Persona 5 Scramble -Eleventh Member- 作:週末ラテ少年
予告状を出すことに成功し、札幌ジェイル。今回も善吉さんに頼んだのだが、選挙ポスターに貼り付けたとか。
鳥かごの中へと突入すると、中は氷の宮殿であった。
「待たせたな! テメエを成敗しに――ってうぇええええ!?」
スカルが切り込むが、その勢いは驚きの声と共に消えてしまう。しかし、そうなるのも無理はないわけで。
「ハグッ、ハグッ……うるさいわね、黙ってて」
「な…なんだよアレ……」
「まさか、あれが…マリさん…?」
玉座にいたのは、紛れもなく市長のシャドウ。しかし、彼女の容姿は真っ白な髪に真っ白な服、そして恰幅のよい体だ。現実のソレとは明らかに違う。
巨大なフォークとナイフと手にして料理を口に運ぶ姿は、別人にも見えてくる。
「どうしてあんな姿に?」
「これが、ヒョードーの歪みが現れた姿ってことか……」
怪盗団の話す光景にやっと気づいたのか、市長は食事の手を止める。
「なんなのかしら…あなたたち。私の……邪魔をしないで頂戴!
あと少し…あと少しで私は、市長を続けるだけの票を集めることができる!」
「…違います、マリさん。それはあなたが、人の心を捻じ曲げて奪った、偽物の票なんです!」
「それに、今のままではあなたの部下、職員の人たちが倒れてしまう!」
「誰も信じられなくなるのも解ります。でも、だからと言って人を傷つける理由になるわけがないんです!」
「うるさいわねっ…! 私は間違ってなんかいない!
汚職を働く職員は、徹底的に働かせて更生させる! 私を裏切るクズ市議どもは、すべて粛清する! 私に従わない市民の票も、私が全部食ってやる!
そうすれば……誕生するのよ! まっさらで美しい、スノウ・シティが!」
恍惚とした表情を浮かべながらそう語る市長。だが、そんな方法で得る権力なんて間違っている。
「偽物の権力で満足か?」と問うジョーカー。続くように、ノワールは言葉を紡ぐ。
「彼の言う通りです。マリさんが集めた人々のネガイ。それは本来、人が『選択』すべし心の意志。それを奪って思い通りにしたところで、何の意味もありません。
人は自ら立ち上がって答えを見つけ出す。そのために、この心を授かったのです!
「お、お黙りなさい…!」
「いいぞノワール、もっと言え」
「……マリさん。あなたが人々から奪った数々のネガイ…! この美少女怪盗と怪盗団が!
――今宵、頂戴いたします!」
宣言を受けた市長。苛ついた表情で、なんと目の前の料理に再び手をつけ始める。
「本当に……嫌になっちゃうわ……。私の……邪魔ばかりしテ……」
ひたすらに両手を動かす市長。眺めるのも束の間、一回り、二回りと市長の身体が肥大化していくではないか。
「あなたたちみんな――
腕からは三対の触手のような腕を生やし。
肥大化した胴体には醜い顔を浮かべ。
変化の直後に目の前のテーブルを丸飲みにした女帝の姿は、まさに暴食の象徴とも言えた。
「マリさん…あなたは間違っている。みんなのネガイ、返してもらいます!」
『黙れ…黙れぇっ! あなたたちに何がわかる!
