Persona 5 Scramble -Eleventh Member- 作:週末ラテ少年
-8月7日(月)-
『…皆さんも知ってのとおり、人生とは、日々『選択』の繰り返しです。
今日の朝食は? どの服を着て家を出よう? そんな、ほんの些細な『選択』に始まり…
研究分野、就職先、結婚相手、人生に大きな影響をもたらすような『選択』…
そう。人は常に『選択』の答えを…『最適解』を求めて生きています。
マディスは、そんな皆さんを、AIという切り口から手助けしたいのです。
EMMAは、人々の生活と社会に寄り添う新しいAIの形をご提案します。
正確に、より多くの情報を収集、処理し、皆さんの『選択』の一助となるような…』
東鳳大学の講堂、その中心でそう語るのは
というわけで休暇モードから一転、何か裏がないか探りを入れるために講演に来たわけだ。
「…いかにもやり手の社長って感じだな」
「…凄いね…堂々としていて、自身に満ち溢れてる感じで…
会社の方針や展望もきちんと示して、聞く人を引きつけてる…」
社長令嬢の春さんもそう言う。確かに、あの姿勢や声というか。なんというか、気迫や信念のようなものを感じた。それも、共感できそうな。
「確かにそうね…特に怪しい事は言ってないみたいだけど…」
「EMMAのおかげで、マディス社の株は鰻登り。今じゃ間違いなく日本有数の大企業だ…」
「んー…そんな有名企業が黒幕だとしても、メリットはあるんですかねー…」
「だが、EMMAがジェイルに関係しているのは確かだ。なにしろ入り口だからな…」
「直接的にせよ、間接的にせよ…マディスが無関係とは思えないわね…」
「なあレン。この一連の事件の真犯人、つまり
みんながマディスに向けて思考を巡らす中、不意にモルガナが話しかける。講堂の中で猫が小声で鳴いているわけだが、大丈夫だろうか…
そしてその質問に対し、蓮さんは肯定で返している。
「ワガハイも…いると思う。
王を改心させても、ネガイを開放しても、あのジェイルって異世界は消えることが無い。きっとまだ何かが残っていて、それがあの空間を維持させているんだ…」
「それが黒幕…という事?」
「わからねえ。ただ、肝心の王が、EMMAのことをよく知らなかっただろ?」
「確かに…アリスも夏芽も、供述内容は同じだった…」
「…だとすれば、王以外にEMMAを利用しているヤツが居るのかもしれない」
「それがマディス社の誰かなのか…」
「謎の監視者なのか…」
「他ならぬ社長のこいつか…」
「はたまた、それ以外の第三者か…」
「結局、オッサンの話に戻るんじゃねーか? 色々と事件を解決して、情報を増やしてくしかねーってさ。
俺ら、心の怪盗団がする事は変わらねえよ」
「竜司、珍しくいいこと言うじゃん」
「そうね…その意味ではこの講演も貴重だわ。最後までちゃんと聞いておきましょう」
本当に珍しく良いことを口にした竜司さん。真さんの言う通り、なんとか寝ないように頑張って講演を聞くようにした。
……近くで寝息のようなものが聞こえた気がしたのは黙っておこう。
◇
しばらくして、講演は予定通り終了。やはり怪しいことは口にしておらず、誰がどう見ても普通の講演のようだった。
そして寝息の本人だが――
「よく寝たわー…で、シャチョーは何だって?」
「…シバいていい?」
「どーぞどーぞ」
「何でだよっ!」
「いや、ダメでしょうよ…。みんなが聞いてる中で寝るなんて…」
やはりしれっと寝ていた。こういうところが竜司さんらしい…
「とりあえず、怪しいような話は無かったわね。まあ、簡単に出るはずもないけど…」
「つーか、腹減ったし帰らねえ? あの社長、話なげーんだよ」
「確かに、それも―――」
と、言いかけたときに女性の声が。しかも、どこかで聞き覚えのあるソレだった。
一斉に振り向いた先には、白衣を着た女性。確か……一ノ瀬さんだったか。
「キミたちが心の怪盗団だったの?」
「ううぇっ!?」
…!? この人、どこからそれを!?
ちょっと気を抜けば杏さんと同じことを言いそうだ。
「貴方は牛タン屋の…」
「一ノ瀬さん…ですよね?」
「き、聞かれてた!?」
「いやぁ、猫の声には敏感でね。もう講演の話よりそっちが気になっちゃって」
「モ…モナーッ!」
「ワ、ワガハイッ!? いや、でも実際に聞かれたのはオマエらの声だろっ!」
「でも、講堂の中に猫の声ってのも……ハイ」
「とにかく、どーすんだよこれっ!?」
「…大人しく白状するしかないだろうな」
と蓮さんが決めたその時、一ノ瀬さんが突っ込んできた。
「あー、ストップ、ストップ! 大丈夫だからっ!
