Persona 5 Scramble -Eleventh Member-   作:週末ラテ少年

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お久しぶりです


#26 Melting

-8月13日(日)-

 翌日。昼になり、みんなで市民の様子を眺めているところだ。聞こえてくる話を聞く限り、洗脳も解けているよう。

 

「まあ、良い感じなんじゃね?」

 

「氷堂鞠子への異様な熱狂は消え、ごく普通の顔を取り戻したようだな」

 

「まずは一安心だけど、この変わりよう……やっぱり王の力が恐ろしいものだと、再認識させられるわ」

 

 そんな感じで話をしていると、他の場所に行っていた杏さんがこちらにやってきた。急いでいたのか疲れを含んでいそうな声で、

 

「ねえ、今から氷堂さんが会見開くって!」

 

 そう彼女は言った。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 すぐにネットから検索。ちょうど視聴を始めると、今から会見が始まるところだった。

 

『……お忙しいところ、お集まりいただきありがとうございます。本日、市民の皆さまに、ご報告申し上げたいことがあります。この度、私は市長選より撤退し、市長の職も退く所存です。』

 

 そうして立ち上がり、深々と礼をする市長。フラッシュが沸き上がるが、それを気にせず市長は言葉を続ける。

 

『私は…市長という立場にありながら、皆さまの信頼を裏切りました。先に発生した雪像崩落事故に関しまして、真相をお伝えいたします。

崩落した雪像は、市の職員が不適切な業者からワイロを受け取り、制作したものでした。私は……責任者でありながら、そうした行為を見抜けず……雪像の政策を許可いたしました。結果として雪像は崩落し……一人の女の子の尊い命が……奪われたのです……

更に私は、真相を知った後も、自らの立場を守るために事実を隠蔽しました。市長であり続けるため、仮初の支持票を獲得していたのです。保身のために……皆さんを裏切り……不正行為に加担したのです……

私自身も加害者のひとり……私が……あの子を殺したのです……

 

 市長はうつむき、そして顔を上げる。何かを決意したような顔つきだった。

 

『よって、当該事件を改めて警察に捜査して頂くと共に……私は全責任を負うため、市長選から撤退し、市長を辞任させて頂きます』

 

 深々と礼をし、会見の配信はいったんそこで区切りがつくこととなった。

 

「……氷堂さん、迷いのない顔ね」

 

「ええ。元々は、ああいう性格だったのかもですね」

 

「…マリさん、警察に捕まったりするのかな」

 

「どうかしら……」

 

「ヒョードーは、自分が市長でなくなり、市民を守れなくなる方が怖かったんだろうな……」

 

「事実を公にして、当の職員に責任を負わせることはできる。だが、他にも『悪』が潜んでいるはずだと、気が気ではならなかったんだろう」

 

「……でも、これで良かったんだと思う。マリさんは、過ちを犯したままでいるなんて、望んでなかったはずだから」

 

 優し気な顔でそう言葉を紡ぐ春さん。その時、蓮さんの電話が鳴る。善吉さんからのようだ。

 

「……ああ、了解した。事故現場で会おう」

 

「マリさんのことで何かあったの?」

 

「崩落事故の重要参考人として、市長はこれから事情聴取を受けるらしい。コネを使って善吉が護送するとのことだが――『本人と話す時間くらいは作ってやれる』と」

 

 

 

 ◇

 

 

 

「ごめんなさい……本当にごめんなさいね……果歩ちゃん……」

 

 件の事故現場に到着するが、市長の方が一足早かったらしい。懺悔の言葉を口にしながら、花束に手を合わせているところだった。

 

「マリさん……」

 

 春さんはそう呟くが、一体何を思ったのだろう。だがその言葉で、少なくとも市長は僕たちに気付いたようで。

 

「春ちゃん……私、どうかしていた。おかしな夢を見続けていた気分よ。いつからこんな風になってしまったのか、わからないけれど……でも、あなたに言われて、昔の自分を思い出したの。そして、市長になった時の思いを――街の人たちを、家族のように守ろうと誓った、あの気持ちを」

 

 語る氷堂さんは、ここ数日の間では初めて見たような表情のように見えた。憑き物が落ちたような、そんな感じ。

 

「あなたのおかげで、私はようやく自分と向き合えた。そして、私がしていたことは、亡くなった子への裏切りだと気づいたの。現実から目を背け、独りよがりだった私は、あの子に何も返せていないって」

 

「そんなこと……マリさんはマリさんなりに……」

 

「いいの、事実よ。もしかすると私は、この先ずっと人々を苦しめ続けていたかもしれない。でもそんなことは、この子が望むはずがないもの。だから、お礼を言わせて春ちゃん。この街を――私の家族を救ってくれて、ありがとう……!」

 

「マリさん…!」

 

「お父様が亡くなって、まだ日も浅い大変な時に……本当にごめんなさいね……この先、困ったことがあったら、私に言って。何があってもすぐ駆け付けるわ。春ちゃんだって、私の……とても大切な家族なんだかから」

 

「ありがとう、マリさん…!」

 

