それから数日後の事であった。親父と二人で話していた時であった。親父は何か隠し事をしている様だ。それは何かは知らないが。そして突然親父が泣き出したのだ。
「俺の夢を継いで旅芸人になってくれてありがとうな。これから異世界に行って先生に教わって強くなれよな。ちっくしょう。先生の美人な顔を見るのもこれで最後かよ。うぉぉぉぉぉぉ」
俺は固まってしまった。意味不明なのだが。
俺は旅に出るのか? それに美人な顔を見られるのが最後? どう言うことだ?
「あのどういうことなんでしょうか」
俺は聞いてみる。
「お前が最強の旅芸人になる為の旅に行くんだよ。だから美人な顔を見られなくなるんだよ。理解したか?馬鹿野郎」
成程と理解できたがいくらなんでも早すぎる気がする。まだ数日しか経っていないのだから。
「待てよ。俺の意思はどうなるんだよ」
俺の意見を無視して旅立つのはおかしい。俺の人生なんだぞ。
「はぁぁぁぁぁぁ、お前はバカか、美人の言う事は聞くのが礼儀だろう。それにお前の先生なんだからよ」
「ふざけんなよ。勝手に決めるなよ」
親父の言っている事は、正しいかもしれないが納得できない。俺の人生を他人が決めつけるのは、間違っている。
「じゃあどうするんだ。魔王を倒す為に強くなるんだろう。諦めてやるのか。俺はもう他は雇わないぞ!!」
確かにそうだが、俺は強くなって魔王を倒すんだ。その為に努力してきたんだ。
「俺に魔王を倒して貰いたいんじゃないのかよ」
そう言った瞬間に親父が黙り込む。そして真剣な眼差しを向けてくる。
「倒せるものなら倒して欲しいさ。でも無理なんだ。お前は、弱いから強くなるために修行に出ないと魔王は倒せないらしい」親父から聞いた話は、こうだった。
まず俺は最強になる為に、色々な家庭教師の人に習ってきた。しかし誰一人として俺を強くする事は出来なかった。俺の才能がないとかではなく、皆が俺より強いと言う。つまり俺が弱いと言う事だった。
なら今の先生が強くするって言っているんだ今信じなくてどうするんだよ。
「分かったよ。行ってやろうじゃないか」
こうして俺は旅立つ事になった。
俺は旅に出る準備をした。と言っても、特に何も持っていく物はなかった。俺の荷物なんて服ぐらいしかないからな。俺は部屋を出て、階段を下る。するとそこには、俺の親父と先生の姿があった。
先生は大量のお肉を持って俺と旅に出て稽古をつけてくれる。又あの稽古の続きをしたいと思う。
「では行きましょうか」
そう言って彼女は家を出た。俺達も後を追うように出た。
外に出るなり彼女は大きな声で叫ぶ。
「サメル」
そう言うと一瞬で異世界に行くドアにたどり着く。
「今更ですが、もう魔王を倒すまで、この街の住人と会えません。それでも覚悟はありますか」
俺には迷いはない。絶対に魔王を倒し勇者になると決めたから。
「勿論です」
そう言った途端に異世界に繋がる扉が開かれた。
「では行きますよ」
俺は異世界に来た。そこは草原だった。風が気持ちよくて心が落ち着く。そんな気分だ。だが沢山のモンスターがそこにはいた。
「ではここら辺にいるモンスターの掃除を始めてください」
そう言われた俺は剣を抜き戦闘態勢に入る。
目の前に出てきたのは、巨大な牛だ。こいつはパワーはあるだろうがスピードは遅いはずだ。そう思った俺は一気に走り出し切りかかる。
見事に真っ二つにしたと思ったその時だった。急に身体が重く感じた。
「あらら、スキルランダムな呪いですね。体が重くなるだけなのでスピードが落ちてしまいますけど牛さんは倒せました。今度はスライム10体です。体が思いかもしれませんが頑張ってください」
また走る俺。なんとか倒しきった時には、かなり息切れをしていた。
その後もレベル上げの為にモンスターと戦い続けた。途中に回復呪文と呪い回避を獲得するなどのイベントもあった。そしてついに俺のレベルが5になった。中々レベルが上がらない。こんなにも大変なのか。休憩を取りながら、街を目指す。先生が馬車を作ったおかげで俺達は馬車で向かっている。俺の体力が持たないからだ。先生は平気そうな顔をしている。一体どんな鍛え方をしたんだ。
やっと街の門の前についた。俺は疲れ果てていた。回復魔法でも追いつかない程のダメージを受けていたからだ。
門番に止められたが、先生が事情を話すと通してくれた。先生の権力は凄いものだ。そして古びた宿に俺達は別々で泊まり旅館の人に
「今日はゆっくり休んでくださいね」
と宿の人に優しい言葉をかけてくれた。
次の日になり先生に殴られて目を覚ます。朝から激しい痛みが襲う。
「いつまで寝てるの?早く起きなさい」
相変わらず怖い。それから朝食を食べ終え、外へ出る。すると宿の人がいた
「おはようございます」
元気良く挨拶をする先生。それに対して宿の人は
「あぁ、昨日の人か」
冷たい態度を取る。何故だろうか。疑問を浮かべている俺に対して先生は
「貴方は私の弟子だから」
と意味不明なことを言ってくる。まぁ良いかと思い、先生と一緒にクエストを受けに行く。
