ただ、オチがかなり賛否分かれるかもしれませんが、それでも宜しければ進めてください。
光の魔王
不意に、時空に揺らぎが生じた。それはまるで部屋の壁に穴が開く様に。マグサリオンが眉を顰めてその穴を見せえれば、人間一人が出入りできるほどとなり、そして黒い軍服の男が現れた。そしてマグサリオンと対面すれば、無邪気な笑みを浮かべながら挨拶する様に口を開いた。
「ほう、これはこれは…………かつてないほどの猛者の様だな。ふは、これは実に面白い。初めましてだ、異界の者よ。俺の名は甘粕正彦、人の輝きを絶やさぬために魔王になりたいと願う男だ。どうぞよろしく頼もう。」
「………」
「ふむ、なかなかの鉄仮面さだ。さて、来たのはいいが貴殿とは何を話せばいいのだろうか?」
「俺の会話だと?正気か、貴様……」
嫌悪感を露わに、そして突き放す様にマグサリオンは呟く。しかしそれを聞いても、甘粕の笑みはさらに増した。
「ほう、対話を嫌悪しておきながらもしっかり言葉ができてるではないか。結構結構、その上ちゃんと意味も理解している様で何より。」
「赤子でも相手しているつもりか、貴様。」
「そんなつもりはない、ただ会話がどうしても苦手な人種とているだろう?そんな人物に無理して話せなどという、無理強いな趣味はしてないとも。」
「それで、何のためにここに来た?」
「ふむ、そうだな……ここで出会ったのも何かの縁だ。何でもいい、貴殿の輝きを魅せてほしい。」
「輝きだと?なんだ、それは破滅を齎す破壊の輝きでも構わんとでも?」
「然り、例えそれが無血の対話だろうと、拳通しの殴り合いだろうとそれが本気の意思ならば構わない。俺はその輝く様を見たいのだ。」
「……なるほど、貴様は狂ってる様だな。だが結構、俺の本気というのをその身に刻んでやる。」
マグサリオンはそう殺意を露わにし、肩に担いだ剣の穂先を甘粕に突きつけながらそう言い放った。それを見て、甘粕は弾けたように笑い声を上げながら、それに応えるように軍刀を抜いてマグサリオンにそれを突きつける。
「ああ、是非とも見せてほしい。その前にどうか聞かせてくれ、貴殿の名を。」
「マグサリオンだ、お前を殺すただ一振りの剣である。」
「委細承知した、ならばいざ尋常に勝負ッ!」
ここに、万象滅殺をする凶剣と人の輝きを渇望する光の魔王による決戦が始まった。
「貴殿の時代にあったかは存じぬが、人は文明を極めればこの様なものを作り出せる。その発展の成果物が武器として戦争に使われることとなった。その様な未来を、貴殿は防ぎたいと考えるかな?
リトルボォォォイ!! ツァーリ・ボンバァァァ!!」
開戦直後、両者共に動き出した。距離を詰めるマグサリオンに対し、甘粕は手を掲げれば創法を以って作り出すは二つの核兵器。それらが床に着弾し、まるで目の前に突如太陽でも発生したかの様な、超爆光を発生させる。
あまりの荒唐無稽さに、マグサリオンは呆れた顔をせずにはいられない。核弾頭の二連射なんぞ、発動させた甘粕本人ですら無事でいられるはずもないのに。
「バカだとは理解していたが、これほどとはな。人が兵器を作りたいならば勝手にやればいい、結局のところ馬鹿と鋏は使いようと言ったところだからな。」
そう言い放ちながら、マグサリオンは漆黒の斬撃を放ち迫る爆破の津波を真正面から斬り裂いた。それはまるで、当たり前の事に対して当たり前に対処したかの様に。しかしその光景は黒い絵の具が白い生地を塗りつぶすかの様な光景であり、誰でもできる様な真似ではない。
だが、それを前に甘粕はまるで道でも譲るかの様に斬撃を回避する。身体能力はマグサリオンの方が上だが、技能面においては甘粕のほうが上だろう。そこは腐っても見た目の通り軍人らしいと言えるのかもしれない。加えて、彼は人の集合無意識たる阿頼耶識をその身に宿す超人だ。マグサリオンの思考を読めてるわけではないだろうが、マグサリオンは無尽の殺意を除けば人の思考にかなり近い。故に夢の旅路を経ての経験を以って、人類の行動パターンを推測すればこの程度の対処は朝飯前なのだろう。そして同時に、先の読み合いにおいてどの様な攻撃が有効的かも熟知している。それは即ち“読まれようとも関係のない攻撃”であり、そうした手段も持ち合わせている。いいや、寧ろそれこそがこの男の得意分野なのかもしれない。
「神鳴る裁きよ、降れい雷ィ!
