転生ゲーム   作:かりん2022

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友達になろうよ

順平は、息を呑んだ。

 

とんとん拍子に行く救済なんて、物語の中だけだ。

あんなに頭のいい山田さん(犬)が大失敗して、呪霊の皆が捕まったりして。

田中さん(鳥)が尋問されて、上層部の雪野さんまで危うい。

津美紀さんが仲間だったのは驚いたけど、なんと音信不通。雫さんはどうなってるのか確認するのも怖い。

世界が破滅したら困るのは僕たち自身なのに、掲示板の住人は他力本願に事態を眺めて雑談をするばかり。

 

薄暗い映画館の中。

目の前で真人が映画を見ている。

しかも、なんだか不機嫌そう。

 

とんとん拍子に行く救済なんて、物語の中だけだ。

まさしく地獄の中にいる人達は、平和の中で生きてきた僕たちよりずっと強くて聡い。

物語はとっくに改編され、真人が此処にいること自体が奇跡に近い。

 

 

 

とんとん拍子に行く救済なんて、物語の中だけだ。

話かけた途端、魂ごと壊されるかもしれない。

僕が仲間だという情報は、絶対に漏洩するだろう。

 

それでも。

 

それでも、僕が足を踏み出すのは。

 

きっと、僕が真人の言う通り、原作の通り、愚かだからなのだろう。

 

後はもう、掲示板を見ずに真人さんだけに集中した。

 

「あのっ……」

 

 そしてぼくは、スパイになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は真人さんに心酔したふりを続けた。

たくさんの人が目の前で殺された。

けれど、最低な僕はそれが僕か母さんでなければどうでも良かった。

僕は所詮順平だったと言う事だろう。

 

だからこそ、心酔したふりは簡単だった。

むしろ、母さんに矛先を向けさせない為、率先して殺しを好むように見せかけた。

 

そして、術式を習得してしばらく。真人さんから任務を頂いた。

 

「順平。お願いがあるんだ」

「なんでしょう、真人さん」

「この子と仲良くなって欲しいんだ」

「友達が増えるのは歓迎ですよ、真人さん」

 

 そして、河原で術式を練習しているとき、虎杖君は現れた。

 

「その! えと! 呪霊見なかった!?」

「探せばどこにでもいるじゃないか」

「そ、うじゃなくてさ。あー。人型の呪霊!」

「さあ、知らないな」

 

 ギクシャクしながらの虎杖君の会話。

 裏に五条悟が見える見える。

 

「あのさ。順平が呪霊見えるなら、転校しねーか?」

「そうしたら君と友達になれるかな?」

「えと……おう!」

「じゃあ、いいよ」

 

 僕はニコリと笑った。

 さて、誰もが知っている中で、二重スパイとして踊る生活の幕開けである。

 

 だって、母さんの事は真人さんにも五条さんにも割れているのだから。

 どこまでもミッションインポッシブル。

 それでも、うまく踊り切ってやる。

 決意を込めて、僕は、虎杖君に手を差し出した。

 

「友達になろうよ」


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