とある褪せ人の記録   作:AC/弟子

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第3話

 

「……ふん」

 

遠くから、砦の門前の一団を見る。バリケードに松明を掲げるゴドリックの兵士数人、脇道にそれれば草陰や木のある林ががある。石畳の街道を行けば正面からぶつかる。林を抜けるのがセオリー、ではあるが。

 

「……正面からぶち殺してもいい。横合いから殴りつけて不意にぶち殺してもいいな」

 

ヴェルが呟く。勝手知ったる道ではある。どう言ったって構わない。どうせ油断すれば死ぬ。

 

「それはそうだ。戦法の自由度高いって素晴らしい(オープンワールドの恩恵様々だ)ね」

 

騎士の男の声にちらりと見る……その様子に驚いた。いつの間にか防具が変わっているからだ。

 

「……テメーいつの間に着替えた」(お前もコスプレ装備じゃねぇか)

 

ちょっと驚いた。所々に焼け爛れたような痕を持ち、首から燃え残ったような黒い外套を身に付けた装備――「指痕の騎士 」。

 

「いいだろ?見た目気に入ってるんだ」

「概ね同意するが趣味悪いな、オタク」

 

騎士の男は朗らかに言う。確かに見た目はいいが何となく異形というか、薄気味悪さを感じる見た目ではある。鉄なのに、まるで指を押し付けて焼き付けたような意匠。

 

「(……つまりコイツ……ああ、やっぱり)」

 

その片手に持つのは、やはりこちらも焼け爛れた意匠の長槍。そしてもう片方の手も、明るい黄色に輝く物が握られている。

それだけ見てわかった。こいつは敵に回したらこっちが簡単にぶち殺される。それこそ、赤子の手を捻るように、あっさりと。

 

 

「……で、どーする、黒い剣士さん」

 

騎士の男改め、指痕の騎士はのんびり答えた。

 

「そうだな、俺としては……」

 

ここはどちらか片方が横の森に入り、もう片方が囮。数名を誘き寄せて、森に潜んだ片方がこっそり忍び寄り、無防備な敵の背中を叩いていく(バックスタブする)――各個若しくは少数ずつ撃破の戦法がいい。

 

 

――そう答えようとした、その刹那だった。

ぞわり、と背筋が冷える感覚。この感覚を知ってる。それは指痕の騎士も同じものを覚えた。

そして次の瞬間。空を斬る音がした。

 

「―――ッッッ!!」

 

グレートソードを正面に構えた。そこに、巨大な鉄の杭が撃ち込まれる。ギリギリ咄嗟に間に合って、特大剣がその一撃を防いでくれた。

その奇襲の源は門前に備え付けられた、バリスタからの射撃と思われる。

だがおかしい。割とかなり離れたこの距離ならば見られないし撃たれないはずだが。……となると、もう選択肢は一つだけだ。

 

 

血の指の侵入者(クソッタレの赤霊)かよ……!」

 

苦々しく吐き捨てるヴェル。いつ侵入してきた?全く分からなかった。侵入してくる奴がいれば、何となく感覚で分かるはずなのに。

 

火山館の背律者共(黄金律絶対ぶっ殺すマン)かもしれないねぇ」

「どっちだって構うもんかよ!」

 

今立ってるのは街道、もし侵入者がこちらを見ていて、油断している所を遠距離から狙撃してきているのであればこちらが圧倒的に不利だ。開けた場所に立つ的なんて当ててくれと言ってるようなもの。

 

「バリスタか大弓。どちらにしろ次弾は直ぐ来るね」

 

指痕の騎士は言う。どちらにしろここに立っていれば待つのは死。

言うやいなや正面に動き始めた。その後にヴェルも続く。

この判断力の早さは鈎指としては有難い。モタつけばそれだけ歩みは遅くなる。即ち、死に繋がる。

 

即断即決。不確定要素が多い中に飛び込んでいく勇気。それを持てればこの世界では少しだけ長生きできる。

 

遠くでぎりぃ、と何かを引き絞る音がして。その数秒後に指痕の騎士目掛けて何かが撃ち出された。

 

「馬鹿にしてんのかよ 」

 

ぽつりと呟いて、それが近付いてくるのもお構い無しに正面にローリング。その僅か横を太い杭が突き刺さり地面を抉った。

 

「流石にそれは見える。二流だね」

 

更に林の側へ逃げて、太い木を盾に一息つく。

 

「おい、良いのか。こっちには」

「分かってるさ」

 

騎士の後に続くヴェル。

林側も実は安全ではない。こちら側にも、ゴドリックの兵士が松明を掲げて掻き分けるように侵入者を探しているからだ。

 

「狙うは」

 

また、ぎりぃと引き絞る音がした。それに合わせて騎士が木の陰から飛び出る。狙っているのは、フレイルを持ち笛を腰に提げた兵士だ。

 

「……お前!!」

 

兵士がこちらを見れば直ぐにその腰の笛に手を伸ばす。あの笛を鳴らすことで、他の兵士たちに敵が居るぞと伝えることが出来るからだ。

 

地を蹴り、指痕の騎士が手にした長槍で兵士の胸元を貫く。深々と突き刺さり、その槍に焼き付けられた黄色い炎が兵の身を焦がす。

 

「これで……」

 

 

然しながら、まだ危機は脱してない。

 

「――うおっとぉ!」

 

指痕の騎士のすぐ横を杭が唸りを上げて通り過ぎる。

 

狙いが甘いんじゃないの?(クソエイム乙だなコノヤロウ)

 

煽るように言う。こういう事態は慣れてるかのように。

先程の戦闘を嗅ぎ付けて他の兵士がぞろぞろと現れる。

フレイル、直剣、大盾を持ち槍を構える兵士。

 

「選り取りみどり」

「……こっち忘れてんじゃねぇぞクソが!」

 

後ろに構えていたヴェルが一人の兵士のがら空きの背中に特大剣を叩き込む。

一撃目で仰け反り、二撃目で吹き飛ぶ。

 

「さて、上手く切り抜けないとね」

 

指痕の騎士は楽しそうに言う。それに頷く黒の剣士。

ああ、楽しいさ。

死ぬほど楽しい。やはりこうでなくてはならない。

 

 

互いに見合わせる。焼け爛れたような黄色の瞳と、赤と白の瞳が鎧越しに交錯して。互いに何も言わず頷いて、兵士たちに躍り出た。




指痕の騎士のビルドシート?知らない子ですね(震え声)

技量信仰ビルドでヴァイク着て右ヴァイク槍左狂い火でスロット狂い火祈祷ガン盛りって感じで……(震え声)

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