マグサリオンの殺戮道場   作:ヘル・レーベンシュタイン

27 / 42
今回も前半後半に分ける形となります。
複数戦は本当に難しい……まだまだ慣れないです。

5/2 サブタイトルを修正しました。


第二十二陣 万仙陣 Ⅰ

 

 

 それは、不意な出来事だった。マグサリオンの座する闘技場に桃の香りが発生したのだった。

 

「これは……ッ!?」

 

 甘く心を穏やかさをもたらしそうな桃源郷へ誘う香、只人がそれを吸えば心が洗われるような心地となるだろう。

 しかし、安らぎを拒絶し常在戦場を貫くマグサリオンは即座に赫怒と危機感を抱き辺りに漂う香りへと意識を向ける。

 

「これは、魔性の香か。確か阿片というのだったか、薄気味悪い……」

 

 かつて真我の敷いた二元論の理を連想させるものだった。時空を超えて発生したのだった異界の煙、それが救済と破滅を両立させる破綻した救済の桃源郷へと万人を誘う。

 そして天蓋を見据えれば、そこに煙を発生させている起点たる宮殿が現れた。その名は“崑崙宮殿(こんろんきゅうでん)”と言い、空中から伸びる長い階段の先にある、伝説の仙境を連想させる荘厳な宮殿がそこにあった。そして、宮殿の中にいる白痴たる救済の王が万物を慰撫する様に嘯く。

 

「俺がお前たちを、素生を救ってみせよう。好きに夢を思い描くが良い、俺はお前たちの幸せを祈っているぞ。」

 

 崑崙宮殿より阿片の香が、この堕天奈落の宇宙へと流れ出した。この力の名は『万仙陣(ばんせんじん)』であり、人であれば誰も彼もが夢幻の彼方へと誘われ、自身の描く幸福の夢を与えられて昇天していく。

 ならばこそと、言うべきだろうか。悪の楽土たる堕天奈落の者たちには効果は覿面だった、何故ならこの宇宙には痛みと嘆きが多かったから。誰も彼もが己の原罪を抱き、そこからの解放を夢見ていたのだから。たとえそれが痛みと嘆きからの解放にせよ、弱者の支配と欲望の海原に沈む血染めの快楽の果てだとしても。どうあれこの知世には無い願いを望む以上、万仙陣の誘惑には抗えない。故に総軍が奪われ、悪鬼の魂が異形の触手へと変貌していく。そしてその夢を守るために、廃神(タタリ)という、その夢を護る守護神が牙を剥く。その誰もが矛盾で個人の都合のいい妄想の産物であるものの、万仙陣の救済に抗うものに向けて襲い掛かる。

 

「邪魔だ屑共。」

 

 ならばこそと、破滅の救済を砕くべく凶剣の殺意が前進を始める。己の支配していた堕天の総軍が奪われるものの、そこに一切の罪悪感も嘆きもない。もとより人とは勝手に生まれて勝手に死ぬものの断じてる故に、甘い救済に堕天しても頓着しない。

 優先すべきは崑崙宮殿の最奥に座する救世主、その殺害こそが目的であるのだから。斬風を舞うマグサリオンの殺戮の凶剣、それが妄想を散らす廃神を切り刻んでいく。例えそれが破滅の悪夢であれ、平穏を願う穏やかな夢であれ、関係なく。その意思を理解し、記憶して殺戮の魔道を孤軍奮闘で邁進していく。空を蹴り宮殿へ伸びる階段へと向かう、その最中…

 

「む…」

 

 不意に弾丸が飛来しそれを握り潰す。それは通常の兵器のそれとは異なっていた。何故ならまるで突然目の前に発生したかの様に、明らかに空間を跳躍してこちらを狙っていたのだから。

 階段の最下層に足をつければ、その上部に並んだのは二人の男子と四人の女子、計六人の若者達がマグサリオンの前に立ち塞がった。否、正確には廃神と呼ぶべきもの達が。理解度の浅い大衆の妄想による産物故にか、ほとんど言葉を発することは出来ない様子だ。しかし明確な敵意を感じさせる故に、決して無視できる存在ではないだろう。

 

