マグサリオンの殺戮道場   作:ヘル・レーベンシュタイン

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今回の相手は、あの大人気漫画のキャラです


第八陣 人を滅ぼした神

人を滅ぼした神

 

「……」

 

 黄金との戦闘を終えて、再び闘技場で待ち続けるマグサリオン。其処に再び何者か……否、即座にそれは神性を持つものが現れたことを即座に理解した。

 しかし、それが動かす肉体には神の気配があると同時に下手な人類、精霊、神霊の類を超えるほどの戦闘力を有しているのは一目瞭然だ。しかしどこかチグハグさを感じる。そしてその者がマグサリオンの間合い近くまで歩み寄れば、それは緑色の肌に白髪と黒い法衣のような衣服を着て、そして両耳に緑色のイヤリングをつけた者だった。その者が周囲を見渡せば、露骨に嫌悪感を露わにした表情をしながら吐き捨てる。

 

「なんだこの劣悪な宇宙は……まさに悪法、処するに値する。だが、悪法を敷き上げる邪悪な存在の本丸に来てみれば薄汚い騎士だったとはな。これだから人間というのは醜い。やはり不要な生物だな。」

「……」

「何だ?神の正しさと美しさに圧倒したか。ならば貴様ごと世界を新生させよう。我が姿は正義…我が姿は世界…崇めよ…讃えよ…この気高くも美しい、不死にして最強の神、ザマスを!」

 

 ザマス、そう名乗った者は自身の背後に紫色の鳥のように翼を伸ばした像を出現させる。

 

「さあ、大地を貫き全てを洗い流そう。新たな神の世の到来を祝う宴の始まりだ。

 絶対の雷!」

 

 そして自身で言ってたように己を讃えるかの如く両手を広げれば、白い光輪が神秘的な輝きが放たれる。そうそして同時に更に背後から翼の像から、紫電の稲妻が放たれてマグサリオンへと降り注ぐ。否、それだけで終わらない。その稲妻は星をも攪拌させ、その影響は銀河そのものすら滅びかねない衝撃が、堕天奈落の星々に滅びを齎す。正に人の世界に破滅をもたらす裁きの一撃。彼らの闘いを見届ける“みんな”の多くから阿鼻叫喚の声が溢れ、それを察知したザマスは鼻で笑い飛ばした。

 

「やはり人は醜い、そしてこの愚かさを放置する輩なんぞ滅んで当然……いや、これは」

「何処を見ている?」

「ッ!其処かッ!」

 

 しかしマグサリオンの殺意は一切途切れていない、煙幕を突き破って血を口から吐き捨てながらザマスの背後へと肉薄していた。首を刈り取らんと迫る一閃を、ザマスはマグサリオンの気配を察知し咄嗟に作り上げた気の手刀で咄嗟に防ぐ。その切れ味は宇宙にある物質であれば切れぬものはないと思える程の切断力を有していた。

 しかし膂力に於いて天秤が傾き、ザマスの方が圧倒されて壁面へと飛ばされた。

 

「バ、馬鹿な……神たる我が力において圧倒された、だと?」

「どうした神とやら、俺を殺して新しい世を作り上げるんじゃなかったのか?」

「ぐゥッ、黙れェ!」

 

 ザマスは激昂しながら再び手刀の気を作り上げ、マグサリオンへ接近し振り下ろす。それに対してマグサリオンも合わせるように神剣をぶつけ、激しい衝撃波を撒き散らし空間すらも断絶させながら鍔迫り合いを繰り広げる。その空間の割れ目の先はザマスすらも分からないが、その現象すらマグサリオンを止めるには足りない、踏み躙り、鷲掴みにして握りつぶし、全てをザマスを殺すために殺意を滾らせて進撃し続けていく。

 その最中、ザマスは怒りのままにマグサリオンへと問い掛ける。

 

「そもそもだ、なんだこの宇宙は?悪を喰らう悪だと?その果てに残るのは結局悪ではないか!それを貴様は改善する姿勢すら見せない、明らかな放置である。治そうと思わないのか?真に正しい正義を定義しようと思わないのか?人間は醜悪だと私は何度も確信したが、貴様は孫悟空に匹敵する罪人と知れ!」

