…オッサン、意外といいとこあんじゃん」
「じゃあ、せっかくだし浴衣来て七夕祭りに行かない?」
「浴衣といえば、去年の花火大会の日は雨に降られて散々だったわね」
「だから浴衣リベンジ! それに、あの時はまだ双葉も春も、翼くんもいなかったし」
「賛成! 浴衣でお祭りなんて素敵!」
「そうしようか」
「じゃ、決まりな。ソフィア、浴衣売ってる店たのむ!」
双葉がそう頼むと、ソフィアがすぐに反応した。
「4軒発見。案内は任せとけ」
-8月6日(日)-
夜、祭りの会場。昼間にみんなで浴衣を買いに行き、男性陣とモルガナは先に会場に到着していた。周りを覗くと、見渡す限りに屋台と群衆が広がっている。
「すっげー、屋台だらけじゃん!」
「さすがは仙台の七夕祭り、賑わっているな」
「凄いでしょう? こっちじゃ『たなばたさん』って言うらしいです。政宗様の時代に始まった祭りだとか」
「へー、あの銅像のオッサンか」
「オッサンと呼ぶな。奥州の雄、独眼竜・伊達政宗公だ」
「どんだけ気に入ってんだ…家来かよ」
竜司さんのツッコミには思わず同意。だが、夏休みの前から度々布教していたからこちらにも非があるようにも感じる。だが後悔はしていない。
「これはどの屋台から行くべきか迷うな。どうする、レン?」
「色々あるが…やはりお面が気になるな」
手にした団扇を煽りながらそう答えている。
「ああ、異世界で馴染みがあるせいか、どうしても目が行くな」
「俺はもう買ったぜ? ガキの頃みたいで懐かしいわ」
確かに、既に買っているようだ。浴衣も相まって結構似合う。
「てか、あいつらまだかよ?」
「レディは支度に時間がかかるのさ。むさ苦しいオマエらと違ってな」
「お前が一番だろ。毛のカタマリだし」
「パツキンむしるぞコラ!」
なんだこのやり取り。遠目にみながら猫と金髪ヤンキーの会話を暫く見ていると、
「お待たせ~!」
女性陣も到着したよう。
「おぉ~アン殿! 似合ってるぜ~!」
「へへ、ありがとモルガナ」
「ごめんね待たせて。帯結ぶのに時間かかっちゃって」
「待った甲斐があったな」
「ありがとう。そう言ってもらえると光栄ね」
「やはり絵になるな。むさ苦しい空気が一気に涼やかになった」
「どうせ俺らはむさ苦しいっすよ…」
「てか竜司、似合ってんじゃん。制服よりいいかも!」
「大きなお世話だっての!」
「でもそのお面のチョイスはセンスあるぞ。イエローは夏によく似合う。
わたしも水風船買ってきた! やっぱ祭りはコレがないとな」
ウキウキしながら言う双葉だが、それが自分を含め軽い地雷になった…
「え、
「いや、
「ちょっと待ってよ、
「いや…水風船…」
「レン、オマエはどう呼んでるんだ?」
「ヨーヨーか水ヨーヨーだな」
「それってどっち…?」
「ふふっ、みんな楽しんでるわね。私たちも負けてられないわ。屋台で何か食べましょうか」
「うん、いい匂いでお腹空いちゃった」
「見ろ! 焼きそば、焼き鳥、かき氷の定番から、東北名物こんにゃく串までなんでもござれだ!」
「いよっし! じゃあ突撃ー!」
自然と話題は祭りのことになり、屋台の方へと向かっていく女性陣。
「ワガハイたちも行こうぜ。すっかり腹が減っちまった」
「だな、片っぱしから食い尽くす!」
「もはや七夕は関係ない気はするが…異論はない」
「私も祭りに興味がある。金魚すくいとか見せてくれ、翼」
勿論と大きく頷き、みんなについて行く。そして――
各々がバラバラになってこの祭りを楽しむことになった。
◇
「なーなー、次はあれとかどうだ?」
「賛成」
現在、露天が商店街のように立ち並ぶ場所の一角で、双葉と行動していた。勿論ソフィアも一緒である。
バラバラになって行動するとはいえ、ぼっちで行けとは誰も言っていない。双葉が誘ってきたのもあるし、僕自身も乗り気なのだから。
双葉が指さした先は射的。よく見るライフルのレプリカが4本ほど並び、鈍く光る小皿には小さなコルクが5個横たわっている。