大柄な少年、名は鳴滝淳士

細身の少年、名は大杉栄光

銃を持つ少女、名は龍辺歩美

帯を使う少女、名は真奈瀬晶

薙刀を握る少女、名は我堂鈴子

刀を握る少女、名は世良水希

 

構図としては六対一である。卑怯?とんでもない、元よりマグサリオンは宇宙という生物を滅ぼすために、己以外の全てを滅尽した実績がある。その過程で多人数を相手してきたことは語るまでもなく、そんなことに文句を言う輩がその地平を目指すわけもない。故に……

 

「屑共の妄想が生み出した糞か……いや、それと同じくコイツらと闘えばどうなるか興味があるわけだな。良いだろう、乗ってやるよ。」

「………」

 

 桃源郷の中心で、若者達の廃神と凶剣の戦陣が描かれる。先手を撃ったのは、鳴滝淳士。その武器は己の拳であるが、その密度はまさに凶器。人体相応の重さではなく、それは爆撃に匹敵する重圧が込められている。それを迎え撃たんと、殺戮の地平の斬撃が放たれる。正面衝突をする拳と剣、その天秤が傾いたのは剣の方だった。

 拳が血袋となり、苦悶の表情で男は怯みから後退する。しかし逃さないと追撃を放とうとした時、間を割ったのは流麗な曲線を描く刃と鋭さを帯びた白刃だった。

 

「チッ……」

 

 マグサリオンは咄嗟に身を屈め、不恰好であろうとも構わず地面へ転がり込む。仮に大した威力で無かろうとも、無駄に直撃を受けるほど愚かではない。マグサリオンにとって未知こそが最大の敵であり、今この瞬間に脅威が無かろうとも後にどんな猛毒が爆発するか分からないのだから。そして二つの刃を降り直したのは、綺麗な黒髪を纏う二人の女だった。

 どちらの斬撃もしなやかさを纏っており、マグサリオンとは対象的な太刀筋を放つ。特に我堂鈴子は、人体的急所を的確に狙っていた。肩の付け根、指、眼球、股間などなど……どれだけ研鑽を積み上げようとも、人体的に頑丈になり得ない箇所を狙う。それもまた卑怯とは言い難く、御前試合でもない殺し合いなのだから。更に、前進を許さないように、世良水希もまた支援するように追撃を放つ。しかしそれをせせら嗤う様に、マグサリオンの口上が切り裂く。

 

「その程度か?いいや、違うだろう。お前らの狙いは“さっき放った攻撃”を当たるためだろう?」

「!?」

「若い、青い、故に視線から狙いが見え見えだ。もっとも、その程度では俺は殺せんぞ。」

 

 そう、既にマグサリオンは二人の狙いを見極めていた。我堂鈴子の固有の能力たる破段は“斬撃の残留”であり、それは目に見えない脅威である。

 しかし、マグサリオンは死地を駆け続けた百戦錬磨であり、その程度は見極めることは容易い。ならば一々この戦況に拘うことはなく、強引な突破を狙う。

 

消し飛ばせ(アラストール)

 

 力を込め、一歩踏み出すと同時に距離を砕く。すなわち過重と瞬間移動の同時使用であり、強烈な進撃現象が女二人に襲いかかる。

 咄嗟の防御なんぞ砂上の楼閣であり、特に防御が脆い鈴子は、獲物と共に砕け散った。

 

「で、また俺の不意を狙う気か?」

 

 目的の地点に辿り着くと同時に、再び空間の彼方より飛来する弾丸。しかしそれを今度は、そう言い放っと同時に的確に回避する。それは龍辺歩美から放たれたものであり、はっきり言って狙いが的確だった。

 マグサリオンの攻撃は獰猛だが、同時にそれはムラが激しすぎる欠点が纏わりつく。それは武才の無さから発生する避けられないものであり、それを豊富な戦闘経験で埋めてるが完全に断絶されてるわけではない。故に攻撃直後の終わりの動作があり、そこを狙われる。無論、マグサリオンもそれは承知しており、事実こうして攻撃を回避している。だが、同時に足止めされている事実である。ならばどうするか?簡単な話である。

 

「来い。」

「ッ!?」

 

