皆様ごきげんよう。メジロマックイーンですわ! そろそろ、秋も深まって参りましたわね。そう! 秋と言えば、様々なイベントがありますわね。読書の秋、運動の秋、芸術の秋、色々ありますわね。ですけど、私にとってはやっぱり
「食欲の秋ですわ!」
……カフェテリア内でこれは少し迷惑でしたわね。周りの目が少し痛いですわね。
コホン。改めまして、やはり秋と言えば食欲の秋ですわ! モンブランに焼き芋、梨、葡萄、桃などの秋の味覚は盛りだくさんですわ。甘味だけではありませんわ。山菜ご飯に松茸ご飯、きりたんぽ鍋。何を食べても美味しい季節ですわね。だから、目一杯秋の味覚を朝から晩まで心ゆくまで食べたいのですけど……食べたいのですけど……
「レースで食べられないのですわー!」
……また心の声が出てしまいましたわね。周りの目が少し増えたような気がしますわ。
そうですわ。秋と言えば、秋のG1期間がありますの。私、メジロマックイーンも秋の天皇賞に出走するべく、体調に気を使う毎日ですわ。そのために、かなり厳しい食事制限をしないといけませんの。なぜですかって? それは、私が
「太りやすい体質だから食べ過ぎるといけないのですわー!」
……なんで最近心の声が出てしまうのでしょう? 周りの視線が痛すぎますわ……
私は太りやすい体質故、食べ過ぎるとすぐに体重が増えてしまうのですわ。このまえ調子に乗ってたくさん食べた日なんかは……あまり思い出したくありませんわね。あの時の記憶は軽い黒歴史ですわ。でも、スイーツを前にすると手が止まらないのですわ。パクパクが止まらないのですわ。
「どうしましょう……」
流石に悩んでいても仕方ありませんわ。レースで勝ったら祝杯としてたくさん食べることにいたしますわ。では、早速トレーニングへと……
「気になるなら、食べちゃえばいいじゃない。気が済むまで、パーッとね」
「だ、誰ですの?!」
急に誰かに話しかけられたものですから、思わず何度も周りの見返しますわ。ですけど、誰も私のテーブルには座っておりませんの。
「幻聴かしら……」
「幻聴じゃないよ。ほら。こうしてここにいるでしょ?」
「うわっ?!」
私の目の前に、小さなもう1人の私が浮かんでいましたわ。姿は私そっくりですけど、私の黒い勝負服を着て、背中には蝙蝠の羽根が、頭には山羊の角が生えていますわ。
「え、えーと、貴女は?」
「私は、貴女を誘惑する悪魔よ」
悪魔? とやらは結構自信ありげに自己紹介してきましたわ。えっへんとふんぞり返っていますけど、私と同じように胸はありませんわね。
「ちょっと?! そこは突っ込まなくてもいいでしょ!」
なんか悪魔とやらが騒いでいますけど、ひとまず無視しますわ。
「どおりゃあああああ!」
「ぐふっ?!」
と思ったら悪魔が何者かにドロップキックされましたわね。
「何で悪魔はそうやって他人を誘惑しようとするのよ! あら、ごめんなさい」
……なんかやけにハイテンションな子が来ましたわね。
「貴女は……?」
「ああ、申し遅れましたわね。私は天使です」
「は、はあ」
あんなドロップキックをする天使がどこにいるのでしょう?
