蒼海のアルティリア   作:山本ゴリラ

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第136話 煽り煽られ※

 俺は動きにくい事この上ないドレスとハイヒールを下着ごと豪快に脱ぎ捨てると、いつもの装備……最大強化&フルエンチャント済みの水着と水精霊王の羽衣を取り出して、一瞬で着用した。

 それと同時に、敵の人魚……紺碧の女王もまた、水を固めて細長い槍を作り出して、穂先を俺に向けて構えを取った。

 

「お前も槍使いか。ならばお手並み拝見をいこうか」

 

「ええ。お手柔らかに」

 

 その直後、無詠唱で『水の弾丸(アクア・バレット)』を15発同時に放った。紺碧の女王は、それを防御するそぶりも見せずに余裕の表情で受け、俺が放った水の弾丸は全て、彼女に直撃した。

 直後、紺碧の女王は驚愕に目を見開いた。

 間違いなく、こいつは水属性に対する完全耐性持ちだ。しかし、水精霊王(アクアロード)という職業を極め、水属性魔法に特化した俺が使う魔法は、素の状態で敵の水属性耐性を半減させてダメージ計算を行なう。よってアルティリアとPVPする時は水耐性を最低でも150%以上盛れ、というのは対人勢の中では常識だった。

 そんな訳で、俺は水属性の敵を苦にしていない。でなければ、海底神殿という水耐性持ちしか居ない難関エリアでソロ狩りなんか出来る訳がなかろう。

 

 しかし、耐性を半減させてダメージを与えたといっても、そのダメージ量は微々たる物だった。仮にこいつの水耐性が100%だったと仮定して、半減だと50%は残るからな。それに加えて、こいつ自身の魔法防御力もかなり高そうだ。

 だが、大事なのはダメージを与えたという事実だ。完全耐性を過信して余裕ぶっこいてた所に、受ける筈のないダメージを受けた事で動揺したところに、俺はすかさず飛びかかり、槍で追撃をかける。

 しかし、紺碧の女王は俺の一撃を、手にした水槍で受け止めてみせた。力を込めて押してもびくともせず、見た目に反して相当な腕力の持ち主のようだ。

 ならばと、俺はあえて引く事で力の均衡を崩し、空中で一回転して相手の頭上から踵を落とす。

 それに対し、紺碧の女王は魚の下半身を力強く跳ねさせ、それを叩き付けるようにして迎撃した。結果はお互いの攻撃が相殺し合ってノーダメージ。

 

 俺達がそんな風にぶつかり合っている間に、俺と一緒に来た騎士の人は王様を担いで、部屋を出ていった。彼では俺達の戦いについてこれないだろうし、居られても邪魔なだけだし、一度殺されて復活したばかりで衰弱している王様を、安全な場所で休ませてやるのは最優先事項だ。自分が今やるべき事をしっかり理解出来ていて大変よろしい。

 

「なるほど、中々やるようだな」

 

「そちらこそ。まさかこの私の耐性を貫通してくるとは思いませんでしたわ」

 

「私のように一つの系統を極めた者なら、出来て当然の事だ。どんな相手にも自分の強みを押し付けられるからな。完全耐性くらいで過信していたら痛い目を見るぞ」

 

「勉強になりましたわ。それにしても、得意な属性が同じで、武器も同じ槍同士とは。貴女、わたくしと色々被っておりませんこと?」

 

「ほう、私とお前が似ていると?」

 

 そう言われて、俺は改めて目の前の人魚を観察する。

 まず人魚の女王だけあって、属性は水。見る限り魔力もかなり高そうだし、高位の水属性魔法の使い手である事は間違いない。勿論、泳ぎもかなり上手いだろう。

 次に、武器は槍を使う。先程、俺の一撃を正面から受け止めただけあって、槍の腕前もかなりのものだ。見た目は華奢だが、ユニークボスモンスターだけあって腕力もかなり強い。単純なSTRやVITの値だけなら俺よりも上だろうな。

 髪や目の色は、緑がかってはいるが青系の色だ。俺は水色の髪に濃い青色の瞳なので、違いはあるが同じ系統の色である事は間違いない。

 なるほど、こうやって見てみると、なるほど俺と似通った部分が多いように見える。

 

 次に、俺は紺碧の女王の胸部へと視線を向けた。なだらかな大平原が広がっている。

 

 おっぱいスカウター起動! ピピピピ! 計測開始!

 出ました! 71センチ、AAカップです!

 まさかうちのルーシー(小人族・Aカップ)以下とは恐れ入った。

 

 そして、次に俺は視線を下へと向けた。見事なお山が二つ並んでいて、足下が見えない。

 

 おっぱいスカウター再起動! ピピピピ! 計測開始!

 出ました! 110センチ、Kカップです!