 先に彼女から殺せば良いだけの事。片手を歩美に向けて伸ばし、握りしめようとする。それはまるで世界を引き裂く所作であり、それが握りしめられれば彼我の間にある距離という名の世界が無の彼方へと消え去って、目の前に引き摺り出されるだろう。

 

「ッ!」

「ほう……」

 

 だがその掌に、大杉栄光の蹴撃が直撃した。それはその細身から放たれたとは思えない、消滅を司る現象。何処かマグサリオンの司る不変なる無と類似していた。

 更に、負傷した者らに帯が伸びており、包帯のように包みそこから放たれる光が怪我を癒していた。その起点となっているのは、小銃の女の隣に立つ真奈瀬晶。そこに一切の殺意がなく、ある意味一番警戒しなければならない存在だと断定する。うっかり回復に巻き込まれればどうなるか、己の戒律を振り返れば言うまでもない。

 

「鬱陶しい連携だ、反吐が出る。」

 

 鼻を鳴らすようにマグサリオンはそう言い放つ。しかしそれは、何処か敬意を感じさせる一言であり、同時に殺す決意の表れだった。

 再び突撃する淳士と、消滅の蹴りを放つ栄光。どちらも攻撃に長けており、先陣の配役としては適切だろう。

 

「その重さは己の価値の表れか?」

「ッ!?」

「ああ、同意する。己の価値を見出せぬものに、成せる夢はない。」

 

 マグサリオンの放った言葉が、淳士の動揺を生んだ。それは刹那のやり取りだったが凶眼がその弛緩を見逃さない。

 放たれる刺突、本来圧倒的質量によって鎧と化した肉体が弾くはずだった。しかし動揺による弛緩がそれをなすこと敵わず、胸部に深々と剣先が食い込み、致命となった。

 

「次はお前だな、ああ……考えはわかるぞ?“この瞬間にみんなを守れるならば、己諸共消滅させよう”とな。」

「ッ!?」

「目論見が甘かったな。」

 

 大杉栄光の夢はそう言うものだ、己の基準を天秤にかけて対象を消滅させると言うもの。極論、本人の価値観が合うならば髪の毛一本を引き換えにマグサリオンだって消滅させることも不可能ではないだろう。

 だが、この少年は良くも悪くも単純かつ慈悲深い。強大な敵と合間見れば、腕の一本や足の一本を犠牲にしなければ勝てないと考えるのは当たり前。ましてや今も尚、仲間達との闘いでまともな被弾一つない現状、自分如き命一つ犠牲にしても、果たして届き得るのかわからないのだから。だが、仲間達を守るためならばそれを躊躇う時間もまた惜しいのだから……

 

「判断の甘い奴から死に落ちる、お前だって覚悟してたのだろう?」

 

 その残酷な言葉と共に放たれた斬撃が、少年の胴体を分離させた。そもそもの話として、彼の消滅の夢は触れなければ実行できない。とどのつまり、当たらなければ意味がないのだから態々接触しないといけないことに、マグサリオンが付き合う道理も無いのだから。

 

「急段-顕象 犬村大角礼儀(いぬむらだいかくまさのり)

 

 直後、その宣誓と共に鈴子が発動したのは人外排斥を司る断罪の刃。それは人と獣を別つ境界の具現であり、初見であればマグサリオン相手に成立するとは思えないだろう。

 冥府魔道を往く凶剣は己を万物滅尽の剣と見立てているが、その宣誓“だけ”であれば成立はしていない。究極、それを実行しつつも人としての生活を維持しているならば人間の範疇と言えるだろう。例を挙げるならば、かつて交戦したラインハルト・ハイドリヒ、彼は世界の全てを破壊することが可能である黄金の獣であるが同時に人の究極の一つとも言える。そして何より、本人もまた人としての自負を抑えているのだから、我堂鈴子のこの夢は成立しない。しかしそれにマグサリオンは該当しない。何故なら……

 

「目を閉じれば貴様ら屑を見失う、眠れば俺の思いが途切れる。立ち止まってる時間なぞ、寸毫も無い。ああ、それを実行し続けてきた俺は人では無いだろうな、ならばその夢もまた、成立し得るだろう。」

 

