Persona 5 Scramble -Eleventh Member- 作:週末ラテ少年
-8月11日(金)-
「これが札幌の王、ヒョードーの鳥かごか……」
「これ、氷? すっごく冷たそうな色……」
「全てを拒むかのような凍てついた檻…誰も信じられない、という心境の表れか」
無事に鳥かごの目の前に到着。やはりと言うべきか、氷に「覆われている」のではなく氷でできている印象が見えている。
「ノワール、顔色が悪いぞ。大丈夫か?」
「……うん、大丈夫」
王城に突入する前はやる気を見せていたが、いざ鳥かごの前に来ると心苦しいのだろうか。
「では、いつも通りやるか。頼むぞ、シノビ」
「はいはーいっと…」
「よく断らねえな……あんな痛そうだってのによ」
「慣れ……ですかね……。結構痛いですけど、皆さんにも同じ痛みはさせたくないってのもありますから」
「私は大丈夫だぞ?」
「ソフィーは大丈夫だろうけど……何となくね」
僕にとってはそのくらい些細な問題だ。そう考えつつ、鳥かごへと手を伸ばす。
「では、行きますよ!」
伸ばした手には、無機質な感覚が触れられる。それと同時に、電流の痛みが体に流れてきた。
誠に…申し訳ございません…!
「来たっ…!」
「雪像…?」
前回同様、声が聞こえてくる。先に聞こえた悲痛な叫び声、そして氷堂市長の声だ。
「雪像」とクイーンが訝しげに呟くが、どこかで聞いた気が……
今回の事故は…全て…私の責任…です…
本当に、本当に、申し訳…
「……謝ってるのが、市長さん?」
「しっ…まだ聞こえる!」
ノワールの声かけの直後、今度は卑屈そうな男の声が聞こえてきた。
声はそこで途切れていた。
「今の声が、ヒョードーマリコのトラウマか……」
「雪像、事故って……もしかして、あの公苑のところの…?」
「……雪像崩落事故。あの事故に、市長のマリさんが関わっていた…?」
「その可能性が高いだろうな」
「それが彼女のトラウマ? 責任を追及されたということかしら……」
「…つーか、妙な男の声も聞こえてきたな。なんか人のせいにしてる感じのよ」
「とにかく、重要な手がかりなのは間違いない。一度現実に戻って、真相を確かめるぞ」
その提案に頷く全員。一度、ジェイルを後にするのだった。
■◇■◇
ジェイルを去った後、雪像崩落事故についての記事をスマホで探してみる。ソフィアの助けもあり、すぐに見つけることができた。
「……ありました、雪像崩落事故の記事。読んでみますね」
「ああ、頼む」
「えーっと…『一昨年の12月、札幌中央市主催の雪祭りで、設置された巨大雪像が崩落。崩落に巻き込まれ、9歳の女児・七瀬果歩ちゃんが死亡』……
当時も市長だった氷堂市長が謝罪してますが、結局不可抗力による事故ということになってるみたいです」
淡々と読んではいるが、実のところあまり気は乗らない。市長のトラウマに間接的とはいえ関わっているから他人事ではないし、まず人の死についてをこう読み上げるというのは個人的には、とも。
「そっか…あの公苑に供えられてた花は、その時の……」
「マリさんを問い詰めてた声は、亡くなった女の子のお母さんかな……。あれが、マリさんのトラウマ……」
「たぶんあれは事故現場だ。雪祭りの会場、大通公苑のな」
「では、そこに行ってみるとするか」
「ああ、あの辺りでEMMAにキーワードを入力してみるぞ」
というわけで、公苑の例の場所に向かう。到着したその場所には、花束が挿されている花瓶が一つ。
「ここが事故現場…なんだよね…?」
杏さんがそう呟くと、スマホから回答のように反応が返ってくる。
「キーワードを入れると、トラウマルームに行けるはずだ」
「おそらくまた敵が待ち構えてる。オマエら、準備はいいか?」
「…行こう。真実を確かめに」
