マグサリオンの殺戮道場   作:ヘル・レーベンシュタイン

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今回はあの有名なキャラと闘わせてみました。


第十六陣 進化する戦闘民族

 

 

 不意に、何かがひび割れる音が聞こえた。マグサリオンはその音を捉え、聞こえた場所へと視線を向ける。そこはなにもない空間、しかし徐々に見え始める。

 空間そのものに裂け目が生まれ始めている、亀裂が次第に大きくなっていく。そして、孔が開いてそこから何者かが現れた。

 

「オォォォォォォォッ!」

 

 そこに現れたのは、かつてマグサリオンが殺したバフラヴァーンと似た筋肉隆々な大男だった。男の名はブロリー、今の彼は暴走する野生生物の様に理性を感じさせず、どの様な経緯かは今のところ不明だが結果としてマグサリオンの元へと行き着いた。

 そして彼の殺意に反応し防衛本能が働いたのか、緑色の気を全身へと巡らせてマグサリオンに向けて拳を振り上げた。その過剰な気は物質化しており直撃すれば単純な星であれば容易く粉砕するだろう。速度も見た目とは対照的に、光をも凌駕した速さで迫り来る。

 

「グッ……」

 

 それを前にマグサリオンは体を逸らして回避し、そして返しの刃を放つ。拳と剣がぶつかり合い、その衝撃でまず周囲の星が粉微塵になって消えた。余波ですら小惑星を容易く滅ぼすだろう。

 強い、ただ一度攻撃を交えただけでマグサリオンがブロリーから感じた印象はこれだ。拳を通して伝わるエネルギーの奔流には限界を感じさせず、銀河を破壊してもあまりあるもの。間違いなく宇宙に匹敵するエネルギーを保有しており、互角の殺し合いになるのは間違いないと確信している。

 

「ガァッ!」

「殺す!」

 

 再び両者の剣と拳が交え、その直後にラッシュの応酬が繰り広げられた。だが、マグサリオンからすれば可笑しい話だ。ブロリーの状態と行動からして、殺意が出ているのは当たり前すぎる話だ。故に第一戒律によって、両者の殺意に応じた攻撃力を変換し放ってるはずなのに、一向に力負けしてないのだ。ならばとのような理屈か?

 そう、ブロリーは先の手合わせで学習したのだ。マグサリオンを相手に負けないパワーを、無意識下だろうと死線の刹那に絞り出す。言葉にすればそれだけだが、それを成せるのはブロリーが野生の環境で培ったセンスと学習能力があるからこそなせる奇跡だろう。努力を怠らない天才、そう表現するしかない。魔道を極めたマグサリオンであろうとも、これほどの天才はバフラヴァーンとワルフラーンくらいしか思いつかない。

 

「……大した奴だ」

 

 マグサリオンは宙を蹴り、再び距離を詰める。同じくブロリーもエネルギーを全身から放出しながら迫りくる。一条の光輝を描きながら、拳と剣が交わる。互いに空間ごと割き、砕き、血肉を亜空間内に散らす。

 マグサリオンは剣士らしさを感じさせない独特な動きで、ブロリーの隙を見極めてそこへ剣戟を差し込む。

 

「ッ!?……ダァッ!」

 

 その一閃が気の鎧を貫通し、超人的肉体に傷を負わせる。しかし怯むことなくマグサリオンの頭を掴み、ワイルドなフックを叩き込んだ。

 拳から伝わる感触は伽藍堂、不思議に感じるもののそれでも引かない。二度、三度、四度、強引にパワーの底を上げて無理矢理攻撃を通さんと何度も何度もマグサリオンを殴り続ける。実際、マグサリオンの体から血が弾けており、明確なダメージは確かに現れていた。このまま互いに互角の戦闘のまま、硬直状態が続き先に心の折れた方が負けるだろう。第三者から見れば、そんな予想が生まれると思われる。

 

「だが……お前の顔から喜びは感じられない。」

「ッ!?」

 

 だがそんな予想を裏切るように、マグサリオンはそう呟いた。この言葉の刃による攻撃こそが、マグサリオンの真骨頂だ。その言葉がささったかのようにブロリーは動揺が生まれ、その瞬間をマグサリオンは見逃さない。即座に刺突を肩に向けて放ち、関節を抉るように刃が肩の肉に刺さる。

