Persona 5 Scramble -Eleventh Member-   作:週末ラテ少年

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…ハイ(はい)

ちょっとハイラル冒険し過ぎました…


Ep.3 A Silver World Filled with Gluttony
#21 Boys, Be Ambitious!


-8月8日(火)-

 車中泊での一泊を経て、予定通り札幌に到着。

 

 

「サッポロ、キター!」

 

「札幌中央市の中心部か。周辺の雄大な自然と対照的に、賑やかだな」

 

 

 テンションが上がっているような双葉と、構図を切っている祐介さん。僕としても、本州よりも涼しい気温のお陰で気分が心地よい。

 

 

「んで? 雪祭りってまだやってねーの?」

 

「…それ、ボケてるつもり?」

 

 

 …前言撤回、凍り付いたように固くなったような気がする。凍った空気を戻したいので、取り敢えずソフィアに訊いてみる。

 

 

「それはさておき……ソフィア、ジェイルの反応は?」

 

「…ある。匂いがプンプンする」

 

「…オッサンの言った通りかよ」

 

「となると、ゼンキチが目をつけてるヤツが札幌の王って可能性が高まったな」

 

「とりあえず、情報収集も兼ねて、この辺りを巡りましょうか」

 

「でもその前にお風呂! 昨日、入れなかったし!」

 

「賛成! まずはスッキリしたいよね」

 

「私の出番だな。500m先に入浴施設があるぞ」

 

「流石ソフィア、仕事が速い」

 

「オマエらはお風呂タイムか。その間、ワガハイは情報収集しておく」

 

「モナちゃんは後で、私が身体を洗ってあげるね」

 

「な、なにっ? それくらい自分ひとりで…」

 

 

 春さんの言葉で明らかに狼狽える様子を見せるモルガナ。猫なのだが、言葉がわかるせいか妙にわかりやすい。

 

 

「…猫は濡れるのを嫌う。なるほど、データ通りだ」

 

「ワガハイをそこらの猫と一緒にすんな! データ書き直しとけ!」

 

「そうだ、私も銭湯に入ってみたい。誰かスマホごと中に連れてってくれ」

 

「熱々の湯にスマホって……ぶっ壊れるんじゃね?」

 

「ほら、とにかく行きましょう。ソフィア、案内はお願いね」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 ソフィアの案内で温泉に向かう途中のこと、親子と思わしき家族の声が聞こえてくる。

 普通ならあまり気にしないのだが、それの内容が内容であり――

 

 

おかあさん、果歩ちゃん、よろこんでくれるかな?

 

…ええ。綺麗なお花を見て、ありがとう、って言ってくれてるわ。

 

でも、会えないからさみしいよ。天国は遠くていけないもん…

 

 

 ……光景からして、花を供えているようだ。

 

 

「あそこで、何かあったのかな…?」

 

「お花をお供えしてるね。誰か亡くなったのかも…」

 

「そういえば、ニュースでみたことあるわ。大通公苑で起きた、雪像の崩落事故。

確か、小さな女の子が犠牲になったって。あそこが事故現場なのかしら…」

 

「その子や家族のことを思うと、胸が詰まるな…」

 

「そうだね…」

 

 

 会話を聞いていると、突然スマホが鳴る。「どうした」とソフィアが声をかけてくるが、彼女はあまり気にしていないらしい。

 とりあえず、銭湯に向かうとしよう。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 すずしのを暫く歩き、件の温泉に到着。現在は男湯でのんびり入浴中だ。

 

 

「ふぃー、ゴクラクだぜー…」

 

「身体に染み渡るな…」

 

「疲れがとれる…。富士の湯が恋しい」

 

「富士の湯……ああ、確かにあそこもいいですねー…」

 

 

 …声が伸びているのはきっと温泉のせいだな、うん。

 

 

「やっぱ広い風呂っていいよな。家じゃこうはいかねーし。翼がそうじゃねーのか?」

 

「一人暮らしだと、確かにそうですね。まぁ、こういうのも好きですよ?」

 

「今回は長旅になりそうだからな。都度、緊張をほぐすのは重要な――」

 

「うおおっ、杏やっぱスゲー!」

 

 

 と、唐突に女湯の方から声が聞こえてきた。

 

 

「細いのにチートだろそれ。てか…何食ったらそんなになる?」

 

「ちょ、恥ずかしいよ。春に聞きなよ、春だってほら…」

 

「ひゃっ…!? ちょっと!?」

 

「おお、やるな春! こっちも破壊力あるぞ!」

 

「こら、あんまり騒がないの。私たちだけじゃないんだから」

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

 ……聞いてはいけないものを聞いてしまった気がする。

 何か、何か話を逸らせるものは…!

