転生したんでマジに家で引きこもる   作:ウェスタンブルー

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はじまりの日→世界征服のはじまり

 転生した。生まれ変わった。

 まー言葉は何でもいいけれど、おそらく異世界だろう場所に来た。転移ではなく転生。つまり赤ちゃんなうだバブー。

 

 異世界だろうと判断したのは至極簡単。魔力があったからだ。黒青赤白。それぞれに地水火風の魔力は視界のそこかしこで踊っていて、たとえばキッチンなら赤が、たとえば氷室なら青と白がといった具合に集まっている。世界における元素は魔力と密接な関係にあるということだろう。

 が。

 どうやら俺はとことん魔力に嫌われているらしい。

 黒青赤白の光の粒,その一切が俺に寄ってこない。寄ってこないどころか手を伸ばせば逃げる。どうやら大嫌いらしい。

 ま使えないモンは使えないでオッケーだ。どうせ元々使えなかったのだから、

 それより何故動けないのか。歩く走る立つ座るくらいはできたはずだけど。元からできてたことくらいはできていてほしい。

 

 いや俺赤ちゃんだからできなくて当然じゃね?

 

 ふむ、となれば……呼吸とかはできるんじゃないか。前もできてたことで、赤ちゃんでもできることだ。バブー。

 しかしうまく声が出ない。というか両親isどこ。こういうのって目を開いたら知らない美男美女がいて、自分の名前を教えてもらえるものじゃあないのか。

 呼吸は……できている。息苦しくないしし。肺も拡縮を繰り返している。気がする。

 ただ声を出せないのは不便だな。おしめを替えてもらうことができないということだ。ばぶー。心の中でばぶばぶ言ったって虚しいだけとようやく気付いた。

 

 考えよう。 

 赤ちゃんな俺に、今の俺に何ができるのか。

 

 座して待つ。

 座してすらいないけど、これが正解だと思う。もし万が一無理な行動をしようとすれば危ない。命が危ない。だって保護者がいないから。いや赤ちゃんだぞ。家の作り自体は結構上質なんだから、メイドくらいいるもんじゃないのか。

 

 いなかった。

 来ない。いやいるのかもしれないけど声出せないから呼べない。素晴らしい負のスパイラルだ。

 

 しかし、暇である。

 眠気は無い。さっきまで眠っていたからだろうか。

 暇である。暇であるなら、そうだな、何か暇つぶしをするか。脳内エイトクイーンとかどうだ。無理だな。六個目で覚えられなくなる。じゃあ脳内じゃんけんとかどうだ。虚しいな。やめよやめよ。

 

 魔力。

 今ひとしお興味を引いているのはアレらだ。だけど寄ってこない。操れたりしないものか。いや操れはするんだろう。ああいうものがある時点でああいうものを操る文化が発展しているはずだ。術式詠唱とか魔法陣とか、何かしらで制御するんだろう。

 声出せなかったら詠唱できなくね? 終わったわ。詰んだ。どこの戦場に敵前でいそいそ魔法陣書く奴がいるんだ。なんで戦場出る前提なんだ。いやだよ戦いとか。血を見るのはそこまで抵抗ないけど臭いが無理なんだよな。フツーに吐くと思う。

 

 えー?

 ……まぁ待て待て。そうだよ。魔力が逃げるなら、魔力以外に干渉すればいいんじゃないか。

 見えないけど大気にどうこうできるかもしんないじゃん。

 

 できなかった。

 いや当然だよなこれも。前できなかったことがどうしてできるというのか。まず感覚がわからん。わからんから何もできん。何もできんから何もわからん。

 

「……」

 

 そしてやっぱり声も出せん。

 え、もしかして拷問? 転生して赤ちゃんになって、けど何にもできないまま餓死させられるって拷問? 効く効くソレめっちゃ効くわ。でも吐く情報が無いので解放してくれ。

 

 じゃあ、まあ。

 あとは──瞑想でもするかぁ。

 

 

 

 

