Persona 5 Scramble -Eleventh Member-   作:週末ラテ少年

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今更ですが、タグに「不定期更新」を追加しました


#27 Ring of Fortune

 市内某所、観覧車。双葉とは無事に合流し、互いに無言のままゴンドラに乗る。鍵も閉められ、完全な密室だ。色は他の赤いものと違い黄色だったが、気にはしなかった。

 

 

 ――とは言ったものの、勢いで誘ってしまったがために何を話せばよいのか。誰もいない以上、僕の抱える感情を話したところで誰にも言われまい。

 しかし、いざ言おうにも雑談の一つすらもできる気がしない。乗ったばかりでゆっくりと昇る観覧車の中、紡げたのは

 

「……夜景、綺麗だね」

 

「……だな」

 

 たった、それだけ。

 対角線上に座る双葉から目を逸らすように夜景を眺めるが、僕の向ける感情がこれほどまでなのかと思ってしまう。

 双葉の顔を見る気なんてなかった。唐突に呼んで、観覧車に誘って、となった割にはこの状況。無表情なのだろうか。良い顔をしている想像ができるほど、今の僕は気楽に構えられない。

 

 そういえば、いつぞやか水道橋のドームタウンに二人で行ったときも観覧車に乗ったんだったか。当時は取引関係なんて忘れて楽しんで、観覧車でも盛り上がっていたのをよく覚えている。確かあの時は双葉に手を引かれて連れ回され、件の観覧車だと声を揃えてあのセリフをもじって……

 ……何を思い出しているんだ。今ここで告るんじゃなかったのか、僕。

 

 変な考え事から正気に戻ると、僕らが乗るゴンドラは既にかなり高い位置にあって。十数秒もすれば頂点につきそうだった。

 また物思いに耽ってはそのうち観覧車を降りることになる。そうなる前に――

 

「……あの、さ」

 

「ん?」

 

 声をかける。その瞬間、地震とは違う揺れがやってきて、ゴンドラ全体が揺れる。

 僕は大したことはなかったが、双葉の方は揺れの勢いが余って前に倒れこみそうになっており――

 

「……大丈夫?」

 

「まあ、なんとか……」

 

 その前に、双葉を体で受け止める。僕が気づかずとも大したケガにはならないだろうが、反射でしてしまったのだから仕方ない。外からは機械の軽いトラブルによる一時的な停止の旨でのアナウンスが聞こえる。暫くすればまた動きだすはずだ。

 ただそれはそれとして、この状況。幸か不幸か互いの胸元が重なっていて、首元に呼吸がかかっている、そんな体勢。偶然の産物でかなり密着しており、僕も双葉を抱きとめるような姿勢になっている。そしてそのままの状態で一呼吸置く。続ける言葉に自分なりの勇気をこめて。

 

「……このまま、聞いてほしいんだけどさ。

二ヵ月半くらい前に取引関係になった僕らだけど、それから色々教えてもらって、色んなとこに遊びに行って、こうやって怪盗団に入って……まぁ、こんな感じに二人でいる時間ってのも結構あったわけじゃん」

 

「う、うん」

 

「最初は友達だったけど、知らず知らずのうちに変な感情が向くようになってさ。ちょっと前に、気づいたんだよね。この感情が『恋』なんだって」

 

 ゆっくりと、言葉を紡ぐ。言う内容が内容でちょっと恥ずかしいが、そういう感情は湧いてこない。不思議と、落ち着いていた。

 

「というわけで、って言うのも何だけど。佐倉双葉さん。僕は、貴女のことが好きです。

――付き合って、ください」

 

「……!」

 

 長いようで短い時間が流れる。ようやく、彼女に想いを伝えられた。

 全身から力が抜けていく感覚がしてきて、背もたれに体を預けよう。そうしようとした矢先、逆に双葉が僕を抱きしめてきて。

 

「……もちろん、いいぞ。わたしも翼のこと、好きだから……」

 

「……へ?」

 

