マグサリオンの殺戮道場   作:ヘル・レーベンシュタイン

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第三十四話 77輝輪の勇者

 

「飽きた」

 

 受付の席で、机に足を乗っけながら特製パフェを食い尽くした銀時は早々そんな身もふたもない事を呟いた。

 それの姿に新八が呆れた顔をする。

 

「そりゃ、この一時間で5つも同じもの食べればそうなるでしょ。」

「そりゃそうなんだろうけどよ、全然挑戦者来ねえじゃねぇか。パフェ食って寝るくらいしかやる事ねぇんだよ。」

「いや他にやることあるでしょ、ニートですか貴方は。」

「一応ズルワーンが、給湯でボスが過去に戦った映像を見ることができるとは言ってたけどあまり興味湧かないネ」

「全くだ、いきなりンなもん見ろって言われてもやる気起きねぇっての。」

「もう二人とも、いい加減に……って」

 

 二人がグダグダと文句を垂れてると、ふと入口から誰かが入ってきた。

 

「銀さん、早速仕事ですよ。」

「っと、どうも〜挑戦で、すか……ね……」

「………」

 

 受付の前に現れたのは、端的に言えば女性だった。しかしその姿はセーラー服を着ており、髪は黒く非常に長く伸びていた。それも肩にかかるほどであり、目だけでなく鼻も隠れるほどだ。

 言うなれば、ホラー映画に出てきたそうなほど不気味な雰囲気を出していた。あまりの雰囲気に、流石の銀時と新八も戦慄し額から汗が出る。

 

「あ、えっと、訪問先を間違えてませんかね?ここはカウンセリングではなくて闘技場で……」

「………此処で、最強の人と戦えるんですよね?」

「そ、そうではあるんだけどお姉さん、戦える武器とか持ってる様には見えな……」

「………して」

「は、はい?」

「私を殺してよォォォッ!!」

 

 女性を長く伸びた黒髪の間から、血走った眼球が現れながら顔面を銀時達へ大接近させた。

 

「お、おおおお落ち着いてくださいお姉さん!!ここは自殺の名所じゃないんですよォォォッ!?」

「うるさいうるさいうるさいうるさい!!もう生きるの嫌なの辛いの悲しいの早く私を殺してよォォォォッ!!!」

「はい勝手口はあちらァァァッ!!」

 

 癇癪を起こし受付の机の上にあるものに手を伸ばそうとした瞬間、銀時が咄嗟にその手を取る。そして身を乗り出し、背負い投げの要領で女性を入り口の方へと投げ飛ばした。

 女性は入り口のガラスを破りながら何処かへと弾け飛んでいった。

 

「銀ちゃん、最初のお客さんを飛ばしたら仕事ほっぽり出したのと同じじゃないカ?」

【おいおいそうだぞ、何勝手にお客さんクーリングオフしてんだよ。約束と違うじゃねぇか。】

 

 するとその光景を見てた神楽がそう呟き、それに便乗する形でズルワーンの声が放送の様に差し込まれた。

 

「出来るかァァァッ!あんな自殺する気満々なメンヘラ女を、殺意剥き出しな無慙に差し出せるかよ!俺ら自殺援助してる様なもんじゃないか!気分悪いし目覚め悪くなるわ!」

 

 それに対して、銀時が大声で抗議の声を上げる。そして、新八が恐る恐る手を挙げながら続けて話す。

 

「あ、あの、本当にあんな人とか無差別に送って良いんですか?まさか、無慙さんがカウンセリングして矯正とか……」

【しっかり殺すが?】

「ダメじゃねぇか!本人直々に肯定しちゃったよ!」

 

 本人からの容赦ない返答に新八も思わず突っ込んでしまう。すると銀時はため息を吐き、口を開く。

 

「とりあえず、今のは多めに見てくれや。まさかあんな化け物が来るなんて予想外だったからよ、次は拒否するんなちゃんと確認するからよ。」

【おう、今度こそちゃんと頼むぜ。】

 

 すると、自動修復した入口から再び挑戦者が現れた。受付に現れたのは細身と大柄な男の二人組であり、どちらも中世のヨーロッパを連想させる騎士の装いだった。

 しかし、この二人を銀時達にはよく知った人物である。細身の男性が銀時に問いかける。

 

「確認したいのだが、この建物は最強の騎士と戦えるという噂を聞いたが本当か?」

(ちょ、タルカスとブラフォードじゃねぇかァァァッ!ジャンプの大先輩が何で此処にィィィィィイイッ!?)

(ぎ、銀さん失礼のない様にお願いしますよ!?)