「だから何だ?」

 

 ザマスの怒りを聞き届ければ、マグサリオンは断罪するかのようにそう言い放つ。どうやら誰かと同一に見られているようだが、かと言ってこの勝負を譲る気はない。

 

「お前がどう思おうが俺は民の自由を許している、その果てに悪辣な環境になろうとな。それに、統治者としてもお前は俺に劣ると言ってやる。」

「何だと?何を根拠に……」

「お前、人を完全に滅ぼそうとしてるだろう?口を開けば人は醜いだのどうだの、馬鹿の一つ覚えのようにな。その果てに人を完全に無くした新世界を願うことは、想像に難しくない。」

「……フッ、だったらなんだという?それが私がお前に劣るという根拠として足りんぞ。ならばこそ改めて、我の目指す人類0計画の正しさを確信した。永遠に自らの過ちに気付かぬ愚かな生命体が!

 裁きの刃ァッ!」

 

 そう言い返しながらザマスは攻撃を繰り出した。背後から赤い異空間を開け、そこから赤い針状のエネルギー弾がマグサリオンへと襲いかかる。

 マグサリオンは疾走しながら避けていくがそれだけで終わらない、地面への着弾後に爆破する。それを無尽蔵なまでにザマスは放ち続けるが、煙を突き破って背後の異空間ごとザマスを斬りつける。神というくらいなのだから体の頑丈さにも自信はあったのかもしれないが、マグサリオンの殺意を糧に力を増す第一戒律と、隙を作り上げて攻防へ繋げる第二戒律によってその肉体に亀裂を刻んでいく。

 

「おのれ、何故だ……神の身体に傷を!?」

「この程度で神などと笑わせるな、屑めが。お前の人類0計画とやらは、謂わば俺がかつて成そうとした滅尽滅相のそれに近い。

だが、俺は殺しを好んでやってるわけでは無い。馬鹿馬鹿しいとすら思っているくらいだ。己以外は塵という思想は、先のないものだった。残らず殺して俺一人になった時、根本には意味を失くす幻だよ。不変には程遠い。故に、無限に生まれ出てて貰うまでだ、俺の殺意に触れる俺の民に。分かるか?俺とお前の違いは詰まるところ其処にあるのだよ。」

 

 そう言い放ちながらマグサリオンはザマスの胴体を真っ二つにしようと剣戟を放つが、気の手刀で止められる。滅尽滅相、それは『我以外消え失せろ』という他者の存在そのものを排斥する祈りの形。

 ザマスの言う人間0計画は正にそれと類似している。

 

「侮って貰っては困るな、我は不死身だ。この程度は死なぬ。」

 

 ザマスの言う通り、マグサリオンが刻んだ傷は一人でに再生されていった。それを見届けてマグサリオンの瞳が僅かに細くなる。

 そしてザマスは不敵な笑みを浮かべながら、今度は逆に彼が攻撃を放ちながら嘆息し己が意思を述べ始める。

 

「しかしやれやれ…どの宇宙の人間も、どの時代の人間も愚かなり。我と同じ業を成そうとするだけで同じ土俵に立ったつもりか?だから貴様ら人間は滅ぼされるべき存在なのだ。

 だからこそ、我が他の神に変わり汚れなき世界を作ろうとしているのだ。わかるか?これは断罪であり、神々を愚弄した人間という罪の浄化である。

 

最後に我が残ればいい、それにより我が人間0計画は完成する。お前のような己という最大の穢れを残さず、私という完全なる神による理想の世界が始まるのだ。貴様のような神を模倣する人間には出来ぬ!神の正義を思い知るがいい」

 

 剣と手刀がぶつかり合う。空間そのものが悲鳴を上げているかのように振動し、殺意に満ちたその攻撃が、どれほど人を滅ぼしたいと願っているかよく伝わってくる。両者共にジワジワと斬撃がその身を削るが、再生力のあるザマスの方が有利と思えるだろう。

 すると、刃同士をぶつかる最中、ザマスは周囲に気を巡らせた。その直後にマグサリオンから大きく距離をとる。

 

「ふふふ、なるほど……理屈は知らんがどうやらお前の剣は他人の意思を拾い上げて力を高めているようだな?ならば簡単な話だ、周りから先に消し飛ばせばいいだけの事だ!

