「おうゴラァっ!最強の剣士とやらはここなんだよなぁ!?適当抜かしたら殺すぞ!」
「あーはいはいはい、誤認識の通りなんでどうぞそこの扉開けてくださーい」
「この白髪野郎、舐めた態度しやがって……後で覚えてやがれ!」
受付の前に、腕に刺青の刻まれた男が銀時を睨みつけながら叫ぶ。それに反して、銀時は飄々とした態度でマグサリオンのいる闘技場へと繋がる扉を指差した。
その態度に男は気に食わない顔をするものの、ひとまず扉を開けてその先へと向かった。そして……
『お前は自分が一番だと思ってる、俺に最強という称号があるのが気に食わないから殺して屈辱を与えようとして此処に来た。』
『て、テメェ!知った風な口を』
『そして、俺に敗北と同時に屈辱を味合わせたいと』
『ッ!?』
「ま、そうなるよな……」
男の首が刎ねた。最早こうした展開を、銀時はモニター越しだが何度も見た景色だった。腕試し、王冠狙い、そうした悪人が毎日毎度と言えるほどに挑戦者が際限なく来ている。そして、全員、例外無くマグサリオンの剣によって下される。
「しかし大将も飽きないねぇ……いや、そう言うマイルールなんだろうな。筋が通ってるちゃその通りだが、あまりに異常すぎるだろ。」
と言い、机にあるいちごミルクのボトルを掴んで一気に飲み干した。
(さぁて、そろそろ休憩に行こうかね。)
そう考えて立ちあがろうとした時だった。
「おいアンタ」
「ん?な、アンタは……」
そして闘技場に、靴の音が響く。中央にいるマグサリオンの凶眼に音の主の姿が映る。黒い学生服、マグサリオンよりも僅かに大きい長身の青年が現れた。
名は空条承太郎、かつてここに訪れて敗北したDIOを打倒した張本人である。
「………」
「………」
互いに視線が交わる、しかし言葉は発さない。そうした緊張眼が空気を痺れさせ、見るもの次第であればその圧に押し潰されかねない。
「よぉ、どんな挑戦者も受け入れてくれるんだろう?なら、俺からの喧嘩買ってくれや。」
「好きにしろ」
先に沈黙を破ったのは承太郎だった。それに対し、マグサリオンは冷淡な口調でそう返す。
直後、承太郎が走り出す。それ自体は学生にしては早い速度、しかしてマグサリオンからすれば飽き飽きする既知の景色だが油断しない。
「ッ!」
(な!?)
故に、彼我の距離が拳の間合いまで縮まった直後の事だ。何も映ってない筈の正面の空間に向かって剣を振るう。直後に豪快な金属音が闘技場に響き渡る。
その目の前の出来事に、承太郎に緊張が走る。数秒前までは自身のスタンド『
「なるほど、やはり貴様はスタンド使いか。」
「な、テメェ……」
「DIOと同じく、そうだろう?」
「ッ!?DIOを知ってる、だと……チッ」
そう言って承太郎はマグサリオンを睨みつつ、スタープラチナのラッシュを放ちこむ。スタンドが見えた、それは単なるまぐれかもしれなと考え……
「オラオラオラオラオラァァァッ!」
「フン!」
光に迫るラッシュ、しかしそれを数発は身体に掠るものの全て正面から剣戟で弾き返す。その目の前の光景に、流石に丈太郎も息を呑み理解する。
(マグレじゃあねぇ、本当にスタンドが見えてやがる。しかも、まさかDIOに勝った相手だったとはな……想定外だった。だが、もしかしてだが……)
「なら聞かせてもらうが、テメェもスタンド使いか?」
「……….そう思うか?」
(やはりな、違う。こいつはスタンド使いじゃあねぇ。少なくとも、さっきと今の反応もスタンド使いらしい反応じゃないからな。)
マグサリオンの曖昧な返事を聞けば、承太郎を違うと確信する。
(もしもスタンド使いとしての経験が豊富なら、スタンドの存在を認知した直後に“お前も”と言う筈だ。そして、俺が問いかけた後に敢えてバラすか、強く否定する筈。コイツの返答は単なる素直な返答、スタンドの有無を隠蔽している様子はない。)
そう承太郎は推測した、しかし冷や汗が額から垂れて決して油断できない内心を抱いていた。
(だからこそ厄介だぜ、つまりコイツはスタンド使いじゃないにも関わらず“ほぼ自力で”スタープラチナの存在を暴きやがった。
今も尚、出方を図ってるのに全然目を離す様子すらない。油断も隙も見えない、恐ろしい相手だぜ。)