 

 

「…いい体してるな、竜司」

 

「まーな、腹筋とかバッキバキ…って、何の話だよ…」

 

「蓮さん、もう少し良い話の切り出し方はないんですか…」

 

「にしても、マジで気持ちよすぎるわ。モルガナも来りゃよかったのに」

 

「ソフィアもな。肉体がないというのも、良し悪しなのかもしれん」

 

「つーか、あいつってやっぱ謎だわ。翼はどう思うよ?」

 

「んー…人の良き友人では?」

 

「それは聞いたけどよ、なんか『心を学びたい』とか言ってたじゃん?」

 

「人の心、か…。俺も絵で表現しようと試みはしたが、道半ばだ。

陰にして陽。美でありながら醜…知れば知るほど、謎は深くなる」

 

「ふーん…。ま、俺も『心』とかよくわかんねーけど…

あいつ、俺らとフツーに話してるし、んなこと考える必要なくね?」

 

「言われてみれば確かに…。でも、これもソフィアの成長のためでしょうね」

 

「『心』を学ぶことが成長か…なるほど、AIであるソフィアらしい考えだな」

 

「へー、そういうもん? なんかマジメな奴だな、あいつ」

 

「ソフィアがそう望むなら、応援してやろう。世話になっているのは確かだ」

 

「ははっ、そうだな。どっか抜けてるとこもあるけど」

 

 

 そこまで話したところで、暫く沈黙が訪れる。

 すると、突然竜司さんが「あ」と口を開く。

 

 

「どうしました?」

 

「そういや、翼と双葉ってどういう関係なん?」

 

「どう…?」

 

「翼と双葉は友人ではないのか?」

 

「それは知ってるけどよ、なんかダチにしちゃ距離が近くねーかって。

そこんとこ、どうなん?」

 

 

 まさかの質問である。

 …双葉とは、どういう関係か。その言葉で、昨日抱いた感情が蘇ってきた。

 よくよく考えると、あの感情は本当に「友達」から来るものなのか? そうでないのなら、何から来ている?

 祭りの時や、二人でパフェを食べたときだってそうだった。

 

 

「―――もしかして」

 

「大丈夫か、翼?」

 

「いや、大丈夫です」

 

 

 そして一つの可能性に行きついた。思わず顔を手で覆ってしまったのは仕方ないだろう。

 

 

「……先、上がります」

 

「お、おう…」

 

 

 断りを入れ、先に更衣室へ向かう。牛乳なんて、存在すら気づかなかった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 色々と済ませて休憩室で腰を下ろす。そこで再び思考を巡らせ「…翼、大丈夫か?」

 

 

「! …あぁ、ソフィアか」

 

「大丈夫か? 少し顔が赤いぞ?」

 

「…多分大丈夫。温泉の後だしね」

 

「ならいいが…」

 

 

 …ようとしたところでソフィアが声をかけてくる。深く言及してこないだけ本当に助かった。

 三度物思いに耽ろうとする。が、割って入るようによく聞く声が耳に入った。

 

 

「…翼、いたのか」

 

「……双葉? 真さんたちは?」

 

「先にあがってきた。翼もなのか?」

 

「…まぁ、僕もだね」

 

 

 双葉はこちらが抱く感情など知らず、隣に座る。そして特に話すこともなく、黙ったまま二人きりの時間が過ぎていく。…平静を装い続けるの、案外難しいな。

 ここで言えたら良いのだろうが、今は善吉さんが挙げている容疑者をどうにかしないと、という怪盗としての責任がどうしても邪魔をしてくる。もしくは、僕が単なるヘタレなのか。両方なのかもしれない。

 だが、この感情をほったらかしにできるのかと言われれば「No」だ。放っておけるほどの人間じゃない。……伝えるならば、北海道での事件を解決してからになるのだろうか。

 

 抱える葛藤は伝えられるわけがなく。双葉の顔なぞ見れず。ただ、みんなが来るまでに気持ちの整理をする事しか出来なかった。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 夜、アジト内。善吉さんと合流し、作戦会議開始だ。

 心の整理は既についており、少なくともみんなと話す時の声の調子は大丈夫なほどになっている。

 

 

「よし、集まったな。改めて札幌の(キング)について話そう。

容疑者の名前は『氷堂鞠子(ヒョウドウマリコ)』。驚くなよ、こいつは札幌中央市の現・市長だ」

 

 

 「現・市長」。その一言で、車内は一気に緊迫した空気が流れる。

 

 

「ししし、市長!?」

 

「うそ…市長って、札幌で一番エラい人ってことでしょ?」

 

「そんな権力者が…王に?」

 

「獅童もそうだった。有り得ない話ではない」

 

「…確かにな」

 

「…獅童って、あの?」

 

 

 頭に浮かんだのは、去年起きた「精神暴走事件」の主犯と自白した獅童正義。ガワだけ肯定し、内心は怪盗団ファンとしてちょっとは批判していたのだが、本当にそうだったとは…

 ……自白した日からクリスマスイブまで、獅童関連の記憶が曖昧なのは別、ということで。*1

 

 

「ああ。アイツも、王みたいに認知の力を悪用してたんだ。最終的には、ワガハイたちが改心させたがな」

 

「ってか、なんでそいつが王ってわかんだよ?」

 

 