甘粕が再び手を上空に掲げれば、今度は大気圏外から音を超えた速度で無数の光が降り注ぐ。その総数は数十万程の大きな鉄の棒だった。そのどれもが神威を帯びており、地表を吹き飛ばさんと絨毯爆撃を齎してくる。だが……
「先を読まれようとも関係のない攻撃、か。対処が基本的に困難なだけで、裏を返せば単純過ぎてわかりやすい攻撃でもある。故に、この程度では俺の脅威とはならん。」
そう、マグサリオンの進撃は物量差だけでは止まることはない。バフラヴァーンや真我との戦闘を通して、それは証明されている。裁きの雷が地面に着弾するよりも早く、裁断していく。よって神の裁きもまた、マグサリオンを殺すには至らない。
「だろうな、だがそれは貴殿にも言えることだぞ?俺の言えた義理ではないだろうが、あまり人を侮ると痛い目を見るぞ、」
「ッ!」
「急段-顕象
「グゥッ!?」
刹那、煙幕を破った甘粕が印を組みながら不意に現れて横振りの一閃をマグサリオンへと叩き込む。シンプルな一撃だが、その密度は今までの攻撃を上回っている。
急段という、己と己以外の存在と意思が合致した瞬間に発動する無意識の合体技。それはきっと“甘粕を脅威の存在と認知した存在”という意思がトリガーとなっているのだろう。無論、マグサリオンも例外ではない。悪を喰らう悪に、光の魔王の鉄槌が刻まれる。不意打ち、かつ無意識の合意という組み合わせによって、刹那的にマグサリオンの殺意が揺らぎあるはずの無い血肉が弾けた。
「……そうか、それがお前の楽園の本質か。脅威無くして人の輝きはあり得ないと。」
「そうだ、それこそ我が
「ならば、今度は俺の番だな。我が殺意に触れし堕天の民草を見るがいい。
殺意を露わに振るわれるマグサリオンの一閃、それが甘粕へと吸い込まれる様に放たれる。無論、マグサリオンよりも数秒先を見れる甘粕ならば、余裕を持ってその一撃を防ぐことは可能である。彼を脅威と見定める限り、マグサリオンは自分の力を跳ね返される形となるのだから。
だが……
「ヌゥ、オォォォッ!?」
力のせめぎ合いで押されたのは、なんと甘粕の方だった。彼の急段の合意から外れたのか?否、それはあり得ない。マグサリオンの殺意に例外はなく、それは裏を返せば如何なる存在と脅威と見定めてるに等しい行為だ。ならば、マグサリオンが押し勝った理屈とは一体?