私を否定する者は……残さず! 食らい尽くしてくれるわ!』
吐息のようにこちらへと吐かれる大量の冷気。一身にソレを受け、闘いは始まる。
◆
『まだよ……まだ食べなくちゃ……全部私が……食べつくすの……!』
氷の宮殿の中、激戦は続く。身体を真っ赤にして熾烈な攻撃を繰り広げる氷堂シャドウに対し、僕らも防戦ながら確実にダメージを与えていく。
「マリさん、もう止めて! 優しかったマリさんに戻って!」
ノワールは氷堂を止めんと叫ぶが、勿論というかそんな言葉は届くはずもなく。逆に、氷堂はとてつもない量の冷気を吐き出し、吹雪を再び生み出してしまった。
「く、再び来ると身体に堪えるな……」
「な、ナビ! ストーブのハッキングは!?」
「すでにやってる! …一カ所できた、南東の角にあるやつだ!」
直後、ナビが示したストーブの場所に視線を向ける。しかし、その前に氷堂が間に立つようにして滑り込んできた。
白い息が口から零れる。吹雪の中で戦うのは明らかにジリ貧でしかない。しかし、行こうにも氷堂が邪魔をしているのだ。
ならばと思い立ち、真上に跳躍する。DMRを構えつつシャンデリアの上へと降り立ち、狙うはストーブのスイッチだ。
氷堂もまさか上から撃ってくるとは思っていなかったらしく、放たれる銃弾はスイッチに命中。ストーブの故障はなく、吹雪は止んだ。
「良いぞシノビ!」
「そりゃどうも!」
吹雪がなければこっちのものだ。若干優勢になった気がしながらも、戦いは続いていく――
◆
シャンデリアも全て落ち、床についている傷も尋常ではなくなってきた頃。
『ハァ……ハァ……もっと、もっと食べないと……』
真っ赤な氷堂の顔に疲れが見え始め、動きが鈍くなってきているではないか。
無論、その隙を見逃すわけがなく。
「イルジメ!」「ミラディ!」
僕とノワール、互いにペルソナを顕現させる。隙を的確に突く斬撃と念動の波動をモロに食らった氷堂は、その場にぐだりと倒れ込んだ。
「覚悟はいいですか?!」
彼女の掛け声に合わせ、全員で一斉に総攻撃を仕掛ける。ありったけの火力をぶつけ、そして――
――これまでです!
女帝は、地に伏すのだった。
元の姿に戻り、膝をつく市長。しかし、表情からして戦意は未だ残っているようだ。
「まだ…まだよっ! 私は……倒れるわけにはいかない…! 不正を…一つ残らず排除するまでは…!」
「…もういい、もういいんです!」
「え……」
「マリさんは優しい人だから……全部背負おうとしてたんですよね…? 汚職をしていた部下のことも、自分を陥れようとした市議の人も。そして……事故で亡くなったあの子のことも……」
言葉が詰まっているような氷堂。ノワールは、言葉を続けていく。
「全て自分が責任を負って、二度と悲劇が起こらない街を作ろうとした。そうなんですよね?」
市長の表情は未だに硬い。しかし、ゆっくりと口を開いた。
「……何の罪もないあの子が犠牲になったのは、市長である私の責任。部下の裏切りのせいで……腐った連中の金勘定のせいで……!!
私が退けばいいとも思った。でもそれじゃダメなのよ。次のクズが権力を手にするだけ! だから私は市長であり続けようとした! どうせ食うか食われるかの世界なら、私が全て食ってやると!
たとえ偽物の票で得た地位だとしても、それで悲しみの無い世の中を作れるならと!
だって私が食われたら……誰が、あの子の責任を取るっていうの…! あんな小さな子が亡くなったのに…私は…悪を一掃することもできずに…!」
「……今からでも遅くない。事件の真相をみんなに語ってください!
そして、もう一度やり直して。マリさん自身の力で!」
「そんなこと、無理よ……私自身が、市長であり続けるために、真相を隠すことに加担してしまったのだから……これでは……もう…!」
本音を話したからなのか、市長はかなり弱気になっている。直後、一人の声が鳥かごの中で響いた。
「……立ちなさい、氷堂鞠子! そこで倒れたままでいいのですか!
あなたの優しさ、意志は……こんなことで躓くような弱い想いではなかったはず!
だから…立って。立ち上がりなさい! たとえ躓いても、何度でも、立ち上がるのです!」
「その…言葉は…」
「そう。昔、マリさんが私に贈ってくれた言葉です!
たとえ真実を告白しても、必ずマリさんの想いを見てくれる人がいます!
