Persona 5 Scramble -Eleventh Member-   作:週末ラテ少年

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#25 Thief and snow's empress

 

心が凍った偽りの女帝、氷堂鞠子様。

 

 

他者を意のままに操り、道具のように使い捨てるその冷徹さ。

 

 

そして己が権力に縋る貴女を、私達は許さない。

 

 

貴女が奪った人々のネガイ、今宵我々が頂戴致します。

 

 


 

 

 予告状を出すことに成功し、札幌ジェイル。今回も善吉さんに頼んだのだが、選挙ポスターに貼り付けたとか。

 鳥かごの中へと突入すると、中は氷の宮殿であった。

 

 

「待たせたな! テメエを成敗しに――ってうぇええええ!?」

 

 

 スカルが切り込むが、その勢いは驚きの声と共に消えてしまう。しかし、そうなるのも無理はないわけで。

 

 

「ハグッ、ハグッ……うるさいわね、黙ってて」

 

「な…なんだよアレ……」

 

「まさか、あれが…マリさん…?」

 

 

 玉座にいたのは、紛れもなく市長のシャドウ。しかし、彼女の容姿は真っ白な髪に真っ白な服、そして恰幅のよい体だ。現実のソレとは明らかに違う。

 巨大なフォークとナイフと手にして料理を口に運ぶ姿は、別人にも見えてくる。

 

 

「どうしてあんな姿に?」

 

「これが、ヒョードーの歪みが現れた姿ってことか……」

 

 

 怪盗団の話す光景にやっと気づいたのか、市長は食事の手を止める。

 

 

「なんなのかしら…あなたたち。私の……邪魔をしないで頂戴!

あと少し…あと少しで私は、市長を続けるだけの票を集めることができる!」

 

「…違います、マリさん。それはあなたが、人の心を捻じ曲げて奪った、偽物の票なんです!」

 

「それに、今のままではあなたの部下、職員の人たちが倒れてしまう!」

 

「誰も信じられなくなるのも解ります。でも、だからと言って人を傷つける理由になるわけがないんです!」

 

「うるさいわねっ…! 私は間違ってなんかいない!

汚職を働く職員は、徹底的に働かせて更生させる! 私を裏切るクズ市議どもは、すべて粛清する! 私に従わない市民の票も、私が全部食ってやる!

そうすれば……誕生するのよ! まっさらで美しい、スノウ・シティが!」

 

 

 恍惚とした表情を浮かべながらそう語る市長。だが、そんな方法で得る権力なんて間違っている。

 「偽物の権力で満足か?」と問うジョーカー。続くように、ノワールは言葉を紡ぐ。

 

 

「彼の言う通りです。マリさんが集めた人々のネガイ。それは本来、人が『選択』すべし心の意志。それを奪って思い通りにしたところで、何の意味もありません。

人は自ら立ち上がって答えを見つけ出す。そのために、この心を授かったのです!

 

「お、お黙りなさい…!」

 

「いいぞノワール、もっと言え」

 

「……マリさん。あなたが人々から奪った数々のネガイ…! この美少女怪盗と怪盗団が!

 

――今宵、頂戴いたします!

 

 

 宣言を受けた市長。苛ついた表情で、なんと目の前の料理に再び手をつけ始める。

 

 

「本当に……嫌になっちゃうわ……。私の……邪魔ばかりしテ……」

 

 

 ひたすらに両手を動かす市長。眺めるのも束の間、一回り、二回りと市長の身体が肥大化していくではないか。

 

 

「あなたたちみんな――

 

 

私が食べてアゲルワアァァ!!!

 

 

 腕からは三対の触手のような腕を生やし。

 

 肥大化した胴体には醜い顔を浮かべ。

 

 変化の直後に目の前のテーブルを丸飲みにした女帝の姿は、まさに暴食の象徴とも言えた。

 

 

「マリさん…あなたは間違っている。みんなのネガイ、返してもらいます!」

 

『黙れ…黙れぇっ! あなたたちに何がわかる!