「うん、マリさんに何があったのかこの目でちゃんと見ておきたい。
――キーワードは、『スノウ・シティ』!」
『キーワードが入力されました。ナビゲーションを開始します』
◇■◇■
トラウマルームに到着。周りが赤っぽいのはいつものことだが、今回は色味が淡く感じられる。
「ここは…?」
「雪祭りの会場……みたいだけど……」
ノワールの言葉通り、どうやら淡い色の正体は雪のようだ。山のように積まれたソレのすぐそばにショベルカーがあるが、これは崩れた雪像といったところか。
「おい、あそこ。誰かいるぜ」
スカルが指したところには二人の男。片方は細身でどこか卑屈そうで、もう片方の男は腕を前に組んでいる。
しかも、雪像を前にして話しているようだ。
『いやはや、まさか君がリベートを受け取っていたとはね……』
『せ、先生、どうかこのことは内密に……』
『それは構わんが、私にも見返りがないとね。事故の責任をあの女に押し付けて、辞職に追い込んでやりたい。そして私が市長になる。そうなれば、君のことも悪いようにはしないよ。協力してくれるね?』
『は、はい、それはもう……』
『一体、どういうことかしら……?』
その最中、女性の声が割って入る。勿論、声だけだが。
『ヒ…! し、市長!?』
『……おやおや、聞かれてしまったか』
『市長、違うんです! これはそういうことじゃ…!』
「市長ってことは…ヒョードーか?」
「マリさんは、この密談の現場を見てしまった…?」
『事故が起きたのは、あなたのせいだったのね…!』
『……し、市長も話のわからない人ですね。
祭りの主催は札幌中央市。税金も投入されてる。安い業者に頼むのは当然でしょう?
それで少々の見返りをもらうくらい、職員はみんなやってることじゃないですか!
それを…雪像が一つ崩れたくらいで…たまたま運が悪かっただけだ!』
『なんてことを……今すぐ警察に連絡します!』
『い、いいですよ。告発するならすればいい。だけど――あなたも道連れだ!』
『なんですって…!?』
『あなたの指示でやったと証言しますよ。そうなればあなたも破滅だ。
あなたは市の最高責任者。署名付きの決裁文書だってある』
『……そういうことだよ、市長。残念だが、君はもうオシマイだ』
『あなた…市議会議員でありながら、不正を正そうという気はないの!?』
話していた二人の男のうち、腕を組む方は議員のようだ。国会議員だった獅童が悪人なら、市議会議員もと言うべきなのか。
『私は、ただ事実を語っているだけだよ』
議員の男はそう答え、卑屈そうな職員はこちらへと歩み寄ってくる。これはもしや…!
『……どうです。私の話を聞く気になりましたか?』
「来るぞ…!」
職員の声が響き、番人へと身体を変える。トラウマルームの中、それぞれの腕に盾を構え、こちらへと向かう。
『私は悪くない……全部、役所の給料が悪いせいだ!
この世は金、金、金……金が全てなんですよ、市長!』
「コイツ……市長を脅してたってことかよ!」
「こんな理由があったなんて……マリさんも、すごく苦しんでたんだ」
「考えるのは後だ! 今はコイツを倒すことに集中しろ!」
◆
『私一人を処罰しても無駄ですよ! 不正なんてみんなやってるんですから!』
「敵、弱ってきてるぞ! みんな、がんばれー!」
盾から放たれるとは思えなかった熾烈な攻撃。それをペルソナでいなしつつ確実にダメージを与えていくが、それも佳境に入っていった。
「覚悟しなさい! その盾ごとかち割ってあげる!」
同時に現れるミラディ。そしてその衝撃でノワールを中心にシャドウが吹き飛び、一つの空間ができる。
「……覚悟!」
ミラディのスカートが開き、そこから現れる大量の重火器。容赦なく放たれる銃弾は盾を貫き、周りのシャドウをも巻き込んでいく。
――フィニッシュ!
