Persona 5 Scramble -Eleventh Member-   作:週末ラテ少年

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#20 Scientist And…

-8月7日(月)-

『…皆さんも知ってのとおり、人生とは、日々『選択』の繰り返しです。

今日の朝食は? どの服を着て家を出よう? そんな、ほんの些細な『選択』に始まり…

研究分野、就職先、結婚相手、人生に大きな影響をもたらすような『選択』…

そう。人は常に『選択』の答えを…『最適解』を求めて生きています。

マディスは、そんな皆さんを、AIという切り口から手助けしたいのです。

EMMAは、人々の生活と社会に寄り添う新しいAIの形をご提案します。

正確に、より多くの情報を収集、処理し、皆さんの『選択』の一助となるような…』

 

 

 東鳳大学の講堂、その中心でそう語るのは近衛明(コノエアキラ)、EMMAの運営を行うマディス社の社長その人である。祭りの後に善吉さんから連絡が来たのだが、それが「明日、東鳳大学でマディスの社長が講演に来る」というものだったのだ。

 というわけで休暇モードから一転、何か裏がないか探りを入れるために講演に来たわけだ。

 

 

「…いかにもやり手の社長って感じだな」

 

「…凄いね…堂々としていて、自身に満ち溢れてる感じで…

会社の方針や展望もきちんと示して、聞く人を引きつけてる…」

 

 

 社長令嬢の春さんもそう言う。確かに、あの姿勢や声というか。なんというか、気迫や信念のようなものを感じた。それも、共感できそうな。

 

 

「確かにそうね…特に怪しい事は言ってないみたいだけど…」

 

「EMMAのおかげで、マディス社の株は鰻登り。今じゃ間違いなく日本有数の大企業だ…」

 

「んー…そんな有名企業が黒幕だとしても、メリットはあるんですかねー…」

 

「だが、EMMAがジェイルに関係しているのは確かだ。なにしろ入り口だからな…」

 

「直接的にせよ、間接的にせよ…マディスが無関係とは思えないわね…」

 

「なあレン。この一連の事件の真犯人、つまり()()が別にいると思うか?」

 

 

 みんながマディスに向けて思考を巡らす中、不意にモルガナが話しかける。講堂の中で猫が小声で鳴いているわけだが、大丈夫だろうか…

 そしてその質問に対し、蓮さんは肯定で返している。

 

 

「ワガハイも…いると思う。

王を改心させても、ネガイを開放しても、あのジェイルって異世界は消えることが無い。きっとまだ何かが残っていて、それがあの空間を維持させているんだ…」

 

「それが黒幕…という事?」

 

「わからねえ。ただ、肝心の王が、EMMAのことをよく知らなかっただろ?」

 

「確かに…アリスも夏芽も、供述内容は同じだった…」

 

「…だとすれば、王以外にEMMAを利用しているヤツが居るのかもしれない」

 

「それがマディス社の誰かなのか…」

 

「謎の監視者なのか…」

 

「他ならぬ社長のこいつか…」

 

「はたまた、それ以外の第三者か…」

 

「結局、オッサンの話に戻るんじゃねーか? 色々と事件を解決して、情報を増やしてくしかねーってさ。

俺ら、心の怪盗団がする事は変わらねえよ」

 

「竜司、珍しくいいこと言うじゃん」

 

「そうね…その意味ではこの講演も貴重だわ。最後までちゃんと聞いておきましょう」

 

 

 本当に珍しく良いことを口にした竜司さん。真さんの言う通り、なんとか寝ないように頑張って講演を聞くようにした。

 ……近くで寝息のようなものが聞こえた気がしたのは黙っておこう。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 しばらくして、講演は予定通り終了。やはり怪しいことは口にしておらず、誰がどう見ても普通の講演のようだった。

 そして寝息の本人だが――

 

 

「よく寝たわー…で、シャチョーは何だって?」

 

「…シバいていい?」

 

「どーぞどーぞ」

 

「何でだよっ!」

 

「いや、ダメでしょうよ…。みんなが聞いてる中で寝るなんて…」

 

 

 やはりしれっと寝ていた。こういうところが竜司さんらしい…

 

 

「とりあえず、怪しいような話は無かったわね。まあ、簡単に出るはずもないけど…」

 

「つーか、腹減ったし帰らねえ? あの社長、話なげーんだよ」

 

「確かに、それも―――」

 

「ねえキミたち…さっきの話、本当なのかい?」

 

 

 と、言いかけたときに女性の声が。しかも、どこかで聞き覚えのあるソレだった。

 一斉に振り向いた先には、白衣を着た女性。確か……一ノ瀬さんだったか。

 

 

「キミたちが心の怪盗団だったの?」

 

「ううぇっ!?」

 

 

 …!? この人、どこからそれを!?