私を否定する者は……残さず! 食らい尽くしてくれるわ!』

 

 

 吐息のようにこちらへと吐かれる大量の冷気。一身にソレを受け、闘いは始まる。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

『まだよ……まだ食べなくちゃ……全部私が……食べつくすの……!』

 

 

 氷の宮殿の中、激戦は続く。身体を真っ赤にして熾烈な攻撃を繰り広げる氷堂シャドウに対し、僕らも防戦ながら確実にダメージを与えていく。

 

 

「マリさん、もう止めて! 優しかったマリさんに戻って!」

 

 

 ノワールは氷堂を止めんと叫ぶが、勿論というかそんな言葉は届くはずもなく。逆に、氷堂はとてつもない量の冷気を吐き出し、吹雪を再び生み出してしまった。

 

 

「く、再び来ると身体に堪えるな……」

 

「な、ナビ! ストーブのハッキングは!?」

 

「すでにやってる! …一カ所できた、南東の角にあるやつだ!」

 

 

 直後、ナビが示したストーブの場所に視線を向ける。しかし、その前に氷堂が間に立つようにして滑り込んできた。

 白い息が口から零れる。吹雪の中で戦うのは明らかにジリ貧でしかない。しかし、行こうにも氷堂が邪魔をしているのだ。

 

 ならばと思い立ち、真上に跳躍する。DMRを構えつつシャンデリアの上へと降り立ち、狙うはストーブのスイッチだ。

 

 氷堂もまさか上から撃ってくるとは思っていなかったらしく、放たれる銃弾はスイッチに命中。ストーブの故障はなく、吹雪は止んだ。

 

 

「良いぞシノビ!」

 

「そりゃどうも!」

 

 

 吹雪がなければこっちのものだ。若干優勢になった気がしながらも、戦いは続いていく――

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 シャンデリアも全て落ち、床についている傷も尋常ではなくなってきた頃。

 

 

『ハァ……ハァ……もっと、もっと食べないと……』

 

 

 真っ赤な氷堂の顔に疲れが見え始め、動きが鈍くなってきているではないか。

 無論、その隙を見逃すわけがなく。

 

 

「イルジメ!」「ミラディ!」

 

 

 僕とノワール、互いにペルソナを顕現させる。隙を的確に突く斬撃と念動の波動をモロに食らった氷堂は、その場にぐだりと倒れ込んだ。

 

 

「覚悟はいいですか?!」

 

 

 彼女の掛け声に合わせ、全員で一斉に総攻撃を仕掛ける。ありったけの火力をぶつけ、そして――

 

 

 

 

 

――これまでです!

 

 

 女帝は、地に伏すのだった。

 

 


 

 

 元の姿に戻り、膝をつく市長。しかし、表情からして戦意は未だ残っているようだ。

 

 

「まだ…まだよっ! 私は……倒れるわけにはいかない…! 不正を…一つ残らず排除するまでは…!」

 

「…もういい、もういいんです!」

 

「え……」

 

「マリさんは優しい人だから……全部背負おうとしてたんですよね…? 汚職をしていた部下のことも、自分を陥れようとした市議の人も。そして……事故で亡くなったあの子のことも……」

 

 

 言葉が詰まっているような氷堂。ノワールは、言葉を続けていく。

 

 

「全て自分が責任を負って、二度と悲劇が起こらない街を作ろうとした。そうなんですよね?」

 

 

 市長の表情は未だに硬い。しかし、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「……何の罪もないあの子が犠牲になったのは、市長である私の責任。部下の裏切りのせいで……腐った連中の金勘定のせいで……!!

私が退けばいいとも思った。でもそれじゃダメなのよ。次のクズが権力を手にするだけ! だから私は市長であり続けようとした! どうせ食うか食われるかの世界なら、私が全て食ってやると!

たとえ偽物の票で得た地位だとしても、それで悲しみの無い世の中を作れるならと!

だって私が食われたら……誰が、あの子の責任を取るっていうの…! あんな小さな子が亡くなったのに…私は…悪を一掃することもできずに…!」

 

「……今からでも遅くない。事件の真相をみんなに語ってください!

そして、もう一度やり直して。マリさん自身の力で!」

 

「そんなこと、無理よ……私自身が、市長であり続けるために、真相を隠すことに加担してしまったのだから……これでは……もう…!」

 

 

 本音を話したからなのか、市長はかなり弱気になっている。直後、一人の声が鳥かごの中で響いた。

 

 

「……立ちなさい、氷堂鞠子! そこで倒れたままでいいのですか!

あなたの優しさ、意志は……こんなことで躓くような弱い想いではなかったはず!

だから…立って。立ち上がりなさい! たとえ躓いても、何度でも、立ち上がるのです!」

 

「その…言葉は…」

 

「そう。昔、マリさんが私に贈ってくれた言葉です!

たとえ真実を告白しても、必ずマリさんの想いを見てくれる人がいます!

