マグサリオンの殺戮道場   作:ヘル・レーベンシュタイン

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第十陣 Ⅰ 復活した魔人

魔人ブウ

 

 

「……何か来るな。」

 

 マグサリオンが闘技場の中心で立ちすみそう呟いていると、不意に頭上の空間から割れ目が発生した。それがトンネルほどの大きな虚空になると、そこからピンク色の異形な生物が現れた。

 魔人、そう呼ぶに等しい。過去に似通った存在としてザマスもいたが、アチラと似て非なる混沌さを感じさせるだろう。事実、それから感じ取られるエネルギーは神性もあれば人らしさもあり、混ぜ合わされてどちらとも完全に定義できない。そしてその生物と視線を交えれば、悪辣な笑みを浮かべながらマグサリオンに敵意を露わにする。

 

「キサマ……強いな。その気を感じ取ればわかる、戦闘経験が豊富な奴だ。フフフ……面白い、雑魚どもの奴らを滅ぼして飽きていたところだ。」

「なんだ、暇つぶしに付き合えとでも言うつもりかよお前。」

「そうだ、まあ拒否したとしても逃さないがな。この私の糧となるが良いッ!」

 

 そう叫びながら、謎のピンクの魔人がマグサリオンへと襲いかかる。一気に距離を縮めれば、その両手からラッシュが放たれる。

 

「ハハハハーッ!」

「フン……」

 

 拳と剣のラッシュが繰り広げられる、しかしどちらも被弾無し。刺突が、斬風が、裏拳が悉く空を切る。

 それがもたらす破壊はこの闘技場そのものを破壊して余りあるほどだが、その威力の密度はそれで収まるほどではない。かつて戦ったザマスの攻撃力に匹敵しかねないだろう。だが……

 

(この威力……僅かだが私よりも上の様だ。だが、剣戟では殺すことはできんぞ。とは言え、態々全部受ける必要性はない。ならば……)

「……」

「ふふ、ならば少し遊んでやるか……そらァッ!」

 

 すると相手は不意に一気に距離をとる。片手を上空へと掲げれば、そこに紫色のエネルギーが凝縮され、それがマグサリオンへ向かって投擲された。

 

「温いぞ、世界中を滅ぼしてその体たらくか?」

「……ほう、少しはやるようだな。」

 

 だがまるで煙でも払うように、マグサリオンは迫るエネルギー弾を横薙ぎの一閃で振り払った。マグサリオンにとってはこの手の光景は日常茶飯事であり、当たり前の対応。

 だがそれも、この魔人にとっては想定の範囲内のようで、特に驚いた様子はない。すると拳法家のように両拳を顔面に構え、マグサリオンと至近距離で向き合う。そして……

 

「ハァッ!」

「!」

 

 魔人ブウの身体にある穴から、不意に煙が発生して辺りを包んだ。言うなれば『イービル・スモッグ』と言えるだろう。明らかな視界隠蔽、只人であれば目の痛みや困惑で動揺を誘う卑劣な手段だ。

 

「どうだ、これで俺がどこにいるか……ッ!」

「阿呆か貴様。」

 

 だが、マグサリオンを相手にこの程度の手段で隙を作ることはできない。煙幕を突き破って迫る刺突が、魔人の正面から顔面へと迫る。

 咄嗟に顔を沈めて回避した、なんとも柔軟な体とマグサリオンは感心している。

 

「チィ、貴様もか……」

「その口振り、察するに同じことを昔やって失敗したようだな。当たり前だ、そこらの屑と一緒にするなよ。

煙で視界が悪くなっても、影、布ズレ音で位置なんぞほぼ分かる。」

「フン、そう粋がってるのも今のうちだ。泣いて謝っても許さんぞ。」

「小細工して失敗してた輩がよく吠える。」

「ほざけェェッ!!」

 

 激昂しながら魔人は拳を奮う、その威力は確かにマグサリオンと言えど安易に直撃して良いものではない。

 初めて拳が腹部に当たった、しかしその痛みなんて知らないと言うようにマグサリオンはそのまま突き出した拳の腕へ剣を振り下ろす。切断された魔人ブウの片腕、それに戦慄を覚えたのか跳躍して距離をとる。