 三年くらい経った。

 体は動くようになった。けれど変わらず声は出ないし、家族もいない。そう家族がいなかった。

 結構でかい屋敷なのに、家族がいない。捨てられたか放棄されたか、そもそも人間から生まれていないか。

 とにかく動けるようになった俺は、はいはいからよちよち歩きをして、今では普通に歩いて立って座って走って。

 

 いや、うん。 

 邪魔い。

 何がって、魔力が。

 

 なんだろう、魔力には圧力のようなものがあるのだ。で、それが俺を圧している。走ろうとすれば魔力が一斉にどかなくちゃいけなくて、けれど詰まるから、逆に俺が圧されて。ゆっくりゆっくり歩く、じゃないと移動が困難。ダルすぎる。

 そんで外には出られなかった。

 理由は同じ。魔力圧がヤバいのだ。どんくらいヤバいかっていうと、扉開けて外行こうとしたらぼよんって弾かれるくらいヤバい。最初は結界かなんかかと思ったけど、違う。俺は魔力に嫌われ過ぎていて、魔力で構成されているみたいな世界に適応できないのだ。

 捨てられた理由はコレかもしれん。捨てられたっつーか連れて行けなかったっつーか。まぁ何かしら家を出なきゃいけない事情があったとして、赤ちゃん連れてこうとしたら玄関で弾かれるとか想像してないわな。

 

 つーことで、ヒッキーである。引きこもり。出られないんだからしゃーなし。

 

 んじゃまぁ家の中で何ができるか、という話になる。

 まず、どうやらこの身体、飲食が必要ない。ラッキー。まぁありがちだよね転生者。多分病気にもならない。この三年間なっていないというだけだからならないかどうかはわからないけどなってないから多分ならない。ラッキー。

 ラッキーなヒッキーだ。

 

 つまんないこと言ってないで、俺が今やっていることを話そう。

 

 ──実験、である。

 

 いやね、魔力はどうにも触れない。扱えない。魔力圧に圧される。

 けど、唯一俺が扱える魔力というものがあって、それが物質に宿ってる魔力だった。地水火風、黒青赤白。この世界のあらゆるもののほとんどはそれを有している。属性をね。

 魔力単体に触れるのが無理でも、魔力の宿ったものに触れることはできたわけだ。長時間触れてると魔力抜けちゃうんだけどね。脱水機か俺は。

 

 ああ、で。

 まぁ魔力だ。魔力を間接的に扱えるとわかってからは、実験実験アンド実験である。つまり、火属性のやつと風属性の混ぜたらファイアトルネードになるのか、みたいな。

 なんなかったけど。

 まず混ぜる、がダメだった。砕いて混ぜてる間に魔力逃げる。じゃあ煮沸、って考えたらお湯がまず水属性だっての。ちなみに水に長時間手を浸けていると蒸発する。高温なワケでもないのに。どういう原理なのか俺にはわからん。

 んじゃま、とりあえず扱いづらい赤と白こと火属性と風属性はポイして、今はずーっと青と黒、水属性と地属性で遊んでる。あ間違えた。実験してる。

 

 水に土を入れて、混ぜて、どうなるか。

 泥水になるんですねコレが。

 

 知っとるわ。

 

「……」

 

 ちなみに土は庭の、とかじゃない。誰も整備してないのに美しい荘園のあるお庭だけど、俺が家から出られないので土はそこから取ってきたわけじゃない。

 あるのだ。

 

 植木鉢が。

 ……無尽蔵に土が出てくる植木鉢が。なんだそりゃってうんなんだこりゃなんだよね。

 特に植物の種とか入ってなくて、ただ土を取り出すと無限に出てくる。水も同じ。水桶があって、無限に水が出てくる。暖炉があって、永遠に火が燃え続けている。密室にして暖炉燃やしまくっても酸素が無くなる気配はない。

 思うにこの家時間が停まってるんじゃないかなって。わかんないけどね。

 まぁ遊び場として十分だからそれでいい。ああいや遊んでるんじゃなくて実験してるんだけど。

 