 了承はともかくとして、意外すぎる言葉が飛んでくる。頭の中がハテナで染まり始める中、ぽつりぽつりと双葉は話し始めた。

 曰く、仙台で色々している辺りから「そういう感情」が芽生えてきていて、はっきりと自覚したのは札幌に着いてすぐのことらしい。温泉で、女性陣から僕のことをどう思ってるのか、みたいなことを訊かれて自覚したのだとか。

 

「……つまり、両想いって、やつ?」

 

「そ、そうなる……よな……」

 

「……一旦、座り直す?」

 

「うん……」

 

 倒れこむ前の位置に戻り、まさかここまで同じとはと考える。そういう事実が僕らの前にはあって、逆に笑ってしまいそうだ。

 そして流れる沈黙。双葉もそうなのかわからないが、告白が成功したという事実をあまり受け止められていないというのがあるワケで。実は両想いだったのだから尚更なのだ。

 

 特にすることも思いつかずに時は流れ、外からは間もなく運行再開のアナウンスが耳に入る。二人きりの時間の終わりが近づき始めるということだ。そう思うと、一抹の寂しさが心を撫でてくる。同時に、一つのことを思いついた。

 

「……こっち、来る?」

 

 席の隣のスペースをつつき、こちらに双葉を呼ぶ。何も言わず、こちらに来てくれた。

 

「……どうかしたか?」

 

「ん-、もうちょっと待ってて」

 

 双葉を視界の一部に入れつつ札幌の夜景を眺める。見上げると、中途半端な形の月が。しばし待つと、観覧車が再び動き出した。

 

「こっち向いてくれるかな」

 

「ん……?」

 

 双葉をこちらに向かせ、目が合う。そこそこに身長差があり、見下ろし見上げる形だ。

 そしてちょうどてっぺんに差し掛かるタイミング。それに合わせて双葉を抱き寄せて――

 

「……?!」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 互いに浮いた気持ちを落ち着かせ、アジトに戻る。そして作戦会議の時間だ。

 善吉さんからは新情報ナシの報告と氷堂さんのスマホを受け取り、モルガナは一つの結論付けをした。

 

 それは一連の事件に黒幕がいるということ。

 市民のために尽くし、必死だった氷堂さん。

 挫折こそあれど、執筆への努力を惜しまなかった夏芽。

 誰かの光になるため、裏でひたむきに頑張っていたアリス。

 三人とも『改心』の力で悪事を働いていたものの、根っからの悪人ではないという共通点がある。それは即ち、ジェイルはパレスとは構造が根本的に違うのだという。実際、パレスの主が持つという『オタカラ』を皆持っていなかったというのが証拠だ。

 さらに、鳥かごの鍵の存在。王の元へたどり着くために僕らは鳥かごの鍵を開けていたが、アレは侵入者を阻むものではなく、逆に王を鳥かごの中に閉じ込めるためにあるのではないのかとモルガナは推測したのだ。そうなると、トラウマルームの番人も、トラウマを暴かれないためではなく、鳥かごという王を閉じ込めるためのシステムの番人という意味合いになる。

 

「よくわからねえが……つまり、(キング)もまた利用されてると。それが黒幕がいると思う根拠か……」

 

 そして双葉によるスマホの分析結果だが、またも異常なしとのこと。監視者の痕跡があったところまでまるで同じだ。

 

「その監視者が黒幕ってことか。目星はついてんのか?」

 

「第一候補は、EMMAを運営してるマディス社だろうな。EMMAがジェイルの入り口である以上、やはり無関係とは思えない」

 

「マディス社な……本社に踏み込めれば話は早えんだが……」

 

「公安の力でなんとかできないんですか? 何かしらでっち上げて容疑を吹っ掛けるとか」

 

「馬鹿言え、相手はマディスだぞ? んな事が通用すると思うか?」

 

「それもそうですね……」

 