とにかく、ここはもうすぐ閉まる。詳しい話は外でしようよ…」
◇
蒼葉山公園にいったん集まり、改めて一ノ瀬さんと話をする。
まとめると、
・僕らの話は講演が始まってからのすべてを聞いていた
・東鳳大学にてAIを専門にしており、EMMAのベースを作ったのは一ノ瀬さんである
・金欠もあってマディスに売り、売った後のことはわからない
・EMMAを売ったことでマディスと縁ができ、今回の講演もそれによるもの
・彼女も招待されており、仕方なくあの場所で聞いていた
とのこと。
そこまで聞いたところで、どうしようか話をすることにした。
「こいつあ…予想もしない展開だな…」
「ベースを作ったって話、本当かな?」
「けど、マディス社の社長さんが直接講演に来るなんて、凄いと思うよ。
あの人の依頼でそうなったのなら、それだけ認められる人って事じゃないかな?」
「確かに…招待までされてたしな…」
「どうする? EMMAについてなら、願ってもない情報源だぞ?」
「裏を返せば確かに…ですが、流石にリスクが大きいのでは?
怪盗の視点から見てみれば、一ノ瀬さんは完全に信頼できる人とも言い難いですよ」
「わたしらが怪盗ってのもバレてるみたいだからな…」
「どうするよ? 蓮」
話を竜司さんから振られる蓮さん。「大人しく真実を話そう」と答える。
「無理に隠そうとしたところで手遅れか…」
「ならばいっそ、引き入れて情報を聞き出すか。虎穴に入らずんば虎子を得ず、だ…」
祐介さんから僕とは逆の提案。みんなはその方針で動くようだ。
◇
一ノ瀬さんに合流し、怪盗団のこと、異世界のことを全て話した。すべて聞いた一ノ瀬さんは驚いた表情を見せ、
「その話、本当なのかい?」
「いや、まぁ、信じられないだろうけどよ…」
「なあ、善吉の時みたいに、異世界に連れて行けば…」
「凄い! やはりそういう世界は存在してたんだ! いや、そうでないと確かに説明できないっ!」
興奮したような声を上げた。しかも信じていそう。解せぬ。
「まさかEMMAがその入り口として機能してるなんて…いや…可能性を考えれば…」
「あれ…納得してる?」
「いやぁ、めーっ…ちゃくちゃ興味あるよ! 何だい!? その超展開!」
「はは…ま、まぁ、信じてもらう手間が省けて良いか…」
「どっかの公安のオッサンとは大違いですね…」
「一ノ瀬さんは、なぜEMMAが入り口になっているのか、心当たりありませんか?」
「いやいや、そんなの知らないよ。異世界があるのだって驚きだのに、そんな機能、思いつきもしない」
「…だよなあ…だとすると…あの機能は誰かが後付けしたのか…?」
「ネガイを奪って人を『改心』させてしまう世界か…うーん…興味が尽きない…
あ、いやいや、ここは悲観すべきか…わが子が悪用されてるんだし…」
表情をコロコロと変える一ノ瀬さん。そんな彼女に向け、蓮さんは「協力してほしい」と頼み出た。
「ええ。私たちと取引をしませんか?」
「おお、いいね。怪盗っぽいじゃないか! 私としても是非手伝わせて欲しい。
全く無関係な話でもなさそうだし、何よりこのまま放置では好奇心で死にそうだっ!
でっ、私は何をすればいい? 何を調べさせてくれるのかな?」
で、この乗りようである。ノリノリである。解せぬ。善吉さんとは大違いだな…
「そうね…今、一般に出回っているEMMAの事を調べて下さい。一ノ瀬さんが作ったものと、何が違うのか…」
「なるほど。要は今のEMMAの秘密だね。誰かが手を加えたなら、その正体も知りたいと」
「あ、それと、確か、あっちで手に入れた謎のジャンク品があったよな?
中身の解析とか頼めたら、あの世界の正体がわかるかも」
「おお、なんか色々渡してもらえるのかな?
