「♪♪〜」
呪専の地下にある飼育室には、大きな水槽と止まり木があり、そこには人魚と天使が閉じ込められている。
七不思議っぽいが単なる事実である。閉じ込められてはいないけれども。
「悟。こんなんで癒される?」
「すごく癒される。ありがとうね、小魚ちゃん」
水槽の前には大きなソファーやテーブル席。
くつろぎながら人魚や天使の歌が聞けるようになっている。
人がめちゃくちゃ来る。
なんなら呪術師以外が来る事もある。そんな日は夏油の機嫌が急降下するので、色々貢物が届いたりする。
「仕事の時間終わりっ 食事にしようぜ、小魚ちゃん」
「そうだね、バードマン」
「早めに食べてね。傑は僕と一緒に任務だよー。そのあとは生徒達の訓練」
資料を夏油に渡されて、夏油はそれをパラパラと捲った。
「こんなの私一人で十分だよ。そもそも、生徒の訓練用の呪霊しか取り込み許されないんだし、君は過剰戦力でしょ」
「この前、一年生と出かけて誘拐されかけたよな。大人しく監視兼護衛を受けておけ」
「俺は買い物。冥冥さんが連れてってくれるらしい」
「待ってバードマン。それ僕初耳」
「売り飛ばされるよ?」
「そんなまさか〜。まさか本当に?」
「でも君呪霊見えないからねぇ。連れていくには不安かな。七海にも同行して貰おうか。起きて七海」
ソファで横になっていた七海がぼんやりと起きる。パサりと持っていた本が落ちた。
七海はここ、地下喫茶の常連である。
「ナナミン、俺と冥冥さんと買い物行ってくれる?」
「良いですよ」
穏やかな時間。平和な時間。
それは呪専の内部の時間を異能者が早回しにする事で成り立っている。
こちらでの休憩60分が外での10分。お得ですよ!
ちょっと早く老けるけど、人魚の血を取り込んでるのでむしろそれでちょうど良いのだ。
待遇がちょっぴり良くなり、それにつれて術師は増えた。
なんのことはない。数が少ないだけでなく、待遇が悪いから呪術師の数は少なかったのだ。
「悠仁だけど、宿儺の指を呑んでもらう事にしたよ。どうあっても巻き込まれるわけだしね。ならこちらで管理する」
「そっか。いよいよ悠仁も高校生で、原作開始か……」
「シナリオはお前が殺したんだろ、傑」
「そうだけど」
「責任持って手伝えよ」
「脳みそくり抜かれるのは嫌だしね、わかったよ」
そこで伊地知が走ってくる。
「五条さん! 異能者解放を求めて巨大怪獣が暴れています!」
「ほんと良い加減にしろよ、異能者!」
「ちょっぴりどっちもどっちって思って良いかなぁ!?」
「駄目です」
「キビシー!」
五条悟が出ていき、小魚と小鳥の外出はキャンセルである。
予定が消えた七海は豪胆なことに二度寝を始めた。
巨大怪獣など、一介の呪術師の出る幕ではない。どうせ五条悟ならなんとかなるのだ。
外の時間で休みを1日もらっている。すなわち昨日の6時から明日の8時まで、内部時間9日半のバカンスを七海は地下喫茶で満喫するつもりだ。してる。
昨日の定時から入り浸り、現在自堕落な生活を三日目である。
最近、呪専内の設備が充実してきているので呪専内だけでも存分にゆっくりできる。素晴らしい。
当然、一緒に買い物に出れば休暇が大幅に減ってしまうが、既に三日休んでいるし、異能者が作ってくれた時間の一部を異能者の為に提供するぐらいはお安い御用。
でもその予定は消えたので、予定通り自堕落な生活続行である。
怪獣が出た後処理で大わらわになるのはどう短く見積もっても30分後。
240分。4時間あれば余裕で一寝入りできる。
仮眠に来たらしい硝子が、地下喫茶へと入ってきた。
「静かな曲をお願いします」
「私も頼む」「夏油様! 歌聞きたいです」「ミルクティー三つください」
「硝子。美々子。奈々子」
「団体さんがくる前に一寝入りと思ってな。静かな曲を頼む」
小鳥と小魚は顔を見合わせ、リクエストに応える。
水槽のチャプチャプという水音。美しい歌声。暖かな部屋に、寝心地の良いソファ。
気分は南国である。
外はセカセカ。内部ではゆったり。
異能者がいなければもう生きていけない。仕事が回らない。
しかし、その異能者が暴れることで神秘を外部に知らしめてもいるのが問題である。
どうせこのままだと、呪術師は外部に晒される羽目になる。ただ異能者はあまりに便利すぎた。
五条 悟は、呪術師と異能者の情報開示のタイミングに頭を悩ませていたのだが、それはまた、別の話である。
今この瞬間だけは、ハッピーエンドというやつだろう。
一旦ここで終幕です。
別ルートやら続編やらはまた今度。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
マシュマロ感想お気に入り、ありがとうございます。