「数の差だ。俺の殺意がある限り無限に俺の民草は生まれ続ける、そしてそれが俺の力となる。宇宙の如何なる場所においても、俺の殺意から逃れる場所なんぞ寸毫も無いのだよ。」
「はは、はははははは!つまりあれか、貴殿の殺意は宇宙の端から端に満ちていて余りあるほどというわけか。
これはこれは、一本取られた。確かに俺は宇宙の全てを殺したことなんぞない、考えたこともなかったとも。視野の狭い俺には痛恨の一手である。」
そう、それは単純な理屈だった。宇宙の全てを一度殺し尽くしたマグサリオンの殺意のベクトルは全て宇宙に向けられている。そしてそれは、第一戒律の効果範囲全てがそうであるということに他ならない。
決して甘粕の覚悟も決意も、そして夢に対する熱量も安っぽいわけではない。しかしそれでも実績が説得力を増すのもまた事実である。それは相手たる甘粕が痛感している以上、逃れられない現実とも言えるだろう。甘粕の急段では、マグサリオンの第一戒律の壁を突破できない。ならば、次なる一手を模索する他ないだろう。
「ならば、我が夢の更なる深淵をご覧にいれよう。どうか偉大なる悪神よ、その閉じぬ瞳でご笑覧あれ。
終段-顕象!」
「ああ、魅せてみろ貴様の夢を。」
高速で印を組む甘粕に対し、迎え撃つように肩に剣を担ぎ見据えるマグサリオン。その果てに甘粕の背後の空間が揺らぎ、まず現れたのは黄金の輝きを放つ龍神だった。
「
その名は“黄竜”、成層圏からマグサリオンを見下ろす顔面を表し、まさに王都を守護する神獣の姿を魅せていた。まさに星の地脈を象徴する聖なる輝きを放っている。
そして、甘粕が召喚はそれだけで終わらない。
「終段-顕象
次いで召喚されたのは、黄竜ほどでは無いが月を飲み込んで余りあるほどの巨体を持つ黒龍にして邪龍。召喚された2体の龍神が、顎を開いて咆哮を放った。
黄竜が放つは弩級の空間振、肉体のみならず空間諸共粉砕する龍神の裁き。そして黒龍が放つのは生命を干渉し穢す慟哭の調べ。マグサリオンの殺意を潰さんと、負の嵐を放ち込む。
「……まさか、その程度ではあるまいな?本丸があるのだろう、その黒龍。」
マグサリオンは内と外から攪拌される。黄竜の咆哮によって身体が少しずつ粉のように崩れ、負の波動が無尽の殺意に揺らぎを生じさせる。それでも途絶えない憤怒の殺意の視線を甘粕との龍神達を見据えながらそう言い放つ。そして黒龍の眉間に剣を突き刺し、開くように剣閃を放てば、その先の上空には巨大な魔眼が開こうとしていた。
それは即ちバロールの魔眼、その視線が放てば甘粕。のような超人は愚か、黄竜といった神なる存在だろうと死へと強制的に誘われる。その神話こそ、人々が信仰によって具現化されたもの。ならばこそ、人の叡智によって実現された伝説に沿って攻略することこそが正道であるが………
「視線風情で止められるものかよ、俺の道は生涯不敗。歴史になぞった形の攻略法なんぞ、二番煎じに過ぎん。それは実につまらんだろう。退屈はさせん、見ておけ。」
「ふふ、ふはははは!それ何とも勇ましい、では魅せてもらおうかァッ!」
そして魔眼が完全開放された刹那、閃いた漆黒の剣閃が天蓋を覆った。まず手始めに甘粕が地平線の彼方へ大きく弾け飛び、黄竜の半身が無に呑まれた。そして無が覆った領域だけ、天の魔眼との距離が縮まった。
魔眼と凶眼がほぼ零距離で接近を果たし、死の神威がマグサリオンの全身を駆け抜ける。その最中に言葉で表現するのが不可能な、魔獣をも凌駕する絶叫と共に過去最強の殺意を纏った刺突を放ちこんだ。死とは即ち殺意とも解釈でき、それは即ち第一戒律との相性は実に高い。故にただの刺突だろうとバロールを殺すだけの威力に至るのは想像に難しくなく、それを証明するように魔眼が地表全域に至る大爆発と共に滅んでいった。その眷属たる黒龍も巻き込まれるのも語るまでもないだろう。その残滓を払うように剣を振り、殺意のままに無の身体が散った身体を再構築しつつ次なる獲物へと視線を移す。