 滅びるが良い悪なる宇宙よ、我が大いなる力……聖なる逆鱗!」

 

 ザマスが一点集中するように二本の指を上空へ向ければ、まるで太陽を思わせるような気のエネルギー弾を作り上げる。そしてそれをマグサリオンに向かって放たれた。

 回避は無意味……否、回避してしまえばマグサリオン諸共、数多の惑星や恒星に住まう周囲の命を消滅させるほどの爆発が発生してしまう。決して他者の命を救うつもりはないのかもしれないが、マグサリオンは迫る聖なる裁きに向かって剣を打ち込んだ。

 

「オォォォォォォォォッ!!」

 

 爆ぜる光、天地開闢たるビックバンを連想させるほどの衝撃が闘技場だけでなく、神座全域に届きかねないほどに広がっていく。その果てに全身から赤い煙を上げながらも、仁王立ちでザマスを睨みつけるマグサリオン。

 その光景を見てザマスは不思議な既知感を覚えた。それはかつて、滅びへと進んでいった未来世界。その先を憂い駆け出した青年、トランクスというサイヤ人。彼の勇気が人々の祈りを奮い立たせ、祈りが剣へと集まりかつてのザマスを追い詰めていた。その剣とマグサリオンの握る神剣がよく似ている、アレもまたかつての宇宙開闢から流転するまでのみんなの祈りを集め続けていた決戦兵器なのだから。その真実を悟り、ザマスは怒りの声をあげる。

 

「まァた貴様かァ、トランクスゥゥゥッ!!」

 

 しつこい、本当にしつこいとザマスは感じている。剣にゆかりのある相手に限らず、人の祈りをかき集めると言う性能すら殆ど同じなのだ。嫌な因果を感じずにはいられないのだろう。それを気にする様子もなく、マグサリオンは疾走して距離を積める。

 

「またか……またなのか。

 何故愚かな行為を繰り返す?人の力なんぞいくら集めた所で、神に敵うわけがないのだァァァッ!」

「愚かなのは貴様だ」

 

 激昂しつつ背後から放たれる稲妻を掻い潜り、頭頂から足元まで一本の線を刻むようにマグサリオンは剣を振り下ろす。無論、まだ死んでないのだろう。しかし精神的な動揺と合わさり、どこか脆さを感じさせる。その傷を抉るようにマグサリオンの言葉の刃が放たれる。背後の口輪ごと斬り飛ばしながら。

 

「お前の論理は破綻している、単一の存在しかいない世界なんぞ、もはや宇宙ですらない。それを表すように、見てみろよお前の身体。」

「なァ、我の体が……グゥッ!オォォォッ!神が人間に敗れるなどあってはならない……そうだ、あってはならないのだ。」

 

 見れば、ザマスの右半分の身体が紫色かつ肥大化しながら変貌する。それまるで、ザマスの不安定な精神を示すかのように。加えてザマスの怒りはまだ止まらず、肥大化した右腕を全力で振り下ろした。

 マグサリオンはあっさりと回避するが、地面に直撃すれば闘技場諸共、眼下の星を破壊して宇宙空間へと移り変わる。

 

「人間は我が神々の手により滅ぼさねばなるまい…人間よ滅ぶべし…我が手によって滅ぶべきなのだァ!」

 

 それはもはや怒りに身を任せたラッシュだった。当たればマグサリオンと言えど即死はしなくても致命の一撃になるほどに。しかしそれに臆するどころか、嘲笑うように挑発しながら回避していく。

 

「どうした、神らしからぬ攻撃だな。パワーが上がった分速度が落ちてるぞ。まださっきの方がよほど驚異だった。」

「グゥッ、おのれェ……人間風情がッ!」

「人間をどう思おうと勝手だが、それがお前が俺に劣る点の一つだ。他者の存在を不要とする在り方は、比較の概念を放棄し、その果てに成長することすら忘れると言うことだ。それは肉体に限らず、精神すらもな。成長を忘れた生物なんぞ、不変には程遠いんだよ、間抜けが。」