 

 表情は出さない様に努めるものの、少し上擦った声で答える。

 

「あ、あぁはいはいその認識でよろしいですよ。どうぞどうぞ、こちらの扉の先ですぅ」

「かたじけない」

 

 銀時が立ち上がり、闘技場への入口へと誘導しようとする。ブラフォードが促されるまま向かおうとした時だった。

 

「ブラフォードよ、良いのか?」

「………」

 

 まだ動かないタルカスがそう言い、ブラフォードは視線だけを向ける。

 

「俺は、ゾンビになったとは言えお前の死後を穢した。そんな俺が、お前と並び立つなど……」

「浅いぞ」

「む?」

「その考えは浅いぞ、タルカス。戦闘とは常に何が起こるかわからぬ、数秒前の友が裏切り背中をさすなんぞ常識に等しい。それを常に覚悟してたのだ、人として生きてた時ならばまだしも、その事を死後も持ち込むものか。」

「ブラフォード……」

「それに……」

 

 背中の剣を引き抜き、その切先を扉へと向ける。

 

「騎士ならば戦いで、その魂の姿を見せるのが筋というもの。最強の戦士、相手にとって不足はあるまい?ならば、またとない機会を友と共に歩めるのならばそれに勝る喜びはあるまい。お前は違うのか、タルカス?」

「………否、まさしくその通りだ。ならば最強の座をこの手に、いざ!」

 

 二人は微笑みを浮かべながら、銀時の横を通り扉を潜ろうとした時だった。

 

「お二人さん」

 

 銀時が声をかけ、二人は止まった。

 

「多分、二度とない機会だ。後悔のない様にな?」

「うむ、勿論だ。」

「案内感謝する、ではさらばだ。」

 

 そして二人は扉を潜り、閉ざされた。

 

「銀さん……」

「……なぁ」

 

 普段はだらしないが、やはり仕事ならばきっちりと締める。坂田銀時らしい姿を見て、新八は微笑みながら声をかける。

 

「やっぱ見てて思ったけど、二部で出て来たズラズラ言ってた奴や名無しの吸血鬼よりあの二人の方が強いよな?」

「雰囲気台無しだよ馬鹿野郎!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして場面が変わり、マグサリオンの居る闘技場に二人が現れる。

 絶え間なく流れ出る殺意の圧、それを浴びて物理的な破壊はないはずだのに表皮……否、魂を鷲掴みされたかの様に痺れが起きた。

 

(な、何という圧だ……殺意の密度ならばディオ・ブランドー以上!)

(最強の座がこれ程とは……どれほどの血を浴びればこの領域に至れるのか?)

「どうした、何も言えんのか?」

 

 紫苑の髪が揺れ、向けられる凶眼が二人の姿を捉え居抜きつつ問い掛けられる。その圧にすら屈しそうになるが声を張り上げる。

 

「我が名はブラフォード!」

「我が名はタルカス!」

 

 騎士らしく名乗りをあげる、そうしなければ圧だけで膝を折ってしまいそうだから。

 

「貴殿の実力、騎士として相手にとって不足なしと見た!」

「いざ尋常に勝負!」

「来い、大馬鹿共!!」

 

 そう互いに言葉を交換し、剣士同士の決戦が幕を上げた。

 直後、まず最初に動いたのはタルカスだった。

 

「オオォォォッ!」

 

 長身の男性よりも遥かに大きく長い巨剣を振り上げ、そしてマグサリオンに向けて振り下ろした。

 単純明快な突撃と振り下ろし、真っ直ぐすぎる攻撃だが巨体を持つものがそれをするだけでも対人であれば十分な圧となる。しかし……

 

「ヌッ!?」

 

 マグサリオンもまた、正面から対処する。まるで木の葉を払うかのような横薙ぎの一閃、タルカスの攻撃と比すればとても小さな迎撃だった。しかし……

 

「が、あァァァッ!?」

 

 飛ばされたのはタルカスだった、錐揉み回転しながら後方に飛び壁面と衝突するその姿はシュールながらも脅威的である。パワーならば己が上という自負があったのに、真正面からそれを打ち砕かれたに等しい。

 そしてそれは、その様子を見届けていたブラフォードも同様である。

 

(何だこの異様な光景は、体格で遥かに上回るタルカスを正面から突き飛ばすとは……ならば、技で攻めるのみ!)