「次は貴様だ、星の死滅が俺を止める脅しになるとでも思ったか?温いんだよ阿呆が、俺の滅尽は万象全てに向けられるものだ。星の滅びになんぞ足止めにもならん。」
夢の欠片を弾き飛ばしながら、大津波を連想させるほどの巨大な黄竜の顎がマグサリオンへと襲いかかった。それはまさに星の挟み撃ちであり、単純ながらも超質量の攻撃と言えるだろう。
それを剣戟一閃で弾け飛ばし、第二戒律による凶眼で弛緩箇所を見出し返しの一閃で黄竜の身体を両断した。その直後、眼下の大地と大海原が枯れ始める。枯渇し黄昏へと至ろうとする母なる星。星の夢が終わり、一つの終焉へと向かおうとしていた。その最中、地平線の彼方にいる甘粕が黄昏の空を背にしながら高速で印を組んでいた。
「やがて夜が明け闇が晴れ、おまえの心を照らすまで、我が言葉を灯火として抱くがいい――
終段-顕象
出い黎明、光輝を運べ――明けの明星ォ!」
その直後、甘粕の頭上に光が集う。その規模は黄昏を塗り替え朝日の如く眩しくも爽やかな光輝へと至る。その果てに、顕現するのは純白なる大天使。天上の愛と正義を謳いあげる絶対善的な存在。
「ほう、明けの明星か……」
そして、マグサリオン……そして無慙にとっては因縁深い存在と言えるだろう。堕天奈落から非想天へと塗り替えた三番目の覇道神、明星と言われたネロス・サタナイルと似て非なる存在と言えるのだから。
とはいえ別存在、そこは弁えているが故に特別視なんて無粋な真似はしない。それを向こうも察したようで……
「おや、何やら因縁があるようですが生憎と私は私。我が主の意思に応えるまで。
星の終末という絶望を、我が光輝にて希望へと変えん。ハレルヤ………オォォォオ、グロオォォリヤァァァス!!」
「ヌ、グオォォォ!!」
羽の一枚一枚からレーザーの如く放たれる烈光、神火の乱舞は正しく愛と正義の顕現であり、悪なる汚濁を浄化し焼き尽くす。
それは即ち、今は悪を喰らう悪としての要素も抱えているマグサリオンには効果は敵面、体の内側から血肉が貫かれ焼け焦がれる臭いが放出される。
「だいぶ苦しそうだな、悪神殿よ。武を極めたであろう貴殿ならば、この窮地をどう覆してくれるかな?さあ、万象を滅ぼした剣の輝きを、今こそ俺に魅せてくれ。」
「……ハッ、どの口でほざく屑めが。魔王を自負しているとはいえ、お前は人の代表者だろうが。俺が殺したとはいえ、人の住まう大地が滅ぼうとしている時に、自分の欲望優先かよ。」
「これはこれは、実に耳が痛い。だが、人ならばこそと思わずにはいられないのだよ。殴るのが決して好きなわけではないが、そうした窮地こそが人の真価を発揮すると思っている。故に人が真なる輝きを放てば、星をも再起させられる程の進化を果たすだろう。何故なら誰だって諦めなければ夢は叶うと、そう信じているからだァッ!!」
明星の輝きが滅びゆく地表を照らす最中、甘粕が追撃の召喚を行なった。それは恐怖せし者、人の歴史において破壊神の中では最上位に君臨せし恐るべき神だった。
「
――終段・顕象
顕現した破壊神はその手に握られた、金銀鉄の三都市を破壊した三つ叉の槍“トリシューラ”を放ちマグサリオンの腹部に風穴を開けた。
その余波で星の8割が崩壊し、無事な箇所を見つけることが困難になっていた。その星の欠片に巻き込まれ、無明の闇へと堕ちていった。故に甘粕の勝利、そう確信して勝利の宴を挙げた。
「まだだ、まだこれからだろうッ!