 

 マグサリオンが吐き捨てるようにそう言い放ち、迫る紫の巨腕に剣筋を突き立てる。そして振り切ればまるで包丁で切られた野菜のように、ザマスの上半身と下半身を分離させた。

 

「なぁッ……」

「そのまま潰えろ」

 

 そして二の句を継がせないと言わんばかりに二閃、三閃と容赦なく切り刻んで行く。

 正に微塵切り、その果てにザマスだったものが散り散りとなって宇宙空間に霧散していった。最早勝敗はマグサリオンの圧勝……そう思ったが。

 

「……不死身か、なるほど自負するだけある。ここまで来ると関心すら覚えるぞ。」

 

 文字通り宇宙そのものを見上げるマグサリオン、本来であれば悪の楽土として理が君臨しているはずだが、宙模様に異変が起きていた。

 まず宇宙空間の一部に赤黒い裂け目が発生し、そこら炎を連想させる様な気のエネルギーが流れ出た。まさに狂気が、己以外不要と言う祈りが堕天奈落の理を上塗りするように侵食していたのだ。それを証明するようにソラにザマスとよく似た暗緑色の無数の貌が浮かび上がる。もしもこれを放置していれば此処だけにかぎらず後の神座、如何なる時代かは不明であるが其処にすら到達しかねないだろう。マグサリオンはそう確信していた。そしてザマスの嘲笑うかのような不気味な笑い声が、宇宙全域に響き渡る。

 

『……ハ、ハハハ!アーハハハハッ!ハハハハハハハ……』

「………フン」

 

 浮かび上がるザマスの貌の一つが口を開けば、赤黒い閃光がマグサリオンに向かって放たれた。正に神罰のような一撃、仮にマグサリオン以外に当たれば其処を起点にあらゆる存在が消滅するだろう。正にザマス以外の存在を許さないという、傲慢な祈りを実現するように。

 それをマグサリオンは正面から立ち塞がり、漆黒の斬撃で閃光を正面から斬り伏せた。その切断現象は宇宙の端から端へと刻み込み、浮かび上がるザマスの貌の幾つかを斬り飛ばした。この時点で既にマグサリオンはザマスを殺せるだけの理解を深めていることは明らかだった。しかし……

 

『アハハハハハ………!!』

「世界と溶け込む代わりに、理性を無くしたようだな。」

 

 ザマスという存在そのものが潰えておらず、斬り殺した数を上回る速度で侵食していっている。そのことを理解して、呆れた口調でマグサリオンはそう言い放ちながら剣を肩に担いで宇宙を見上げる。

 

「ならばそこで指を咥えて世界の開闢を見ておけ。ここから先、お前を殺すのは俺であって俺ではない。」

『…………ッ!?』

「嘆きを謳いあげろ、貴様に真の敗北を叩き付ける」

 

 刹那、マグサリオンの外郭を無数の祈りが包み込む。それはさながら同一人物ながらも、観測者によって特徴が異なる百貌の男の如く。まさにそれは、天地を己のみで埋め尽くすザマスとは対照的に。

 その果てに、収束した外族人格を纏ったマグサリオン……否、無慙という覇道神がザマスに向かって己の覇道の理を流出する。

 

「死ね。死ねーー呼吸をしていいと誰が言った!」

『ッ!?』

「悪は何処だ?屑は何処だ?一匹残らず滅ぼしてやる!」

 

 顕現した神、無慙を見て、ザマスは驚愕と同時に違和感を覚えていた。放った言葉は確かにマグサリオンの底無しの殺意をよく現しているが、どこか先程まで対峙していたマグサリオンの特徴とどこか一致しないと。そもそも、彼の目にはさっきまでは漆黒の鎧を身に纏った男なのに、突如としてギャングのようなスーツを着込んだマグサリオンとよく似た男の姿に変わってた。まるで異なる世界の移り変わりを見ているようで。しかし、その先を考察する余裕を与えられるはずもなく……

