「ハァ〜ッ」
小柄になった魔人は、まるで憑き物が落ちたかのように快適な表情を浮かべていた。その直後、まるで視界の端に蚊を見つけたかのように、ノーモーションで手を上空に掲げて気を凝縮させる。
そして巨大な球体になれば、蚊を殺すかのように脚元、即ち地球に向かってそれを振り下ろした。言うなれば“バニシングボール”それが地面に直撃すれば星の命を殺すだろう一撃を放ちこむ。
「やらせるかよ」
「ッ!?」
しかし、バニシングボールが地面に直撃するよりも早くマグサリオンが剣を下から跳ね上げる。星の煌めきの如き爆発が発生し、それを突き破って魔神の片腕を切り飛ばす。しかし切り飛ばされた箇所から即座に腕が再生する。
「ウギャギャギャー!!」
そして新たな玩具を見つけた様な笑みを浮かべれば、魔人は距離をとって大きな咆哮を放ちそれに伴う超音波を放った。それは次元を歪ませるほどで、直撃すれば体が崩壊しかねないだろう。しかも下手な音波攻撃とは違い、その音波は地球全土に広がりかねないほどだ。
「その手の攻撃は見覚えがある」
しかし、それすらもマグサリオンの想定内。剣を上段に構え、そして弾頭台の様に真下へと振り下ろす。すると天地開闢を連想させる空間の断絶を引き起こし、音波を縦に割り霧散させた。
その光景を前に魔人は驚愕の表情…………
「………ヒヒッ、ウギャギャウホーッ!!ホッホッホッホッ!!」
することなく、凶悪な笑みを浮かべればまるでゴリラの様にドラミングを始めた。それはまるで太鼓を叩き、士気を鼓舞する様な光景だった。実際、その存在強度が少しずつ上がってきている。しかし、それはマグサリオンとて理解している。
「来ないなら、こちらから行くぞ。」
「……キヒッ」
疾走するマグサリオンを前に、魔人は腰に両拳を構える。そして気を凝縮し、マグサリオンの剣が届く前に紫と桃色の波動砲を放った。マグサリオンは咄嗟に回避するものの、背後の景色へと大きな破壊が齎される。多くの命が潰えたことが、そんな事に彼らは無関心である。
そして魔人との距離を詰め、今度は反対の腕を切り飛ばした。しかしそれだけで終わらず、今度は胴を切ろうすれば、切り飛ばされた腕が球体となって一人でにマグサリオンへと迫り来る。言うなれば『アームボール』がマグサリオンの進撃を妨害する。単なるダメージで済めば良いが、何が起こるかわからない以上、下手な直撃は愚策というものである。
「ウギャギャギャギャギャー!!」
その様子を嘲笑うように魔人は回避し続けるマグサリオンに向けて、宙で弧を描きながら突進を繰り出した。それを側面から受け、マグサリオンが壁面へと激突した。その様子を見て、魔人は腕を元に戻して子供の様に悦びはしゃいでた。だが……
「戯れてるつもりか」
「ッ!」
「まあ、楽しむのは勝手だが、生憎と遊びの時間は終わりだ。」
周囲の瓦礫を吹き飛ばしながら、再びマグサリオンが戦線へと復帰した。それを見て魔人は警戒態勢に入るが、その直前にマグサリオンが剣先を魔人へ向けながら言い放った。
「ある程度見て確信した、今の貴様はただ破壊を撒き散らす獣にすぎん。多少の戦闘の工夫は見えるが、さっきの鼻にかけた様な姿とは一変して強さの証明や知性的な動きが見られない。今のお前は目の前にあるものをただ破壊するだけの屑だ。
そんな輩に、俺が遅れを取る道理はない。」
「ウギャギャギャギャーーー!!」
マグサリオンの言葉を理解しているのか……否、単なる音としか認識してないのだろう。彼の言葉が終われば、魔人は目を上に掲げれば今までとは比較にならないほどに巨大な光弾が一瞬にして出来上がる。それが地面に直撃すれば、間違いなく地球は破壊される。
だが、最早その次元ではマグサリオンを足止めすることすら叶わない。魔人の本質を理解した彼は、時空を超えた剣戟を以って光弾と魔人ごと裁断し、致命の一撃を刻む。
「ガァッ!?」
「終わりだ、ただ破壊を撒き散らす獣に遅れをとってる様では俺も程度が知れると言うものだ。」
再生しようとするも、それも許さない。気体どころか原子の域まで分解されるほどに細かく、そして容赦なく切り刻む。そして止めの一閃が振り下ろされれば、魔人の姿は粉微塵となって消え去った。何処からか再生する様子はなく、ただ静寂のみが通り過ぎるだけである。