はは! 原作の三巻買ってください。
この世は無常だ。
この世界は、ある一つの
善と悪、白と黒、右と左、何でもいいが二つの陣営があり、決して相容れない関係にある。
絶えず争う両陣営だが、別に敵陣営を皆殺しにしなければならないわけではない。義者ならば、『戦士』と呼ばれる善側の戦闘員が集う聖王領、不義者ならば、悪側の戦闘員である魔将の頂点に立つ七人―――七大魔王を滅ぼされれば『負け』となる。
もっとも、決着は長年着いておらず、もし決着が着いてもどうなるのかは分からないのだが。
転墜、という。義者として生まれた者が不義者に変わってしまったり、不義者だった者が義者へと生まれ変わるのだ。かつて義者の戦士見習いであった自分は、今や不義者の魔将である。
嘆きはなく、不満もない。望んでこうなったという実感がある。とはいえ、かつて心から憎しみ怒り滅ぼしたいと願った存在に成ったというのに、まるで不快感がないことの事に違和感がないでもないが。
昔こそ数の義者、質の不義者と拮抗勝負を見せていたが、クワルナフの強襲により聖王領の戦力は大きく崩れ、義者の勢力は大きく減じた。かつて同胞だった彼らが全滅するのも、時間の問題だろう。
ああ、構わないさ。善悪闘争の趨勢なんて私は興味がない。
私はただ、最強になりたいのだから。
「どうした、そんなものか!!」
私の剣閃が激流のように繰り出され、一撃ごとに相手の肉を抉っていく。
「こいつ……ッ、化け物か! 誰か足止めしてくれ!」
「了解。
現在、とある田舎星にて戦闘がおこなれていた。
参加者は私と、四人……否、先程一人死んで三人。
一人の魔将対複数人の義者の精鋭という構図は珍しくなく、そのまま今の宇宙がどういう力関係にあるのかを示していた。
義者側の星霊にして聖王領の守護者であるウォフ・マナフが、義者の戦士に与える加護を星霊加護と呼ぶ。たった今散った戦士の唱えたものがそれで、攻撃強化、防御強化、飛行強化、瞬間移動、回復の五種類があり、身体能力的に不義者に劣る義者のみが扱えるものだが……
「生ぬるい」
一太刀で切り捨てる。如何に体が硬くなったところで、私の意地には遠く及ばない。
義者に星霊加護があるように、不義者にも不義者だけの武器がある。我の思うまま世界よ変われと祈り、
この激戦が私有利に進んでいる大きな理由の一つが、これである。
敵ははじめ十人。こちらは一人。しかし今では、敵勢力は半分未満に減っていた。
「くそッ。こいつ、戦う前より強くなっていないか!?」
「諦めるな! まだ死ねない! 我々は、少しでも後の同志のために―――」
「くだらん。死ね」
叫びながら突撃して来た二人の剣士を、横薙ぎの一閃で同時に真っ二つに切断する。
「瞬間移―――」
そして転移しようとした最後の一人を背後から唐竹割りしてやれば、戦闘は私のワンサイドゲームで終了した。
戦闘時間は三分程度。ヒットアンドアウェイを繰り返す戦術は見事だったが、順番に殺してしまえば、大したことない相手だった。
星霊とは書いてそのままの意味で、自我を持った惑星のことである。星霊にも義者、不義者の分類があり、代表例でいえば、義者側の聖王領であるウォフ・マナフや、最強の不義者であるクワルナフなどが当てはまる。
星霊そのものは強力であり、彼らが下賜する加護も強力ではあるものの、やはり物足りないと言わざるを得なかった。
最強を志すならば、やはり狙うは最強のみ。
「……やるか」
暫くして、得物である大剣を肩に担いで呟いた。
義者の連中は真面目に敵対勢力とのみ戦っているんだろうが、不義者はその限りではない。欲望、無秩序、渾沌は不義者の特権だ。つまり、敵も味方もないのである。
私も例に漏れず、敵も味方も関係なく強い奴に勝負を挑むというスタンスを取っていて、この星に来たのもそれが理由である。
この星には、星霊がいる。意志を持った天体というのは例外なく最強無比であり、ゆえにこそ。
「そそられる……!」
期待に胸を膨らませ、どうすれば星霊を呼び出せるかと考えた時、思いついたのは星にいる義者を鏖殺することだった。少なくとも限りなく減らせば、意図に気付いて起きてくれるだろう。
そうして、次の集落に行こうと思った刹那────
隕石のようなものが、遥か前方に降ってきた。
それは人型の隕石。星と比べれば芥子粒よりも小さいはずなのに、どうしてか無視ができない。それが放つ強烈な戦意、闘志がゆえだろうか。
少なくとも、この瞬間に私の運命は決した。
人の形を取った灼炎。闘争の概念の擬人化。
その名は、バフラヴァーン。七大魔王第三位に座する、この宇宙最強の生物の一角である。
バフラヴァーン戦、スタート!