楽しんでいただけるように頑張ります
俺は一般競馬ファンの大学生。九州暮らしだから中央の競馬場に行った事はないけどいつか生でG1を見てみたいとそう思っている。
そして今日は有馬記念!2歳から応援していた馬が初めて出るグランプリレースだ。1年の締めくくりということもあり2500m、外枠の不利は大きめという条件ながらもかなりの特別なレースだ。近年の賞金上げまくりな状況も相まって注目は大きい。
それを楽しみにするあまりバイトからの帰り、ウキウキになっていた俺は周りが少々見えなくなっていた。応援記念ということで初めて馬券をG1で買ったことも大きいだろう。信号を無視して突っ込んでくるトラックにも気が付かず…
『キキーッ!』 「なにっ」
そして俺は絶命した…
…ん?なんか体があったかいなあ。ここは天国なのだろうか。そう言えば体にも違和感がある。全体的に少し重いというか二足で立ちづらそうというか…目を開くと色彩は前ほど鮮やかなものではなく基本白黒、視界は広いものの遠近感を捉えてづらく、足は生まれたての子鹿のようにプルプル…
もしかして俺、生まれたばかりの馬になっちゃった!?
2歳までの競走馬、「幼駒」である俺は例に漏れず生産された牧場で調教されることになっている。厩舎に入るのは購入された後だ。
さて、ここで競走馬とは何かについて振り返ってみよう。
とは言っても一般競馬ファンであった俺は詳しい事は知らない。ただ経済動物だという知識はあった。括りとしては犬や猫などよりも牛、豚とかに分類されるってことだ。
走らない馬に価値はなく…*1
とにかく俺は屠殺だけは回避したいというその一心でひたすら馬としてのボディに慣れる努力をした。慣れた。俺はもしかしたら色々考える人間よりも草食って走る四足歩行の動物に生まれた方が成功していたのかもしれない。
しかしここで新たな発見が二つ。
ひとつ目はかなり衝撃的な事であった。レース名はそのまま残っているのにディープインパクトやキングカメハメハなどの俺の死ぬ前にいた日本に存在した馬は存在しない。だがそのポジションに位置する馬は存在している。
そしてもう一つ。
俺、種牡馬リーディング15年連続1位の元無敗三冠馬と、毎年重賞馬を輩出し産駒の多くがG1馬という超名牝の子供でした。
笑える。俺、超良血のエリートを超えたエリートじゃん
それを知ってから俺はもう全力で調教にも取り組んだし体のケアも頑張ったね。誰が言ったか「良血だからと言って走るとは限らない」とは至言だがここまで来ると走らないことがおかしいのだ。勝てなくてもワンチャン種牡馬入り狙えるレベル。
ただ、ここで前世の競馬ファンとして誰もが一度は思うようなところが出てしまった。
(無双してえ…みんながチヤホヤするレベル誰も届かないような栄光を掴みてえ…)
屠殺行きの可能性が薄くなってくるとトレーニング周りのことにも気を使う余裕が出てきた。まずはトレーニング前後のストレッチを始めることにした。成長につれて関節が硬くなり思うように動かせず、才能があったのに身体が出来上がる頃には適正距離が王道路線から外れてしまった馬もいるのだ。*2
そして次に意識し始めたのは走法だ。
馬の走法は大きく分けてストライド走法とピッチ走法の2種類だ。
一完歩*3が大きく、スタミナの消費が少ないストライド走法。これはスピードの最高速を維持するのに長けており、スタミナの消耗もかなり抑えられる。
逆にピッチ走法は一完歩が小さい分回転数が多く、加速力に長けており地面にパワーも伝えやすい。
ただこれらをレースの中で使い分けるとなるとかなり難しいだろうというのが調教しか受けてない俺でもわかる。ストライドばかりに頼っていると最高速に辿り着くまでに時間がかかる一種のズブ馬となり*4ピッチ走法ばかりだと距離が伸びた時に身体の能力差が圧倒的に必要になる。*5
今はとにかく体を鍛えつつ走法を意識して走るところから始めてみようと思う。