そんな王冠の力に負けないで。自分の意志を、思い出してください!」
「そうだぜ、市長! 負けんなよ!」
「あなたの気持ち、絶対みんなに届くから!」
「私もお父様が亡くなって、心が張り裂けそうだった…! でも、怪盗団のみんなのおかげで、前を見て歩けるようになったんです!
だからきっと…マリさんにだって! 何度倒れても、立ち上がることを教えてくれた、強くて優しいマリさんを思い出して!」
ノワールの言葉に続くスカルとパンサー。言葉を受けた市長だが――
「そう…そうね……ありがとう……春ちゃん……間違っていたのは…私の方だった……
職員には無理難題を押し付けて、おかしな力で無理やり市民の支持を得て……私怨に駆られていつの間にか、最初の想いを見失っていたわ。
自分がどうして市長になったのか……誰からも愛される素敵な街を作ること。私を育んでくれた街への恩返し……だから、もう一度立ち上がってみせる。二度と…間違えたりしない。
――こんなもの、初めから必要なかった!」
頭につけていたティアラを投げ捨てた市長。そのままの状態で、ノワールへ向き直る。
「春ちゃん……立派になったわね……
あなたのお父様も、きっと天国で喜んでいると思うわ……」
そう言い残して、市長は消えていった。改心もうまくいっただろう。
「マリさん…!」
「喜ぶ…?」
ノワールは嬉しそうにしており、ソフィーは疑問のように呟く。束の間、鳥かごが激しく揺れてきた。
「崩れるよ! 行こう!」
■◇■◇
現実世界に帰還すると、辺りはかなり暗くなっていた。
「すっかり、遅くなってしまったな」
「春、お疲れ様」
「よくやった。格好良かったぞ」
「ううん、みんながいてくれたから。でも、マリさん大丈夫かな……」
「大丈夫だと思うぜ。いつもみたいに消えてったじゃんか」
「ああ、ハルの想いは確実に届いた。アイツの心は間違いなく変わったはずだぜ。」
今回のジェイル攻略のMVPは間違いなく春さんだろう。みんなも労いの言葉をかけている。
「ひとまず、ここでのミッションは終了だな」
「あとは、市民が元に戻っているかどうかね。すぐに確かめたいところだけど……」
「とりあえずなんか食おうぜ! つーか、腹減って倒れそうだわ」
「そうだな。腹が減っては戦はできぬ、だ」
「いや、戦は終わったろ……」
「なあなあ、ワガハイ、ジンギスカンってやつを食べてみたい」
「おおっ、北海道名物ぅ!」
いつの間にか話題もご飯の話に。モルガナがジンギスカンを提案したが……
「なんだと!? 今日こそ伊勢海老鍋ではないのか?」
「いつ決まったんだよ……つかこのクソ暑いのに鍋はねーだろ」
「でもそれ言ったら、ジンギスカンも鍋じゃね?」
「うそ、何で!? 焼肉じゃなくて?」
「確か、ジンギスカンで使う調理器具は『ジンギスカン鍋』って言うんですよね。だからと言っても、厳密には焼肉な気がするんですけど……」
「いや、そうならば『鍋』料理だろうな」
「ははっ、やはりか。ならば今日は伊勢海老鍋で決まりだ!」
「いや、そうじゃねえだろ……ってか、何の話だっけ?」
「…ふふっ、あははっ!」
話していると、これまで話さなかった春さんが笑い出した。
「おお? ウケてる」
「いい笑顔だ」
「だな! サッポロに咲いた、美少女怪盗・100万ドルの笑顔だ!」
「よかった。ずっと思い詰めていたみたいだったから」
「ああ。夜中にこっそり、リーダーを呼び出して相談するほどにな」
「ええ!? 見てたの!?」
春さんの反応に、今度はみんなで笑い出して。
そんなこんなで、札幌でも一仕事完了したのだった。
To Be Continued…
もう少し…あと少しで、描きたいシーンに行けるんだ…!
京都編の鉄拳制裁イベント、オリ主くんは…(双葉とは付き合ってるものとする)
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