マグサリオンの殺戮道場   作:ヘル・レーベンシュタイン

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今回は皆さんご存知のあの帝王です


第二陣 神を名乗る者

 

 

 

「………」

 

男は闘技場で待ち続けていた。否、既に察知している。これから訪れる、敵にして王者が。既に周囲の視線、この戦いを見届ける無数の者らも何人かが心折れた様に視線を閉ざしたと実感する。

まさに覇者、他者を屈服させることに長けた者が此処に訪れようとしている。そして視線の先の入口から、遂に姿を表した。それは全体的に黄色の衣服、金髪、透き通るように白い肌をした男が現れた。ゆっくりとマグサリオンの方へと近付き、会話出来るほどに距離を詰めれば奇妙なポーズをしつつ問い掛けてきた。

 

「君が、私の相手かね。」

「………」

「ふふ、黙秘か。まあ結構、知らぬ相手とは何をしてくるか分からないからな。名前の一つでも、顔を覚えられるに等しい。だが、怖がる必要はない……友達になろうではないか剣士殿よ。」

「友達?」

 

刹那、マグサリオンから殺意が迸る。拒絶と憎悪、それを纏わせた剣戟を男に向けて放った。狙いは左脚、それを断ち斬らんと剣が唸りをあげる。

 

「間抜けが、俺に友なんぞ要らん。」

「ふん、無駄無駄。」

「ッ!?」

 

だが斬撃が直撃すると確信した直後、マグサリオンの身に突如強烈な衝撃が襲いかかった。それによって攻撃は届かず、身体が退く結果となる。

 

「なァッ……」

「ほう……これは奇妙な話だ。このDIO、数多の敵やスタンド使いと邂逅したが、攻撃の気配を感じさせないとはな。否、これは“隙を世界にねじ込む能力”と言えるか。殺意自体は感じ取れたが、攻撃の軌跡を未だ記憶から辿れん。ほぼ反射で動いてなければ、こちらが危なかったようだ。」

「貴様……そうか、DIOと言うのか。」

「おっとこれはこれは、ついうっかり答えてしまったなァ〜。さて、そろそろ君の名を聞かせてもらいたいが、捻くれ者の君はまだ教えてくれないかな?」

「ふん、知りたかったら自力で吐かせてみろよ屑が。」

「OKOK、実にシンプルで分かりやすくて結構だ。では、我がスタンド『ザ・ワールド(世界)』で貴様を支配してくれるッ!」

「笑わせるな、俺は誰の支配も受けない。」

 

そしてDIOはスタンド『ザ・ワールド(世界)』を完全に顕現させ、その機械的なボディから拳のラッシュを放ち込む。全てが光速に匹敵し、見えようが見えなかろうが並の戦闘者では圧倒されてしまうだろう。

それを前にマグサリオンは、同じく剣戟のラッシュを以って迎撃する。今も尚、スタンドの姿や攻撃の軌跡すら直視できてないが、DIOの視線やどうにか殺意を感じ取ってそこに剣を合わせていく。だが……

 

「グォッ!?」

「エイイッ、貧弱貧弱ゥ!やはりどうやら、我がスタンドを視認できてないようだな。それに貴様の見えぬ攻撃なんぞ、手数で圧倒すれば良いだけのこと。そんな様でこのDIOを圧倒できると思ったが間抜けがァ、このまま嬲り殺してくれるッ!」

 

休む間もなく放ち続ける拳のラッシュ、しかしその最中でDIOは違和感を覚えた。それは、マグサリオンの損傷が次第に小さくなってると確信してからだった。

 

(こいつ、剣のパワーとスピードも私のスタンドと大差ない。だが、時間経過と共にパワーもスピードも増してそれに比例して、損傷も減っている……まさかこいつ、ジョジョや承太郎のように劣勢になればなるほど成長の可能性を……)

「なるほど、それがスタンドとやらか。」

「ッ!?」

 

その言葉を聞いた瞬間、DIOは大きく距離を取った。それを追討ちせず、マグサリオンはDIOをその閉じぬ瞳でじっと見つめていた。そして納得したような表情をすれば言い放つ。

 

