蒼海のアルティリア   作:山本ゴリラ

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第91話 ロストアルカディアⅦ発売告知に対する反応※

 数日前。動画サイト内のメーカー公式チャンネルにて、新作『ロストアルカディアⅦ ~Goddes of Ocean~』の発売告知の生放送が行なわれた。

 ファンの多い人気シリーズの最新作が発表されるとあって、当然のように多くの視聴者が集まったその放送内で、発表されたイラストとゲーム内画面に映っていたのは……青い髪と瞳の、長身で色んなところがやたらとデカい豊満なボディのエルフ……アルティリアであった。

 

「ファッ!?」

「でかい(でかい)」

「おっぱい!」

「おおすっげぇでけえな! おおすっげぇでけえな!」

「エッチコンロ点火! エチチチチチ勃ッ!」

「大きすぎる……修正は必要ない……」

「顔もめっちゃ美形だけどまず乳に目が行く」

「新作を見にきたら開始0秒でえちえちエルフが出てきた件」

「キャラデザ今回はかなり攻めたなぁ」

 

 コメントが主に彼女の特徴的な容姿について盛り上がる中で、同時に彼女についての説明文が流れる。どうやら画面内に映っているのは、次回作のキーキャラクターで、プレイヤーが仕える事になる女神であるらしい。

 

「え、神?」

「神ってもう地上に残ってないはずだよな? どういう事?」

「つまりⅥの冥王様枠って事?」

「エルフが女神ってどういう事だ?」

「つーかあれエルフか? 耳が尖ってるだけでエルフではないのでは?」

「でも水精霊王の羽衣着てるし、メイン職業は精霊使い→水精霊使い→水精霊王で確定だろ? じゃあエルフじゃね?」

「精霊使いってエルフしかなれないっけ?」

「いやエルフ以外もなれるけど転職クエの場所が精霊の森にあるエルフ村だし、キャラクリ時から無条件でなれるのはエルフだけ。だからエルフ以外でメイン精霊使いってあんまり居ないと思う。少なくとも俺は見た事ない」

「じゃあやっぱエルフじゃん」

 

 彼女の設定について、視聴者たちが様々に考察しながらコメントすると、動画内の場面はアルティリアの戦闘シーンへと移り変わった。

 

「つっよ……」

「総合レベル推定150以上」

「あれ海神の三叉槍じゃね? ネプチューンの関係者?」

「海の女神らしいし、おそらくそう」

「挙動からしてメイン水精霊王でサブに槍と格闘と魔法戦士、他にも何か持ってそう」

「考察助かる」

「魔法の詠唱速度と威力がやばい。水属性特化タイプか」

「てか水中移動はえーよ。水泳スキル幾つあるんだ」

「俺は純粋な気持ちで新作を楽しみにしていたのに

 いきなり無限に性癖に刺さる奴が出てきやがった

 いい加減にしろよドスケベエルフ

 俺達をゲームに集中させろ

 戦闘中もばるんばるん揺れよる

 その乳で女神は無理でしょ

 腰ほっそい癖にケツがでかすぎて落差がえぐいぞ

 なんだその太ももはニーソ虐待罪で現行犯逮捕する

 だが好きだ

 栄えあれ我が母校

 嗚呼ドスケベエルフ女神大好き高校」

「校歌助かる」

 

 それから動画は舞台設定の説明へと移った。

 これまでに発売された過去のシリーズ及びLAOの舞台であったエリュシオン島、ルグニカ大陸、ハルモニア大陸とはまた別の新たな大陸、遥か南方に位置するルフェリア大陸が今作の舞台である事。

 更にその中でも、冒険のスタート地点となるローランド王国および港町グランディーノが紹介された。

 

「ほう、過去作とは別の場所なのな」

「久々に新しい大陸来たな!」

「ちょっと待てよ、エルフって設定的にルグニカ大陸にしか居ない筈だよな? じゃあアルティリアって何者? なんでこの大陸に居るの?」

「海を超えてこの大陸に渡ったエルフが現地で信仰を集めて神になった説」

「↑多分こいつ正解。エルフって長生きだし普通にありそう」

「確か過去作で海を超えて新天地に渡った小人族の伝説とかもあったし、ありえる」

「しかしこっちの大陸、ルグニカと比べると科学技術とかはあんまり発展してないっぽい?」

「ルグニカ大陸はほら……長い事大陸全土を巻き込んで大国同士がドンパチやってた影響で技術競争がね……」

「女神の影響で空前の発展を遂げているって説明あったし、やっぱり向こうの技術や文化を持ち込んだルグニカ産エルフの可能性が高まったな」

 