 竜司さんのその質問に、一言

 

 

「支持率の異常な上昇だ」

 

 

 と善吉さんは答える。

 

 

「札幌での氷堂市長の支持率は、現在88%。わずか2ヶ月で50ポイントも増加している」

 

「50…!?」

 

「スゲーな、いきなり確変したのか」

 

「すごいというか…普通に考えたら、あり得ない数字ね」

 

「それだけじゃない。ひと月前、市長の反対勢力でもある市議会議員3人が、突然汚職を告白して辞職した。その後、長い間対立していたはずの議会が、市長の条例案を支持し始めた。

…で、このタイミングで市長改選選挙。いろいろ出来すぎてて、疑いたくもなるだろ。

氷堂は国政進出を見据えてるって噂もある。公安としても捜査に乗り出してるが…今のところ、全く尻尾がつかめてねえ。これをどう思う?」

 

「…改心、だろうな」

 

「だろ? だからお前らの出番って訳だ」

 

「怪しくはあるか…」

 

「仮にその氷堂って市長、もしくはその周辺の人物が王だったとしたら、確かに出来レースとしか言えないですね…」

 

「しかし、本当に王かどうかを確かめるには、キーワードが必要だが…」

 

「それなら問題ない。奴は演説で度々EMMAの名前を出してたらしいからな。街頭演説の中でキーワードを拡散していた可能性は高い」

 

「じゃあ、演説見に行けば、キーワードもわかる?」

 

「恐らくな。氷堂鞠子の街頭演説は、10日にすずしのであるって情報だ。投票日も近いし、数千人って規模の群衆が集まるだろう」

 

「スゲーな…」

 

「有権者を丸ごと『改心』させているなら、それくらいは当然か…」

 

「うーん…」

 

 

 と、春さんが考え込むような声を。そういえば、会議の間はずっとああだった気がする。

 

 

「どうかした、春?」

 

「ちょっと、気になることがあって…。氷堂…鞠子…どこかで聞いたことがあるような…」

 

「市長さんだもん。ニュースとかでじゃない?」

 

「そうなのかな…。うん、ゴメンなさい、気にしないで」

 

「…念のため言っとくが、直接接触しようとするなよ。

こっちの動きがバレると厄介だ。お前らは演説日まで大人しく観光でもしてろ」

 

 

 その時、真さんが提案。情報共有もあって、一ノ瀬さんのことを話そうということになった。

 そしてひとしきり話し終わると――

 

 

「EMMAの開発者と取引した!?

いや待てよ…一ノ瀬久音だったな? イチノセ…イチノ…セ…。ああ…その名前、報告書にもあったな…EMMAの元開発者、一ノ瀬久音」

 

「調べてたのかよ?」

 

「マディスのことをな。その報告書に書かれてたんだよ。EMMAをマディスに委譲した開発者ってな。そんなのとよく取引できたな?」

 

「まぁ…色々とありまして…ですね…」

 

 

 モルガナの鳴き声でバレただなんて言えない…。善吉さんにバレたらモルガナが色々とやばい。

 

 

「EMMAを誰かが悪用しているなら、あの人の協力が必要だと思うんです」

 

「EMMAの元の状態と、今の状態。比較して調べられるのは一ノ瀬くらいだ」

 

「…なるほどな。報告書を見る限り、危険な奴じゃなさそうだが……情報源が増えるのは悪いことじゃない。だが、今後はもう少し慎重に頼むぜ。俺はお前らを信用して機密情報を流してんだ。知らない所でリスクが増えるのはゴメンだ」

 

「そればっかりは正論ですね…気を付けます」

 

「…それに、だ。お前たちが頼るべき相手は俺だぞ。ホイホイ新しい協力者を見つけてもらっちゃ、こっちとしても寂しいってもんだろ」

 

 

 …おや、善吉さんの様子が…?

 

 

「なんか急に協力者アピールしだしたぞ」

 

「オッサンが頼りになんねえから、俺らでいろいろ動いてんだろーが」

 

「仕方ねえだろ、認知がどうとか俺にわかるか。

それと、オッサンじゃない。俺は、()()()()だ!」

 

 

 それと同時に凍り付く車内である。

 

 

「…何か言って!」

 

「…ヒゲは似合ってるぞ、善吉」

 

「慰めはいらねえよ!」

 

「そっちが振ってきただろーが…」

 

「とにかく、10日の街頭演説だ。よろしく頼むぞ」

 

 

 半ば呆れ気味の僕らを背にして、彼は車を出たのであった。

 

 

To Be Continued…

*1
当時の翼は曲がりなりにも「無責任な大衆の一人」であり、そして怪盗団のファンだったためにこうなったという作者の個人的な解釈。




注釈の解釈については作者も根拠という根拠がない妄想みたいなものなので、読者=サンからも何かしらご意見を伺えたら嬉しいです!

あと、活動報告を更新しました。良ければどうぞ~

京都編の鉄拳制裁イベント、オリ主くんは…(双葉とは付き合ってるものとする)

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