 

「ッ!?チッ……」

「どうした、これで終わりか?」

 (こ、こいつ……確かに当たったのに手応えが浅い。何か隠しているな……)

「来ないなら、今度はこちらから行くぞ。」

 

 そしてマグサリオンは低姿勢で、まるで野獣の如き疾走を繰り出す。するとそれに対して相手の魔人は、両手を横に出せばジャベリング状のエネルギーを生み出した。

 

「最早手加減無しだ、これでも喰らえっ!」

 

 それは名付けるなら『ミスティックシューター』と言うべきか。無数のピンク色のリングが超光速でマグサリオンへと迫り、直撃すれば切り裂いていくだろう。

 

「緩い、遅い、欠伸が出るわ。そんな手品で俺を殺せるとでも?」

 

 しかしそれを前に、マグサリオンは一歩も引かず、前進しながら剣戟を奮って全てを粉砕していく。多少の被弾はあれど、それでは止まらないようだ。

 しかし、魔人は変わらず不敵な笑みを浮かべる。

 

「なら、更にとっておきの手品で驚かせてやろう。」

 

 そう言い放つと、魔人は息を吸い込んで風船を膨らませるように吹き出す。すると、その口から白いクリームのようなものが現れ、魔人と同じ顔をした幽霊のようなものが現れた。

 

「名付けて“スーパーゴーストカミカゼアタック”だ!」

「…….くだらん」

「そう言ってられるのも今のうちだ、行けェ!ゴースト達!」

 

 まるで子どもがテンションだけで作り上げたような技と名前、実際マグサリオンも呆れたような口調でその様子を見ていた。

 そして迫る幽霊達、マグサリオンは鬱陶しそうにそのうちの一体に剣戟を叩き込んだ。

 

「……ヒヒッ」

「ッ!ガァッ!?」

 

 だが次の瞬間、その幽霊が眩い光と共に大爆発を引き起こした。流石のマグサリオンも予想外の光景で、それを真正面から受けてしまう。殺意の権化とも言える彼ですら、ほんの一瞬殺意が止まるほどの不意であり、激痛が伴い無くなったはずの肉体が戻ってしまうほどの威力が込められていた。

 

「ハハハハー!やったやった、やってやったぞ!カッコつけて偉そうにしてるからそうなるんだ、ざまみろー!」

 

 その様子を見て、魔人とその幽霊達はまるでとっておきのイタズラが成功したかのように喜びの声と挙動をしながら、空中でピョンピョンと跳ねつつ笑いを弾けていた。

 

「……なるほど、触れれば爆発するのだな。」

「ッ!?」

「ガァッ!?」

 

 しかし、その直後にマグサリオンの声が響き渡れば、魔人の半身と、幽霊達の半数が空間ごと裁断される。まるで真っ二つに割れたガラスの様に。煙幕が晴れ、ふらふらと壊れたカカシの様な挙動をしながらも、魔人に向かって殺意をあらわにしながら、そう言い放った。

 その光景を前に、まるで歩み寄る死の恐怖を実感したかの様に戦慄の表情を浮かべ、すぐさま失った半身の再生を起こっている。

 

「確かに驚かされた、だがトドメを刺さないのは餓鬼らしく未熟だな。」

「餓鬼、だとォ……えらそうにいいやがって、ならもう一度喰らって逝きやがれェェェッ!!」

「……学習しろよ、阿呆が。」

 

 迫る幽霊達に向かって、漆黒の斬撃を飛ばして迎撃する。直撃したのは6体、残りの2体がマグサリオンの背後へと回り込む。1体が手を頭上で交差させ、後方の一体が腰に両手を構えた。

 

「魔閃光ォォッ!」

「か・め・は・め・波ァァァッ!」

 

 爆ぜる爆光がマグサリオンの視界を覆い、次いで青白いエネルギー波がマグサリオンを貫かんと迫り来る。星々を貫き破壊せしめる光を前に、マグサリオンは…………

 

「工夫した様だが、俺を止めるにはまだ足りない。」

 