 ブロリーは苦悶の声を上げながら後退するも、マグサリオンから目が離せない。まるで続けてくるであろう言葉に、強い関心を向けているかのように。

 

「戦闘とは目的の意思あってこそ行動に移せる、例えば戦闘そのものが楽しみだったりとかな。だが、お前には楽しんでる姿は見られない。悪鬼の如く血を好み、破壊を楽しんでもない。ましてや理性なく暴走しているならば、大概コントロールするための管理者がいるものだろう。これほどの力、上手く活用したいと考える奴くらい居るはずだ。例えば………“父親”とかな。」

「ッ!!ウゥッ……」

「……居たようだな。だが、お前と同行している様子が無い、ならば死んだか。平気同然に扱う父親相手に、随分と律儀で純粋な奴だなお前。」

「ガァァァァァッ!!」

 

 マグサリオンの指摘を聞き、ブロリーは激昂しながら口から破壊光線を放ち込んだ。周囲の亜空間をドリルのように抉り、極彩色の欠片を撒き散らす。それはさながら、内に渦巻く衝動のまま人の営みを破壊する獣の如く。

 だがそれらを一切恐れず、破壊の渦の中にマグサリオンは身を投じた。ムカデの様な獣の道の如き軌道を描きながら、ブロリーへ近づいて来る。

 

「ハァァァァッ!!」

 

 しかしブロリーもただそれを待ってるだけではない、光線をやめれば今度は深く呼吸をする様に気を溜める。そして一気に全身から放出すれば、無数の緑色の光弾を雨霰の様に放ち込む。

 

「フン……」

 

 だが、それだけではマグサリオンは止められない。一見逃げ場ない絨毯爆撃だろうと、閉ざさぬ瞳が第二戒律を通して隙間を見出し、そこに身を投じ込む。或いは無理やり切り開いて最短ルートでブロリーへと近づいていく。暗黒の剣風が、翡翠の輝きを獣の様に喰らい尽くす。そして背後から心臓を穿たんと剣先が狙いを定める。

 

「ガァッ!」

「ッ!?」

 

 たが、その更に上へとブロリーが迫った。殺気を探知したのか、ブロリーは振り向くと同時に裏拳を放ち込んだ。マグサリオンは咄嗟に刺突を重ねる形で防いだ。

 だが……

 

「ウォァァァァッ!」

「グゥッ……」

 

 弾ける爆光、その斥力で両者共に弾け飛んだ。だが復帰はブロリーの方が早く、強引に体ごとマグサリオンへと押し付ける。それと同時に胸元から一回り大きい気弾を生み出し、マグサリオンへ追い打ちを叩きつける。

 苦悶の声を出しながら更に弾け飛ぶマグサリオン、だが空間に剣先を突き刺しながら静止する。

 

「舐めるなよ、父親離れ出来てない餓鬼に俺が負けるかよ。道具としか扱われなくても、随分と執着するな。ああ……もしかして誰かに殺されたのか。」

「ッ!」

 

 血を吐き捨てながらそう言い放ち、ブロリーの真正面へと迫る。マグサリオンのぼやきを無視できなかったのか、右手に気弾を溜め込んでマグサリオンの顔面へと叩き込む。

 黙れ、これ以上喋るなと示しているかの様に。

 

「……つまり、お前は父親という拠り所を破壊されたわけだ。その悲しみに耐えきれなかったんだ、理性を失っても俺の一言で怒ってるのが良い証拠だ。」

「ッ!」

 

 だが凶剣の剣風は止まらない、抉られた肩の傷を更に深めんとギロチンのように振り下ろされる。その結果、ブロリーの左肩腕が宙を舞う。

 だが、それでもまだだと吠えんが如くブロリーは気を激らせる。

 

「ハアァァァッ!」

「ガァッ……」

 

 空いている右手を開き、そこに緑色の気の塊を作り上げた。それを全力でマグサリオンへと叩き込む。マグサリオンは咄嗟に片腕でガードするも、まるで意味をなさないだろう。その刹那に破壊の波動が、亜空間全域を吹き飛ばし、気がつけば元の宇宙空間へと戻っていた。