  

「アアアアァァァァァッ!!!」

 

 無慙が顕現すると同時に流れ出した宇宙そのものと衝突し、溶け込んだザマスが激痛と共に悲鳴を上げる。流れ出る『堕天無慙楽土(パラダイス・ロスト)』の理。それはザマスが最初に目にした、悪を喰らう悪たる世界。しかしそれだけに限らず、欲望の権化、罪の塊、聖者の堕天……などなど、数多の究極的な祈りが融合していたのだと。だが、ザマスと対峙しているそれは、特に堕天を歌い上げる祈りが良く顕著に出ていたと思えた。それを裏付けるように、漆黒の業火が宇宙全土に爆発するように広がりザマス全てを包み込んで絶叫を上げる。

 それと同時に確信する。この炎の本質は“無神”という祈り、即ち神を排除する世界の開闢なのだと。故に理解する、マグサリオンの在り方は正に神に依存しない在り方、己のあり方を曲げて神の座へ至るのではなく、敢えてみんなの祈りを元に別人格を神として昇華する御業。だが本質が無神であるというならば、この人格が不要となった時に真に人が神に頼らず己の脚で未来を歩けると確信しているのだと……ああ、理解はできるが。

 

「ウワァアアァァァァッ!」

 

 宇宙と一体化ザマスはその結果を拒絶するように絶叫する。こちらから見れば亜種なれど滅尽滅相を絶対の真理とする神の怒りは治らない、だが無慙はその意志を断ち切らんと口を開く。

 

「理性を無くしているだろうが聞け、お前勘違いしている。俺はお前が劣ってると言いはしたが、正しくないとは一言も俺は言ってない。」

「ッ!?」

 

 地獄の業火で全てを腐敗される最中、ザマスは無慙の発した言葉に目が点となっている。

 

「貴様の言ってることは正しい、人間は基本的に醜く獰猛な生き物だ。同じ過ちを繰り返しては勝手に争い、しかし己の身が窮地となれば、都合良く自己保身の為に他人や都合よく神への救済を懇願する愚かな連中。滅ぼしたくなるのも自明の理だ。

 だが優しさは如何なる時代にも失われていない。それはお前らの世界も同じだと思うが?」

「ッ!」

 

 優しさ、その言葉を聞いた時にザマスの怒りが僅かに止まった。その隙を無慙は見逃したりはしない。追い詰めるように言葉を続ける。

 

「お前の正義に殺意はあれど悪意は無い。悪意とは大概、劣悪な環境や理不尽な境遇によって育てられるものだ。ならば、お前を育て上げた親、或いは師父は決して悪人ではなかっただろう。そいつにも確かに厳しさはあれど確かな優しさはあった。だが、それに対してお前はどうだった?」

「……」

「察するに、殺したんだろう?そいつの優しさを受け継がず、お前の正しさを優先して。」

 

 無慙の問い掛けにザマスは黙り続けるしかなかった。しかし、問いかけに対しての無言は肯定と同じ意味を持つ。

 

「お前の敗因は其処にある、生き残ったのは偶々運が良かっただけだ。正しさと優しさは矛盾しないと、学ぼうともしなかったからそうなる。殺して全てを奪って先達の上を行ったつもりだったか?それだと貴様のいう醜い人間共と大差ないだろうが。

 そんな事にも気付かんから貴様はダメだと言っている」

『………』

 

 その一言と共に無慙の裁きの一手が降る。漆黒の業火を纏った剣の一撃が全てのザマスを斬り払う。もう勝敗は日を見るより明らかだろう。宇宙全土に響き渡る笑い声は聞こえない、無慙の突きつけた真実を無意識にでも受け入れ、心が折れたのかもしれない。

 

「終わりだ、ザマス。精々あの世でお前の先達に謝罪でもしてこい」

「ァ、ァ、ウワァアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!」

 

 こうして人類の滅尽を望む神は、地獄の業火によって腐敗しながら完全に世界から消えていった。

 


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