いいね、いいよ、もちろんだとも。資料として買い取らせてもらうよ」
おっと、ここでジャンク品が出るのか。
売り物にもならないし、ジェイルで拾ったものだからと一応で取っておいたのだが、ここで使うことになるとは。
買い取るということは、それなりの値段で買ってくれるのだろう。ジェイルで戦うときの装備のための良い軍資金になりそうだ。
「取引なら、私たちからも何か出さないとね。えっと…」
「いや、今の内容で十分だよ! グイグイと研究意欲が湧いてくる!」
真さんの言葉を遮るように一ノ瀬さんが挟む。一応、取引は成立となった。
「あっ、そうだ。一ノ瀬さんはAIの専門家ですし、ソフィアのことも聞いてみますかね?」
「え? ソフィア?」
僕が提案すると、一ノ瀬さんは途端に目の色を変える。ソフィアに会わせるため、スマホを見せた。
「よ。私は人の良き友人『ソフィア』だ。よろしくな一ノ瀬」
「これが…ソフィア…? へぇー…よろしく」
「反応薄っ!」
確かに、今までとは打って変わって興奮した様子は微塵も感じられない。
わざとらしいとさえ思えてきた。
「あ、いやいや、ちょっと今までの情報量が多すぎて…流石の私も混乱してきた…」
「渋谷の方の異世界で見つけたAIなんですが…何か心当たりはありませんかね?」
「いや私もわからないけど…後でコードでも送っておいてくれる?」
「ほ? お、おー! わかった!」
「これ、私の連絡先教えとくから!」
双葉に自身のスマホを見せる一ノ瀬さん。双葉は驚いた様子だが、自分のスマホに問題なく入力している。
「それじゃあ! これからの展開を楽しみにしているよ! じゃあね!」
その言葉と共に、彼女は嵐のように去っていったのだった。
「な…なんか、急に帰っちまったな…」
「ソフィアのこと、何かわかるとよかったのにな…」
「私なら大丈夫だ。皆の役に立てればいい」
「今は仕方ねえか…」
「…つか突撃されて忘れてたけどよ、次、札幌だろ?」
「ああ、ワガハイたちも早く出発しよう。北海道でゼンキチが待ってるぜ」
「おう、待ってろよ、北海道!」
◇
一度解散し、各々が仙台を発つ前の準備を始める。そんな中の僕と双葉だが、公園を離れて住宅街にいた。
「なあ、わたしで本当にいいのか…?」
「いいというか、双葉以外にこんなの頼めないって…」
実は頼んだのは解散直後なのだが、その内容は「彼女のフリをしてくれ」というもの。
爺ちゃんから「仙台を離れる前に彼女を連れてきてくれ」と、いないのに頑なに言われたものだから、今更「いない」なんて言えなくなってきたのだ。
ついでに、昨日の祭りのために借りた浴衣も返そうと思っている。
「…っと、着いたよ」
「…デカ過ぎんだろ…」
そうこうしているうちに到着。初めて来た双葉は門の大きさに驚いているよう。そして僕だが、やや震えた手でインターホンを押した。
「ウェルカム!」
暫くすると、爺ちゃんがどこかのスペイン人のようにして迎え入れる。すぐに客間に案内し、お茶を入れに引っ込んでいった。
「手際良いな、翼の爺ちゃん。慣れてるのか?」
「うーん…多分。仕事柄とかじゃないかな?」
そうこうしているうちに爺ちゃんも戻ってくる。取り敢えずで話をすることに。
「…連れてこいとは言ったんじゃが、何から話そうかのぉ…」
勿論最初に口を開いたのは爺ちゃんだが、僕らからしてみれば早く帰りたい。
「あーそういえば、昨日借りた浴衣だけど――」
「翼が持ってても良いぞ。東京で夏祭りがあった時、何かと不便じゃろう? こっちに来るときは翼が持ってくりゃよかろう」
ちょっと声が棒読み気味てるが、ばれていなさそうだ。浴衣も話はついたから安心だな。
…それはそうとして早く戻りたい。彼女(偽)だと気づかれればたまったもんじゃないし。
「そうじゃ、えーっとそっちの…」
「さ、佐倉双葉であります!」
「佐倉ちゃんじゃな。……翼のことは、
「えちょ、それはさすがに……。第一わたしらは――」
そこまで言いかけたところで双葉は口を噤む。
――付き合ってすらいない。大方、そこまで反射で言いかけたところなのだろう。
……まぁ、友達としてちょっとは気になるのだが。
横を見ると、訊かれた双葉の頬は少しだけ赤くなっており、
「……翼は、わたしよりもずっとすごい。コミュ力あるし、大体敬語だし、色々わたしよりすごい」
呟くように口を開いた。あと、敬語のことは要らなくない?
「でも、一緒にいたいときは居てくれるし、翼からも面白いこと提案してくれるし……
……翼と一緒に居れて、わたしはすごく嬉しいぞ!」
何か、胸が熱くなるような感覚がした。
双葉の本音なのかは確かではないし、紡がれる言葉は短かったのだが、僕の心に響いたのは間違いなかった。
「そうかそうか。なら、将来も安泰じゃろうなぁ…
よし! わざわざ来てくれてありがとうな!」
そして言葉を聞いた爺ちゃんだが、今ので満足した模様。「僕は?」と思ったが、訊かれないだけマシだったということで。
もうみんなのところに戻っても良さそうで、門まで送り届けてくれた。
「ほっほっほ、良い旅を!」
「じゃーねー! また今度ー!」
大きく手を振り合い、蒼葉山公園に戻る。
―――のだが、何かよく分からない感情が心に残った。
双葉が僕について言及したとき、ただ嬉しかった。だが、本当にそれだけなのか?
一度双葉の方を見てみる。のだが、彼女の顔はこちらからは見えず。うつむいた感じだった。
そんなことも悠長に考える時間なぞ僕らにはなく、すぐに合流、北海道に向けて出発することになった。
この感情は、一体―――
Ep.2 Walled City Coverd in Ostentation
Complete
Continued on next episode…
というわけで、仙台編終了です!
札幌では二人の関係を大きく動かすので、ぜひお楽しみください!
京都編の鉄拳制裁イベント、オリ主くんは…(双葉とは付き合ってるものとする)
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