 ちなみに俺の成長期はまだ終わっていない。

 

 俺は視線を紺碧の女王へと戻した。

 

「ハッ。どこが似てるって?」

 

「今どこ見て嗤いやがってテメエッ!」

 

「答える必要は無いな。自分の胸に聞いてみろよ」

 

 我ながら会心の返しができたと思う。

 一転して猛攻を仕掛けてきた人魚の攻撃を捌きながら、そう思うのだった。

 

 

     *

 

 

 一方その頃、別室では海神騎士団のメンバーが、突然天井を突き破って室内に現れた、地獄の道化師と対峙していた。

 

「どうも、クソ女神に仕えるクサレ騎士の皆様、ご無沙汰しております。ワタクシ地獄の道化師による残虐王宮破壊ショーのお時間がやってまいりました。是非お楽しみいただきたい」

 

 天井をブチ破り、高価な調度品を見るも無惨に破壊しておきながら、臆面もなく慇懃無礼な態度でそう言ってのける地獄の道化師に対し、騎士達は武器を抜いて構えを取った。

 

「たった一人で乗り込んでくるとは良い度胸だな。裏でコソコソと動き回るのが得意な貴様らしくもない」

 

 赤い大剣を肩に担ぐようにして構えるスカーレットが言うと、地獄の道化師は仮面の下で嘲笑を浮かべた。

 

「はァん? おやおや、何やら空耳が聞こえた気がいたしましたが……? 生憎とワタクシは耳が悪くて、人間にブザマに敗北した上に主を失い、そのままおっ死んでればよかったものを、よりにもよって人間なんぞに転生して旧主の仇に仕えている、裏切り者の騎士(笑)の言葉は聞こえませんなぁ! アナタ達、今何か聞こえましたか?」

 

 地獄の道化師がそう言って煽ると、床下、窓の外、天井に空いた穴から三人の地獄の道化師(複製体)が顔を出し、

 

「聞こえませんねェ」

 

「何か言いました?」

 

「ワタクシのログには何もありませんよ」

 

 と口々に言い、そのまま何もせずに去っていった。

 

「貴様……そこまで言った以上、覚悟は出来ておろうな!」

 

 スカーレットが激昂し、業火を纏う大剣を大上段から振り下ろす。彼の攻撃力は海神騎士団の中でも右に出る者がおらず、この一撃を受ければ、地獄の道化師などひとたまりも無い筈……だった。

 しかし、そのスカーレットが放った渾身の一撃を、地獄の道化師は易々と受け止めて見せた。それも、片手でだ。

 全体重を乗せた大剣による唐竹割を、片手でいとも容易く受け止める程の筋力は、かつての地獄の道化師には無かったものだ。更に、スカーレットの大剣が放つ高熱や炎によるダメージも、一切受けていないように見える。

 

「フッ……フハハハハハ! 効きませんねぇ!」

 

「ぬぅッ!?」

 

 そして空いた手で、地獄の道化師はスカーレットを殴りつけた。重い全身鎧を身につけた巨漢のスカーレットを、素手の殴打で吹き飛ばす程の強烈な一撃だ。

 強い。これまでに見た地獄の道化師からは、考えられない程の強さだ。こいつは一体どういう事だと、海神騎士団の面々は疑問を抱いた。

 それに対する答えは、目の前の地獄の道化師、本人からもたらされた。

 

「それでは、改めまして自己紹介いたしましょう。ワタクシは地獄の道化師、その複製体の一体にして、これまでの研究と実験の集大成!」

 

 地獄の道化師が両腕を大きく広げる。すると、彼が着ていた燕尾服の、肩の部分から先が千切れ飛び、両腕が露わになった。

 その腕は筋骨隆々で、表面にびっしりと鱗が生えており、その先端には毒々しい色の鋭い爪が生えていた。

 

蜥蜴人の王(リザードマン・ロード)の腕! バジリスクの爪!」

 

 続いてズボンの脚の部分が千切れ、脚部が露出する。それは人間のものではなく、機械仕掛けの戦闘用義肢であった。

 

太古の殺人機兵(エンシェント・キラーマシン)の脚!」

 

 続けてスーツが完全に弾け飛んで、上半身が完全に露出する。青白い肌で、痩身だった筈の地獄の道化師は、世紀末覇者の如きムキムキマッチョマンに変貌していた。

 

千年竜(サウザンド・ドラゴン)の臓器!」

 

 仮面を外して、素顔が露わになる。そこには縦に細長い瞳孔の入った、金色に光る瞳があった。また、三日月型に大きく裂けた口からは、蛇のような細長く、先端が二又に分かれた舌が伸びていた。

 

単眼巨人(サイクロプス)の邪眼!」

 

 更に背中からは巨大な鳥の翼が生え、それを大きく広げる。

 

「ロック鳥の翼!」

 

 そして最後に、残ったズボンの腰部分が吹き飛び……

 

「馬のチンチン!」

 

 モザイクをかけなければお見せできない、大きくそそり立ったモノを露出させ、地獄の道化師はドヤ顔をキメた。

 

「これら様々な最強生物の部位を移植し、融合させた究極完全生命体! それがこのワタクシ、地獄の道化師666号!」

 

「何ぃ……っ! 馬のチンチンだと……!?」

 

「くっ、まさか馬のチンチンを出してくるとはな……!」

 

「大きすぎる……修正が必要だ……」

 

 その異形の姿を見て、海神騎士団の男達は恐れ慄くのだった。

 

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