「どうした?喧嘩を売ったくせに様子見しかできんのか?」
(下手な挑発に乗れば危険だ、スタンドの存在を認知しただけで簡単に暴かれたんだ。
安易な攻撃をして見切られれば、どんな危険が待ち受けてるか分からん。ましてや……)
故にマグサリオンの挑発に乗る事なく、同時にしっかりと彼の姿を目に映しながら思考を巡らせていく。
(目……目か。もしかしてだが。鎧越しだが、人間とは思えん手応えだった。なら……)
ふと、承太郎が閃く。ジリジリと足を動かし、ゆっくりと間合いを詰めていく。
「ほう?」
マグサリオンはそれを見て、剣を構えて走り出す。その直後だった。
「オラァ!」
スタープラチナが叫ぶと同時に、パンチを地面に叩き込む。その衝撃で瓦礫と土煙が舞って承太郎の姿を隠す。
「小賢しい」
煙と瓦礫を、横薙ぎに払った一閃で消し飛ばす。
「
が、その隙を見てスタープラチナの指が伸びた。狙いはマグサリオンの右眼、それを潰さんと迫る。
「!」
その目潰しを、マグサリオンは頭を動かす。その結果、狙いの右眼ではなく頬に突き刺さるもマグサリオンは横へ飛ぶ。
その異様な立ち回りに、承太郎は表情を大きく変えないものの内心驚愕する。
(ヤロウ……なんて化け物の様な反応速度だ、今の不意打ちも凌ぐのかよ。だが、今の立ち回りで目潰しを強引にも避けようとした。目が弱点なんて人間なら当たり前だがアイツは吸血鬼のDIOですら無意識にやる瞬きや眼を閉じるって行動すらも、この瞬間でもしてない。目がある生物なら、潰される危機があるなら咄嗟に目を閉じるのに。なら、ヤツの目に何かあると見ていいだろう。
だったら……人として非道かもしれないが、どの道ヤツは普通の生物とは思えん。人間と同じ弱点が通用するとは限らんが、それでも異常な反応を見せてる以上は強引にでも目を閉じさせて結果を確認するしかない。問題は……)
「大した判断力だな。」
承太郎が思考を巡らせる最中、マグサリオンはゆっくりと歩きつつ語り掛ける。
「目が狙い所、そう決めたのだろう?」
「……」
否定できず、無言の肯定となってしまう。無論そこにも理由がある。
(推定にしかならんがコイツは、スタンドみたいに確かにこの世に存在しつつも実体の無い存在かもしれねぇ。スタープラチナのラッシュを受けたり正面から捌くなんて、生身の人間でなんてほぼ無理だ。DIOみたいに吸血鬼にならん限りな。
だが、それでも生身に等しい部分があるとすれば、やはり目だ。悟られてるとしても、狙いはそこしかない。)
「良いぞ、やれるものならやってみろ。」
「……舐めてるんじゃあねぇ。この空条承太郎、やる時はやる男だぜ?」
「……ほう。」
承太郎が、気迫を込めつつも名乗りを混ぜてそう答えた。すると、マグサリオンは感心した声を漏らす。同時に、承太郎はピリついた空気を感じとる。まるで、見えない刃が差し迫ったような危機感を得る。
故に、承太郎は覚悟を決めた。帽子の鍔に指をなぞらせる。
「まどろっこしいのは好みじゃないんでな、一気に決めさせてもらう。」
「……」
その意気込みを聞き届け、覚悟を受け取ったのかマグサリオンは深く腰に剣を溜め込んだ構えをした。
(さて、問題は時を止めるタイミングだ。おそらくだがコイツは、理解したものに対して強くなる。DIOとの決闘を通してスタンドに対する理解が深まって今に至るなら、スタープラチナが時を止めれることも悟られれば絶対ヤバい。
だが、同時に目を確実に潰すなら時間を止めてる間しか確実な狙い目がない。やれやれ、DIO……今になってお前の気持ちだけは察せられるぜ。自分の切り札に適応されてしまうのが、こんなに恐ろしいことだなんてな。絶対に共感なんてしてやらねぇが。)
「……」
承太郎はそう考えながら、マグサリオンに視線を集中させる。すると、マグサリオンの身体が揺らめき……
「っ!?」
承太郎の視界から消えた。しかし、スタープラチナの視線が逃さない。
「オラァ!」
背後からの奇襲、承太郎の背後に火花が散る。思わず承太郎の頭から、冷や汗が垂れて地面を濡らす。
(コイツ、DIOとは違った恐ろしさを持ってやがる。油断も隙もあったもんじゃあねぇ!)