 空手の左手を掲げて握り潰せば、魔閃光を握り潰してその分の距離を詰める。そして即座に剣を振り下ろせば、時空ごと裁断してかめはめ波ごと、二体の幽霊を丸ごと無へと飲み込んだ。

 それはまさに、無貌の怪物。たとえ異形の怪物だろうと、彼の魔道を止めるのが困難だと証明するかの様な光景だった。

 

「ぐ、ううゥッ……」

「さて、あとはお前だけだな。」

「……おい、剣士サマよ。アンタは飴玉は好きか?」

「……?ッ!」

 

 ゆっくりとマグサリオンが魔人へと歩み寄る最中、不意な問いかけが行われた。その直後に頭上の触覚から怪光線が放たれる、それを咄嗟にマグサリオンは片腕で防いだ。

 

「何!?」

「……そうか、その光線は受けたものを菓子へと変えるのだな。」

(馬鹿な……あのビームは片腕だろうと受ければ全身に回るのだぞ?だと言うのに、片腕で防ぐなんて不可能な筈……いや、まさか。)

「ハァァァッ!」

「ッ!チィ……」

 

 魔人がマグサリオンの右腕に向かって、拳をぶつけようとする。それに対して、マグサリオンは咄嗟に剣を盾の様に構えて拳を防いだ。

 それを見て、魔人は確信した様に笑みを浮かべた。

 

「やはりな、ビームは効いてないわけでは無いようだな。見た目の変化はないが、その腕は飴玉になってるわけだな?」

「……」

「黙ってると言うことは、正解だと言ってる様なものだ。フフフ、片腕ではバランスが悪くて、今までの様な予測困難なダッシュはできまい。今まで散々、私をコケにしたことを後悔しながら逝くが良いッ!」

 

 そう言い放ちながら魔人はマグサリオンに向けて、瞬間的に速度とパワーを集中させたアッパーカットを繰り出した。直撃すれば宇宙空間に到達するほどに飛ばされていく。

 

「グゥッ!?」

 

 そのフォームはまさに、拳闘をするものであれば魅了してしまいそうなフォームだ。単なる力自慢ではなし得ない技術と鍛錬だからこそなし得る姿だ。

 だが、そんな人の様な技術を人外たる魔人が得られるものなのだろうか?しかし、そんな疑問を誰かが答えてくれるわけもなく……

 

「そらそらどうした、そのまま私のサンドバッグで終わる気かッ!?」

 

 そしてマグサリオンが飛翔するよりも速い速度で、魔人が遥か上へと移動する。その速度は最早光をも凌駕し、人の常識の範疇で定義できる速度ではない。

 その速度を乗せた一撃を、マグサリオンへと叩き込む。その勢いが殺せなければ、眼下の星々を激突し、貫通していくだろう。

 

「まだだ」

「ッ!?」

 

 だが、その拳に向かってマグサリオンが刃を立てる。まるでページの捲れた本の様に、魔人の腕が分かれていく。思わぬ反撃に動揺したのか、腕を再生させつつも宇宙空間で魔人は僅かに後退する。

 しかし、即座に気持ちを切り替えつつ腰に両手を添えた構えを取る。

 

「ふん、まだ抵抗できる程の元気は残っている様だが今のキミに何が出来る?

終わらせてくれる……かめはめ波ァァァッ!!」

 

 突き出した両手より放たれるエネルギー波、それを中心に渦巻く余波は太陽系をも破壊せしめる攻撃。片腕のみのマグサリオンでは、力負けはせずとも今までの様に捌ける余裕はなく、この攻撃に巻き込まれて致命を負いかねないだろう。

 そう、このままでは……

 

「ああ、それも“取り込んだ奴ら”からの力の一端なんだろう?」

「ッ!?」

 