 ちょっと気を抜けば杏さんと同じことを言いそうだ。

 

 

「貴方は牛タン屋の…」

 

「一ノ瀬さん…ですよね?」

 

「き、聞かれてた!?」

 

「いやぁ、猫の声には敏感でね。もう講演の話よりそっちが気になっちゃって」

 

「モ…モナーッ!」

 

「ワ、ワガハイッ!? いや、でも実際に聞かれたのはオマエらの声だろっ!」

 

「でも、講堂の中に猫の声ってのも……ハイ」

 

「とにかく、どーすんだよこれっ!?」

 

「…大人しく白状するしかないだろうな」

 

 

 と蓮さんが決めたその時、一ノ瀬さんが突っ込んできた。

 

 

「あー、ストップ、ストップ! 大丈夫だからっ!

とにかく、ここはもうすぐ閉まる。詳しい話は外でしようよ…」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 蒼葉山公園にいったん集まり、改めて一ノ瀬さんと話をする。

 まとめると、

 

・僕らの話は講演が始まってからのすべてを聞いていた

・東鳳大学にてAIを専門にしており、EMMAのベースを作ったのは一ノ瀬さんである

・金欠もあってマディスに売り、売った後のことはわからない

・EMMAを売ったことでマディスと縁ができ、今回の講演もそれによるもの

・彼女も招待されており、仕方なくあの場所で聞いていた

 

 とのこと。

 そこまで聞いたところで、どうしようか話をすることにした。

 

「こいつあ…予想もしない展開だな…」

 

「ベースを作ったって話、本当かな?」

 

「けど、マディス社の社長さんが直接講演に来るなんて、凄いと思うよ。

あの人の依頼でそうなったのなら、それだけ認められる人って事じゃないかな?」

 

「確かに…招待までされてたしな…」

 

「どうする? EMMAについてなら、願ってもない情報源だぞ?」

 

「裏を返せば確かに…ですが、流石にリスクが大きいのでは?

怪盗の視点から見てみれば、一ノ瀬さんは完全に信頼できる人とも言い難いですよ」

 

「わたしらが怪盗ってのもバレてるみたいだからな…」

 

「どうするよ? 蓮」

 

 

 話を竜司さんから振られる蓮さん。「大人しく真実を話そう」と答える。

 

 

「無理に隠そうとしたところで手遅れか…」

 

「ならばいっそ、引き入れて情報を聞き出すか。虎穴に入らずんば虎子を得ず、だ…」

 

 

 祐介さんから僕とは逆の提案。みんなはその方針で動くようだ。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 一ノ瀬さんに合流し、怪盗団のこと、異世界のことを全て話した。すべて聞いた一ノ瀬さんは驚いた表情を見せ、

 

 

「その話、本当なのかい?」

 

「いや、まぁ、信じられないだろうけどよ…」

 

「なあ、善吉の時みたいに、異世界に連れて行けば…」

 

「凄い! やはりそういう世界は存在してたんだ! いや、そうでないと確かに説明できないっ!」

 

 

 興奮したような声を上げた。しかも信じていそう。解せぬ。

 

 

「まさかEMMAがその入り口として機能してるなんて…いや…可能性を考えれば…」

 

「あれ…納得してる?」

 

「いやぁ、めーっ…ちゃくちゃ興味あるよ! 何だい!? その超展開!」

 

「はは…ま、まぁ、信じてもらう手間が省けて良いか…」

 

「どっかの公安のオッサンとは大違いですね…」

 

「一ノ瀬さんは、なぜEMMAが入り口になっているのか、心当たりありませんか?」

 