その背後から飛び出すノワール。大きく振った斧が放つ念動の波動によってシャドウは一掃され、番人も倒れたのだった。
番人を倒すと、トラウマルームも事故現場の風景に戻っていた。とりあえず作戦会議の時間だ。
「片付いたか。これで王の間に潜入できるな」
「さっきの奴ら、なんなんだ? なんか市長とモメてたな」
「一人は市議会議員。もう一人は……市の職員かしら。
職員が雪像を制作した業者から、不正にお金を受け取っていたようね」
「いわゆるワイロってやつですね……」
「業者の手抜きか、技術不足かはわからんが、結果、崩落事故が起きてしまった」
「そして、それを知った市議会議員が、事故を利用して氷堂市長を陥れようとした。そんなところかしら」
「ぐぬぬぬ……許せん」
「…これで話の内容はつながった。ヒョードーは、この話を偶然聞いてしまった。雪像崩落事故の原因をな。そして、市議会議員が自分を陥れようとしていることを」
「胸クソ悪い話だぜ。カネと権力欲しさの汚え連中のせいでよ…!」
「……氷堂の気持ちもわかろうというものだな。
彼女は、周囲の人間が腐り切っていることを知り、ならば自分が正してやろうと考えた」
「だからマリさんは、職員を酷使したり、無茶な倫理条例を制定したり……」
「しかも、市民を意のままに操り、再び市長に当選しようとしている」
「マリさん……」
俯くノワール。こうも話が絡まっていくと、氷堂市長に同情してしまいそうだ。
「……事情はどうであれ、これで鳥かごの鍵は開いた。アジトに戻って、予告状をどうするか考えようぜ」
モナの提案と共に、トラウマルームを去っていった。
■◇■◇
「あれ……蓮さん……?」
トラウマルームからの帰還、そして作戦会議を経ての就寝中のこと。目が覚め、何か違和感を感じて寝床で首を回すと、蓮さんだけがいない状況だ。
やや気がかりだが、トイレに行きたくなったので行くことにした。
◇
用を足し、トイレを出て真夜中の札幌を見上げる。車の音が些か静かに感じられる中、少しベンチに腰掛けることに。
ふいに思い浮かぶのは、数時間前の作戦会議のこと。
氷堂市長にトラウマが植えつけられるきっかけとなった今回のモノだが、色々と複雑過ぎる。誰が裁かれるべきなのか。誰が『悪』であるのか。あの場にいた善吉さんは「事故の責任は許可を出した市長だ」と――それが世の中だと言い切っていた。そして、「それが世の中かもしれないけど、簡単に割り切りたくない」と返すように言っていた真さん。結局のところ改心すべきは全員なのではと思いつくが、そんなのは不可能なことだろう。
だが、法で救えない人を救うのが怪盗団。かつての僕がそうだったように、それで勇気をくれた人がいるのは確かだ。その救う側になりたいと言われると、あまり自信はないが……
とにかく、早く寝るとしよう。明日は予告状を出して決戦だ。それが済んだら、その後は――
――その後、は。まだまだ続く事件の解決へと奔走するのだろうか。
だが、もしそうでない場合は? 双葉へ密かに向ける感情に向き合わなければ。
上手くできれば良いのだが……
◇
しばらく一人で考え、それなりに気持ちの整理をつけてキャンピングカーに戻る。
到着すると、蓮さんと春さん以外のみんなが外に出ていた。
「お、翼! どこ行ったか心配したぜ!」
「竜司さん。この集まりは…?」
「目が覚めたら蓮がいなくてよ、どこ行っちまったんだってモルガナや祐介と話してたんだけどよ……」
「私たちも、春がいないって話してたんだよね」
「少し探したら、二人がいるところを見つけたってワケだ。あそこ、見てみろよ」
モルガナが鼻で示した先には、蓮さんと春さんらしき後ろ姿。公苑の噴水越しでよく見えないが、何か話をしているようだ。
「……何か、相談事ですかね?」
「札幌に来てからかなり思い詰めているようだったからな。無理はないだろう」
「そうね……それに、明日予告状を出すから余計になのかも」
とりあえず、二人にバレないようにもう寝ようということに。
明日は決戦、気を引き締めて行くとしよう。
To Be Continued…
シリアスな話は作者からしてもあまり筆は乗らないですね…(言い訳)
京都編の鉄拳制裁イベント、オリ主くんは…(双葉とは付き合ってるものとする)
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