 瞬きせず、排泄せず、睡眠せず、その全てを殺し合いに捧げた生涯。これらを躊躇いなく実行し続ければ誰もが人では無いと口走るだろう。そして何よりマグサリオン本人もまた、無法でありながら人の道理を弁えてるが故に根本から人では無い。そのように自覚しているのだから。

 故に成立する、我堂鈴子の奥義(急段)が成す。汝人にあらずとも謳い人の秩序より逸脱するのならば、人の世より消え去れと処刑が我堂鈴子によって執行される。例えマグサリオンといえど、その刃が身体に触れれば消えるだろう。

 

「一つ聞くが、有利が利くならば勝てると勘違いしてないか?」

「ッ!?」

「それが俺に当たるかは別だろう。だがそうだな………良いぞ。来いよ、当ててみろよ。」

 

 マグサリオンは手招く、本来ならば単純な経験値として彼ならばその刃に当たらないだろう。避けて殺せば良い、それだけのことである。本人の言った通り、成立すれば必ず当たるような能力ではないのだが。

 だのに何故か、手招いて挑発をして来た。それはほぼ自殺行為に等しく、より不利な状況を自ら作ったに等しい。女からすれば提案を蹴る必要性がなく、警戒しつつも己の誇る夢を惑わせながら、地を蹴ってその刃をマグサリオンへと振り下ろした。迫る刃を見据えて、嘲笑うように口端を上げながら嘯く。

 

「それは人じゃ無いと自覚してるヤツを消すのだろう?消す意思とは即ち殺意とは思わんのかよ。」

「ッ!?」

「他人の意思を利用するのは、お前の特権ではないのだよ間抜け。」

 

 瞬間、迎撃するかのように閃く闇黒の刃。そう、人外排斥の夢は特に殺意が強い夢と言える。故にマグサリオンの第一戒律との相性が悪く、正面切ってのぶつかり合いでは特に勝てないのだ。

 マグサリオンを消そうとする意思が力へと変換され、自分自身の力を跳ね返されたかのように再び獲物ごと彼女の身体が破壊された。残るは三人、次に見定めたのは包帯の女だった。

 

「同じ過ちは繰り返さん、お前は確実に殺す。」

「ッ!?」

 

 その宣言を受ければ、当たり前に晶の顔色が白くなる。だがそれを抑えるように仲間達を蘇生させんと、白い帯が伸びて来た。それを掻い潜り、マグサリオンは女へと接近していく。

 重ねて言うが、マグサリオンにとって一番厄介なのは彼女だ。うっかり触れればその時点で死も同然、下手に距離を壊してしまえば彼我の意思とは無関係に帯を招いてしまうかもしれないのだから。故に己の脚で接近する。道中に弾丸、白刃が迫り来るがそれを潜り抜けていく。人体的にあり得ない、蛇のような軌道を描きながら駆け抜け、そしてついに射程距離へと入る。

 

「他者の命を重んじる精神は大したものだ、だが死ね。」

 

 その一言と共に、真奈瀬晶の首が跳ねた。義を重んじて同胞の命を尊ぶ、それは素晴らしいこと。それはそれとして、しっかりとそのことを理解し殺すことこそが冥府魔道。

 故に容赦なく、女の瞳を見据えてその首を刎ねた。これでもう、回復薬はいなくなった。残り二人、もう間も無くこの戦闘における滅尽が完遂される。

 

「………」

「……ほう?」

 

 その時、龍辺歩美がマグサリオンと正面を向き合い己の本気を見せると案に示すかのように銃口を向けた。その姿に感心するような視線を交え、肯定するかのように無言の視線を向ける。同意と受け取り、少女は銃口をマグサリオンへと向ける。

 凶剣は求む、殺すべき相手()を知る未来を。故に成立する、少女の急段(祈り)と。

 

「我、ここにあり。倶に天を戴かざる智の銃先を受けてみよ。

 

急段ー顕象

 

犬坂毛野胤智(いぬさかけのたねとも)

 

 詠唱の直後に銃口が爆ぜれば、駆け抜けるは因果を超えた必中の弾丸。それは両者が共に『未来を見たい』という意思が成立することで成立する夢。

 その威力もまた、彼我の意思を乗せたものである。ならばこそ、カウンターに等しい威力が込められており避けられない致命と一撃となる。

 

