Persona 5 Scramble -Eleventh Member- 作:週末ラテ少年
ヒーホー!
ジェイルに突入して直後、吹雪をやり過ごしたあと。
雪が降り続く札幌ジェイルを、みんなで眺めていた。
「凍てついた街か…。美しいが、どこか物悲しさを感じるな」
「ううう…ない…真夏にこの寒さはない…」
「ジェイルに入れたってことは、やっぱりここの王は、マリさんなんだね…」
「ノワール…」
「…大丈夫。早くみんなのネガイを取り返さなきゃ」
「向こうに王城っぽい建物が見えるぞ。どうする?」
「どうするも何も、まずはあそこでしょうね。というか寒くて動けない…」
「そうね。まずはあの王城を調べてみましょう」
◆
三つの牢獄塔からコアを盗み出しながらも、雪と氷に覆われた札幌ジェイルを進んでいく。
途中、吹雪に遭ってしまったり、それを巨大ストーブで対処したり、スノボで滑走しながらシャドウを薙ぎ倒したりと、かなり刺激の多い攻略だ。お陰様と言うべきか、気温の低い環境でありながら体は結構暖まっている。
「…よし、これですべての壁が消えたな」
大通公苑付近でそう呟くフォックス。牢獄塔からコアを回収しているのは、この壁を消すためでもあるのだ。
「んじゃ、この勢いで突入すっか!」
「そうだな、ここは一気に――」
ピンポンパンポーン…
スカルとモナが意気込んだその時、どこからか突然、チャイムの音がジェイルに響いた。思わず身構えるが…
『みなさん、御機嫌よう!』
「この声…マリさん!?」
『白く美しい札幌! その実現のために励んでいますか? いつもの大掃除の時間です! 職員は率先して働きましょう!
手を抜くことは許しません! 塵一つ残さず! 美しく清らかに!
札幌を、真っ白で美しい街に!』
聞こえてきたのは市長の声。内容からして職員へのアナウンスのようだが、
そんなことを考える暇もなく、今度は前方から何か地響きのようなものを感じた。
「ムッ…!? 何か来るぞ、隠れろ!」
モナに従い物陰に隠れる。暫くすると、何かの大群が近づいてきた。
ヒーホー! ヒーホー! ヒーホー! ヒーホー!
ヒーホー! ヒーホー! ヒーホー! ヒーホー!
ヒーホー! ヒーホー! ヒーホー! ヒーホー!
『大掃除、大掃除! ヒーホー!』
『大掃除、ヒーホー!』
『大掃除、大掃除! ヒーホー、ヒーホー!』
隊列を組むようにしてジャックフロストの大群が目の前を通り過ぎていく。幸い、その多さのせいか僕らは見つかっていなかった。
というか、この光景はもはや異様……群れすぎて何体いるのかが全く分からない。
「んなんだコレ…!?」
「すんげー大群…大地の怒りか!?」
「なんという画だ…!」
「大掃除の時間とか言ってたな…。定期的に警戒度を上げてるのか?」
「なら、一旦ここで待機します?」
「そうだな、これじゃ突入は難しそうだ。コイツらがどこかに行ったら、ワガハイたちも一度現実に戻って様子でも見てみようぜ」
モナがそう提案するが、ジョーカーから返ってくるのは賛成でも反対でもなく――
「ヒーホー!」
謎の返答であった。
「ヒーホー!」「ヒーホー?」「ヒーホー!」「ヒィーホォーゥ!」「ヒーホー!!」
そしてソフィア、ナビ、ノワール、スカル、フォックスと、ヒーホーという言葉はどういうわけか仲間の間でも広がっていき、まるで新言語のように飛び交っていく。
「なんか
「はぁ…何やってんですか」
「もう…バカなことしてないで帰るわよ」
…勿論、僕が参加するわけがなく。むしろ呆れる方だ。
その後は頃を見計い、スカルの悲しげな「ヒーホー…」を置いてジェイルを去るのだった。
■◇■◇
現実に帰還すると、辺りはすでに夜。人の流れは昼からあまり変わった感じはしない。
「はぁ…やっと先に行けると思ったのに、あんなん反則だろ…」
肩を下げてそう口にした竜司さんから話は始まった。
「怒りじゃ~! 大地の怒りじゃ~!」
「掃除の時間だと言っていたからな。恐らくは一時的なものだろう」
「とりあえずは仕切りなおしだ。明日に備えて今日は休もうぜ」
「ですね…別に、急かされてることでもないですしね」
モルガナの提案に合わせてキャンピングカーへと戻る。
だが、大通公苑に着いた辺りで
「うっし、じゃあ今日は風呂でも入って――」
「ちょ、あれって…!」
遮るようにして聞こえた声の先には、先ほどジェイルで声を聞いた氷堂市長、そして市の職員らしき男がいた。男の方は、遠目から見てもわかるほどに顔色が悪そうだ。
「あなたたち職員がたるんでいるから、市民も安心して暮らせないのだと!」
「も…申し訳…ごほっ、ごほっ…」
「なに? 体調不良なんて言い訳にならないわよ?