 その直後、蓮さんのスマホに着信が。どうやら一ノ瀬さんからの電話らしいが……

 一通り話を聞いた彼が語ったのは、「次の手がかりは沖縄にある」とのこと。どうやらEMMAは一ノ瀬さんによって売却された後、沖縄の「久古島(くこじま)」という島にあるマディス社の研究所に運ばれたという。しかもそこは行政に登録されていない秘密研究所なんだとか。

 それを聞いた僕らは信じられない表情になり――

 

「沖縄!?」

「青い海!?」

「シーサー!?」

「ぱいなぽー!?」

「ちんすこう!?」

「首里城!?」

「ソーキそばだな」

「いいな! ラーメンみたいなやつだろ?」

 

「……おいオマエら、とりあえず正気に戻れ」

 

 まぁご覧の通りである。まさかこのタイミングで一気に南下するとは……

 

「……未登録の施設ってんなら、現地調査からの任意捜査って流れも取れる。真っ当な証拠が見つかるかもしれない。行く価値はあるか……

だが、久古島つったら沖縄本島から少し離れてるな。となると飛行機しかねえか……」

 

「ちょっ、GOGOフェザーマン号どうすんだ! せっかく一緒に旅してきたのに!」

 

「この車……そんな名前だったんだな……」

 

「それに、公共の乗り物は危険だからって……」

 

「しかし、さすがに沖縄まで車は無謀ではないか?」

 

「そうですね……一気に南下しますし真さんが大丈夫かどうか……」

 

 その時、聞いたことのない着信音が車内で鳴る。どうやら善吉さんのもののようだが……

 

「……おう、どうした? ああ、ああ……

も、もちろんそりゃわかってる。だがこっちも仕事でな……ハハ……」

 

「誰からだ…?」

 

 竜司さんの言う通りだ。口調が崩れてる辺り、相手は仕事上の関係のある人間ではなさそうだ。

 

「いや嘘じゃねえ。それだけは本当によ……もちろん覚えてたさ。けど俺も……その……」

 

 直後、ブツッと携帯から音が流れる。ツー、ツー、と無機質な音がスマホから続いている辺り、向こう側から切られたようだ。

 

「あ……」

 

「……切られたな」

 

 すぐさまスマホを戻す善吉さん。彼が口を開くと、今度は予想外の言葉が飛び出してきた。

 

「お前ら、飛行機はナシだ。車で行くぞ」

 

「は……?」

 

「ここから沖縄まで車で行くの!?」

 

「悪いが寄る場所が出来ちまってな。行くのはまず京都だ」

 

「京都だと!?」

 

 祐介さんの目が見開かれる。元々京都には行きたがっていたのだから当然なのかもしれない。

 

「なぜ京都に…?」

 

「俺は本来、京都府警の所属でな。署に戻って捜査情報を共有するとか……色々だ。神戸まで出りゃ直行のフェリーも出てる。時間的には問題ないだろ」

 

「それでも、京都までかなり距離があるわね……」

 

「心配すんな。俺が運転してやる」

 

「一緒に来んのかよ!?」

 

「つーか、新島がずっと運転してたのか? 奥村はどうした、免許持ってんだろ」

 

「取りはしたんですけど、私、ペーパードライバーで……」

 

「それに春の運転は、その……」

 

 珍しく真さんが言い淀む。何かやましい事情でもあるのだろうか……

 

「……まあいい。とにかくすぐに出発するぞ」

 

「ここからなら北陸自動車道だな。想定走行時間は――」

 

「21時間……ってトコか……」

 

「オッサン、正解だ」

 

「21時間…?! ヤバくね?」

 

「俺たち警察は運転のプロなんでな。任せとけ」

 

「どうしたんだよ……なんか急に火がついた感じしねえ?」

 

「俺は構わん。京都に行けるのだからなっ!」

 

「なりふり構わなくなってきたなおイナリ……」

 

「だね……」

 

「ぶっ飛ばしていけ、善吉」

 

「ああ、任せろ! さぁ、出発準備だガキ共!」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 善吉さんのかけ声に合わせ、出発の準備を始めること暫く。僕、双葉、ソフィアは土産屋を訪れていた。無論、お土産探しの為である。