ザ・ワールド(世界)と言ったか、貴様の隣に立つそれがスタンドとやらの様だな。なるほど、持ち主の隣に立つが故のスタンドというわけか。」

「貴様……」

「どうした、さっきまでの余裕は何処に行った?余裕という名の安心が無ければ、まともに会話もできんか。」

「……フフフ、フハハハハハハッ!なるほどなるほど、これは素晴らしいな。グレート、大した力だなそれは。」

「……何だと?」

 

突如笑い声を上げ、そして拍手しながらそう言い放つDIOを見てマグサリオンは眉を顰める。拭えぬ不安を抱えたまま、DIOとそのスタンドが動きを始めた。

 

「非スタンド使いながらも良く、我がスタンドをその瞳に引き摺り出した。だが、それでもこのDIOに遠く及ばんッ!」

「貴様、まさかまだ手を隠して……」

「遅いわァ、『ザ・ワールド(世界)』止まれィッ!時よッ!」

 

DIOがそう言い放った瞬間、時という概念そのものが動きを止めた。当然、時の概念に依存した存在全ての存在がが凍結されたように動きを止める。唯一の例外は、発動者たるDIOとそのスタンドのみ。

止まった時の世界、その中では安心が満ちてると確信してるDIOは散歩でもするようにマグサリオンとの距離を詰める。その脳裏に浮かぶのは、かつて止まった世界の中で動いた空条承太郎という、因縁の相手。故に同じ過ちを繰り返さぬように徹底して潰していくと決めていた。

 

「一秒経過……貴様の真に恐るべき力は理解した。要は相手を理解すればするほどそれに応じて成長する能力……私の名前とスタンドの名前を理解したことで、原則としてスタンド使い同士でしか見えぬはずのスタンドを見抜いたというわけか。フフ、知らぬうちに私が追い詰められたとは恐れ入ったよ。」

「………」

「だが、我がスタンドの真の能力、時を支配する力までは理解しておるまい?ならば理解される前に貴様を殺すまで!その真実を知れぬまま、奈落の底に堕ちるが良いッ!」

 

そう言い放つと同時に、スタンドパワーを全開にしながらラッシュを放ち込む。当然ながらマグサリオンは動けない。

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーッ!」

「………」

「10秒経過……ふふ、承太郎との決戦を経て成長したこのDIOと邂逅したのが運の尽きよ。11秒、そして時は動き出す。」

「ッ!?ぐオォォォォォッ!?」

 

時の流れが元に戻ると同時に、拳のラッシュの損傷がマグサリオンの体に刻まれる。その衝撃のあまりに、身体が大きく吹き飛び宙へ浮く。その後を追うように、DIOは大きく跳躍する。

 

「何が起こるかわかるまい、そしてその真実を理解できまい。だが間髪入れず、我が能力で貴様を捩じ伏せてくれる。その恐怖に沈んで……」

「マグサリオンだ。」

「ッ!?」

 

能力を発動しようとした刹那、突如マグサリオンは名乗りを挙げた。唐突の名乗りにDIOに動揺が生まれて行動が止まってしまった。その光景を嘲笑うように、マグサリオンの口は止まらない。

 

「どうした、あれだけ欲しがってた俺の名前だぞ。どうだ……それを聞けて“安心”出来たか?」

「貴様ッ!ぬうぅぅぅッ、ふざけた真似をするでないわァッ!『ザ・ワールドォォォォッ!(世界)』」

 

まるで口封じのように、再びDIOは時を止めた。そのままラッシュを放って始末しようとするが、直前で考えを改める。

 

「3秒経過……何が狙いか分からんが、突如名乗ったことに裏があるのだろう。ならば、どんな策があろうと近付く必要のない方法で処刑すれば良いだけのこと!」

 

するとDIOは鋭利な瓦礫をスタンドに拾い上げさせ、それをひたすら投擲させていく。するとマグサリオンの直前で静止する。

 

「フハハハ!承太郎も成長して我がスタンドに食い下がったが、どれだけ貴様が成長しようとも、時間の止まった世界では無意味である。剣などという、距離を詰めなければ意味などない武器に頼るからそうなるのだ。10秒経過……さあマグサリオン、このまま串刺しに……」

「阿呆が」

 

瞬間、止まった時の中でマグサリオンが動き出した。上段から振り下ろした剣が天地開闢を連想させる閃きと同時に、止まった世界ごとDIOの右半身を斬り払った。

 