 次に紹介されたのはゲームシステム関連だ。

 まず、固定の主人公となるキャラクターはおらず、プレイヤーはオンラインゲームであるLAOのように、自身の分身となるキャラクターを作成して操作する。

 

「名無し主人公か。ナンバリングタイトルだとⅠ・Ⅱ以来だな」

「キャラクリはLAOベースっぽいな。かなり細かく設定できそう」

 

 ゲームの流れは、探索や採集、魔物討伐のクエストを受注して、それを達成する事で経験値と報酬を得て、自身のキャラクターを鍛えつつ、条件を満たす事でイベントを進行させていくオーソドックスな物だ。

 

 それから戦闘システムは、このシリーズでお馴染みの高速でアクション性の高い物であり、更に最大の特徴として戦略性の高さが挙げられる。

 ロストアルカディアシリーズでは伝統的に、多数の敵味方が入り乱れての大規模戦闘が数多く繰り広げられ、その状況下で勝利条件を満たす為に、プレイヤーには戦闘中にリアルタイムで様々な任務(ミッション)が課される。

 例えば、押し寄せる敵軍から都市を防衛する戦いであれば、勝利条件は敵から都市と住民を護りきる事になる。その目標を達成する為にどのような行動を取るかは、プレイヤーの判断に任される。

 街の外に打って出て、敵軍の陣地や兵糧庫を攻撃して敵の攻勢を削ぐか。あるいは門を突破しようとする敵兵を攻撃したり、攻城兵器を破壊して街への被害を防ぐのか。はたまた、街の中に侵入した敵から住民を護る事を優先するか。

 同じように、大勢のNPCもまた各自の判断でそれぞれ動くため、場合によっては彼らの手助けをする事で、戦況を有利にする事もできるだろう。

 プレイヤーの行動次第で戦闘の結果も大きく変わり、任務を効率よく達成して最高の結果を導く事が出来れば、高い評価や報酬を得る事が出来る。

 

「これに関しては毎回お馴染みだな」

「むしろこれが無いとロストアルカディアじゃないとも言える」

 

 今作はその大規模戦闘がよりパワーアップした。女神の加護を受けたグランディーノの住民達は、一般市民であっても魔物に抗う力を持っている為、農村の防衛といった序盤のクエストであっても、武装した村人VS魔物の大群の大規模戦闘が発生する。

 

「農夫が斧ブン回してゴブリンを薙ぎ倒しとるw」

「今まで放っとくとすぐやられてた一般市民が超強化されてるううう」

「おいちょっと待て、なんだあの獣人の子供クソ強ぇぞ」

 

 味方NPCが強化されたのは良い事ではあるが、逆にそれが原因で手柄を立てる事が難しくなる場合もある為、今作ではむしろ、どうやって目立った活躍をして勲功を得るか、という点にも重きを置かれている。

 今作では戦闘や生産、依頼達成による功績を重ねる事で、女神からより強い加護を得る事ができ、女神もまた信者の活動によって信仰の力を得る事で力を増す。

 そうして神と人とが力を合わせ、困難に立ち向かうというのが今作のコンセプトのようだ。

 

「過去作でも色々と力を貸してくれたりはしたし、前作の冥王様とかだいぶ距離感近かったけど、今回はそれ以上に身近な存在になるようだな」

「普通に大規模戦闘に参加してたしなぁ。パーティーに誘えたりするんか?」

「一緒に戦えるくらいに強くなれればワンチャン……?」

「てかメインヒロイン枠? 攻略できる?」

「女神様を口説けるくらいの英雄になれればワンチャン……?」

「オーケーわかった、ちょっと魔神将ブッ殺してくる」

「それが彼の最後の言葉だった……」

「無茶しやがって……」

 

 それからも彼らは与えられた情報を元に様々な考察を好き勝手に書き込みながら、発売を心待ちにするのだった。

 

「とまあ、これが地球におけるプレイヤー達の反応だ。じゃ、俺はアレックスを鍛える用事があるからこれで」

 

 フリーズしたPCのように固まって動かなくなったアルティリアに対して無慈悲にそう告げて、うみきんぐはその場を後にした。


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