「手緩い。」

「ッ!?」

「相手を見極める未来を求める俺の意志を媒介にした、因果を超えた弾丸か。面白いが、俺を殺すには足りんな。」

 

 しかし、いいやだからこそというべきか。マグサリオンは額へと迫った弾丸を掴んだ。

 忘れてはならない、この男はかつて彼らの宿敵である甘粕と殺し合った過去がある。そして彼の急段もまた、カウンターの如き原理をしているがマグサリオンはそれもまた突破した。その本質は全てを鏖殺する第一戒律、総軍を奪われようとも殺意を媒介にし万象鏖殺した実績はあまりに大きい。それがこの結果を引き起こした要素となったのだ。

 

「お前のことはよくわかった、故に死ね。」

 

 まるで引き抜くような腕をの動きによって、歩美はマグサリオンの眼前まで引き寄せられた。そして直後、抵抗する暇すら与えないまま断頭の一閃で首を刎ねられた。

 残るは、一人。世良水希だけとなった。

 

「ッ!」

 

 不意に振り抜く白刃、そこには研鑽だけでなく才覚も見えた。無駄のない夢の密度、体捌き、直撃の瞬間における力加減。そのどれもが高次元であり、六人の中で実力が一つ頭抜けていると言えるだろう。

 強い、圧倒的な才能差はかつて殺したワルフラーンを連想させる。非才だった、正確にはそうアレと強く貫いた己とは対照的と言える。

 

「おォォォッ!」

 

 マグサリオンが我武者羅に剣を振るう、その悉くを女は捌いていた。膂力ではマグサリオンが圧倒的だが、水希は真正面から打ち据える愚を犯さない。

 側面から刀を添え、その軌道を逸らしていく。しかしそれは異常な現象だ。ある程度の武を誇るものであれば一度や二度であれば、確かにそのような真似をできるだろう。しかし、マグサリオンは戒律の性質上時間経過と共にその威力は青天井に上昇していく。つまり、軌道を逸らすタイミングや力加減が一振りごとに違ってくるのだ。しかし、彼女はその全てを今の所難なくこなしていく。それを実現するのは極限の集中力、そして天より賜った才覚によるものだろう。その光景にマグサリオンは懐かしさを感じさせる。そして直後に、言葉の刃を振り上げる。

 

「邪魔者が居なくなって、よりやり易くなったか?」

「ッ!」

 

 女の瞳から怒気が発せられる、まるで仲間を侮辱するなと言わんばかりに。しかしそれを気にすることなく、マグサリオンはさらに話を続けようとした。

 だが、その直前に白刃がマグサリオンの身体を貫いた。まるでそれ以上の侮辱は許さないと言わんばかりに。無の体をまだ完全に貫通はしきれてないが、直撃させるだけでも大きな結果と言えるだろう。

 

「……なるほど、己の役割を理解した上で仲間と共にあると決意しているわけか。」

 

 そして再び交わる刃、軌道を逸らし時には身体を投下させて剣風から抜け出したりもする。そして時折、燕返しの如きカウンターをマグサリオンに当てていく。そこに異能の加護はなく、あくまでも純粋な剣の技量によって。まさにかつて苦戦した、ワルフラーンを連想させる技巧であり少し身体が削れている感触があった。

 まさにこの女でなければ、ここまで食い下がることは叶わなかっただろう。だが、それも限界へと達していく。

 

「だが、それでも俺が止まる理由にはならん。」

 

 足を一歩踏み出し、女の動きを無理矢理止める。そして殺意の視線を交えながら、一言呟く。

 

「ああ、それ程の才があるならば周りを置いてきぼりにさせてしまっていただろう。ああ、それこそ“強くなければ男ではない”と暗に示すかのようにな。」

「ッ!?」

「言っておくがそれだけならばお前自身は決して悪くない。寧ろ力不足だった男どもこそが恥ずるべきだろうよ。もっとも……俺は負けんがな。」

 

 マグサリオンの言葉によって生まれた動揺、その刹那を掻い潜って断頭の刃が振られた。

 刎ねる女の頭部、六人の若者全員が滅尽し、遂に宮殿の前へと辿り着いたのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。