さあ、早く仕事に取り掛かって。市民の期待を裏切らないでちょうだい。
いいわね、遅れた分は寝ずに働いて取り返してもらうわよ」
「すみません…ごほっ…!」
「あの職員、大丈夫なのか?」
「見るからにフラフラだぞ? アレで働けってのかよ……」
「早く止めに入るぞ」
すぐさま全員で二人に近づく。市長の方はこちらに気付いたようで。
「あら、あなたたちは…」
「マリさん、どうしてこんなひどいこと…」
「……ひどい? ああ、違うのよ春ちゃん。
これはこの街に必要なことなの。私も心を鬼にして言ってるのよ。
この一ヶ月間、市の職員が街を掃除する、清掃キャンペーンをやっているの。職員の規律意識を高め、街の治安をよくするためにね。
――そんな大事な職務なのに、この子は……あろうことか遅刻してきた。市民に顔向けできないわ。たるんでいる証拠よ!」
「清掃キャンペーンだと…?」
「さっきのお掃除ヒーホー大行進、まさかコレのことか…?」
僕にも思い当たる節はある。ソフィアと噂集めをしていたときにポスターで見つけたものだが、ジェイルのことと繋がっていたとは……
渋谷ジェイルでモルガナから色々教えてもらったことに「現実における主の認知は異世界にも影響を及ぼす」とあるが、身をもって理解した感覚だ。
……それよりも、市長の方をどうにかしなければ。
「私が性根を叩き直してあげる。さあ、早く職務につくのよ!」
「でも、こんなに体調が悪そうで…!」
「いい? 春ちゃん。今の札幌中央市役所は、使えないクズばかりなの。私がこうして1人ずつ更生させないと、どんな悪事を働くかわからないわ。
市長である私を……裏切って、ね」
春さんの言葉も届かず、逆に市長は春さんに諭すように語りかける。まるで、自分のしていることが正しいと信じているかのように。
「ンなの、アンタが決めつけてるだけじゃねーのかよ!?」
「彼はまず、病院へ連れて行くべきだ。働ける状態とは思えない」
「私が保護します。こっちへ…」
「す、すみません…」
「ちょっと! 何を勝手に…!」
「もうやめてください、マリさん!」
職員はこちら側に寄り、市長は止めようと声をかける。見ていた春さんは、市長にそう言った。
言われた市長だが、まるで図星のような顔。可愛がっていた人からそう告げられると、さもありなんと思えるが。
「今のマリさんは、私の知っているマリさんとあまりにも違う……
誰にでも分け隔てなく優しかったあのマリさんは、どこへ行ってしまったんですか…?
マリさんの周囲は、いつも笑顔が溢れていた。だれもがあなたの温もりに救われていた……
私にとってマリさんは……お日様の様な、誰よりも温かい人でした……
それがどうして……どうしてそんな風に……」
どうして凍ってしまったんですか…!
「ハル……」
凍ってしまった心への問いかけは、言いかけの言葉によって返される。暫く黙ったのち、市長は
「私は、立ち止まるわけにはいかないの。あの子のためにも。
ごめんなさい、失礼するわ」
そう呟き、去っていった。
「…マリさん!」
「追うなハル、アイツはジェイルの王。ワガハイたちのターゲットだ。
……ジェイルで改心させるしかない」
「放っておけないのわかるよ。でも今は、この人を病院に連れて行こ?」
「…うん、そうだね」
「病院は調べといた。急ごう」
◇
職員を病院に送り届け、大通公苑に戻る。春さんの顔は、さすがに良いとは言えない。
「なんて奴だよ、ゼッテー許せねぇ。病人相手にあんなマネ……」
「……竜司」
「…
「でも、私たちと話してる時はいい人なのに、職員さんにはあんなに厳しいなんて……」
「……わからない。何がマリさんをあそこまでさせているのか。あんな人じゃなかった。誰にでも優しい素敵な人だった。それがどうして……」
「何か深い事情があるはずだ。それもそのうちわかる筈」
「うん、あんな風になるきっかけって……すごく辛いことだったりするのかな」
「明日は王城突入ですし、そこできっとわかるはずですよ」
「ああ。それまでは立ち止まらないことだな」
「思わぬ邪魔が入ったが、王城への道は確保してあるからな。明日、ヒョードーのいる鳥かごを目指すぞ」
話は一区切りつき、そこで今日は解散となる。
気になっていなかった救急車のサイレン音が、今日はやけに大きく聞こえた。
To Be Continued…
リアルの方では夏休みが始まった頃です~!
まぁ、投稿頻度は変わらないでしょうけど()
京都編の鉄拳制裁イベント、オリ主くんは…(双葉とは付き合ってるものとする)
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