 一応目標らしい目標はあったりする。

 というのも、玄関開けて見える世界。窓を開けて見える世界。

 俺は押し出されちゃうからいけないんだけど、結構異世界なのだ。異世界の森って感じ。で、知らない色の魔力が結構ある。地水火風だけじゃないっぽいのである。

 いやね、だから地水火風を混ぜたら別の魔力が元素ができるんじゃないかってそれだけなんだけどね。

 

 とりあえず今全通り試し中。総当たりこそ実験の基礎。効率のいい実験がしたかったら机上に行け。最も適した環境で実験ができるぞ。

 

 新しい魔力を作ってみたいだけで、何か物質を、という気力は無い。作ってどうすんだって感じだし。作れたこともない。というかまだ地水火風が混ざったことが一度もない。

 

 成果/Zeroってまだ三歳児だからね。ばぶー。

 

「……」

 

 これ詠唱とか必要だったら詰んでるんだけど。

 

 

 

 

 五年くらい経った。

 八歳児ともなれば流石に色々できる。背も伸びた。どうやら不老不死ではない様子。死んだことないからわからんけど不老じゃないのは確か。まぁ成長期だし。20歳くらいで止まったりせんかな。都合良い不老不死のヤーツ。

 

 で、実験ね。

 まぁまぁ成功してる。必要なものは魔力だけじゃなかったのだ。

 何か。そう、俺の血。

 地属性の野菜切ってる時に指切っちゃって、それが混ざったらしい。地属性と水属性が血液を媒介に反応を起こし、なんかよくわからんボールになった。

 弾力性のある、多分ゴム的な。某忍者漫画を思えば火属性が必要だと思ったんだけど、要らなかったらしい。ボールは弾力はあるけどスーパーボール程じゃないので、投げたらポテポテ転がってそのまま。取りに行くのも面倒なので放置してる。

 これを参考に、他の属性も血液を媒介に総当たりしてみた。

 

 結果。

 

「……」

 

 何故か全部ボールになる。

 なんなんだ。サッカー選手になれっていう啓示か? だったら家をサッカーコートくらいの広さにしろ。

 

 ちなみにボールとボールをくっつけても何も起きなかった。まずくっつかなかった。糊をくれ糊を。ボンドでもいいぞ。ちなみに土と水でセメント! とか試してみたけど無理だった。ボールにはなったけど。

 

 でもまぁ多分なんか原理はあるんだろう。躍起になることはない。まだ八歳児なんだから。

 なおこのボール、放置しておくと同じ属性のもとに集まる性質があるっぽい。火風と火水がいつの間にかくっついていたり、水地と風地がくっついていたり。でも結局四属性しかないので、風地と地火と火水が連結している、なんてこともしばしば。特に互いを排斥しあうことはない。俺は排斥するくせにな。

 

 そういえば、俺から魔力が逃げる性質を利用して圧縮圧縮空気を圧縮ゥ! をやろうとしたことがあった。

 いやね、手で密閉空間を作るのって難しいよね。逃げられまくるわ。魔力って別に物理的なソレじゃないから、フツーに手の隙間から逃げられる。手を通り抜けたりはしないからやりようはありそうなんだけど、八歳児のちっちゃい手じゃ無理だ。もっとバスケットボールを片手で掴めるくらいの大きさにならないと。

 

 ボールボールボールアンドボール。

 

 流石の俺も飽きてくる。

 けどこれ以外やることないからなぁ。暇の方が飽きている。天秤にかけたらこっちの方がまだ飽きていない。ので続けられる。

 何か起きればモチベも変わるんだけどなぁ。

 

 

 

 

 十五歳になった。

 正直本当に歳を取っているのか、そもそも俺が数えている暦はあっているのか全く分からないのでそろそろ年齢数えるのやめようかなとか思ってる。

 思ってた時の事だった。

 

「……?」

 

 ふと──もぞもぞと。

 無数、と呼べるほどになったボール群の中で、動くものがあるのを感じたのだ。というか見た。ボールの山が動いているのを。

 すわゴキブリかと喜んだね俺は。喜ぶさ。他の生物この家にいないからな。ゴッキーの環境適応能力はこんなところにまで発揮されるのかと。テラフォーマーズしてくれと。

 