 

「色々あるねー……お菓子とかキーホルダーは勿論だけど、加工食品もいっぱいだ……」

 

「北海道は農業・漁業・畜産がどれも盛んに行われている。その延長線で、ソーセージやハム、チーズなどの加工品も多く生産されているな」

 

「なるほどなー。じゃあ宅配でそうじろうに色々配送するか! カップラーメンとか、ウマいもんとか!」

 

「いいだろうけど……送料には気を付けてね? てか、それなら僕も父さんたちに色々送っとくか……」

 

 そんな感じで雑談しつつ、色々と気になるものを買い物カゴに放り込む。配送の件は買い物が終わり次第父さんに連絡しておけばまぁ大丈夫か。

 

「あ! 翼、これ!」

 

「それって……木彫りのクマ?」

 

「リアルで見るとこんな感じなんだなー……こういうの、興味なかったけど見てみると色々とおもろい……」

 

 じっと木彫りのクマを見つめる双葉。表示を見る辺り、どうやら掘り出し物の類らしい。木彫りだけに?

 同じ棚に他の物がないか探してみると、今度は僕の興味にひかれる一品が。

 

「なんだこれ……」

 

「どうかしたのか?」

 

 それはまさしく木彫りの置物。だが形状が鮭に咥えられる熊という変わり種で、双葉が見つめていた熊に咥えられる鮭とは真逆のものだ。値札には「鮭の逆襲」と書かれている。木彫りの商品名にしては無駄にかっこいい。

 

「なんかこれはこれで良さがないかな?」

 

「イイな! アジトに飾っとこ!」

 

 どうやら購入は確定らしい。

 

「……それにしてもと言うのは違うが、二人とも付き合ったんだよな?」

 

「うっ……」

「……ノーコメント。てか、どこでそれを?」

 

「観覧車に乗っていたときにしっかり聞こえていたぞ。セリフは録ってないから安心してくれ」

 

「そういう問題じゃないんだけどなぁ……」

 

 唐突にソフィアから吹っ掛けられる質問。予想外の場所から飛んでくるものだ。

 ……というか、確かにそうなんだよな。僕から告白しておいてだけど。

 

「でも実際、あんまり実感湧かないよね。どちらかというと友達の延長線……みたいな」

 

「だよなあ……」

 

 その後、会計はじめ買ったものの一部を宅配便で東京へ送る。親への了承はもちろん取っておいた。外に出ると、辺り一帯は夜。どことなく、救急車のサイレンがあまり聞こえないような気がする。

 そして二人並んでキャンピングカーへ。荷物持ちは勿論僕だ。そしてその途中、手の振れに合わせて双葉と手を繋ぐ。

 

「び、ビックリした……」

 

「なんか、彼氏彼女っぽいことでもやろうかなって。……駄目かな?」

 

「ダメじゃないけど……」

 

 俯きながらそう呟く双葉の顔は赤みを帯びていて。変に「可愛い」という思考が脳を掠める。

 

「そういう翼だって緊張してるクセに!」

 

「し、してないし!」

 

「じゃあ何故翼は声が引きつっているんだ?」

 

「それは……うん」

 

「やっぱ緊張してる……」

 

 そんな感じで気楽な会話を交わしていって、三人でキャンピングカーへの道を歩く。

 いつの間にか手を繋いだままになっていたのに気づいたのは、アジトに着く直前なのだった。

 ……仲間の何人かに双葉との関係を察されたのは、別の話。その追及は、京都への道のりで行われるのだった。

 

 

 

Ep.3 A Silver World Filled with Gluttony

                  Complete

 

Continued on next episode…

 




一年以上かけ、漸く札幌編が終了です。本ッッ当にお待たせしました!
京都への寄り道はEp.3.5とする予定。気長にお待ち頂ければ幸いです

京都編の鉄拳制裁イベント、オリ主くんは…(双葉とは付き合ってるものとする)

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