【完結済】黒白のアヴェスター -Aēšma-   作:湯瀬 煉

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※この話は、『黒白のアヴェスター』第3巻のネタバレを若干含みます。
お読みになる際はご注意ください。


第一章 戦鬼の慚愧

 無理解無意味無価値無防備無作為無気力無理無謀無茶無惨無様無尽無窮無休無給無為無意無位無意識無作法無法無効無慙無愧無駄無頼無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無無─────。

 

 

 そこにあるのは、圧倒的な『無』だった。極致的な『有』が過ぎて、何も理解できないし何も受け取れない。

 ゆえに無。ゆえに絶望。そこに光など差し込む間はなく、希望を束ね、奇跡を謳い、絶対的な善性や正義への信頼、輝ける絆という精神的な支柱が瓦解するのが分かった。まず手始めに真っ二つにへし折られ、そこからハンマーや槌、鎚、鋸、様々な工具を用いてバラバラに解体されていく感覚が分かる。

 

 悪辣なるモノ。卑賎なるモノ。下劣なるモノ。絶対悪と奴を呼ぶ理由がよく分かる。

 

 要するに『怖い』のだ。圧倒的な恐怖心に押し潰されぬよう、蔑むべき悪に名前を付けることで理解できるものの範囲に納めようというのだ。

 

 (なまえ)を付けるというのは、理解できないものを理解するためにやるものだと聞いたことがある。まさにこれは、『名前をつけて分かりやすい範囲に押し込めた()()()()()()()()()だ』。

 

 

 

 手に握る訓練用の剣を眺める。

 

 ───なんだ、これは?

 こんな小さな棒切れごときで、あの怪物と立ち向かおうと? 正気か? 手を伸ばしたとしても、切っ先すら届かぬ高みにあるアレに?

 

 

 天高く存在する絶対悪は、純粋な興味に満ちた瞳を地面へ向けた。見られている、認知されている、それだけで吐き気がする。

 

 

「奇跡とは何だ?希望とは何だ?みんなとはいったい、どういう単位だ?」

 

 

 絶望を振りまく魔王(クワルナフ)が問いかける。

 (クワルナフ)に勝てるという義者(ワシャワン)たちの謳う、曰く奇跡、曰く希望、それはつまり、どういう意味だと。

 

 義者の総数は、およそ銀河ひとつ分。対するクワルナフは、銀河を既に、少なくとも二桁は滅ぼしている。算数の問題では、クワルナフに敵う生物はいない。

 だが負けないと謳うのが我々であり、ならば根拠を聞かせろとこいつは言うのだ。

 

 ──出来ない──

 

 分からない、分からない、理性が蒸発していて真っ当な思考すら出来ない最中に、冷静に冷徹に、命を潰しながら問いかける魔王に私は、慟哭しか返せない。

 

 手が震えて、いつの間にか訓練剣が落ちていた。

 

 

 

 

 そこに、奇跡が舞い降りた。

 

 黄金の閃光が初めて巨星にダメージを与える。

 

 私などとは異なり立ち向かい、そして散っていった戦士たち。なおも突き進もうとする戦士たち。彼らの先頭に、白い鎧と、威光を備えた剣が眩しい。

 

 勇者ワルフラーン。我らの希望。

 彼が来たからには、きっと勝てると、希望が溢れる。

 

 

 

 しかし───半刻か、一刻か、時間が経っても勇者はクワルナフを倒せない。

 何故だ? どうして勝てない? 勇者だろうが。

 駄目だ。 もうすぐ私は死ぬ。 敵は魔王である。

 

 お前だ。お前が悪い。お前がすぐに勝てばいいだけの事だろう。なぜ勝てない。何故私が死ななければならない。おまえだ、お前が全て悪い。お前のせいだワルフラーン

 

 心の底から染み出す絶望は限界を超えて。恥知らずな、見当違いな恨み言すら零れてくる。

 

弱い。弱い。弱すぎる。弱いから死ぬ。勇者も戦士もそして自分も。許せない、許さない、弱い奴は嫌いだ消えろ。私は無窮の強さを手に入れたい。

 

 滅尽滅相──総てを超えて、私は最強の存在に生まれ変わろう。




疾走する可能性は否めませんね!!
まあ頑張りまァすゥ!
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