宇宙を滅ぼした益荒男がこの程度で終わるわけがない、ならば俺も出し惜しみなんぞせん。
俺の勇気を貴殿に捧げよう、
気合と根性、精神が膨大な熱量で攪拌されながらも甘粕は大多数の神々を国境を超えて召喚させた。その総数は千に至り、その全てが殺し合いを始めた。
先に召喚した明星、マハーカーラを始め、テュポーン、フンババ、テスカトリポカ、蚩尤、ロキ、須佐之男などなど、まさに混沌を呼び起こす最終戦争が始まった。もはや地球という星は消え、神々は太陽系を巻き込んで戦争を続けていた。ロキの奸計によって明星が水星を浄化させ、須佐男が酔った勢いで金星を踏み砕き、テスカトリポカの放った煙が火星を包み粉微塵にした。などなど、神々の暴動が星々を蹂躙して止まらない。やがて太陽すら巻き込んで自身の内包する阿頼耶識すら吹き飛ばす大激震を引き起こすだろう。即ち世界の終焉、かつてマグサリオンが行った滅尽行と似て非なる結末を齎そうとしていた。だが、星々の輝く宇宙空間に、剣閃が閃き神を一柱切り裂いてマグサリオンが現れた。
「バカも極まればこれ程までに至るか、ああよく知っているとも。故に俺が全てを殺してやろう、例外はない。」
「ッ!」
「そして甘粕、お前が望むのは勇気の輝きだな。それは殺し合いだろうと、無血の結末だろうと問わないのだろう?ならば、俺の勇気を今から魅せてやろう。」
故にマグサリオンは宙を駆け抜けながら思考を巡らせるする、甘粕が行ったこの神々の黄昏。これは間違いなく甘粕の全霊であり、例えそれがマグサリオンを殺すに至らなくても己の渾身なのだから一片の後悔だって無い。それを耐えきれればその内甘粕が自滅という結末にも至れるだろう。
だが、それではダメなのだ。きっとそれでは足りない。勇気を魅せるという条件を満たしてないため、ある種有言実行出来なかったマグサリオンの負けと言えるだろう。かつてナダレが言ったことを思い出す。
『ただ殺したくらいじゃへらへら笑うぞ。』
そう、前回戦ったギルベルトも、そして甘粕もそういうタイプだ。殺し合いをしている神を皆殺しするのは大前提、その上で彼の決して出来ない偉業を成し、その上で甘粕の予想を超えた結果を出さねばこの勝負に本当の意味で勝てないだろう。
ならば、とまずロキの奸計を全て踏破してその首を刎ねた。次に須佐男との力比べに勝利して斬り飛ばした。そして次も、次も次も次も次も飢えた獣の如く神々との力比べに勝利し無に呑んで甘粕との距離を詰めていく。その光景を見て、甘粕は歓喜の表情を浮かべていた。これこそ俺の求めていた、
「ああ、実に恐ろしい方ですね貴方は……実のところ、こうした殺し合いや戦争は好んでないのでしょう?神々を殺してる最中、一度だって笑みを浮かべていない。実に悲劇だ、貴方にいつか救いが訪れればと願わずにはいられません。」
「ふ、ふふふ……救い、救いだと?」
「ッ、何が、おかしいのです?」
「随分と“傲慢”な物言いだなァ、明星?それもお前の主の願いか?まあ、多分にはその要素はあるのだろうがそれが根ではないだろうよ。お前、随分と優秀なようだからな。お前の主……いいや、果てには天地創造した神をも超えてみたいと考えてるだろうお前?」
「っ!貴方、まさか……」
「ああ、俺の知ってる明星はそうだったからな。だが、アイツと違ってお前は神に叛逆して負けて天から墜落したのだろう?その傲慢さが皮肉にも返ってきてな、お前はその
「い、否否否否ァ!私は決し」
「邪魔だ退け」
マグサリオンの思わぬ物言いに対し、激昂し反論しようとした直後に首を刎ねられた。いつか天国から追放され堕天する。その真実こそが明星の弱点にして、隙となった。遂に全ての神々がマグサリオンの手に落ちた。残るは召喚主たる甘粕のみである。だが、彼の表情には満足気な雰囲気に満ちていた。