 その最中でマグサリオンが連想したのは、かつて宇宙そのものの巨体、そしてその中で無限数の分身を生み出した真我からの挟み撃ち。まさに文字通り、たった一つの生命体に向けて宇宙そのものが攻撃を繰り出したもの。だがブロリーの今の攻撃は、それすらも凌駕しかねないだろう。真我とブロリー、単純な勝敗はともかく膂力のみであれば後者が上回っていると確信した。故に当然、マグサリオンにも明確なダメージを与えており……

 

「……ああ、他にも誰かいたのか?利害的な関係ではなく、あくまで平穏的で平和に自分に身を寄り添ってくれた誰かがいたと。」

「ッ!グッ、ムゥッ……」

「現に、その腰に巻いている毛皮も忘れられん縁のものだろう?大事に抱えてるではないか。」

 

 マグサリオンの指摘に、古傷でも抉られる様にブロリーは動きを止めた。彼の脳裏を書けるのは、かつて共に団欒をとった二人の友人。そして幼い頃に共に生活を過ごした生物。全て、全て大事な思い出だ。だが、それも既に過去のことである。

 

「だが、こうやって一人でこんな所に来てしまったところを見るに、自覚があろうが無かろうがお前が滅ぼしてしまったか。だが、お前どう感じようとも、この結果になってしまった以上是非もあるまい。殺意も破壊も、他者あってこそ成立する。俺と俺の民を殺して虚無の中一人君臨するか?それとも、やはりどこかにいる他者を求めるのか?決断しなければ、お前は破段するぞ。」

 

 決して閉じぬ瞳でブロリーを見据えながら、マグサリオンはそう言い放つ。既に互いは致命傷でズタボロ、勝負は互いに勝機はあるだろう。

 ブロリーは既にマグサリオンの攻撃力に匹敵する膂力、そして隙を突かれてもそれを探知しとらえられる程に強化されている。

 一方でマグサリオンも殺意は途切れていないものの、総軍はかなり減っているがまだ潰えてない。殺意の民はまだ存在している。もしも全滅すれば、マグサリオンの強化幅も縮まり倒されるかもしれない。だがブロリーの気の鎧と肉体は斬り裂くことが可能であり、事実既に片腕を失わせている。肉体的に有利はマグサリオンにあるだろう。

 

「………」

「………」

 

 両者、言葉を出すことなく殺意を交換して向き合う。速さは互角、故に勝負を決するならば最強の攻撃を最速で当てて決めるのみ。あとはそれを決断する勇気と覚悟、臆すれば一気に潰されるのは間違いない。膠着状態を脱するためには、強靭な精神力が求められるのだ。

 そして一歩踏み出すタイミングは同時、翡翠と闇黒の光輝が軌道を描きながら宇宙空間の中心へと迫り来る。

 

「ハアァァァッ!」

「オオォォォッ!」

 

 唸る拳、旋風を巻く剣。両者の攻撃は、共に互いの体の中心へと叩き込まれた。数秒の沈黙の後、先に倒れたのはブロリーだった。

 その後にマグサリオンも倒れ込むも、剣を空間に突き立ててギリギリのところで意識を保っている。

 

「ア、ぁぁ………」

「貴様の、負け、だ……」

 

 仰向けに倒れるブロリー、彼の金髪が黒へと変わる。そして次第にその生命力も弱まってきており、身体中が散り散りとなっていた。

 まるで錆びた金属が風に吹かれて塵となって消えていくかな様に。先程のまで暴れ回っていた剛力な姿とは対照的である。だが……

 

「う、ァ……」

 

 ブロリーは瀕死の体を動かし、マグサリオンへと手を伸ばした。死にかけてもなお、彼に一矢報いるためか?普通ならそう考えるものだ。

 だが、ブロリーは親指と人差し指の先をくっつける。そして自分の顔へと近づけながら朗らかに笑いながら言い放った。

 

「さん、きゅー………」

「………」

 

 戦いに付き合ってくれたことへの賛辞、それを態々……それもマグサリオンに対して瀕死の身体に鞭打って。

 そして力尽きた彼は、塵となって宇宙風に吹かれて消えていった。それを見届けたマグサリオンは……

 

「……貴様はあまりに、純粋すぎたな。」

 

 そう風に吹かれていった彼へ、黙祷を捧げるかの様に言葉を宙へと投げたのであった。

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