「オラオラオラオラオラァッ!!」
スタープラチナのラッシュが繰り出される、しかし……
「温い、遅い、あくびが出るぞ。」
遂に全部、完全に回避されてしまう。迎撃すらされず、ジグザグ模様を描いて次第に距離を詰められる。
死線が、死神の処刑の時間が次第に迫り来る。そして……
「お前は、スタンドと至近距離でしか居られない」
「__」
至近距離、互いの顔面が激突できるほどの距離を詰められる。そして、スタープラチナの唯一の短所と言える短い射程距離を看破され、承太郎に僅かな緊張が走る。
「死ね」
そして放たれる処刑の刃、承太郎の首が刎ねられる。
「スタープラチナ・ザ・ワールド!!」
が、マグサリオンの刃が首に迫る数ミリ。その瞬間にスタープラチナの時間停止が発動してマグサリオンの動きが止まった。
「やれやれ……さすがにゾッとしたぜ。攻撃中、基本防御は疎かになるからな。なら、必殺のタイミングを狙うしかねぇ。
さて、さっきも言ったが一気に決めさせてもらう。」
「オラァ!オオォォォォオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!」
まずは力を込めた一撃、マグサリオンの顔面が陥没するほどの威力が炸裂する。
そしてラッシュ、しかしそれは全て顔面に集中していた。頭蓋ごと眼球を潰す、それもあるがタフな相手の意識を確実に断つために、或いは頭蓋が首からもげるほどの圧力を叩きつけるために繰り出し続ける。
(確か、ジジイから聞いた話だが吸血鬼を倒すには日光を浴びせるか頭部を完全に破壊する。同じ弱点を持ってるとは限らない、だが……)
そう、承太郎はマグサリオンに勝つためには目を閉じるか、意識を断つために首を飛ばすか、あるいはそのどちらも実現するしかないと判断したのだ。
(コイツがスタンドと同じ、精神力を軸にしてる存在なら吸血鬼と同じく意識が集中してる頭を破壊するしかない。或いはそれこそ、世界ごと書き換えるなり破壊するなりすればもっと簡単かもしれないが、俺にはちと無理な話だ。
だが迷ってる時間はない、今一気に叩き込む!!)
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」
2秒経過、マグサリオンの顔面が黒く塗りつぶされてた。それに承太郎は違和感を覚える。
が、直後に血の気が引いた。何故なら……
(目がまだ健在、だとぉ!?)
陥没してる顔面とは裏腹に、時間が止まってるとはいえ未だも尚もマグサリオンの凶眼が承太郎を睨みつけていた。しかも、僅かに瞳が動いていた。
(コイツは、何か不味い!)
「オォォォッ!」
危機感が最大限に達し、渾身の拳の一振りをマグサリオンの片目へと叩き込まんとした。だが……
「……光より速い、故に時すら置き去りにしたか。」
(まさかコイツ、パンチを目に当てる直前に直前にズラしたか!まさかコイツ、スタープラチナよりも速く動いて……バカな、あり得ない!?)
「DIOの世界のそのものを時を止める性質も違う……ああ、その力、よく分かった」
まだ止まっている、しかしマグサリオンはスタープラチナの時間停止に抗い動いたのだ。もはや一刻の猶予もない、ならばと全力で拳を振り上げる。もはやマグサリオンの力の謎はわからないが、それでも仕留められるのは今しかないと承太郎は割り切った。
「オオォォォォ!テメェは、俺が倒すッ!!」
「やってみろッ!!」
至近距離で効果する拳と剣、通り抜けた果てに……
「……」
「……」
時が再び動き始める。その直後に、承太郎もマグサリオンも互いに攻撃を出し切って背中を向け合い……
「……チッ……こうなる運命、だったか。やれやれ……」
「……俺の頭を完全に破壊する、そんな奴は稀だった。
お前はスタンドが強いから脅威、なんて簡単な奴ではない。
恐怖を知りながら、それに屈することなく、己の最善を尽くして勝利を掴もうと抗った。勝利に酔う獣には、決して辿り着けぬ在り方だ
その魂の在り方こそが貴様の根だな、空条承太郎。」
「…テメェ、名前を聞かせろ。」
「マグサリオン」
「マグサリオン、か…やれやれ、終わり間際に褒められたところで、嬉しくもなんともないぜ。」
承太郎の頭が縦に裂かれ、血を吹き出して倒れたのだった。
「マジかぁ……嘘だろ、無敵のスタープラチナでも負けたのかよ」
受付にて、モニターでその闘いを見届けていた銀時はその結果に手で顔を覆った。
(……ただ、確かに異様だったな。見たところ、大将の身体は今までの戦闘から見てもよく分からんくらい頑丈なのに、眼に攻撃が直撃するのを異様に避けていた。いや、誰だって眼を狙われるのは嫌だろうけどさ。)
承太郎との決戦を見届け、そう考えた。そして……
(……何より、決着の前に間違いなく承太郎が時を止めた。何が起こったか分からないが、急に大将の顔面が変わってた。アレは……)
見慣れた端正ながらも鬼気迫るマグサリオンの顔面、その表皮が剥がされてるのに燃え盛るように殺意に満ちた、決して閉じない眼が確かにそこにあった。
それを想起し、生理的な忌避感が全身を巡って震え上がる。同時に……
(もしも本当に、承太郎の狙い通り目が潰れてたらどうなってた?大将がマジで死んだか、或いは……)
死を超えた凶兆、その扉が開かれる?なんて未知の恐怖を考えてしまう。が……
「あーやめやめ、俺がわかるわけないっての。おーい新八、交代だ交代。俺は眠らせてもらうぞ。」
銀時は受付席を離れ、休憩室を開けて新八との受付番の交代することにしたのだった。
承太郎との戦闘は、正直最初は考えるのは無粋かなと考えたのですが、それでも思えば他シリーズの主人公との戦闘の一番手としてふさわしそうと考えたら、一気に展開が思いつき結果こうなりました。