「見事だ、かつてない偉業だよマグサリオン殿よ。神々の全霊の戦争を踏破せし貴殿はまさに、宇宙を滅尽せし武の境地として文句無し。さあ、撃つが良い。これにて決着である。」
「……」
マグサリオンの剣先が甘粕へと向く、しかし首と接触する直前で止まった。それを見て甘粕が眉を顰める。
「どうした、躊躇っているのか?貴殿らしくない、殺す事に今更躊躇いなんぞある筈も……」
「お前、本来であればただの軍人として自殺し死んでいるな。」
「ッ!」
マグサリオンの放った言葉に、甘粕の表情が不意を突かれたように目が点となる。そう、この真実を突きつけることこそがマグサリオンの甘粕へ捧ぐ勇気。こんな言葉が終わりの間際に出されるなんて、思いもしなかったのだろう。
「お前が生まれた時、世界中で戦争が行われていた。世界中を巻き込んだ戦争の果てに、自国の敗北が確定。己の出来ることの限界を感じ、毒薬でも飲んで自殺したと……人として生き続けた果てはそんな所か。だが、この現実におけるお前は見たこともない超人との出会い、邯鄲という夢の旅路を経て未来の真実を知った。
そして世界大戦後の未来において覚悟なく堕落する人々に絶望した、それも理由として間違いではないのだろう。だが、一番絶望したのは本来の自分の真実の姿。たった一度の敗北で、自国の再起を信じられずに自殺した情けない自分を変えたいと思ったのだろう?まあ、もっとも。自国が敗北し絶望して自殺する軍人なんぞ珍しくもないがな。だが、そういう意味では本来のお前は凡人と言えるだろうよ。」
「………フフ、フハッ、アハハハハハハハハハッ!!」
マグサリオンの語った真実を聞き届け、甘粕は弾けたように笑った。否、ある種の泣き叫びとも解釈できるだろう。こうした真実を暴いたものなぞ、悪友も、かつて己に勝利した憧れの男にもされた事はない。あまりにも痛く、悲しく、そして嬉しく感じて心臓の鼓動が止まらない。
「ああ…貴殿の告げたのはまさに真実だとも。実に正しい。我が母国が敗戦し、敬愛する陛下の件の声を聞き届けて同じく自死した同期も多くいた。だが、そんな事は言い訳にもならん。本来自殺した俺より先の未来において、陛下を筆頭に俺の後輩たちが平和に向けて全力で駆け抜けていた。ああ、米国に依存した結果とはいえ、多くの犠牲はあったとはいえ自国民として生き延びていたのだよ。彼らは全て、全て、実に輝いていたとも。その未来を見て、軍人として母国の未来を信じられず自殺した己があまりに情けなくて、俺は泣き出してしまった。
魂の劣化?覚悟なき大衆?そんなのは、実のところ盧生になるための理由探しだったのだろうな。本当のところは、未来を信じられず自殺した情けない己を打ち消す事だ。夢を現実に持ち出し、その負け犬な未来をなかった事にしたかったのだろう。」
「夢は所詮、夢だ。摩訶不思議な力で引き摺り出したところで、そんなものは現実逃避に等しい。」
「違いないとも、心身ともに完全敗北だ。貴殿のその真実を暴こうとする信念、決意、そして勇気に乾杯だ。ならばこそ、その修羅の道の行く末に万雷の喝采を持って締めくくるとしよう!
ばんざぁぁい!ばんざいぃぃぃ!
おおぉぉォッ、ばぁんざあぁぁぁぁぁいぃぃぃ!!!」
「………全く、最後の最後までおめでたい男だな。」
万歳三唱をする甘粕に、ほんの僅か苦笑を浮かべながらマグサリオンはその首を跳ね飛ばした。これを以って光の魔王“甘粕正彦”との決着となった。
そんなわけで、史実の甘粕大尉を絡めたオチとなりました。
そして次回、ちょっと新しい事に挑戦してみようと思います。少し長めの企画となりますのでご了承ください。