「なぁにィィィィィイイッ!?」

「時を止める、それは貴様が安心を得たいという願いの裏付けだろう。それ自体は悪しきものではないが、貴様は他者を屈服させて支配する形で実現しようとしている。

人の心理、情報、そして圧倒的な力で支配し、確実な安心を得ようとしている。ああ、お前は俺の知ってる世界で生まれてたら、より凶悪な存在になってた可能性はあるだろう。だが、ここまでだ。お前は俺の手で始末する。」

「ぐぬぬぬぬッ、己ぇマグサリオォォォォンッ!」

 

残った半身をどうにか動かしながら、DIOは睨み上げていた。しかしその内心では、この窮地をどう脱するか思考を巡らせている。

 

(これは致命的だった、想定外すぎる……奴の成長速度はジョジョや承太郎以上だった。だが、急激な成長は人には過ぎたるものだ。何か裏があるはずだ……ッ!)

 

その瞬間、DIOに落雷の如き閃きが発生した。不敵な笑みを浮かべながら、更に思考が加速していく。

 

(そうか、分かったぞマグサリオン。お前が相手を理解するごとに成長するのは、対象の内情を理解し、その果てに否定するためだなァ?どれほど大層の野望があろうとも、武力で実現させようとする輩を諦めさせるため。まるでそれは、仏陀やキリストの如き聖人の所業のそれだ。さっきから、やたらとベラベラと喋るのが動かぬ証拠よ。だが、だからこそ貴様は二流なのだよ間抜けッ!ああ、惜しいとすら思うよ。

このDIOにそんな考えは通用しない、常にあるのは『勝利して支配する』というシンプルな答えのみ。それこそが我が不変の真理よ!その夢を成すためならば、過程や……方法なんぞ……)

「どうでもいいのだァーッ!」

 

そう叫ぶと同時に、DIOは断絶面を巧みに操って出血させる。そしてそれは、マグサリオンの目に直撃した。それだけに終わらず、傍にある右半身の死体をスタンドで持ち上げ、それをマグサリオンに向かって投げつけた。

かつて承太郎に目潰しだけでは通じなかった経験を経て、もう一つ工夫を挟むことにしたのだ。

 

(隙を作り上げるのは貴様だけの特権と思うなよマグサリオォンッ!そのまま間抜けな隙を晒して逝けッ!)

「勝った、死ねェッ!」

「無駄だ」

 

投擲した死体を盾代わりにしつつ、その背後で心臓を狙った拳の一撃を放ち込む。しかし、マグサリオンは一瞬にしてそれら全てを剣の一振りで両断した。そう、まるで“光をも凌駕する速度、その果てに止まった時の中を駆ける”様に。

 

「馬鹿な……貴様、まさか時を?」

「貴様のなまっちょろい小細工、この俺に通用すると思ってるのか間抜けが。」

 

斬られた実感すら湧かないDIO、そして止めの様にマグサリオンがそう言い放った瞬間大量の出血が発生する。遅れてやってきた激痛の最中、DIOはマグサリオンの真意を悟った。

 

「ウガァァァァ!?そうか、見誤っていた。マグサリオン、お前の進む道はそうか……だが、その先に安心なんて何処にもないぞッ!?」

「安心?そんなもの俺は一切望んでいない。貴様と一緒にするなよ間抜け、地獄へ堕ちるというのならば望んで行ってやる。天国なんぞ、俺には不要だ。」

「ッ!?」

「故に堕ちろDIO、貴様の負けだ。」

「馬鹿な、このDIOがッ!このDIOがァァァッ!?」

 

そして肉体が爆散し、DIOの肉体が無に飲まれる様に消滅した。この勝負の雌雄は決した、最後を飾る様に剣についた血糊を払いつつマグサリオンは呟く。

 

「支配して得る安心か、その様な理だろうと俺は屈しない。神だろうと、悪魔だろうと俺は誰の支配も受けない。俺は俺の不変を、如何なる時も貫くのみだ。」

 




公式で格上殺しの専門家と言われるだけあって、やはりマグサリオンは上の存在との戦いの方が動かしやすいですな。武力だけでなく、精神的なやりとりとかと言う意味でも。そう言った意味でも前回のカーネイジ戦はちょっとやりにくさを感じてました。
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