「いやいや、そんなの知らないよ。異世界があるのだって驚きだのに、そんな機能、思いつきもしない」

 

「…だよなあ…だとすると…あの機能は誰かが後付けしたのか…?」

 

「ネガイを奪って人を『改心』させてしまう世界か…うーん…興味が尽きない…

あ、いやいや、ここは悲観すべきか…わが子が悪用されてるんだし…」

 

 

 表情をコロコロと変える一ノ瀬さん。そんな彼女に向け、蓮さんは「協力してほしい」と頼み出た。

 

 

「ええ。私たちと取引をしませんか?」

 

「おお、いいね。怪盗っぽいじゃないか! 私としても是非手伝わせて欲しい。

全く無関係な話でもなさそうだし、何よりこのまま放置では好奇心で死にそうだっ!

でっ、私は何をすればいい? 何を調べさせてくれるのかな?」

 

 

 で、この乗りようである。ノリノリである。解せぬ。善吉さんとは大違いだな…

 

 

「そうね…今、一般に出回っているEMMAの事を調べて下さい。一ノ瀬さんが作ったものと、何が違うのか…」

 

「なるほど。要は今のEMMAの秘密だね。誰かが手を加えたなら、その正体も知りたいと」

 

「あ、それと、確か、あっちで手に入れた謎のジャンク品があったよな?

中身の解析とか頼めたら、あの世界の正体がわかるかも」

 

「おお、なんか色々渡してもらえるのかな?

いいね、いいよ、もちろんだとも。資料として買い取らせてもらうよ」

 

 

 おっと、ここでジャンク品が出るのか。

 売り物にもならないし、ジェイルで拾ったものだからと一応で取っておいたのだが、ここで使うことになるとは。

 買い取るということは、それなりの値段で買ってくれるのだろう。ジェイルで戦うときの装備のための良い軍資金になりそうだ。

 

 

「取引なら、私たちからも何か出さないとね。えっと…」

 

「いや、今の内容で十分だよ! グイグイと研究意欲が湧いてくる!」

 

 

 真さんの言葉を遮るように一ノ瀬さんが挟む。一応、取引は成立となった。

 

 

「あっ、そうだ。一ノ瀬さんはAIの専門家ですし、ソフィアのことも聞いてみますかね?」

 

「え? ソフィア?」

 

 

 僕が提案すると、一ノ瀬さんは途端に目の色を変える。ソフィアに会わせるため、スマホを見せた。

 

 

「よ。私は人の良き友人『ソフィア』だ。よろしくな一ノ瀬」

 

「これが…ソフィア…? へぇー…よろしく」

 

「反応薄っ!」

 

 

 確かに、今までとは打って変わって興奮した様子は微塵も感じられない。

 わざとらしいとさえ思えてきた。

 

 

「あ、いやいや、ちょっと今までの情報量が多すぎて…流石の私も混乱してきた…」

 

「渋谷の方の異世界で見つけたAIなんですが…何か心当たりはありませんかね?」

 

「いや私もわからないけど…後でコードでも送っておいてくれる?」

 

「ほ? お、おー! わかった!」

 

「これ、私の連絡先教えとくから!」

 

 

 双葉に自身のスマホを見せる一ノ瀬さん。双葉は驚いた様子だが、自分のスマホに問題なく入力している。

 

 

「それじゃあ! これからの展開を楽しみにしているよ! じゃあね!」

 

 

 その言葉と共に、彼女は嵐のように去っていったのだった。

 

 

「な…なんか、急に帰っちまったな…」

 

「ソフィアのこと、何かわかるとよかったのにな…」

 

「私なら大丈夫だ。皆の役に立てればいい」

 

「今は仕方ねえか…」

 

「…つか突撃されて忘れてたけどよ、次、札幌だろ?」

 

「ああ、ワガハイたちも早く出発しよう。北海道でゼンキチが待ってるぜ」

 

「おう、待ってろよ、北海道!」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 一度解散し、各々が仙台を発つ前の準備を始める。そんな中の僕と双葉だが、公園を離れて住宅街にいた。

 

 

「なあ、わたしで本当にいいのか…?」

 

「いいというか、双葉以外にこんなの頼めないって…」

 