 が、違った。

 

「……ぷはぁ!」

「……」

 

 ぷはぁ。

 それはたとえば炭酸飲料を飲んだ時に出す音。あるいは長らく呼吸を止めていた時に出す音。

 音だ。あ、いや、声か。

 

 声。当然俺じゃない。

 

「よーやく意識レベルを言語の理解段階にまで上げられました! ありがとうございます、創造主(おとー)様!」

「……」

 

 あ、そういう。

 俺そういう立ち位置ね。理解理解。

 

 

 

 そこからは、そういうことの連続。 

 ボールを大量生産し、それがくっついてくっついてくっついてくっついて──喋るものになる。

 これが生き物であるかどうかの判断は俺には付けられない。だから喋るもの扱いだ。こいつらに雌雄があるのかもわからないから娘なのか息子なのかも不明。ただボールを重ねるごとに、世代を重ねるごとに、どんどん人間っぽくはなっていっているような気もしなくもない。

 最初の奴はなんか球体関節っぽかったんだけど、最近のはそれも消えていて。

 ただただ俺の作るボールをいろんな形に組み替えて、それで同族を増やしている。同族? 属性違うけど。まぁいいか。

 

創造主(おとー)様」

「……?」

「お願いがあります」

 

 こいつらは俺が喋れないことを知らない。いや知ってるのかもしれないけど、それがないことであるかのように接してくる。俺からできることと言えば、首を傾げたり頷いたりするくらいだ。

 

創造主(おとー)様も知っての通り、この屋敷内にある元素には限りがあります」

「……」

「けれど私たちはもっと多様に増えたいのです。ですから、私たちに外出許可をください!」

「……?」

「私たちが外で様々な元素を獲得してきますので、創造主(おとー)様には──」

「……」

 

 あーはいはい。

 そういうことね。俺はお前らの製造機なのね。お父様と言いながら完全な機械扱いなのね。

 了解了解。

 

 頷く。

 

「ありがとうございます!」

 

 ところで君達、外に出られるんか?

 俺みたいに弾かれて──。

 

 あ、普通に出て行った。

 

 

 

 それから、あれほど欲していた見たことのない元素群がそれはもう沢山手に入った。

 俺が魔力と呼んでいたこれは元素と呼んだ方が良いらしい。こいつらがそう呼んでいたから。でも声に出すわけじゃないんだからまぁ魔力でいいだろう。

 で、俺は血液を媒介にボールを作りまくる。作りまくったボールはこいつらが組み立てて喋る者にして。

 そいつらが出て行って……の繰り返し繰り返し。

 

 お父様お父様と慕ってきているような素振りは見せているけれど、製造機としての役割をやめたりしたら……牙を剥いてくるんだろうか。

 まぁ、そん時はそん時だな。そろそろ飽きてるし、死んでもいい。

 

創造主(おとー)様!」

「……?」

創造主(おとー)様のおかげで、私たちの国ができました! ありがとうございます!」

「……」

 

 へえ。

 ……え、いやそれやばくね? 新たな生物が新たな国作っちゃったってこと? 既存の生物にめっちゃ迷惑かけてんじゃん。うわー、父親として責任感じるわ。

 謝る気はないけどね。知らんし。娘とか息子のやったことを父親が謝らなきゃならないっていうんなら、まず俺の両親呼んで来い。

 

 しかし。

 少しばかり残念だな。国かぁ。文明か。

 異世界ファンタジーな国、見てみたかったなぁ。

 

「……創造主(おとー)様」

「……?」

「わかりました! 私たちの国を創造主(おとー)様に見せられるよう──この世界を征服し、お屋敷の窓からでも国が見られるようにします!!」

 

 え。

 

「待っていてください──必ずや成し遂げてみせます! あ、でも仲間が元素を持ってくるのは止まらないので、そっちはそっちでお願いします!」

「……」

 

 あ、うん。

 え……。

 

 色々驚いてるけど、もしかして君。

 俺の考え読めたりする?

 

「では行ってまいります!」

 

 そういうわけではないのか……?

 

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