 

 動揺する精神を直様切り替え、今度はブラフォードがマグサリオンに挑む。その特徴的な黒髪が一人でに伸び、タルカスが散らした瓦礫を幾つか絡める。曰く『死髪舞剣(ダンス・マカブヘアー)』を操り攻撃を繰り出す。

 

「ウリィヤァァァッ!」

 

 そして跳躍し、瓦礫を投擲、もしくは鈍器のように死角から振り翳した。まさに多角的な攻めであり回避は困難と言える。

 

「鈍い」

 

 しかし、マグサリオンの姿が揺らめけば、触手のように迫る髪を切り裂きつつも避けていく。

 

「なんのォッ!」

 

 左右から投擲される瓦礫、それを避ける。頭上から迫る髪の毛、剣戟で引き裂いて散らばられる。更にそれに紛れて下方から迫り股間ごと胴体を裂こうとする髪に括られた剣の一閃、それすらも捉えて真正面から弾かれる。

 悉くが斬り裂かれ、触れたと思えばズレていく。まるで鉤爪が磨かれた球体に引っ掛からないのように、その異様な光景にブラフォードは旋律を覚える。

 

(なん、だコレは?斬り裂かれる程度ならばまだしも、幾ら甲冑を着込んでるとは言え俺の死髪舞剣に捉えられぬだと!?幾ら斬り分けてるとはいけ、この物量を正面から対処なんぞ……あのジョナサン程の波紋戦士ですら手こずった我が技法をこの男は、どの様にして……)

「どうした、もう終いか?」

「ヌゥ、だが……」

「ゴォガバァァァァッ!!」

 

 マグサリオンがブラフォードの首を刎ねようとした刹那、頭上から血を撒き散らしながらタルカスがその巨体を活かし全体重を乗せ、尚且つ剣を地面へと突き刺さんと落下してきた。マグサリオンは、タルカスの血塗れの姿を捉え、ある部分を確信する。

 

「ほう……腐肉、貴様ら屍人(ゾンビ)とやらか。腐った匂いがして臭いぞ。」

「だからどうしたと言うのだァッ!」

 

 マグサリオンの言葉に、知ったことかとタルカスは言い返す。その最中、ブラフォードとマグサリオンは、すかさず互いに引いてタルカスの一撃を回避する。すると剣が地面に突き刺さり、地響きと共に亀裂が放射状に広がり闘技場が半壊した。

 

「ブラフォード!」

「おう!一気に畳み掛けるッ!」

 

 瞬間、タルカスはすかさず跳躍しブラフォードはあえて地面に空いた空洞へと降下した。その最中に髪の毛を伸ばし連結させる形で瓦礫を絡ませる。それはまるで、巨大な鎖を擬似再現したかの様に。

 そしてそれが、マグサリオンの周囲を囲みそして収縮し拘束した。

 

「これぞ我ら77の輝輪を制覇し戦士の連携!我が死髪舞剣(ダンス・マカブヘアー)をッ!!」

「そして、ソレを活用したした上下からの同時攻撃の秘殺技『天地来蛇殺(ヘルヘブンスネークキル)』!!」

 

 タルカスとブラフォード、両者から一気に拘束する髪を引かれマグサリオンの胴体を分離せんとする。

 ブラフォードの柔軟ながらも頑丈な髪の毛、そして瓦礫とタルカスの振るう剛腕が齎す衝撃。人体であれば巨大な刃物で斬られたかように動体が裂かれ、仮に裂かれずともその衝撃で体の内側が撹拌されたようにズタズタとなるだろう。しかし…タルカスは違和感を抱く。

 

(なん、だこの手応えは?人間の血肉を破壊した手応えでは無い……違う!手応えそのものが無い!しかし、ならばこの男の体はまるで……)

「良くわかった、それが貴様らの騎士としての全霊か。」

 

 混乱するタルカス。しかしボロボロになったカカシのような体型になりながらも、マグサリオンは容赦なく剣呑な視線が二人を射抜く。まだ壊れず死んでおらず、寧ろ研ぎ澄まされた戦意に満ちており、その密度が一気に増した。

 

「たとえ屍人なる魔性になろうとも、闘争に飢えようとも騎士としての誇りは消えんか。ならば俺からも、全霊を以って貴様らを殺す。」

 

 髪の毛を掴み、ブラフォードを上部へと投擲し、すかさず剣先を二人へ向ける。

 

消し飛ばせ(アラストール)

 

 そして空を蹴り、一気に跳躍し空間ごと引き裂きながら二人を横一閃にて両断する。

今度は自分たちが胴体から真っ二つに切断され、肉体と魂がまるで浄化されるかのように無へと還っていく。

 

「ふ……最強の座、コレほどまでに遠いとはな。更なる修練を積まねばならんな、タルカス……」

「ああ、ならば更なる高みを共に目指そうぞ、ブラフォードよ……」

 

 そう言い残し、二人の誇り高き騎士は消え、その姿をマグサリオンは剣に付着した血糊を一振りで払いながら見届けた。

 

 

 

 




タルカスとブラフォードが、もしも連携しながら戦えばわこんな感じかなと思いました。多分、ジョナサンとツェペリさんも負けずともかなり手こずったのでは無いかなと思います。
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