射的は僕も好きだ。遊びとはいえ実銃を構えることができる、非日常の2段構え。そして的に当てたときの達成感がそこにはある。FPSはやる口だし、異世界で実際に銃を扱うわけだから即答するのは当然だった。
「すみませーん、一回分お願いします!」
射的屋のおじさんに代金を払い、一丁を手に取る――
「なあ、私にも見せてくれ」
としようとしたが、スマホからソフィアの声が。そういえばと心に呟き、双葉にスマホを持ってもらうことにした。
◇
「いやー少年、全部落とすとは恐れ入ったよ!」
「いえいえ、それほどでも」
結果だが、命中率100%。実際に何かを撃つと良い経験になるらしい。射的屋のおじさんも賞賛している。
「謙遜なんてしてないでさぁ! 欲しいもの、オマケに何か持っていきなよ!」
「えー…」
別に、欲しかったものがあったわけでもない。ただ撃ちたかったからやっただけで、落としたのも無作為に選んだだけだ。
「…双葉、何か欲しいもの、ある?」
「うぇっ!? えーと、じゃあ……あれ」
拍子抜けした表情を見せる双葉。ちょっと間を置いて指さしたのは、仙台限定のフェザーマンフィギュアだ。何故こんなものがあるのかと思いつつも狙わなかったものだが、欲しいものは欲しいのだろう。
「じゃあ、あれで」
「あいよ」
フィギュアを取り、僕に渡される。それはすぐさま双葉の手へと渡り、目を輝かせた。
「二人とも仲良いんだねぇ。兄妹?」
「「……」」
揃って言葉に詰まる。身長差はあるが同年齢だし、かと言って否定したら要らぬ誤解を招きかねない。
結局その答えは有耶無耶にし、その場を去った。
◇
射的屋を去って暫く。
「そういえばさ、翼のその浴衣めっちゃ似合ってるよな! 竜司よりはイイ。実家から持ってきたのもあるのか…?」
「おぉーそれは有難い。確かに、これは毎年の夏祭りように買ってくれたやつだからね。」
そこで、浴衣を取りに再び実家を訪れたときの爺ちゃんの言葉が不意に蘇る。
…彼女連れてこいって言われても、いないんだよなぁ…。明日出発だし、どうしたものか。
「……翼、ここってどこなんだ?」
「…? どしたの、双葉」
実はまだ二人+ソフィアで露天を改めて歩いているのだが、唐突に双葉が言い出した。
「あいや、これって集合場所どこだったっけって…」
「…………」
言われてみれば、二人で露天巡りをしている間に地図とか見なかったような…
「……僕たち、迷った?」
「かもな」
スマホからソフィアもツッコんでいる。
「どどど、どうする!? みんなとの合流ハードモードだぞ!?」
「ちょっと待て、位置情報は……」
数秒もすればすぐさま地図アプリが開かれ、点が2つ。
「とりあえずここの位置と集合場所を出しておいた。方向を合わせて行けば合流できるはずだ」
おおよその方向をカンで見てみる。だがその方向は人でにぎわっており、通るのは難しいわけで。
「……これはー…」
双葉が唸るが、これは同意だ。……選択肢はアレしかないのか。
「双葉、これ抜けるよ」
「えぇ!? でも、途中ではぐれるのは…」
「だよねー……
……手、繋いで行く?」
「んー……なら、後で色々分けてくれよ! 仙台の美味いもん、わたしも色々食べたいからな!」
「現金だなぁ……」
とりあえず荒っぽくも双葉の手を取り、足早にその方向に向かう。
……顔が熱を帯びている気がするのは、気のせいだろうか。それとも暑さ?
ちなみにその後。
「……全然違う方向だった…」
「何やってんだよ翼ぁ…!」
「…すまない。周辺のモノからもっと方向を推察すればよかった。」
行ったと思えば実は全くの別方向であり、双葉にポカポカ叩かれて同じことになったのは別の話。
To Be Continued…
次回で仙台編終わります!(素振り)
京都編の鉄拳制裁イベント、オリ主くんは…(双葉とは付き合ってるものとする)
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