そんな王冠の力に負けないで。自分の意志を、思い出してください!」

 

「そうだぜ、市長! 負けんなよ!」

 

「あなたの気持ち、絶対みんなに届くから!」

 

「私もお父様が亡くなって、心が張り裂けそうだった…! でも、怪盗団のみんなのおかげで、前を見て歩けるようになったんです!

だからきっと…マリさんにだって! 何度倒れても、立ち上がることを教えてくれた、強くて優しいマリさんを思い出して!」

 

 

 ノワールの言葉に続くスカルとパンサー。言葉を受けた市長だが――

 

 

「そう…そうね……ありがとう……春ちゃん……間違っていたのは…私の方だった……

職員には無理難題を押し付けて、おかしな力で無理やり市民の支持を得て……私怨に駆られていつの間にか、最初の想いを見失っていたわ。

自分がどうして市長になったのか……誰からも愛される素敵な街を作ること。私を育んでくれた街への恩返し……だから、もう一度立ち上がってみせる。二度と…間違えたりしない。

――こんなもの、初めから必要なかった!」

 

 

 頭につけていたティアラを投げ捨てた市長。そのままの状態で、ノワールへ向き直る。

 

 

「春ちゃん……立派になったわね……

あなたのお父様も、きっと天国で喜んでいると思うわ……」

 

 

 そう言い残して、市長は消えていった。改心もうまくいっただろう。

 

 

「マリさん…!」

 

「喜ぶ…?」

 

 

 ノワールは嬉しそうにしており、ソフィーは疑問のように呟く。束の間、鳥かごが激しく揺れてきた。

 

 

「崩れるよ! 行こう!」

 

 

 

 

 ■◇■◇

 

 

 

 

 現実世界に帰還すると、辺りはかなり暗くなっていた。

 

 

「すっかり、遅くなってしまったな」

 

「春、お疲れ様」

 

「よくやった。格好良かったぞ」

 

「ううん、みんながいてくれたから。でも、マリさん大丈夫かな……」

 

「大丈夫だと思うぜ。いつもみたいに消えてったじゃんか」

 

「ああ、ハルの想いは確実に届いた。アイツの心は間違いなく変わったはずだぜ。」

 

 

 今回のジェイル攻略のMVPは間違いなく春さんだろう。みんなも労いの言葉をかけている。

 

 

「ひとまず、ここでのミッションは終了だな」

 

「あとは、市民が元に戻っているかどうかね。すぐに確かめたいところだけど……」

 

「とりあえずなんか食おうぜ! つーか、腹減って倒れそうだわ」

 

「そうだな。腹が減っては戦はできぬ、だ」

 

「いや、戦は終わったろ……」

 

「なあなあ、ワガハイ、ジンギスカンってやつを食べてみたい」

 

「おおっ、北海道名物ぅ!」

 

 

 いつの間にか話題もご飯の話に。モルガナがジンギスカンを提案したが……

 

 

「なんだと!? 今日こそ伊勢海老鍋ではないのか?」

 

「いつ決まったんだよ……つかこのクソ暑いのに鍋はねーだろ」

 

「でもそれ言ったら、ジンギスカンも鍋じゃね?」

 

「うそ、何で!? 焼肉じゃなくて?」

 

「確か、ジンギスカンで使う調理器具は『ジンギスカン鍋』って言うんですよね。だからと言っても、厳密には焼肉な気がするんですけど……」

 

「いや、そうならば『鍋』料理だろうな」

 

「ははっ、やはりか。ならば今日は伊勢海老鍋で決まりだ!」

 

「いや、そうじゃねえだろ……ってか、何の話だっけ?」

 

「…ふふっ、あははっ!」

 

 

 話していると、これまで話さなかった春さんが笑い出した。

 

 

「おお? ウケてる」

 

「いい笑顔だ」

 

「だな! サッポロに咲いた、美少女怪盗・100万ドルの笑顔だ!」

 

「よかった。ずっと思い詰めていたみたいだったから」

 

「ああ。夜中にこっそり、リーダーを呼び出して相談するほどにな」

 

「ええ!? 見てたの!?」

 

 

 春さんの反応に、今度はみんなで笑い出して。

 

 そんなこんなで、札幌でも一仕事完了したのだった。

 

To Be Continued…




もう少し…あと少しで、描きたいシーンに行けるんだ…!

京都編の鉄拳制裁イベント、オリ主くんは…(双葉とは付き合ってるものとする)

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