見た目は私の白い勝負服を着て、背中には白い羽、頭には羊の角が生えていて、頭上には輪っかが浮いていますわね。
「私は悪魔の誘惑から貴女を救うためにこうやって飛んできたわけです」
「な、なるほど」
天使が何故来たのか説明してくれていますけど、なんか、こう、ドロップキックの衝撃が大きすぎて、内容が頭に入ってきませんわね。
「ちょっと、いきなりドロップキックすることなんてないじゃない!」
あら、悪魔が戻ってきましたわね。
「貴女が色々なウマ娘を誘惑するから世の中の秩序が乱れるんですよ! 私がやったことは間違いなく正しい行いです!」
なんか天使さん、熱弁していますわね。紅茶が美味しいですわ。
「紅茶より、スイーツを思う存分食べた方がいいんじゃないかしら?」
「な、何ですの?」
何故か急に悪魔(自称)が話しかけてきましたわね。
「だから、紅茶だけで満足できるのかしら? ウマ娘なら、やっぱり甘い物が好きでしょ?」
「え、ええ。そうですけど」
「だったら、食べちゃえばいいじゃない」
「ですけど、私にはレースがありますわ」
食べたいのは山々なのですけど、私は天皇賞・秋に出走するという使命がありますの。そのようなことはできませんわね。
「レースなんて気にしなければ良いじゃない。食べてもその分運動すれば良いのよ」
「それも、そうですわね」
確かに、食べた分は運動して消費すれば、問題ありませんわね。ならば、食べても問題ないかもしれませんわ。
「お待ちなさい!」
「こ、今度は何ですの?」
何か今度は天使が出てきましたわね。私はこれからスイーツを腹一杯食べたいのですわ。
「それは詭弁ですよ。貴女は今、悪魔の誘惑に負けようとしていますわよ」
「そんなことはないはずですわ。だって、食べた分運動すればそれで帳消しに出来ますもの」
そうですわ。それで完璧なはずですわ。
「そんなことありません! では、貴女がもしいまここでスイーツを腹一杯食べたとしましょう。体重が増えるのは目に見えています。その増えた体重を落とすための時間は今のトレーニング時間より大幅に増えてしまいます。その結果、怪我やレース成績に響く可能性は否定できません。だから、今貴女がここでスイーツを食べてしまうのは将来に大きく響いてくるのです。分かりますか?」
「は、はあ。随分長いですわね」
うーん、確かに私たちウマ娘は怪我が一番怖いですわ。レース中に転倒すれば、ただじゃ澄まない可能性がありますわね。だから、日頃からのトレーニングやストレッチなどは欠かさないのですわ。そう考えれば、今ここでスイーツを食べ過ぎるのは、一時の快感を求めるだけかもしれませんわ。ならば、敢えて我慢するのもアリですわね。
「ちょっと、そんな脳筋天使のいうことなんて聞いていいの? どうせ我慢したところで、それはストレスになるし、美容にも良くないんだよ? いまここでガッツリ食べて、ストレスフリーにしちゃおうよ」
それもそうですわ。我慢したら、ストレスが溜まってしまいますわね。だったら、ガッツリ食べてストレスをなくしてレースに臨む。それがいいですわ。
「また貴女は騙されようとしていますのよ? 結局ストレスから解放されても、体重が増えることは避けられません。だからここは敢えて抑え、レースに臨む。臥薪嘗胆ですのよ」
確かに、それも一理ありますわ。レース前まで我慢し、レース語に腹一杯食べる。それがいいですわ。
「だーかーらー! 結局我慢したってよくないでしょ。食べた後悔より食べない後悔よ。心残りがあるなら、食べちゃいなさいよ」
何か、グッときますわね。食べた後悔より食べない後悔。私の腹は決まりましたわ!
「決めましたわ。私は腹一杯スイーツを食べますわ!」
「やった! これは私の勝ちだね」
「なんで、なんで悪魔の誘惑なんかに……」
何か頭上で天使と悪魔が言い合っていますけど、気にしないことにしますわ。ですけど、このまま2人をそのまま返すのも何か性に合わないですわね。
「せっかくなら、貴女たちも一緒に食べましょう」
せっかくなら一人でぼっちスイーツするより、三人で美味しく食べた方がいいですわ。
「い、いや」
「下界の食べ物を口にしてはいけない決まりなのです」
何かもごもご天使と悪魔が口答えしていますけど、そんなのどうでもいいですわ。
「ふふ、ふふふ、ふふふふふ、うふふふふふふふ」
「ヒッ」
「ピエッ」
何か二人が怯えていますけど、気にしませんわよ。
「メジロを、舐めるなよ」
その時は気づきませんでしたけど、私の顔は怒ったシンボリルドルフ生徒会長並の覇気があったそうですわね。
そこから先は何も覚えていませんわ。気づいたら目の前には大量のお皿、悲鳴を上げているカフェテリアの職員、食べ過ぎて膨らんだ私のお腹、何故かカメラを向けている先輩後輩、そして、食べ過ぎてテーブルに突っ伏している天使と悪魔がいましたわ。
「む、むりー」
「うにゅーん」
まあ食べ過ぎちゃいましたけど、満足しているから大丈夫ですわ。さてと、そろそろトレーニングにいくとしますわ。
「ごちそうさまでしたですわ」
……そういえば、体重は落とせるのかしら? ま、あまり難しいことは考えたら負けですわね。
マックイーンってよく食べるというイメージがあったのでこのような作品に仕上げてみました。ちなみに体型は……皆さんのご想像の通りです。
作者ページリンク:https://syosetu.org/user/348705/
代表作:「Awakening-或るウマ娘の物語-」