 感極まり、互いに抱きしめる二人。こうして見ていると、なんだかこちらも嬉しくなってくる。

 よかったね…と呟く真さんが、その総意を示していた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 暫くしたのち、抱き合うのも終わりになった頃。互いに落ち着いたようだ。

 

「じゃあ、もう行かないと。急に市長を退いて、街のことは心配だけど……後に続く人たちに頑張ってもらうわ。横暴で愚かな市長の代わりにね」

 

「もう、政治の世界からは身を引くということですか?」

 

「ええ。これ以上、市民に合わせる顔なんてない。私も歳だし、これからは若い人が――「……市長」

 

 その時、遮るように誰かの声が耳に入る。市長が気づいた先には、やつれた風貌の女性が。

 

「ニュース見ました、本当に辞めるんですね。しかも、政治家を引退する…?」

 

「は、はい……もう二度と、皆さまの前には……」

 

「――ふざけないで! あなたが消えたところで、あの子は帰ってこない!

果歩の……娘の死は変わることはない!」

 

「お、おい……止めた方がよくねーか?」

 

「いや、大丈夫ですよ。恐らくあの人……」

 

 竜司さんを制止。「娘の」と言う辺り、きっとあの人は……

 その推測は、隣にいる真さんも同じのようだった。それをよそに女性は言葉を続ける。

 

「だからあなたは……逃げずに戻ってきて! すべてやり直して、もう一度市長になって!」

 

「えっ…?」

 

「やり場のない怒りをぶつけた私の前で、あなたは涙を流してくれた……あなたは逃げずに、私の悲しみに寄り添ってくれた…! その姿は、私が一番よく知ってるわ!」

 

「お母さん……ありがとう……ありがとうございます…!

約束します…あなたやあの子のために…必ずもう一度立ち上がって、市民を守る市長になると……!」

 

 その光景を目にし、目の辺りを拭う春さん。それを横目にスマホが震えた(ソフィアから話が)

 

「……何故だ、翼。これは多分、哀しい場面のはず。だってみんな涙を流してる。なのに、温かくて優しい。これは…いったい何だ?」

 

「ふむ、僕としちゃ言い難いけど……『喜び』なんじゃない? 嬉しい気持ち、みたいな」

 

「そうか…だから春は、氷堂を助けたのか。哀しいを、嬉しいにするために…

……重要情報を記録。ソフィアは『喜び』を学習した」

 

「いいね、ソフィア。……とりあえず、僕たちはそっとしておこう」

 

「そうだな」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 氷堂さんをみんなで見送り、その後にアレコレしていると、あっという間に日は暮れていた。各々自由行動中、氷堂さんの事情聴取も現在進行形で行われているのだろう――そう考えながら僕は独りベンチに座り、スマホをつつく。

 

「エロス、プラグマ、ルーダス、アガペー、ストルゲー、マニア……へー……」

 

「……翼、何か調べ物か? 私に頼ってもいいんだぞ?」

 

「そうだけど……なんて言うかね、ソフィアは気にする必要がないっていうか」

 

「そうなのか……」

 

 きっとソフィアには頼れない。恋愛感情を知らないんだ、だからこそ自問自答でどうにかするしかあるまい――だが、どうやって? それに、いつ告るってんだ。

 そもそも、僕にそんな資格すらあるのか――そんな自身の無さが、どうしても嫌になる。

 

「……でも翼、その表情は心配するぞ」

 

「……そっか」

 

 どうやら顔に出ていたらしい。そうなるなら、少し話してみるのも良いかも……

 

「……ごめん、秀尽の友達から相談受けててさ」

 

「どんな内容なんだ? 私で良ければ協力するぞ?」

 

「そうさせて貰うよ。で、肝心の内容なんだけど、結構複雑でね……

その友達には好きな人がいて、近々告白したいと思ってるって。でも、いざ考えると自信がないって言っててさ……どうするようにアドバイスすればいいのかなって」

 

「恋愛感情とその向き合い方、ということか?」

 

「そんなとこかな」

 

「なるほど」

 

 そこから何故か数秒固まるソフィア。視線を泳がせたりもした後、口を開く。

 

「……すまない、私はまだそういった感情について理解ができない。だが私なりにアドバイスをするなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()だな。それで失敗する可能性も考慮できるが、それを二の次にするというのが重要だと私は考える」

 

「行動を起こす、か……」

 

 ソフィアの言葉を軽く反芻し、確かにそうだと身に染みてくる。実際怪盗団に入るまでは、アリス関連を除いて消極的に動いていたことは否めないわけだし……

 

「……ソフィア、ありがと」

 

「気にするな」

 

 チャットを開き、軽く深呼吸。自分は結局他人に動かされる人間だというのを実感しながらも、勢いのままに手を動かした。

 

To Be Continued…




書くのに苦心したりモチベが死んだりしてたら半年が経ってました。何故…?
ともかく、更新を待っていた読者様には本当に申し訳ございません……次話は結構凝った感じにしたいのでまたお時間頂戴することになるかもですが……!

京都編の鉄拳制裁イベント、オリ主くんは…(双葉とは付き合ってるものとする)

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