 エネルギー波が宇宙空間を走る最中、マグサリオンは魔人に向けてそう言い放った。この魔人の戦闘スタイルは、どうにもおかしい部分があった。人体に偏在する気を活用した戦法はどかく、その他からはどうにも一貫性が感じ取れなかった。例えば“スーパーカミカゼゴーストアタック”や“直撃したものを菓子に変える光線”など異質な技も繰り出していた。サブウェポンとして扱うならばともかく、どれも並の戦闘者であれば一瞬にして勝負をつけてしまえる脅威的なもの。そして本体のゴムの様な柔軟性と再生機能のある身体。察するに、色々な戦士をその細胞で吸収し、強くなっていくのがこの魔人の特徴なのだろう。この真実に、ようやくこの場において確信を持てた。

 

「だがらどうしたァァァッ!」

 

 そう、普通であれば真実に到達したところで戦闘には何の影響もない。だが、マグサリオンは違う。今この刹那こそ、マグサリオンの真骨頂なのだから。

 

「“隙”だらけだ」

「なァッ!?」

 

 相対する敵への理解度に応じて戦闘力が増していく、それこそがマグサリオンの第二戒律の真の効果だ。放たれるエネルギー波を、まるで波乗りするかの様にスレスレかつ、まるでハードルを超える様な動きで回避する。そして驚愕する魔人とすれ違い様に斬撃を叩き込んだ。

 

「ガァゥ!?」

 

 それも一つ二つではない、霧状になるほどに微塵切りに。エネルギー波はどこかで激突し、背後の星々が文字通り星屑になる爆発を背景にしながら、マグサリオンの斬滅が行われた。

 これにて終幕、と思われたが……

 

「……」

「しぶとい奴だ」

 

 魔人は肉片を集めて再生していた、これでもまだ死ぬことはない様だ。しかしその表情からは余裕さが消えており、明らかな憤怒の表情が浮かび上がっていた。

 

「馬鹿にしやがって、馬鹿にしやがって、宇宙最強のオレを馬鹿にしやがってッ!ガァァァァァァァッ!!」

 

 魔人は怒りの号砲を爆発させながら、両手を頭上へと上げた。すると、宇宙空間に無数の異次元がところどころに発生し、それが次第に全てを埋め尽くそうとしていた。

 間違いなく、第二天の宇宙を終滅させようとしている。その上怒りが暴走していて理性すら見えない。どれだけ声をかけようとも届かないだろう。それを前にマグサリオンは……

 

「単なる自意識過剰な阿呆かと思ったが、確かに宇宙最強を自負する程の力はある様だな。だが、そんな屑な行いを許すほど俺は甘くない。」

 

 そう言いながら疾走し、魔人へと距離を詰める。だが魔人の周囲にはバリアが張られており、剣の間合いまで詰めることができない。

 

「邪魔だ」

 

 しかし、その障壁の解れを見出しガラスを砕く様に砕いていく。そして距離を詰めれば、魔人の身体を凝視する。

 表層、細胞、内部構造、それらを認識して更なる深部へと観察眼を凝らす。その最深部から感じるのは、一際強力な神性を持つこの魔人とよく似た存在、同じく神性を持ち尚且つ異星人の性質を持つ緑色の異星人。そして膨大なエネルギーを持つ青年と、それと比べて劣るものの決して低くないエネルギーを持つ子供二人。これらがきっと、この魔人を構成する因子なのだろう。決してマグサリオンは彼らを助けるつもりはないが、この魔人を確実に始末するために彼らを狙いに定める。

 

「ァッ……」

 

 畝りをあげる漆黒の斬風、刺突の形で放たれた剣戟は魔人の胸部を穿った。魔人を構築していた肉体から完全に分離され、この宇宙から消え去った。これにて魔人とマグサリオンの決闘は勝負がついた、かに思われた。

 

「アァァァァァァァァッ!?」

 

 その直後、魔人の体がまるで沸騰する様に変化していく。一瞬、その存在強度が弱まるが、数秒後に一気に高まった。体自体は少年の様に小柄ながらも、逆にコンパクトさを感じさせる。

 “純粋”その言葉を連想させる様な姿だ。マグサリオンもそう感じたようで、その魔人を見据えた直後に確信する。

 

「それがお前の“本来”の姿か。」




この状態の魔人ブウは本来最強格なのですが、ベジットが相手だから弱く見えるんですよね。なのでこの戦いで、本来はこれくらい脅威なのだといったスタンスで書きました。
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