クエストは、ゴブリン退治だった。楽な仕事そうで良かったと思ったが、まだ早いとか先生に言われてしまい、牛やスライムと戦いを再開した。
「まだまだ、頑張りましょう」
先生は、笑顔で言うが俺は限界を迎えていた。
あれから数日が経った。俺は何とか強くなった。だが甘いらしく先生と魔物がいる所で稽古が始まる。今回も素手で戦うそうだ
障害物がいるため戦いにくい。だがその障害を上手く利用して攻撃する。流石に今回は勝てそうだ。そう思っていた。しかし、
「ほいっ」
軽く投げられた。そしてそのまま地面に叩きつけられる。何が起こったのか分からなかった。ただ分かることは、俺がコロコロと転がっていた。俺は立ち上がり再び襲いかかる。だが、またしても簡単にあしらわれてしまう。どうすればいいんだ。俺は考え込んだ。すると先生が
「貴方はどうして強くなりたいの?」
突然の質問に戸惑ったが答えを言うことにした。
「俺は魔王を倒して勇者になりたいんです」
すると先生は少し微笑みこう言った。
「勇者は魔王を倒さないとなれないのよ」
それを聞いた俺は絶望を感じた。勇者になる為には、魔王を倒す必要があると言う事を知らなかったから。俺はこの世界に来てからずっと考えていた。なぜ俺が呼ばれたのだろうと。その理由は、きっと俺が弱いからだろう。先生の言っている事は正しいのかもしれない。俺が弱いのが悪いんだ。
「今の貴方じゃ期待出来ないけど、出来ても稽古し続けましょうね」
そう言って先生は再び俺に攻撃を仕掛けてくる。その後の稽古も続き俺のレベルも10を超えた。
「おめでとう。これで貴方も一人前の戦士ね」
褒められるのは嬉しいのだが、何か物足りない気がする。もっと強くなる為にはどうしたら良いか考える。
「ごめんなさい。期待してる所申し訳ないけどこの町ではの話だから。ゴブリン退治に行きましょうか?呪いも受けなさそうだしね」
町を出て森に入る。
俺は考えた結果、呪いを回避する方法を考える事にした。呪いを回避出来たら魔王を倒す時に有利だと考えたから。
「呪いはレベルが低い程かかってしまうのだから気をつけないといけないの」
「でもレベルが上がってしまったら、呪いにかかる確率が下がってしまいますよね」
俺はそう言うと先生は
「そうよ。だけど、もし魔王に勝ったら新しい異世界のドアが開くの?だから当分魔王退治で必死にしないといけないのよ」
そう言うことなのか。俺は納得したが、それでも呪いを避ける方法は思いつかない。俺達は森の中に入り、ゴブリンを倒しまくった。
「このゴブリンのいる場所で稽古できるまで倒し続けなさい」
と先生は呑気に座って観戦している。先生の所にはモンスターがやってこなかった。不思議だ。そしてレベル上げは続いた。レベル上げが終わった時には、俺のレベルは15を超えていた。
呪い回避の方法を考えながら、レベル上げをしたおかげで、出来た。呪い回避の方法を考えているがレベルを上げるしか何も浮かばない。そんな時、先生は 俺のステータスを見て、驚いていた。
「凄いわ!よくこんな短期間でここまで上げたわね」
と俺の頭を撫でてきた。なんか照れくさい。
それから数日後、ついにゴブリンの森を抜けた。
「では、次の町に行きましょう」
そう言われて新しい町に向かう。向かう途中に先生は稽古を続けると言ったが、流石に疲れた。休憩を取りながら進む。ようやく次の町にたどり着いた頃には、夜になっていた。宿屋を探したが無かった為仕方なく野宿する事にした。次の日の朝になると俺達はすぐに旅立った。
次の目的地は、ここから近い大きな城がある町だと聞いた。その途中にあるダンジョンに用事があるとか言っていた。道中にスライムが現れ戦闘が始まった。
いつものように軽く蹴られて終わりかと思ったその時、 先生は剣を出して戦った。初めてみる姿だったので、驚いた。スライムを倒した後に先生は笑顔を見せ
「さぁ行きましょうか」と言い俺と一緒に走り出した。
やっとの事で町の門の前に着いた。だが門は閉ざされている。
門番は俺達を見ると槍を突きつけてこう言った。
「止まれ!何者だ」
俺は慌てて身分証明書を出した。しかし先生は違った。
「すみません、急ぎの要件です」
すると門番が先生の姿を見て 慌て始めた。それから俺達の方に向き直し
「どうぞこちらへ!」と案内してくれた。
それから城にたどり着くと門番がまた俺達に武器を向ける。そして今度は 王様に謁見する事になった。
先生は緊張していないのか平然としていた。だが俺の心臓はバクバク言っている。何故なら一国の王に会えるのだから。そう思って待っていると一人の男が現れた。その男は王というより騎士みたいな格好をしていた。そして、その人がこの国の王のようだ。王は俺に向かって「お前が勇者か?」と言う。俺は違うと答えたかったが、先生の顔を見る限り嘘をつくと大変な事になると思い正直に答えた。すると王が怒りだし、先生に襲いかかる。しかし、簡単に避けられてしまう。