 実は頼んだのは解散直後なのだが、その内容は「彼女のフリをしてくれ」というもの。

 爺ちゃんから「仙台を離れる前に彼女を連れてきてくれ」と、いないのに頑なに言われたものだから、今更「いない」なんて言えなくなってきたのだ。

 ついでに、昨日の祭りのために借りた浴衣も返そうと思っている。

 

 

「…っと、着いたよ」

 

「…デカ過ぎんだろ…」

 

 

 そうこうしているうちに到着。初めて来た双葉は門の大きさに驚いているよう。そして僕だが、やや震えた手でインターホンを押した。

 

 

「ウェルカム!」

 

 

 暫くすると、爺ちゃんがどこかのスペイン人のようにして迎え入れる。すぐに客間に案内し、お茶を入れに引っ込んでいった。

 

 

「手際良いな、翼の爺ちゃん。慣れてるのか?」

 

「うーん…多分。仕事柄とかじゃないかな?」

 

 

 そうこうしているうちに爺ちゃんも戻ってくる。取り敢えずで話をすることに。

 

 

「…連れてこいとは言ったんじゃが、何から話そうかのぉ…」

 

 

 勿論最初に口を開いたのは爺ちゃんだが、僕らからしてみれば早く帰りたい。

 

 

「あーそういえば、昨日借りた浴衣だけど――」

 

「翼が持ってても良いぞ。東京で夏祭りがあった時、何かと不便じゃろう? こっちに来るときは翼が持ってくりゃよかろう」

 

 

 ちょっと声が棒読み気味てるが、ばれていなさそうだ。浴衣も話はついたから安心だな。

 …それはそうとして早く戻りたい。彼女(偽)だと気づかれればたまったもんじゃないし。

 

 

「そうじゃ、えーっとそっちの…」

 

「さ、佐倉双葉であります!」

 

「佐倉ちゃんじゃな。……翼のことは、()()()()()どう思ってるんじゃ?」

 

「えちょ、それはさすがに……。第一わたしらは――」

 

 

 そこまで言いかけたところで双葉は口を噤む。

 

 ――付き合ってすらいない。大方、そこまで反射で言いかけたところなのだろう。

 ……まぁ、友達としてちょっとは気になるのだが。

 

 横を見ると、訊かれた双葉の頬は少しだけ赤くなっており、

 

 

「……翼は、わたしよりもずっとすごい。コミュ力あるし、大体敬語だし、色々わたしよりすごい」

 

 

 呟くように口を開いた。あと、敬語のことは要らなくない?

 

 

「でも、一緒にいたいときは居てくれるし、翼からも面白いこと提案してくれるし……

……翼と一緒に居れて、わたしはすごく嬉しいぞ!」

 

 

 何か、胸が熱くなるような感覚がした。

 双葉の本音なのかは確かではないし、紡がれる言葉は短かったのだが、僕の心に響いたのは間違いなかった。

 

 

「そうかそうか。なら、将来も安泰じゃろうなぁ…

よし! わざわざ来てくれてありがとうな!」

 

 

 そして言葉を聞いた爺ちゃんだが、今ので満足した模様。「僕は?」と思ったが、訊かれないだけマシだったということで。

 もうみんなのところに戻っても良さそうで、門まで送り届けてくれた。

 

 

「ほっほっほ、良い旅を!」

 

「じゃーねー! また今度ー!」

 

 

 大きく手を振り合い、蒼葉山公園に戻る。

 

 

 ―――のだが、何かよく分からない感情が心に残った。

 双葉が僕について言及したとき、ただ嬉しかった。だが、本当にそれだけなのか?

 

 一度双葉の方を見てみる。のだが、彼女の顔はこちらからは見えず。うつむいた感じだった。

 

 

 

 そんなことも悠長に考える時間なぞ僕らにはなく、すぐに合流、北海道に向けて出発することになった。

 

 

 

 

 この感情は、一体―――

 

 

 

Ep.2 Walled City Coverd in Ostentation

                 Complete

 

Continued on next episode…




というわけで、仙台編終了です!
札幌では二人の関係を大きく動かすので、ぜひお楽しみください!

京都編の鉄拳制裁イベント、オリ主くんは…(双葉とは付き合ってるものとする)

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